自作キャラでバトロワ2ndまとめwiki

心のかたち人のかたち

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集

心のかたち人のかたち ◆ASQQNYexes


 多聞クンの肩越しに、低次元女の笑顔が見える。
 奇形じみた顔かたちの低次元女が、操の多聞クンに媚びてるのが見える。
 低次元女って気持ち悪い。目が異様に大きくて、しかも離れすぎていて。
 そのうえ、口にする言葉は「信じれば夢は叶う」「心を強く持てば、絶対に負けない」
 「生きてるって、それだけで素晴らしいこと」「みんなで幸せになろうよ」……

 無神経だよね、こういう前向きな言葉って。
 無邪気な顔で、笑いながら、胸を張ってそんなことを言うなんて。イラッとする。

 いくら夢見ても、いくら信じても、操の体はもう元には戻らない。
 操が生まれ持っていた人間としての全身のパーツは、この世の何処にも存在しないから。
 心なんていう、どんな形をしてるのかすら分からないモノを強く持てっていう考え方も、電波臭がしてイラっとくる。
 そういう見えないモノを強くなんかしなくても、操は強化サイボーグなんだ、普通にしてれば負けないし。
 そんな操が多聞クンやクラスのみんなを殺しても、この低次元女は微笑むんだ。
 全身に埋め込まれた機械に生かされているだけなのに、「生きてるって素晴らしい」って笑うんだ。
 何が素晴らしいんだろう。操には全然分からないよ。
 なのに、置いてきぼりにされた操の前で、「みんなで幸せになろうよ」なんて言い出して。
 そんなこと言われても、操は“そっち側”には行けないのに。
 幸せになる“みんな”の中に操は入ってないんだな、ってただ思うだけなのに。

 操は人間じゃないから、多聞クンを殺そうとしたから、“みんな”の幸せを邪魔するから、
 幸せになれる“みんな”の中に入っていないこと自体は、なんとも思わないけどね。
 ただ、心身ともに奇形じみた低次元女なんかが多聞クンに微笑みかけるのが許せない。
 安物の飴玉を万能薬のように賛美する、そのスタンスが許せない。
 そんな低次元の存在が多聞クンの視界に入るなんて許せない。
 多聞クンの思考に入り込むなんて許せない。多聞クンの時間を使わせるなんて許せない。

 操の脳内劇場で解体ショーが始まった。
 多聞クンを誘惑した低次元女の腹を裂き、子宮と外性器を抉り取る。
 取り出したブツは、低次元女を嫁と呼ぶ豚さんたちが劣悪遺伝子の排泄に使うんだ。
 脳の不自由な豚さんは「本物そっくりの使い心地ッス、ブヒブヒ」って喜んでる。
 良かったね、切り取られた人体の一部なんてただの生ゴミなのに、誰かの役に立って。
 幸せになる“みんな”の中に入れないはずの豚さんまで、幸せにすることが出来て。
 なのに低次元女は泣いてるんだ。なんでなのかな。一体何が不満なのかな。
 操は低次元女の願いを叶えて、そして足りないところを補ってあげたのに。
 今度は低次元乳房を切り落とす。ゴム鞠みたいにまんまるの、形も大きさも不自然なおっぱい。
 それを別の豚さんにあげる。“みんな”の中に入れない人間未満がまた数匹、幸せそうにブヒッと笑う。
 幸せがいっぱい。なのに低次元女の仲間たちが操を狂人扱いする。
 操は全人類をヤク漬けにした。ダウン系ドラッグのもたらす多幸感に包まれて人は皆、夢の中。
 争う気力なんて誰にもない。みんなが幸せを実感できる理想の世界、お花畑in脳内。
 誰も彼もが廃人だけど、でもいいよね、生きてるってそれだけでとても素敵なことらしいし。
 なのに低次元女は怒るんだ。許せないよね。せっかく操が願いを叶えてあげたのに。
 低次元女って「私はみんなを受け入れます」みたいなスタンスのくせに有り得ないくらい高望みしててイラッとくる。
 そんな低次元女なんかに多聞クンの脳が汚染されないように、操が守ってあげるんだ。
 操はこの低次元女の解体ショーの一部始終をケータイ小説として書き起こすことに決めた。
 メールで多聞クンに送るために。多聞クンの脳を守るために――

「――問芒、お前も読むか?」

 不意に聞こえた多聞クンの声が、操の思考をぶった切る。
 目の前には多聞クンの顔。ここは診療所の待合室、椅子に腰を下ろした多聞クンが操の方を振り返り、漫画雑誌を差し出していた。
 多聞クンってさ、悪ぶってるけど純粋だよね。だって操のことを信じ切ってるんだもん。
 操は低次元女が大嫌いなのに、低次元女の載ってる雑誌を差し出したりして。
 それってさ、じっくり読んでいいってことだよね。解体ショーのネタを探していいってことだよね。

 それだけで、低次元女のウザさが気にならなくなった。
 所詮は低次元女。三次元から爪弾きにされた豚さんたちは「二次元の嫁」なんて呼んでるみたいだけど(笑)、
 『彼女』は多聞クンの視線も言葉も愛情も何一つとして認識できない虫けら以下の存在なんだ。
 でも、だけど、低次元女の存在を許せるようになった途端に、心細さが甦る。
 さっきまでは思ってた。低次元女の解体ショーをケータイ小説化するんだ、メールで多聞クンに送るんだ、って。
 だけど、それってこの殺し合いから無事に帰還することが前提なんだよね。
 忘れてた。今の操には、ケータイなんてなかったんだ。
 当たり前だと思っていたものを失くし続ける操に向かって、多聞クンが屈託なく笑った。

「この号、発売前に回収になって、ほとんど出回ってなかったんだぜ。
 驚いたな、まさかこんな場所でお目にかかれるなんてな」
「むぅ。これって男のコ向けの雑誌じゃん」
「漫画を読むのに男も女も関係ねえって。読んでみろよ、気晴らしにはなるだろ」

 片手で差し出された漫画雑誌を操は両手で受け取った。
 思い出したんだ。そういえば多聞クンって学校でよく漫画を読んでたな、って。
 多聞クンの好きなもの、その魅力を知りたいと思った。
 多聞クンが夢中になるもの、その楽しさを知りたいと思った。
 低次元女のウザさとか、解体ショーのネタ探しとか、そういうものは気にならない。
 ただ、多聞クンの好きなものに近付けば、もっとうまく人間らしさを保てるようになると思ったんだ。

 多聞クンの横に腰掛ける。多聞クンは立ち上がり、窓の向こうに視線を向ける。
 灯りの消えた待合室は暗い。光と呼べるものは、窓から差し込む月明かりだけ。
 コマをひとつひとつ追ってみて初めて、ああ、多聞クンはこんなに暗い場所で漫画を読んでいたんだと気付く。
 操の視力は機械で強化されているから、これくらいの暗さ、なんてことはないんだけど。
 多聞クンの目には、かなりの負担だったに違いない。なのに平然と振舞って。
 視界の片隅で多聞クンがデイパックの中を確認してるのが分かる。
 多聞クンは何も言わない。操の読書を邪魔しないよう気を使ってくれてるのかな。
 でも無言だと逆に気になるんだよね。言いたくないものが入ってたんじゃないかな、って。
 ほんの一瞬、多聞クンが息を呑んだのを、機械化された聴覚がしっかり捉えているだけに。

「……なぁ、問芒。俺、ちょっくら診察室のほうを見てくるわ」
「じゃあ操も一緒に行く。多聞クンひとりじゃ危ないし」
「や、お前はここで休んでろ。軽く様子を見てくるだけだからさ」

 多聞クンの低い声と、診察室のドアの軋む音が重なった。
 ……ホント、多聞クンって嘘をつくのが下手だね。
 何気ない風を装っているけど、多聞クンの声色はさっきまでと全然違うんだ。
 緊張している感じがする。警戒している感じがする。
 操に何か、隠しておきたいことがあるのかな。声が全然笑ってないよ。
 診察室のドアが閉まり、多聞クンの足音が遠ざかるのを確認してから、操はそっと立ち上がった。

 隠し事。支給品に関すること。診察室に関係のあること、或いは単独行動が必要になること。
 操や他の誰かに危害を加えるようなこと、じゃないんだろうな。むしろ逆、なんだと思う。
 多聞クンはただ、操が人間じゃないってことを知らないだけで――
 そんなことを考えながら見るともなしに窓の外を眺め、次の瞬間、血の気が引いた。

「無色、クン……」

 肉眼でならきっと、遠くに誰かがいるということくらいしか分からない。
 でも人間のものではないこの目には、そこにいるのが誰なのか、はっきりと見えるんだ。
 診療所に背を向けて立つ無色クンと、彼のほうに駆け寄っていく秋乃サン。
 そっか、そうだったんだ。遠くで動くふたつの人影。多聞クンはこれを見たんだ。
 それで、誰かがここに来たときのために、診療所内の薬や設備を確認しに行ったんだね。
 そういえば、多聞クンが息を呑んだのは、デイパックの中を確認してしばらく経ってからだったっけ。
 やっぱり多聞クンって悪ぶってるけど純粋なんだね。操とは、違うんだ。

 漫画雑誌をそっと椅子に置き、診察室のドアを開ける。
 懐中電灯の光を頼りに戸棚の中を眺めていた多聞クンが振り返り、操を見る。
 ばつの悪そうな、自尊心を少し傷つけられたような、そんな表情。
 操は歓迎されていない。それは予想の範囲内だったけど。

「おい、問芒。お前、何があったんだ?」

 多聞クンは不可解なものを見るような、それでいてどこか気遣わしげな顔をした。
 やめて。そんな目で操を見ないで。操は変じゃない、大丈夫なんだから。
 一歩ずつ、着実に、操は多聞クンと距離を詰める。

「別に。ただ……、多聞クンってさ、彼女とかいるのかなって。気になったんだ」
「お前、急に何言い出すんだよ。いねぇって、彼女なんて」
「ホントかな……」
「嘘ついてどうすんだよ。この格好を見りゃ分かるだろ、女とか怖がって近寄ってこねぇって」
「じゃあ、さ。操が多聞クンの彼女になってもいいよね」

 返事も聞かず、操は多聞クンに飛び掛った。
 多聞クンの手から懐中電灯が転げ落ち、縦横無尽にスピンする。
 淡い光がぐるぐる回りながら壁を、天井を照らし出す。
 まるで部屋そのものが回転しているかのようだった。
 あっという間の出来事だった。操は多聞クンを押し倒していた。
 床に倒れた多聞クンに操は馬乗りになっていて、その両手を押さえつけていた。

「おい、お前……」
「だって操は多聞クンの彼女だもん」
「あのなぁ。お前、こんなことしてる場合じゃねぇだろ」
「じゃあ何するの? そんな風に反抗してるの、きっとキミだけだよ」
「いや、お前もいるだろ。いいから放せ。手荒な真似はしたくねぇんだ。それにヤベェだろ、こういうのは。ガキができたら――」
「どうだっていいよ。どうせ生きて帰れないんだから」

 馬鹿だな。何言ってるんだろう。
 多聞クンは操が守るよ、だから大丈夫って、そう言いたいはずなのに。
 操はぎゅっと目を閉じた。多聞クンの顔を見たくない。
 多聞クンの言葉を聞くのも嫌で、自分の唇で口を塞いだ。
 でも、これからどうしよう。誰かとこういうことをしたことなんてない。
 それ以前に、操は改造人間なんだ。心臓以外のすべての臓器が機械に置き換わっている。
 操には生殖機能なんてないのかもしれない。こういうことをすること自体、無理なのかもしれない。
 でも、やめられない。やめられないんだ。だって無色クンを見てしまったから。
 もし多聞クンが無色クンの姿を認め、その本性に気付いたら、きっと危険な目に遭うだろう。
 多聞クンは操が守る、だから大丈夫、そう言いたいけどやっぱり無理だ。
 だって操は無色クンの正体を知っているから。

 無色クンは改造人間。操はそれを知っている。
 でも多分、無色クンは操がお仲間だってことを知らないと思うけどね。
 どうして操は知ってるのか。だって同じ人に改造されたから。操のほうが先に改造されたから。
 操から得た結果を元に、無色クンの仕様は決定した。具体的な内容は知らないけどね。
 ただ、これだけは言える。操の弱点や欠陥は、無色クンには存在しない。
 だから多聞クンを行かせたくない。無色クンに気付いてほしくないんだ。

 懐中電灯の転がる音は、もう聞こえなくなっていた。



【B-6 診療所(診察室)/一日目・黎明】
【男子八番:国分寺多聞】
【1:俺(ら) 2:お前(ら) 3:あいつ(ら)、○○(名字呼び捨て)】
[状態]:健康、蝶野に対しての怒り
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品(確認済み)
[思考・状況]
基本思考: 蝶野杜夫を殴る為に行動する
0:…抵抗しないとマズいよな。
1:戦闘はなるべくしたくない。
2:…診療所に人が来たときのために備えねば…



【女子十三番:問芒操】
【1:操(達) 2:君(達) 3:皆、○○クン(下の名前)】
[状態]:健康
[装備]:アイスピック(ニーソの下に隠したまま)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本思考: 国分寺多聞とともに行く。
0:一応改造された体だけど、大丈夫かな。
1:多聞クンを無色クンに会わせたくない。
2:診療所にはやっぱ薬あるみたいだけど…



投下順で読む

Back:利用する者される者 Next:未投下

時系列順で読む

Back:利用する者される者 Next:未投下

021 すれ違い通信、成功? 国分寺多聞
021 すれ違い通信、成功? 問芒操

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

目安箱バナー