7 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2005/02/18(金) 20:01:14 [ MSZ8PKC. ]
今日は全くいい日和である。水温も暖かく、撮影には持ってこいと言えた。
ただ問題なのがこの船の揺れ具合だ・・・
今私が乗っているのは、観光船『新海丸』である。異世界転移と呼ばれる
現象から数年、私のような一般カメラマンでも日本領外に容易に出られるように
なったのだ。そこで私は蓄えをはたいて、撮影旅行に出掛けたのである。
旅の最後に乗った観光船のデッキで、私は撮影を行っているのだ。元々
乗り物には一切酔わない質だが、ブレの補正が面倒なのである。
私は海の向こうに見える大陸の写真を撮りまくった。客船の航路とは違った
遊覧航行を行うため、来たときとはまた違った写真が撮れる。
他にも撮影をしている人はいたが、ほとんどがアマチュアカメラマンである。
航路開拓がなされたとはいえ、未だにチケットは高いのだ。だから大半は
趣味の撮影者か、私のような小物プロと言うことになる。
もっともガラの悪いアベックなどがおらず、スムーズに写真撮影を出来ると
言うのは、良いことだと思う。日本にいた時は仕事中に「写真を撮ってくれ」
などとたわけた事を抜かす輩もいたからだ。
8 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2005/02/19(土) 02:26:07 [ MSZ8PKC. ]
写真撮影を丁重に断ると、「ケチジジイ」などと抜かす馬鹿者まで
居た始末だが、ここにはそんな連中は居なかった。宿でグレムリンに
襲われた時は笑うしかなかったが、分解の仕方が綺麗だったので、何とか
組み直しが出来た位だった。
そんな事を思い返しつつ撮影をしていると、下の船室から通路に大量の人が
出てきた。どうやら何かが現れたらしい。私が望遠鏡で視線の先を負うと、
そこには巨大な魚の尻尾が、いくつも水面に突き出ていた。
「人魚だ!人魚が出たぞ!」
これを聞いた私は、今見ていた方にカメラを向けることにした。といっても
特別人魚に興味はない。と言うより、私は動物を撮影しない主義なのだ。
だが背に腹は代えられない。異世界人の写真、それも人魚の物となれば
良い値段が付くのだ。もちろん用途は様々だが・・・
私はとにかくシャッターを切り、全身像も含めた数十枚を撮ることに成功した。
そしてフィルムを交換していると、下の人だかりから黄色い声が上がった。
いい年をした女が騒ぎ立てる所を見ると、恐らくは男の人魚だろう。
男の人魚と言っても、いわゆるクトゥルー神話に出てくる「ダゴン」のような
半魚人型の存在ではなく、上半身は人間である。半魚人はまた独立した種として
存在するらしい。
9 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2005/02/19(土) 03:03:12 [ MSZ8PKC. ]
私が慌ててそちらにカメラを向けると、隣にいたアマチュアらしい
老人の一人が声を掛けてきた。
「慌てているようですが、あれは珍しいものなんですか?」
「ええ、あれは男性人魚の群のようです。繁殖期にしか見られない
大群ですよ。普段は個別に暮らしていて、滅多に群れないそうです」
私は三脚の位置を調整しながら、そう老人に答えた。
人魚の男性個体はその数が圧倒的に少なく、また女性の群とは独立して
生活している。言ってみればライオンやゾウの様な母系社会であるらしい。
繁殖期にのみ女性群と接触をするが、競争はあっても殺し合いはしない。
つまり女性側集団が大きければ、当然男性側集団も膨れあがる。身も蓋も
無い表現をすれば、集団お見合いパーティのようなものだ。
「そうですか。しかしあなた、どこでそれをお知りに?」
「友人に生物学者がおりまして・・・その関係でです」
さっきまでの蘊蓄は、全て友人にして依頼主たる女性からの受け売り
なのだった。要するに人魚の生態を調べるため、実写真を集めて欲しいと
頼まれた時の予備知識である。
「へえー、面白いですね。でもむさ苦しい男を撮って楽しいですか?」
私の言葉を聞いていたのか、若い男が話しかけてきた。口調こそ敬語だが
軽薄な調子なので、余り相手にはしたくない。振り向きもせずに私は
答えてやった。
10 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2005/02/19(土) 03:36:55 [ MSZ8PKC. ]
「友人から頼まれましてね。男の人魚は珍しいから、写真に撮っておいて
くれと」
一応プロであることは明かさない。この手合いは喋った途端に絡んでくる
場合もあるし、仕事の邪魔になっては面倒だからだ。適当に相槌をうって
さっさと離れる事を祈る。
「大変ですね、それじゃあ」
男はにやにや笑いながら去っていく。どうも私自身の趣味だと勘違い
しているらしいが、訂正しようとも思えなかった。若造などどうでもいい、
旅費の足しにはなる写真を撮る方が先決だ。
それにしても男の人魚というのは、とても綺麗である。元々女性体からの
性転換で生まれてくるせいか、顔立ちも端正だ。鱗の色は女性体との
区別のためか、薄赤いラインが出ており、全体の青をよく引き締めている。
被写体としての興味は湧かないが、見ていて不快になる対象でも無かった。
人間、特にさっきの若造などと違って。
しばらく合流した集団を撮っていると、また下層から女の声が響いてきた。
今度は比較的若い女の声だが、魂消るような凄まじい悲鳴だった。しかし別に
何かが襲ってきた訳でもない。
不審に思った私は、声の聞こえた方を望遠鏡で覗いた。するとそこにいたのは、
なんと男同士のつがいだった。
11 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2005/02/19(土) 03:37:50 [ MSZ8PKC. ]
今日はここまでにします・・・眠さで死ねる。
今日は全くいい日和である。水温も暖かく、撮影には持ってこいと言えた。
ただ問題なのがこの船の揺れ具合だ・・・
今私が乗っているのは、観光船『新海丸』である。異世界転移と呼ばれる
現象から数年、私のような一般カメラマンでも日本領外に容易に出られるように
なったのだ。そこで私は蓄えをはたいて、撮影旅行に出掛けたのである。
旅の最後に乗った観光船のデッキで、私は撮影を行っているのだ。元々
乗り物には一切酔わない質だが、ブレの補正が面倒なのである。
私は海の向こうに見える大陸の写真を撮りまくった。客船の航路とは違った
遊覧航行を行うため、来たときとはまた違った写真が撮れる。
他にも撮影をしている人はいたが、ほとんどがアマチュアカメラマンである。
航路開拓がなされたとはいえ、未だにチケットは高いのだ。だから大半は
趣味の撮影者か、私のような小物プロと言うことになる。
もっともガラの悪いアベックなどがおらず、スムーズに写真撮影を出来ると
言うのは、良いことだと思う。日本にいた時は仕事中に「写真を撮ってくれ」
などとたわけた事を抜かす輩もいたからだ。
8 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2005/02/19(土) 02:26:07 [ MSZ8PKC. ]
写真撮影を丁重に断ると、「ケチジジイ」などと抜かす馬鹿者まで
居た始末だが、ここにはそんな連中は居なかった。宿でグレムリンに
襲われた時は笑うしかなかったが、分解の仕方が綺麗だったので、何とか
組み直しが出来た位だった。
そんな事を思い返しつつ撮影をしていると、下の船室から通路に大量の人が
出てきた。どうやら何かが現れたらしい。私が望遠鏡で視線の先を負うと、
そこには巨大な魚の尻尾が、いくつも水面に突き出ていた。
「人魚だ!人魚が出たぞ!」
これを聞いた私は、今見ていた方にカメラを向けることにした。といっても
特別人魚に興味はない。と言うより、私は動物を撮影しない主義なのだ。
だが背に腹は代えられない。異世界人の写真、それも人魚の物となれば
良い値段が付くのだ。もちろん用途は様々だが・・・
私はとにかくシャッターを切り、全身像も含めた数十枚を撮ることに成功した。
そしてフィルムを交換していると、下の人だかりから黄色い声が上がった。
いい年をした女が騒ぎ立てる所を見ると、恐らくは男の人魚だろう。
男の人魚と言っても、いわゆるクトゥルー神話に出てくる「ダゴン」のような
半魚人型の存在ではなく、上半身は人間である。半魚人はまた独立した種として
存在するらしい。
9 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2005/02/19(土) 03:03:12 [ MSZ8PKC. ]
私が慌ててそちらにカメラを向けると、隣にいたアマチュアらしい
老人の一人が声を掛けてきた。
「慌てているようですが、あれは珍しいものなんですか?」
「ええ、あれは男性人魚の群のようです。繁殖期にしか見られない
大群ですよ。普段は個別に暮らしていて、滅多に群れないそうです」
私は三脚の位置を調整しながら、そう老人に答えた。
人魚の男性個体はその数が圧倒的に少なく、また女性の群とは独立して
生活している。言ってみればライオンやゾウの様な母系社会であるらしい。
繁殖期にのみ女性群と接触をするが、競争はあっても殺し合いはしない。
つまり女性側集団が大きければ、当然男性側集団も膨れあがる。身も蓋も
無い表現をすれば、集団お見合いパーティのようなものだ。
「そうですか。しかしあなた、どこでそれをお知りに?」
「友人に生物学者がおりまして・・・その関係でです」
さっきまでの蘊蓄は、全て友人にして依頼主たる女性からの受け売り
なのだった。要するに人魚の生態を調べるため、実写真を集めて欲しいと
頼まれた時の予備知識である。
「へえー、面白いですね。でもむさ苦しい男を撮って楽しいですか?」
私の言葉を聞いていたのか、若い男が話しかけてきた。口調こそ敬語だが
軽薄な調子なので、余り相手にはしたくない。振り向きもせずに私は
答えてやった。
10 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2005/02/19(土) 03:36:55 [ MSZ8PKC. ]
「友人から頼まれましてね。男の人魚は珍しいから、写真に撮っておいて
くれと」
一応プロであることは明かさない。この手合いは喋った途端に絡んでくる
場合もあるし、仕事の邪魔になっては面倒だからだ。適当に相槌をうって
さっさと離れる事を祈る。
「大変ですね、それじゃあ」
男はにやにや笑いながら去っていく。どうも私自身の趣味だと勘違い
しているらしいが、訂正しようとも思えなかった。若造などどうでもいい、
旅費の足しにはなる写真を撮る方が先決だ。
それにしても男の人魚というのは、とても綺麗である。元々女性体からの
性転換で生まれてくるせいか、顔立ちも端正だ。鱗の色は女性体との
区別のためか、薄赤いラインが出ており、全体の青をよく引き締めている。
被写体としての興味は湧かないが、見ていて不快になる対象でも無かった。
人間、特にさっきの若造などと違って。
しばらく合流した集団を撮っていると、また下層から女の声が響いてきた。
今度は比較的若い女の声だが、魂消るような凄まじい悲鳴だった。しかし別に
何かが襲ってきた訳でもない。
不審に思った私は、声の聞こえた方を望遠鏡で覗いた。するとそこにいたのは、
なんと男同士のつがいだった。
11 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2005/02/19(土) 03:37:50 [ MSZ8PKC. ]
今日はここまでにします・・・眠さで死ねる。