自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

049 (傍編)

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未来  月曜日  20:00  日本国内  某民家  

「まずはこちらの映像をご覧頂きたい。  
どこにイージス護衛艦がいるか、お分かり頂けただろうか?」  

テレビ画面には巨大な港湾施設が映っている。  
大小さまざまな船舶がせわしなく行き来し、上空から見ても巨大な事がわかるガントリークレーンは、ゆっくりと、しかし確実に動いている。  
次第にカメラはズームインし、一隻の護衛艦が映し出される。  
観客たちが、思わず声を漏らす。  

「お分かり頂けただろうか?  
圧倒的な戦力と巨大な船体で知られる現代の護衛艦であっても、この港にかかっては一隻のボートに過ぎないのである」  

カメラ、高速でズームアウト。  
再び巨大な港湾都市が遠景で映し出される。  

「そこで今夜は、この巨大な港湾都市が生まれるまでを、当時の人気番組、日本政府広報からお届けしよう」  


国旗が現れ、ファンファーレのような音楽が鳴り響く。  
画面が切り替わり、一人の自衛官が椅子に座っている。  
初老で眼鏡で小太り、だが、その瞳は画面越しに見ても狂気に満ちている事がわかる。  

「私があそこに行ったのは、西暦2020年代でした。  
今の若い人にはわからないでしょうが、あの頃は本当に大変だった」  

記録映像が流れる。  
テロップにモザイクが入っているが、映像自体は当時ありふれていた、大陸戦線での報道映像である。  
突進する戦車、上空を乱舞する戦闘機、ミサイルを発射する護衛艦。  
映像は再び自衛官に戻る。  

「当時陸上自衛隊の施設科にいた私は、司令部から旧王都、今のあの町を復興させるように命じられました。  
長く続いた連合王国の支配によって旧王都は腐敗しきっていました。  
正直言って、どこから手をつけてよいのかわかりませんでした」  

映像が切り替わり、薄汚い街並みが映し出される。  
崩れた建物、狭い路地、立ち枯れた木。  
ナレーションが入る。  

「当時の無線交信が記録に残っている。  
第一次偵察部隊からの通信である」  


<酷い!酷い有様です!直ぐに衛生と重機を!あちこちに病人と死体が転がっている!!酷い!あんまりだ!!>  
<落ち着いてください。ゆっくりともう一度現状を報告してください>  

最前線の隊員と、指揮所の女性自衛官の交信が再生される。  
画面が切り替わり、中年の域に入った女性自衛官が画面に現れる。  

「とにかくあの時は落ち着かせるのが一番だと考えました。  
通信の相手は極度に興奮していて、このままでは危険だと考えたからです」  

画面が切り替わり、前進を続ける車列のイメージ映像が表示される。  
再度ナレーション。  

「この後増援部隊が到着するまで、彼女は前線部隊と交信をし続けた。  
増援部隊到着後に敵の残存兵力の攻撃を受けた事を考えると、まさに間一髪だった」  

画面が切り替わり、一人の二等陸尉が現れる。  

「当時はとにかく混乱していて、通信機に叫ぶのが精一杯だったんです。  
おかげで全体の計画が遅延してしまったりして・・・  
もう二度と、取り乱して報告したりはしないよ」  


ナレーション。  

「戦闘と計画的な再開発によって、旧王都は大規模な外科手術が継続的に行われた。  
それから20年、ゴルソン大陸の一角には、元気に発展を続ける巨大都市の姿があった」  

航空写真。  
それは次々と拡大され、大陸の一角からそれを埋め尽くす一つの都市が現れる。  
会場からは、観客たちの漏らした声が聞こえる。  

「現在もこの巨大都市は、そこに暮らす人々と共に、元気に成長を続けている」    

映像がスタジオに切り替わり、椅子に着席した男女が映し出される。  
そのうちの一人、年配の女性が言った。  

「それでは今週のザ・ベストです!」  

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