自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

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匿名ユーザー

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西暦2019年12月8日 日本海上 海上自衛隊第一輸送隊 輸送艦おおすみ

「で、俺たちがここにいるわけだな」

 プロジェクターとスクリーンの間に割り込んだ旅団長が言う。
 どうでもいいですが旅団長閣下、眼鏡が光を反射して怖いです。

「俺たちの任務は確認するまでもなく単純明快だ、あの忌々しい半島に行って、誰が敵かもわからない状態で基地を作ってくるわけだ。そこで」
「上陸まであと二時間、各員持ち場にもどれ、解散」

 素早く副官が割り込み、旅団長の言葉をさえぎった。

「鮫島君、いい度胸をしているね」
「旅団長殿に任せたら、どうせまたロクでもないことを言い出しますからね」
「ほほう?例えば?」
「交戦法規は簡単だ、捕虜を取るな捕虜になるな、簡単だろ?とかですよね?」
「・・・」
「さあ旅団長かっか?書類が待ってますよ」

 なんか後ろで言っているが、聞こえない聞こえない。
 あの二人、ああ見えて英語はペラペラ、図上演習では無敵、レンジャー徽章持ちで防衛大学の主席と次席だからな、意味がわからんというか何者なんだ


「佐藤三尉殿」
「うん?」

 首を振りつつ会議室を出ると、困惑した表情の三曹が待っていた。

「どうした?」
「それが、外を見てください」
「外?」

 どういうわけだか開け放しになっているハッチを潜り、ラッタルを登って登って登って登ってようやく甲板に出る。
 うん?綺麗な虹色の空じゃないか。

「!!??な、なんじゃこりゃあ!」
「この有様でして、しかも先ほどから海自の連中が妙に騒がしいのです」

 言われてみてみると、工具箱を抱えた整備らしい一団が様々な装置を弄り回している。
 しかもなんだ?浮上直後の潜水艦みたいに双眼鏡を構えた連中があちこちを見ている。
 どういうわけだか天測を試みているのもいる。

「おい」
「なんでしょうか?」
「事情を聞いてきてくれ、俺は艦橋に行く」
「了解しました」



「全ての装置、異常なし!」
「機関正常!」
「艦隊内の通信に異常なし!」
「こんごうより入電、レーダー正常なれど反応なし!」

 うーん、状況は良くわかった。
 とりあえず何が起きてるんだ?

「あ、こんごうより入電、レーダーに反応あり、これより確認する。だそうです」
「どっちなんだ!」「わかりません!」

 艦長が思わず叫ぶのも理解できるタイミングだった。
 しかも相変わらず何が起きているのかがわからない。

「自衛艦隊司令部より入電、状況を報告せよ、以上です」
「わけがわかりませんとでも言っておけ」
「はっ!こちら第一輸送隊、わけがわK」「そのままで報告する奴がいるか!」

 やれやれ、どこにでもこういうのはいるんだな。
 自分の上官である二人を思い出しつつ、俺はやれやれと呟いた。
 しかし状況を報告せよ、とは、随分と冷静な質問だな。
 本土の連中は何か知っているのか?
 俺の疑問には、やはり本土の連中が答えてくれた。



西暦2020年1月13日 隣の大陸 橋頭堡建設地

「施設は仕事が速いなぁ」

 結局上陸してしまった。
 あのあと自衛艦隊司令部から入った情報は、

 1、理由は不明だが、我々と本土では時間が一ヶ月ほどずれている。(本土ではもう新年の8日らしい)
 2、不思議な事に国会議員たちが一人残らず消えてしまったため、防衛省が臨時に日本の指揮を取っている。(指揮ってなんだよ)
 3、自衛艦隊や付近を航行中の船舶とは連絡が取れるが、北は礼文島、南は沖縄、東は硫黄島、そして西は我々を境に連絡が途絶。(何そのご都合主義状態)
 4、我々の進行方向で防空レーダーに奇妙な反応が多数、スクランブルは韓国以外の地形を発見。(へーえ、たいへんだねぇ)
 5、貴官たちに現地での情報収集を命じる。本土は既に食料・燃料が統制状態であり、速やかに関連情報を収集せよ、手段は問わない。(おいおい)
 6、日本国は貴官たちの奮闘に期待する。(おい)

 とまあ、こんなご都合主義にまみれたものだった。
 その後は命令ならばしょうがないってことで、俺たちは現在この謎の大陸(衛星および航空偵察ではそうらしい)に降り立っている。
 漏れ聞く話では、西暦2019年12月8日14:30分の時点で日本付近にいたものが全て来ているらしい。国会議員を除いて。
 衛星軌道を回る人工衛星や外国船籍の船ですら来ているのに、国会議員は一切の例外を許さずに来ていないというのが面白い。

「しかし、施設はさすがだな」

 重機を手足のように扱いつつ、頑丈な設備を構築する施設科を見ていると、感嘆の言葉しか出てこない。

「三尉殿、きちんと周囲を見てください」
「ああ、すまない」

 そう、今の俺の仕事は、トーチカと監視塔(とはいっても鉄骨ででっち上げたもの)鉄条網によって守られた基地の見張りだ。
 いや、より正確には、周辺で背の高い草をひたすらに刈っている部下たちを見守る事だ。
 俺の左右にはMINIMIやM2を抱えた隊員が待機している。
 この情景をわかりやすく説明しよう。
 我々は『歓迎!自衛隊海外派兵部隊!ここに上陸して下さい♪』と看板が立っているかのような、実に上陸しやすい場所に基地を築いている。
 ここはまるで核でも落とされたかのように綺麗に削り取られている湾で、まるでシム○ティで港を作るために地形を整えたかのような場所である。
 海に向かって幅200mほどの細い陸地が延びており、その一番先端に海自の基地がある。
 内陸に向かって倉庫や司令部が立ち並び、我々陸上自衛隊はその海自の基地を守るために、森林の直ぐ隣に駐屯地を目下建設中なのである。
 いやはや、こんな都合のいい地形、探せばあるんだな。
 で、俺の部下たちは、駐屯地を囲むようにして広がっている豊かな草原相手に、殲滅戦を挑んでいる最中なのだ。
 何しろ、これを何とかしない事には直ぐ隣で北朝鮮陸軍一個小隊がマイムマイムしていても全く見えない。

「三尉、貴方の部下の生命以外に興味深いものがあるんですか?」
「申し訳ありません、監視任務を続行します」

 俺を呼ぶ時に殿が外れた時、こいつは心の底から怒っている。
 気をつけねば。
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