自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

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西暦2021年4月14日 10:25 日本本土 防衛省 救国防衛会議 統幕長私室

「統幕長、現場からグスタフの投入要請が来ました。現在航空自衛隊の空爆部隊が空中待機中です」

 副官が室内に飛び込んでくる。
 この世界に来てから吉報というものを聞いた記憶が少ないが、またもや凶報だ。
 聞けば、市街地に突入した部隊にかなりの損害が出ているらしい。
 ヘリ一機撃墜、増強普通科小隊全滅、装甲車両一両各坐。
 甚大な被害である。
 この世界の常識を持った、この世界の敵軍相手では、あと数年は考えられない損害だ。

「そうか、状況が動いたら教えてくれ」

 速やかに退出を促す。

「プランBですね」

 空幕長が尋ねる。
 地上部隊の侵攻のみで解決できればよし、無理ならば包囲殲滅する。
 包囲殲滅といえば聞こえがいいが、要するに包囲した上で砲爆撃で押しつぶしてしまうわけである。

「既に作戦は発動されています。
 情報の流出を物理的に止めるための広域破壊。
 統幕長、今度こそ間違いないと考えて大丈夫なのでしょうか?」

 決済欄のみ未記入で用意されていた命令書に判子を押しつつ空幕長が尋ねる。
 答えを待たず、海幕長へと書類を回す。

「これで駄目ならば米軍に頭を下げるしかないな」

 諦めるように言いつつ海幕長は判子を押し、陸幕長へと回す。

「確認が取れるまでは包囲は解かずにいるわけですから大丈夫でしょう」

 自分で言った言葉を信じるように陸幕長が言い、そして判子を押した書類を統幕長へ渡す。
 書類を受け取った統幕長は、並んだ判子の横に自分の決済印を押した。

「このような事態を引き起こした山田詫狼君は、今頃何を思っているんでしょうかね」
「ああ、そういえばあの文字で今時はタロウと読むんだったな」

 他人事のように言い放つ空幕長に軽い調子で答え、彼はベルで呼び出した副官に書類を掲げて見せた。

「神の信託を受けた気高い狼のように、でしたか?
 最近の若い親が子に付ける名前は良くわかりませんな」
「確か、小説か何かから考え付いたとか」

 呆れたように海幕長が言い、海幕長が言葉少なめに続ける。
 密航を除いて大陸に渡った人間すべてを管理している日本国である。
 特定に時間はかかったが、問題とされる人物は既に確認されている。

「あちらさんでは神の使いだの勇者だの言われているようです。
 親御さんもさぞかし鼻が高いでしょうな、勇者として敵をたくさん殺してますよ」

 吐き捨てるように陸幕長が言う。
 彼からすれば、全く不愉快な話なのだから当然である。

「これで終わらせる。
 勇者様の大活躍はここまでだ」

 副官に書類を手渡しつつ、統幕長は全員に聞こえる声でそう言った。

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