自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

323 外伝70

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※投稿者は作者とは別人です

550 :外パラサイト:2012/02/22(水) 20:32:58 ID:6iqjxSFw0
投下させていただきます

551 :外パラサイト:2012/02/22(水) 20:33:47 ID:6iqjxSFw0
プルマンNo.3と名付けられた列車の編成は、ボールドウィン機関車506および炭水車、貨車(重装備用40フィー有蓋車)×3、武器弾薬積載用鋼鉄貨車 ×3、長物車(戦車、自走砲、その他装軌車両積載)×12、車掌車、そして<マザー・ロード>と呼ばれる特別車輛から成っていた。
列車はレーミアの西7マイルにあるパイアチャヤの操車場から出発し、ファルヴエイノ、ハタリファクを経由してヒーレリ国境に近いダルトハ郊外で休養と再編成を行っているカレアント第一機械化騎兵師団に補充の装甲車両と軍需物資を届けることになっている。
列車を牽引する機関車は巨大なダブル・ドームのボールドウィン十輪機関車で製造番号は506。
前世紀の終わり頃に製造されたアトランティック<4-4-2>(前輪4、動輪4、後輪2)という型式で、大小のパイプやあちこちの継ぎ目から蒸気を漏らしながら力強く鉄路を進む様は、老いてなお意気軒高な鋼鉄の貴婦人といった風情だった。
そしてプルマンNo.3を統括する車掌が若干19歳になったばかりのキャシアス・マッギルであった。
シホールアンルと合衆国が戦争状態に突入したのは、キャシアスがボストン・ブラウニーズの二軍で期待の左腕と呼ばれ、一軍昇格も目の前と言われていた時である。
開戦のその日に球団事務所に退団届けを提出し、アーリントン通り57街区に設けられた新兵募集事務所の扉を叩いたキャシアスだったが、待っていたのは慇懃無礼な募集係下士官の「気の毒だがね、君は身長が陸軍の求める基準値に僅かに届いとらんのだ」という言葉だった。
のちに名誉勲章を受章した英雄で戦後映画俳優に転身したオーディ・マーフィーは自身より0.5インチ背が低いことを知ったキャシアスは激怒するのだがそれはまた別の話である。
失 意のキャシアスが父親の又従兄弟のコネでプルマン鉄道に車掌見習いとして入社したのはせめて戦争に直接貢献する仕事に就きたいという想いからだったが、オ リーブ色に塗られた戦車を満載した貨物車や兵隊を目一杯詰め込んだ客車の運行を監督する毎日は、若者の冒険への憧れを強くするばかりだった。。
キャシアスの人生に転機が訪れたのは、1484年(1944年)7月の北大陸侵攻後のことであった。
上陸したアメリカ軍は、北大陸に合衆国本土にも引けをとらない鉄道網が存在していたことに驚かされた。
思想的に問題はあるものの統治者としては間違いなく優秀なオールフェスが、占領地における社会資本の整備を積極的に推進した成果である。
さらに驚いたことに、シホールアンル人技師が敷いた軌道の規格と構造は、僅かな改修を施すだけでアメリカ製の列車を走らせるのに全く問題がなかった。
陸上において大量の物資を最も効率的に輸送する手段は今も昔も鉄道である。
プルマン・カンパニーが北大陸における軍用列車の運行を政府から請け負ったとき、キャシアスが現地勤務に志願したことは言うまでも無い。

プルマンNo.3がダルトハに到着したのは、定刻より40分早い4月18日午前11時45分のことだった。
操車区内の引込み線に停車した列車から少し離れた空き地では、未舗装の道路を臨時の滑走路にした単発のプロペラ機が離着陸を繰り返している。
それはスマートなムスタングや馬鹿でかいサンダーボルト、ツインブームのライトニングと比べると随分と小型でなおかつずんぐりした飛行機だった。
その飛行機はKf-01ビーラーという名称で、カレアントが作り上げた初の国産戦闘機であり、最初の実戦部隊である第84飛行中隊は三日前にダルトハに到着したばかりだった。

552 :外パラサイト:2012/02/22(水) 20:34:41 ID:6iqjxSFw0
カンレアク女王の肝煎りで開発されたKf-01(その一般公開の際に自ら操縦桿を握ったミレナは見事なアクロバット飛行を披露したものの、着陸時に滑走路 をオーバーランし来賓席に突っ込んでいる)は、練習機をもとにした急造機の割には無難にまとめられた機体で、上昇性能と運動性能はP-39やP-40を上 回ってすらいたが、いかんせん最高速度が490Km/h台では制空戦闘機としての活躍は期待するほうが無理というものである。
ただ23ミリ機関砲×2、7.62ミリ機関銃×2という火力は侮れないものがある。
さらに安定性と操縦性は抜群なうえ、設備の整っていない前線の飛行場からも作戦できるという利点があるため消耗の激しいワイバーン部隊の代替として地上直協任務につくことになったのである。
実際ワイバーン部隊の北大陸における戦績はアメリカ製の戦闘機を使用する飛行隊と比べあまり華々しいとはいえない。
元来ワイバーンは内陸部の高山地帯に生息する生物であり、洋上を長距離飛行する習性はない。
このため海上輸送中のワイバーンが陸地から一定距離以上離れるとたちまち体調を崩してしまい、酷いときには輸送中に三割近くが喪われるだけでなく、陸揚げ後も馬鹿にならない数が完全に復調せず、戦闘任務から外されることもある。
空中戦では戦闘機にも引けをとらないワイバーンが神経衰弱で大量死などタチの悪い冗談のような話だが、人為的に改良を加えられ歪んだ進化の果てに創り出された生物ゆえの欠点である。
ちなみに生物工学の分野で一日の長があるシホールアンルは外科手術による脳改造でこの問題を解決していたのだが、連合軍がその資料を手にするのは終戦後のことだった。

キャシアスが石炭と水の積み込みを監督しているところへ、ジープとダッジの3/4tトラックがやってきた。
「おいキャス、すげえぞ」
助手を務めるライリー・マコーリフ―通称ロックス―がキャシアスのわき腹を肘で小突く。
「見ろよあのオッパイ!ああ、たまんねえなあ」
それを聞いて、キャシアスはジープを降りたカレアント軍の将校が女であることに気付いた。
ロックスの視線は<マザー・ロード>に向かう右目に眼帯をした将校の、軍服の上からもはっきりとわかる胸の膨らみをIBM社製のガンスタピライザーのようにしっかりと追従している。
「おい、言っておくがな…」
「わかってるよプロフェッサー、面倒は起こさないって!」
この世にロックスの「面倒は起こさない」ほど当てにならないものはない。
テキサス大隊の兵士をいかさまポーカーに誘い、巻き添えをくらったキャシアスもろとも時速40マイルで疾走する列車から簀巻きにされて放り出されそうになったのはつい半月前のことだ。
だがいずれにせよ現場の最高責任者としてプルマンNo.3の運行に関する一切を差配する立場にあるキャシアスには、手癖の悪さから海兵隊を追い出されたもとチームメイトにブーツの底の馬糞のように張り付いて一挙手一投足に目を光らせておくような余裕は無かった。
列車はここダルトハで運んできた戦車を全て降ろし、空になった貨車を切り離す。
そして傷病兵を乗せた客車を連結してハタリファクに折り返すことになっていた。
ダルトハでの停車予定時間は六時間だが、これは周辺のキャンプから傷病兵を乗せてくるトラックの集まり具合に左右されるため、実際にはもっと伸びるだろうと思われた。
歩きながら乗務手帳を見ていたキャシアスは、うっかりカレアント兵の一行にぶつかりそうになってしまった。
「気をつけろよ」
短機関銃を担いだ兵士が前後を固め、二人がかりで木箱を運ぶ一団が眼帯の女将校に続いて<マザー・ロード>に乗り込むのを見送ったキャシアスは、本社あての電報を打つため駅事務所に歩いていった。

553 :外パラサイト:2012/02/22(水) 20:35:34 ID:6iqjxSFw0
<マザー・ロード>は全長80フィート、高さ14フィート、最大幅10フィート。
客車は全体が精緻な木彫り装飾と金の縁取りで飾られ、プルマンの経営陣が鉄道界最高の芸術品と主張するのも頷ける。
プルマン・カンパニーが株主限定で発刊している豪華装丁本「プルマン鉄道と合衆国の歴史」によると、この貸切専用客車は1906年に5万ドルをかけて建造されたとされている。
車内には六つのコンパーメントがあり、うち一つがダブルサイズのマスター・スイートで、ここには真鍮の固定式ベッドと巻き縁、鉤爪脚の鋳鉄製浴槽が備わっている。
東インド様式に装飾されたマスタースイートの室内で、二人の美女が対峙していた。
入り口の扉を背にし、険しい表情で立っているのはダルハト市内の師団司令部からやって来たファメル・ヴォルベルク少将。
籐の長椅子にゆったりと腰掛けてファメルと向かい合っているのは、妖艶という言葉がぴったりの狐耳の美熟女。
このギリギリ痴女の一歩手前といった風情の女性こそ、ファメルの異母姉にして知る人ぞ知るカレアント諜報機関のスーパーエージェント、“微笑む毒蛇”の異名を持つリヒテリ・ハイアウォサ大佐であった。
大佐という階級で女王へのアポ無し謁見が許されているのは彼女くらいであろう。
もっ ともスパイという仕事を趣味と実益を兼ねたあの世に行くまでの暇つぶしと公言している本人は軍人の自覚があるかどうかも怪しいもので、諜報活動に従事して いるときのみならず司令室でデスクワークについている時でさえ、リヒテリの軍服姿を目撃した者の数は正確にゼロである。
この日の衣装はあとわずかでも布が少なければ乳首が見えてしまうほど胸ぐりが広く開いたワインレッドのロングドレスで、深いV字カットの間から豊満な乳房がたっぷりと盛り上がっている。
すその切れ込みは腰まであり、むっちりとした太股と艶めかしい尻の曲線の一部をさらけ出していた。
「説明してもらいますよ」
固い声で詰問するファメルが長靴の爪先で床に置かれた木箱に一撃を加えると、箱の横板が外れて中身が露出する。
「これを手に入れるために私は師団の4分の1を失ったんです。」
ファ メルが第一機械化騎兵師団に無茶な進撃を命じたのはパイパーに対する対抗心もあったが、真の理由は「アメリカ軍に先んじてハタリファク郊外にある通称“冬 の宮殿”-シホールアンル軍統治下では高級将校用宿舎として使われていた-を制圧し、第17代レスタン女王シェールフラウ・オブデュレイトスの肖像画を確 保するべし」という極秘司令を受けてからである。
「そうね、貴女には聞く権利があるわ」
リヒテリはゆっくりと身を起こし、右手をひょいと振る。
ドレスの袖口から飛び出した細身の短剣が、それ自身に意志があるかのような動きでリヒテリの掌に収まった。
ファメルが見守るなか、テーブルに立てかけた肖像画の前に屈みこんだリヒテリは、巧みに短剣を操って額縁から裏板を取り外す。
裏板と絵の間には経年劣化で変色した数枚の紙が挟み込まれていた。
「それは?」
テーブルの上に広げられた紙束を見てファメルの左目が光る。
「ジャッコウ3世からの恋文」
ジャッコウ・マッド・カンレアク3世はおおよそ120年前の君主で、現在王宮で女王のお目付け役をしている古株が若い頃に祖父母から聞いた話では、ミレナ女王に輪をかけて愉快な性格の人物であったらしい。
「ジャッコウ3世がレスタンの女王にラブレターを…」
「当然プロポーズは受け入れられなかった。かといって手酷く振られることもなく、二人は生涯いい友人としての関係を保った。-とジャッコウ3世が残した日記には書かれているわ」
だが問題は-と前置きして目を細めたリヒテリは言葉を続けた。

554 :外パラサイト:2012/02/22(水) 20:36:13 ID:6iqjxSFw0
「ジャッコウ3世がシェールフラウの関心を買おうとして出した手紙の一つに『モネヒル島を800万ルージで譲渡する』という証文が入っていたこと」
「モネヒル島を!?!」
仰天するファメル。
領海という概念が確立していなかったのどかな時代には、せいぜい夏の別荘を建てるくらいの使い道しかない離れ小島のモネヒル島だが、現在はカレアントの外洋航路、特に対米貿易用シーレーンをカバーする軍事上の要衝となっている。
ちなみに800万ルージという金額はインフレが進んだ現在でも決して安いものではないが、具体的にどのくらいの価値かというとシャーマン戦車が一台買えるか買えないかといったところである。
「不幸中の幸いはシェールフラウ女王がこの証文の存在を自分の胸の中だけに仕舞っておいたこと。こっちはしばらく前から証文の所在は掴んでいたけど、さすがに王族の居城とあってはおいそれと手を出すことは出来なかった」
ハタリファク解放のどさくさはまさに千載一遇のチャンスだったとリヒテリは笑った。
「こうやって表に出せない厄介事を人知れず処理するのが私のお仕事なのよ、ホント辛いわぁ…」
リヒテリはジッポーのオイルライターで証文に火を点ける。
「汚れ仕事で神経をすり減らす可哀想なお姉さんを慰めたいとは思わない?思うでしょう?思うはずよね?」
灰皿の中の証文が完全に灰になったことを見届けたリヒテリが、ファメルに向かって妖しげな流し目を送る。
ファメルは全身を総毛立たせた。
無力だった少女時代、スキンシップと称して加えられた性的虐待の数々が脳裏をよぎる。
それはファメルがケアリクロウ家から逃亡して-ヴォルベルクは母方の姓だ-陸軍に入隊するまで続いた。
リヒテリにとっては妾腹の子へのセクハラなど、愛玩動物を水溜りに落として遊ぶようなものなのだろうが、ファメルにとっては一生ものの悪夢である。
「さあ、昔みたいに楽しみましょう…」
流れるような動きでドレスを脱ぎ捨て、セクシーな下着姿になったリヒテリがファメルに迫る。
今のファメルならリヒテリに遅れをとることはないだろうが、幼少期に刻み込まれた苦手意識はなかなか克服できるものではない。
「わ、私は軍務がありますので…」
急いで客室を出ようとするファメルは急激に脱力感に襲われた。
「ま、まさか…」
「ピンポーン~♪」
リヒテリが持ち上げたテーブルカバーの陰に置かれていたのは揮発性のヤバい薬が入ったガラス瓶。
もちろん薬物のプロであるリヒテリは中和剤を服用している。
「や、やめ…」
力の抜けた四肢をバタつかせ、必死に後ずさるファメル。
「相変わらず女同士の良さが判ってないのね。でも大丈夫、ちゃんとソッチの用意も出来てるから」
リヒテリの合図で反対側の扉からゾンビか夢遊病者のような足取りで現れたのは車掌助手のロックスであった。
だらしなく弛緩した顔と焦点の定まらない目は明らかに暗示薬物の影響下にあることを示している。
「ちゃんと記憶は消しておくから大丈夫、お楽しみはこれからよ♡」
リヒテリはキングコブラが笑えたらきっとこんな顔だろうと思えるような表情でファメルにのしかかり、内側からの圧力ではち切れそうな軍服の胸のボタンをひとつひとつ外していく。

その後プルマンNo.3がダルトハを発つまでの間、ナニがあったかはあえて記さない。
ただマスター・スイートの防音は完璧だったことだけは指摘しておく。
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