『バオー・リスキニハーデン・セイバー・フェノメノンッ! 』
「MUUUUUUUUAAAAHHHHHHHHHHHッ! 」

二人の戦士の咆哮を合図と呼んでいいものだろうか。
呼応するように、走り出した男たちはお互いの体躯をぶつけあう。
片や覚悟を決めた青年、橋沢育朗。
片や覚悟の塊のような生物、ワムウ。
火蓋は――切って落とされた。

「むぅ……この力強さ! 」
「バルバルバルバルッ! 」

ワムウはバオーから伝わってくる迫りくるものに感嘆していた。
数時間前に対峙したときとは比べものにならないほどの覇気。

「なるほど、たしかにあの時からは変わったようだ」
「バルバルバルバルバルバルッ! 」

バオーはさらに力を込めてワムウを押しこんでゆく。

「ツェェェェアァッ! 」

しかしワムウも負けじとバオーの身体を弾き飛ばした。
バオーは空中に放り出されるも、華麗な身のこなしで難なく着地した。
地に降り立った際、バオーはギラリとワムウを見つめる。
それはバオーという男が!存在が!ワムウを確実にとらえたことを意味する。

「その刃……カーズ様の『光』の流法(モード)、"輝彩滑刀"の流法に似ている!」

ワムウは構える。面白い、と彼は素直に思った。
まるで相手は自分の主であるカーズと同じ戦法をとるではないか、と。
ワムウはかつてカーズと手合せした太古の記憶を久しぶりに思い出そうとしていた。

「少年よ…わたし自身はおまえに恨みも怒りもない!だがわたしは戦士!
 闘いこそがすべて…殺りくこそ生きがい……………」

ワムウは両足にグッと力を込めると、上空へと大きく跳躍した。

「バル! 」

バオーも負けじと空へ高く跳んだ。

「殺らいでかッ 『バオー』! 」

だがワムウの跳躍力が『バオー』を上回ったッ!
そしてワムウは落下するとみせて回転脚で蹴りにきた。
このままではワムウのあびせ蹴りをまともにくらってしまう。
だが、ワムウはその行為を咎めなければならなかった。

『バオー・シューティング・ビースス・スティンガー・フェノメノン! 』

幾重にも発射されるバオーの髪の毛がワムウを襲う。
そしてこの髪はただの髪の毛ではない。あのバオーの髪の毛なのだ!
バオーの髪の毛は硬質化し、ぬけると物質の成分が変質し動物の体温で自然発火するのだ。
突然の発火には流石のワムウも両腕を振り回して炎を鎮火させるしかなかった。

「ムウウッ! NOGAHHHBA~! 今度はエシディシ様のような……」

そして、再び地面に着地する二人。
とはいえ着地したあとの硬直時間はワムウのほうが明らかに長かった。
バオーはそれを見逃さない!ワムウはまだ火にたじろいでいる。明らかなチャンス。

「バルバルバルバルバル! 」
「止むを得ん」

バオーの右腕の刃が、

「『風』の流法」

ワムウの頭上に降りかかる、

「神砂嵐ッ! 」

その時だった。

☆ ☆ ☆

双葉千帆とプロシュートは茫然と立ち尽くしていた。
橋沢育朗の心配よりも、先に彼らの心を掴んだものは衝撃。

「竜巻……」

どちらがそう口にしたかはわからない。しかしそれが彼らの精一杯であった。
そう。まるで竜巻のような嵐がワムウの両腕から吹き出し周囲の地面を大きく抉ったのである。
そしてバオーは闘技場から大きく吹き飛ばされ場外へと消えたかのように見えた。

「は、橋沢さんは!? 」

ようやく双葉千帆が現状の把握をしかけたころ。
プロシュートはスッととある場所を指差した。
暗闇だが確かにわかる。そこにはバオーが突っ伏して倒れていた。
そして倒れていたバオーをワムウが見下ろしていたことも。

「よもやこんなにも早く神砂嵐を使うことになるとはな」

ワムウがバオーの頭を掴み、持ち上げる。宙吊りの状態だ。
バオーは気絶しているのか、だらりとしたまま動かない。

「……?」

この時、ワムウの頭にはひとつの疑問が浮かんだのだが、その疑問はすぐにかき消された。

「まあいい。起きろ。それともこのまま貴様は敗者になるのか? 」

その疑問をかき消したのは、静かな怒り。
まさかこの程度で終わってくれるわけではあるまいな、という望み。
あれだけ吠えた少年戦士の実力がこの程度のはずがない、と。

「……バル」
「MU?」

それは事実であった。
バオーは、橋沢育朗は、まだ死んではいなかったッ!
自分の頭を掴んだワムウの右手首を両手で掴み叫ぶ。

『バオー・メルテッディン・パルム・フェノメノンッ! 』
「なんだと!? 」

次の瞬間、ワムウの右手首がドロドロのシチューのように溶け始めた。
ワムウは知らない。
"バオー"そいつに触れることは死を意味することを!

「バルバルバルバルバルバル!」

ワムウの右手が完全に溶けたために、バオーはワムウのわし掴みから解放される。
バオーの動きは止まらない。再び右腕からセイバーを出現させる。
狙いはワムウの頭部。
振られた一刃はワムウの両目に同時に食い込んだ。

「バルッ!!!! 」

そして水平一文字にバオーの腕が振り抜かれる。

「ま…まさかこんなことが………なぜ…そんなバカな」

頭部を大きく損傷したせいか、ワムウはそのままうつぶせに倒れ伏した。
前回とは大きく違う。今度はワムウがバオーの前に頭を下げる番だった。
なぜならば今のバオーは、あの頃とは違う。恐怖を克服しており、覚悟が違う。

「決まったな」

バオーがふと振り返ると、そこには立会人と見届け人がいた。
双葉千帆とプロシュートであった。

「この勝負、橋沢育朗の勝利だ」

プロシュートは両手を肩まであげ、勝敗を述べた。
その言葉に反応するかのように、バオーは己の変身を解いていく。
バオーは橋沢育朗の姿に戻り、深々と二人に一瞥した。

「ありがとう双葉さん、プロシュートさん」

千帆は優しく笑い、プロシュートはケッと返した。
プロシュートにしてみれば、肩すかしもいい所であった。
あれだけ発破をかけた少年が、こんなにも強いとは。明らかに自分より強かった。
これでは自分がまるでピエロではないか、と毒つきたくもあった。

「なぁ橋沢育朗。おめーがそんなに、その……なんだ。猛者だとは思わなかったよ。
 並のスタンド使いじゃ歯が立たねえ……いや、お前ならターゲットを倒せるかもしれねぇ」
「それはどういう意味でしょうか」
「いやなんでもねぇ。とりあえずだ」

――その刹那であった

最初に気がついたのは誰であったろうか。プロシュートか千帆か育朗か。
ほぼ三人同時であったかもしれない。三人の誰かが叫んだのは間違いなかった。

「ワムウがいないッ! 」

☆ ☆ ☆

ワムウの消失。それは三人の平和だった状況を一変させた。

「気をつけろ育朗、千帆!奴はまだ死んでなかった。何をしてくるかわかったものじゃねえぞッ! 」

これは新手のスタンド使いか、それともワムウの仕業か。
そんな風に考えるのはスタンド使いの常だ。
答えは、意外にもあっさりと見つかった。

「な…なまじ目が見えたから」

ワムウの声である。

「視力にたよっていたから……」

出所がわからぬ声は、三人のすぐ側から聞こえていた。

「貴様に虚をつかれた」

その出所とは――

「育朗ッ! お前の腹だァァァーーーーーーーz___ッ! 」

プロシュートが吼える。
ワムウの上半身が橋沢育朗の腹から"生えて"いた。
その摩訶不思議な光景に、双葉千帆は口に両手を合わせるしかなかった。
『柱の男』一族は、他の生き物の体の中に潜り込める。
ワムウは三人の一瞬のスキをついて、橋沢育朗の体内に入っていたのだ。
そう、決闘はまだ終わっていなかった。

「これからはこの角で明かりなくして『風』だけを感じてものを見よう」

ワムウの額から巨大な一本角がそびえ立つ。
あれだけの攻撃をバオーから受けたはずのワムウは、なぜこんなにも早く立ち直ることができたのか。
それは彼が真の格闘者だからである。
バオーから一連のダメージを受けたショックから立ち直れる精神の強さを持っているからだ。

一流のスポーツ選手には『スイッチング・ウィンバック』と呼ばれる精神回復法がある!
選手が絶対的なピンチに追い込まれた時、それまでの試合経過におけるショックや失敗、恐怖を
スイッチをひねるように心のスミに追いやって闘志だけを引き出す方法である
そのときスポーツ選手は心のスイッチを切りかえるため それぞれの儀式を行う
『深呼吸をする』『ユニホームや道具をかえる』などである
ショックが強いほど特別な儀式が必要となるが………!

ワムウのスイッチはッ!
己の両目をつぶしてしまうことッッ!
それはまさしく、バオーがトドメとしてワムウに食らわせたセイバーの一撃ッッ!!
ああッ! バオーの最後の一撃はワムウの気持ちを切りかえさせるスイッチとなってしまっていたッ!

「もう逃がさんぞ。零距離だ。風の流法、神砂嵐」

この時コンマ数秒の出来事。それは何百分の一秒間の闘いだった。
橋沢育朗は考える。

『まずいッ! 今度はワムウの神砂嵐をよけることはできないッ 』
『周囲に双葉さんとプロシュートさんがいるッ! 』
『ぼくがよけても彼らにも被害が及んでしまうッ! 』
『二人を突き飛ばすか!無理だッ!その加速と衝撃に彼らの体は耐えられない!』
『三人にさっきの神砂嵐が直撃するッ!』
『そうだ!間に合うか!?しかしヘタすれば大失敗だッ!』
『やるんだッ! やるしかないッ』

橋沢育朗は――信じられないほど冷静な判断をした。
なんと彼は自分の腹から生えているワムウを両手で掴み

「ウオオオオオオーーーーム!! 」

そのまま無理やり自分の身体からワムウを引っ張ったッ!
自分の何倍も体格のあるワムウを、体重115キロもあるワムウを!
あの大男のワムウを育朗は持ち上げて引っこ抜いたのだッ!

「――嵐ッ!!? 」

他の生物と一体化できる特技は、ワムウ自身の意思によって決まる。
だが育朗のあまりにも予想外の行動にワムウは思わず一体化を解いてしまった。
ワムウが驚く間もなく、彼はバオーに持ち上げられてしまったのだッ!
育朗はバオーの『力』を出した。変身もしていないのに『武装現象』が出現したのだ。
一日一日彼の体は確実に進化している。無敵……彼はあと数日で無敵になるであろう。

「うおおおお」
「きゃあああ」

ワムウの神砂嵐の直撃は免れたが、その余波を浴びて吹き飛ばされるプロシュートと千帆。
二人はそのまま近くの壁に激突し、それぞれその場に倒れた。
これでも常人であれば充分なダメージだが、死に瀕していないだけまだマシである。
間一髪で死から免れた二人に少し安堵しつつ、育朗はワムウを投げ飛ばした。

「柱の男!決闘の続きだ!行くぞ!おまえたちの"所"にッ! 」

育朗は投げ飛ばしたワムウに向けて、右手の拳を握りつきつける。

「ぼくはおまえらにとって脅威に来訪者となるだろう! もう今までのぼくじゃない! 」

地面に叩きつけられたワムウは、その言葉に答えるかのように問う。

「それは……我々柱の一族の"高み"を脅かすということか?
だとすれば、お前はカーズ様へも脅威となりうるということか。
 ならば俺は、お前をなんとしても倒さねばならぬ。戦士として、柱の一族として」

その言葉に育朗は、再びバオーに変身することで答えた。

「バルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルッ! 」
「ようこそ来訪者!ならば俺も応えよう! 闘技・神砂嵐ッ! 」

二人の激突。
しかし、ワムウはまだバオーの全てを知らない。

『バオー・ブレイク・ダーク・サンダー・フェノメノンッ! 』

高圧電流60000ボルトだッ!

「SYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッ! 」

自ら視力を断ったワムウはッ!風の動きをよみ!空気の囁きを聞き!
レーダーのようにバオーの呼吸のうねりをとらえるのだ!!
ところがそれを読み取るワムウの角は避雷針となり、バオーの電撃を一点に集める!
ワムウの神砂嵐は『風』ッ!しかし『風』は電気と相性がいい。
雷雲がこの世にあるように、『風』が『電気』をかき消すことは無いッ!
バオーはワムウに二度も勝った!!

「な、なんということだ。このワムウ……なんてざまだこのワムウ!
 一万二千年を生きた肉体が、こんなに、無残に、なりさらばえて可哀想によ………」

しかし、ワムウは!ワムウの精神は!

「このワムウ…敵を楽に勝たせる趣味はない…受けた『傷』も我が肉体!
 今までの『ダメージ』も我が能力!全てを利用して…勝利をつかむッ! 」

まだ折れてはいないッ!

「そして我が『風の最終流法(ファイナルモード)』!!『渾楔颯』」

『渾楔颯』――ワムウの最終流法!
姿を透明にする時使った管より逆にぼう大な量の風をとり込み、肺の中で超圧縮させる!
そしてカミソリのような極限に狭いすき間から超高圧で吹き出す……いわば「烈風のメス」!
しかし!風の高速圧縮にともなう摩擦や熱はいくらワムウといえど……………!
その肉体は耐えきれずどんどんくずれていくのみ!しかしその無惨なる姿は美しい!

「バルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルッ! 」

その烈風のメスの勢い、切れ味を見てバオーが最初にとった行動はッ!
先ほど神砂嵐の余波を受けて吹き飛ばされたプロシュートと双葉千帆の安全の確保だった!

『双葉さん!プロシュートさん! 』

迫りくる風の刃を、その身をもって受け止めるバオー。
バオーは倒れている二人を、上からかばいながら伏せる。渾楔颯の刃はそれでもお構いなしに三人を襲う。

「バルルバルル! 」

二人は立会人&見届け人とはいえ、これは自分とワムウの決闘である。
彼らを死なせるわけにはいかない。

「バルバルバルバルバルバルバル」

しかし……ああ、なんということだろう!
ワムウの風の刃は、バオーの身体を貫通し千帆とプロシュートの身体も傷つけていたのだ。

「ウオオオオオオオオオオム」

バオーは右手の爪で唇をブツリと切り裂くと、そこから垂れる血を千帆とプロシュートに飲ませた。
バオーは感じていた!千帆とプロシュートのかすかな生命のにおいを!今なら『バオー』の血で傷を治せる!
バオーは考えていた。誰に誓った?自分に誓った。この決闘を勝つと!望みは捨てないと!
自分は最強の生命力を持った生物なのだから!

「バルバルバルバル!」

プロシュートと千帆を安全なところまで運ぶと、バオーはセイバーを再び出現させる。
そしてバオーは駆ける。駆ける。駆ける。駆ける。駆ける。駆ける!

「こいッ!バオーッ! 」

ワムウの咆哮に応えるかのように、バオーは走る。
せまりくる風の刃をくぐり抜け、バオーは一気にワムウとの距離を詰め、両手から電流を放った。

「ブレイク・ダーク・サンダーッ!! 」
「うおっ……なん…のこれしき…」

間髪入れず右腕のリスキニハーデン・セイバーを、べりべりと腕からはがしワムウに投げつけたッ!

「セイバーッオフ! 」
「うおお……」

セイバーは見事ワムウの頭部に突き刺さった。
バオーには、まさかの攻撃で完全にワムウがたじろいでいるように見えた。
バオーは思った!『ワムウ!このままおまえのにおいを直接止めてやるッ!』と。
バオーはもう一度、直接ワムウの頭部へとその左腕の刃を叩きこもうとした!

「バルッ!? 」

ワムウは、その瞬間を見逃さなかった。

「『バオー』……………」

ワムウの左手が、バオーの額にずぶずぶとめり込んでいた。
実力あるものほど、決着を早くつけたがるものだ。ましてや実力差があるならなおのこと。
バオーは確かに成長した。心も体も。
先に手合せした時とは違う。今のバオーはワムウを越える存在やもしれない。
しかしそれが一筋のスキを産んだ。油断していたわけではないッ!
直接、ワムウとの決闘に決着をつけようとしたのがバオーのミスッ!

「貴様を………討つ」

ワムウの覚悟。それは自らを犠牲にした最終流法を使うことで、己の命を賭けに使ったこと。
そして、最初にバオーの頭を掴んだ時に感じた謎の正体を突き止めるのを選んだこと。

「貴様を…………葬るッ! 」

ワムウは力を振り絞って左腕を振り抜けた。
中に潜んでいた寄生虫バオーもろとも、バオーの頭部の半分が吹き飛んだ。
二人のあずかり知らぬ内に、寄生虫バオーは粉々に消し飛んだ。

☆ ☆ ☆

「はっ! 」

プロシュートが目を覚ました時、すでに決闘は終わっていた。
彼の目に映る光景は、ひとりの男がもう一人の男を抱えて佇んでいる様だった。
それがワムウが橋沢育朗を運んでいるように見えるのに、時間はかからなかった。

「目覚めたか」

ワムウは険しい顔のまま、抱いていた少年の身体をゆっくりとおろした。
プロシュートは勝敗の結果をあえて聞かなかった。

「まだ息はある」

片やワムウは全身にヒビが走っており、両目も潰れたまま。既に崩壊し始めている。
片や育朗は顔から上の頭部の半分が無くなっていた。
今回の戦闘がどれほど凄惨を極めたかが物語られていた。

「育朗!しっかりしやがれ! 」
「プロ……シュートさん……無事だったんですね……双葉さん、は……」
「ああ!?……大丈夫だ。眠ってるだけだ」
「よかっ……た……」
「ふざけるな! 『守る』んだろう!? さっさと立ちやがれ! 」

こんな状況でも他人を心配している少年に、プロシュートは目頭が熱くなった。
ギャングとして生きていた自分が、とうの昔に捨てたはずの感情。
やさぐれる前のプロシュートの純粋な気持ちが、甦りつつあった。

「見事であった。このワムウ、貴様の成長をしかと見たぞ」

ワムウがニヤリと笑う。

「しかし、もう時間切れだ」

ワムウの身体は渾楔颯によって全身にヒビが入っていた。
ボロボロと朽ち始めている箇所もあった。渾楔颯を使わなければこんなことにはならなかった。
ワムウは戦士としてすごかった。彼には渾楔颯を止める理由がなかった。

「悔いはある……JOJOたちとの決着、カーズ様との邂逅、まだまだ俺にはやらなければならない事がある。
 それが出来なくなってしまったのは非常に残念だ」
「繋ぎ……ま、す……」
「ああ!ワムウッ!俺"たち"が繋ぐッ! 俺"たち"がお前の分も"繋いで"やるッ! 」

プロシュートは双葉千帆と橋沢育朗に目線を配りながら叫んだ。

「橋沢育朗……私は――」

ワムウがそう言いかけた時。
彼の身体が散り散りになり風へ乗って飛んで逝った。

ワムウは、風になった――
彼の最後の言葉は聞き取れなかった。
しかし、その言葉が何なのかは、彼らにはどことなくわかったような気がした。

「育朗よ、ワムウは最後になんて言ったんだろうな……」

あえて育朗にそう聞くプロシュートはその時、ふと妙なことに気がついた。

「育朗? 」

育朗がバオーの姿から元に戻っても恐竜化の気配が無い事に。
恐竜化した身体をバオーが細胞レベルで上書きする事により完全な発症を抑えているのではないか?
そうにしては、育朗の身体の負傷が治る気配がない。
プロシュートは応急処置セットや簡易治療器具を慌ててバッグから出そうとするが――

「…………ばかやろう……」

橋沢育朗は、まるで静かに眠っているかのようだった。

☆ ☆ ☆

「う、ん……」

双葉千帆は目を覚ます。
ワムウの神砂嵐の余波を受けた彼女は、吹き飛ばされて壁に撃ちつけられた時に気絶していた。

「あれ……」

彼女はプロシュートにおんぶされていた。

「育朗さんと、ワムウさんは……? 」

彼女はワムウとバオーの対戦を、途中から見ていない。そして育朗の最後も。

「死んだよ」

プロシュートの冷静な返答に、千帆は黙るしかなかった。
千帆はプロシュートの背中で、想像するしかなかった。

「……この勝負は、引き分けだ」

風の戦士と、怪物の戦士が闘い続ける、熱き血潮たぎる闘いを……


【B-4/1日目 夜中】
【プロシュート】
[スタンド]:『グレイトフル・デッド』
[時間軸]:ネアポリス駅に張り込んでいた時
[状態]:健康、覚悟完了、戦士たちに感化された(?)
[装備]:ベレッタM92(13/15、予備弾薬 30/60)、手榴弾セット(閃光弾・催涙弾×2)、遺体の心臓
[道具]:基本支給品×4(水×6)、双眼鏡、応急処置セット、簡易治療器具、露伴のバイク、打ち上げ花火
    ゾンビ馬(消費:小)、ブラフォードの首輪、ワムウの首輪、大型スレッジ・ハンマー
    不明支給品1~2、ワルサーP99(04/20、予備弾薬40)
[思考・状況]
基本行動方針:ターゲットの殺害と元の世界への帰還
1.育朗とワムウの遺志は俺たちが必ず"繋ぐ"
2.自分に寄生しているこいつは何なんだ?
3.残された暗殺チームの誇りを持ってターゲットは絶対に殺害する


【双葉千帆】
[スタンド]:なし
[時間軸]:大神照彦を包丁で刺す直前
[状態]:左手指に軽傷(処置済)、強い決意
[装備]:万年筆、スミスアンドウエスンM19・357マグナム(6/6)、予備弾薬(18/24)
[道具]:基本支給品、露伴の手紙、ノート、地下地図、応急処置セット(少量使用)
[思考・状況]
基本行動方針:ノンフィクションではなく、小説を書く 。その為に参加者に取材をする
1.…………。
2.主催者の目的・動機を考察する
3.次に琢馬兄さんに会えたらちゃんと話をする
4.川尻しのぶに早人の最後を伝えられなかった事への後悔(少)
[ノートの内容]
プロシュート、千帆について:小説の原案メモ(173話 無粋 の時点までに書いたもの)を簡単に書き直したもの+現時点までの経緯
橋沢育朗について:原作~176話 激闘 までの経緯
ワムウについて:柱の男と言う種族についてと152話 新・戦闘潮流 までの経緯


※プロシュートは、橋沢育朗の支給品を回収しました。
 橋沢育朗の遺体がB-4 古代環状列石にあります。
 ワムウの遺体は消滅しましたが首輪が残ったため、プロシュートが回収しました。

【橋沢育朗 死亡】
【ワムウ 死亡】

【残り 25人】


投下順で読む


時系列順で読む


キャラを追って読む

前話 登場キャラクター 次話
188:火蓋 橋沢育朗 GAME OVER
188:火蓋 ワムウ GAME OVER
188:火蓋 プロシュート 195:かつて運命になろうとした『あの方』へ
188:火蓋 双葉千帆 195:かつて運命になろうとした『あの方』へ

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最終更新:2020年08月06日 20:51