累積: - ___ 昨日: - ___今日: -

術伝流一本鍼no.32 (術伝流・養生の一本鍼・運動器編(1))

腰の慢性期の養生

(1)はじめに

 応急処置でなんとか歩けるようになり、仰向けに成れる位に
なったら、腰痛も慢性期の型を中心に治療します。

 先ずは、鍼のみで慢性期の型を中心に治療します。鍼のみで
は変化が遅いほど古いツボが見付かったら、灸や灸頭鍼を併用
して治療します。

 ここでは、鍼のみで慢性期の型を中心にした治療を解説しま
す。

(2)全体の流れ

 腰痛の慢性期の刺鍼手順の全体の流れは、基本的に慢性期の
型をしていきます。そして、腰に関連するツボが出やすい所で
は、丁寧に観察し、ツボを見付け刺鍼します。うつ伏せから座
位に移るときに立ってもらい、腰の動作鍼をします。その後、
また、慢性期の型に戻り、座位で、慢性期の型を後始末まで続
けるという手順です。

 ですから、腰痛があっても、なんとか仰向けに成れることが、
前提になります。仰向けに成れないときには、急性期の応急処
置をして仰向けに成れるようにして、次の治療のときに慢性期
の型をするようにしてください。仰向けで足を伸ばすのが辛い
ようなら、膝を立てたり、足を曲げたりしても構いません。

 腰痛以外の症状でも、慢性期には、基本的に、この手順で刺
鍼していきます。

(3)詳しい手順

 先ず、やりにくい動作などをしてもらい程度を確かめておき
ます(写真1,2)。

写真1
写真2

 それから、診察をして(写真3)、左右どちらから始めるか
決めます。

写真3

 腹の古いツボを参考に決めるので、腰痛のある側と一致しな
いこともあります。慢性期には、仰向けでの刺鍼は、あくまで
腹に古いツボが出ている側を中心に刺鍼します。

 生理痛など内科的な症状が切っ掛けで腰痛になるときでも、
必ずしも腹にツボが出ている側と同じ側が腰痛になるとは限り
ません。同じ側に出るのは2/3くらいです。1/3は反対側
に出たり、両側に出たりします。

 仰向けでは、普通に慢性期の型で刺鍼していきます。手足の
ツボも、先ずは、腹のツボとの関係で探し、腹を整えることが
大切です。

 腹を十分に整えた後で、腰痛に関係するツボも探します。出
やすいのは、腹と足です。

 腹は、古いツボが腰痛に関係していることが多く、どちらか
と言うと下腹のツボが関係していることが多いです。ツボが出
ていたら刺鍼します(写真4)。

写真4

 足は、腹のツボとの関係で、下腿や大腿にも出ます。調べて
(写真5)ツボが出ていたら、刺鍼します。

写真5

 また、腰痛の急性期に出ることが多い足首から先の、陰経側
なら内踝甲側の中封、内踝足裏よりの照海、陽経側なら外踝甲
側の丘墟、足甲4~5間の地五会、足臨泣などにも出ているこ
とがあります。

 うつ伏せでも、先ずは、腹のツボとの関係で背のツボを探し、
腹を整えることを優先します。

 背中の胸椎まわりを刺し終えてからは、腰痛のツボが出てい
ることが多いところになるので、丁寧に観察していきます。

 腰痛のツボは、 古いツボが出やすい腰椎部の華佗経や痞根・
腰徹腹(写真6)など。

写真6

 後は、応急処置のときに紹介した腰殿部の3つのツボです。
第5腰椎と腸骨の間(大腸兪)。腰骨と大転子を結ぶラインの
後ろ側の窪み(環跳、写真7)。殿部中央。

写真7

 大腿部では、真横の真ん中あたり(風市)。

 下腿では、膝裏のH字形のシワの外側の端から3cm程下腿
より(下委陽)、そこの筋肉溝の延長線上でフクラハギが終わ
る辺り(飛揚〜外丘)、その筋肉溝の踵側の延長線上で踵の骨
際(陽大鐘)。

 また、腹のツボとの関係で、膝裏H字形の皺の内側のライン
にも外側とほぼ同じ位置にツボが出ます(下陰谷、築賓)。ま
た、真ん中のラインにも出ます(承筋、承山)。

 調べて、ツボが出ていたら、刺鍼します(写真8)。

写真8

 慢性期の型では、うつ伏せでの刺鍼を終えたら座位になりま
すが、腰痛の慢性期の治療では、座位の治療の前に立ち上がっ
てもらい、動作鍼をします。

 痛む直前の姿勢で最も伸びようとしている筋肉の、最も伸び
ようとしている部分に、ツボが出ていることが多いです。

 腰の動作鍼は、応急処置でも練習したように、左右捻転と、
前後屈の二つが多いです。先ずは、立ち上がって、前屈と捻転
をしてもらいます(写真9、10)。

写真9

写真10

 これまでの刺鍼で、日常生活に不自由の無い程度に改善して
いれば、座位での刺鍼に移ります。改善が不十分なら動作鍼を
します。

 左右捻転の制限では、腰椎3番の高さのライン上にツボが並
びます。少ししか回せないときには、腰椎3番の近くにツボが
出ます。

 大きく回せるようになるに連れてツボは脇腹よりに出るよう
になり、最後は、脊柱起立筋の一番外側に出ます。痛む直前の
姿勢を取ってもらうと腰椎3番のラインが溝状に凹んで見えま
す。その溝の中でもっとも凹んだ所を押してみると圧痛があり
ます。

 その姿勢のまま、そこに刺鍼します。一度正面に向き直って
から再度捻転してみると、前よりも少し捻転できるようになっ
ています。そこで痛む直前の姿勢で、またツボを探して刺鍼す
ると、もう少し余分に捻転できます。

 日常生活に不便が無くなるまで、繰り返します。

 前屈の動作制限のときには、ツボは腰椎5番を起点にして、
背中側は1行線、殿部足裏側はその中央のライン上に出ます。
少しか前に曲げられないときには、腰椎5番の直ぐ近く、背中
側は腰部の1行線、下側は殿部中央ラインに出ます。

 手が膝よりも少し上ぐらいまで曲げられるときには、胸椎7〜
11番と大腿裏辺りにツボが出ます。手が膝下まで届くようなら、
ツボは膝裏近くに出ていることが多いです。そういう感じで出
ているツボを探し刺鍼して行けば、だんだん改善します。
(写真11,12,13,14,15)

写真11

写真12

写真13

写真14

写真15

 動作鍼が終わったら座位になってもらい、慢性期の型の続き
をします。肩首まわりを刺鍼(写真16)します。そして、必要
なら、次ぎに、胸上部から前頚部を刺鍼します。終わりに、頭
の散鍼(写真17)と手甲への引き鍼(写真18)で仕上げます。

写真16

写真17

写真18

(4)理由

 腰痛でも応急処置が終わったら慢性期の型を中心に施術する
のは、慢性期には内臓関係など腹側のツボが関係していること
が多いためです。

 肩の痛みのときに脇の下のツボの痛みが感じにくかったり、
膝痛のときに膝裏の痛みが感じにくかったりしたのと同じよう
に、腰の痛みに比べて腹側の痛みは感じにくいです。腹側の症
状やツボを庇(かば)うために腰にツボができて痛みが出ている
とき(例:月経前症候群の腰痛)に、腰側のツボを消しても痛
みが復活しやすくなります。

 ですから、応急処置しても痛みが復活するような慢性期の腰
痛では、腹側にツボが出ていることが多いです。そのため、慢
性期の型を中心に治療して、腹のツボを改善していけば、腰痛
の慢性症状は消えやすくなります。腹のツボを改善するために
は、それと関連する手足背腰のツボも使います。「手足に引く」
「陽に引く」ですね。

 腰側や腹側に古いツボが有って、慢性期の型をしても鍼だけ
では変わりにくい場合には、お灸や灸頭鍼を併用します。灸や
灸頭鍼で古いツボを変化させれば、比較的短期間で良くなるこ
とが多いです。その方法は、次回解説します。


   つぎへ>>>術伝流一本鍼no.33



   >>>目次へ・・・・・・・・・術伝流一本鍼(あ)

   >>>このページのトップヘ・・術伝流一本鍼no.32

   >>>術伝HPトップへ ・・・・トップページ

術伝HP内検索:上の@wikiメニューの「wiki内検索」


お知らせとお願い

術伝流鍼灸操体講座で患者さん役を募集

 術伝流鍼灸操体講座は、実践面を重視しています。実際に症状が出て
いる方の治療を見たほうが勉強になります。そこで、講座で患者さん役
をしてくださる方を募集しています。

 くわしくは、術伝流のモデルをみてください。

 よろしくお願いします。

感想など

 感想などありましたら、「術伝」掲示板に書いてください。

 また、「術伝」掲示板でも、旧掲示板「養生の杜」と同じように、
養生についての雑談や症例相談などもしていきたいと思っています。


 よろしくお願いします。

間違いなど

 間違いなど見つけた方は、術伝事務局あてにメールをください。

 よろしくお願いします。

「術伝」症例相談用メーリングリストの参加者募集

 「術伝」では症例相談用メーリングリスト( 術伝ML(muchukand))の
参加者を募集しています。

 よろしくお願いします。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

   >>>術伝HPトップへ ・・・・トップページ

最終更新:2017年02月25日 12:39