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術伝流操体 [2]ラクな寝方をすこし強調 (10)ラクな寝方から連続操体 

ラクな寝方から連続操体

 これまで寝方別に動き、皮膚、重さの操体を解説してきまし
た。今回は、そのラクな寝方から操体を連続して施術する方法
を解説します。

 操体を臨床の場で使いこなしていくときには、メインとなる
手段ですので、よく理解して、しっかり身に付けてください。

1.ラク寝からの連続操体の手順

 ラクな寝方からの連続操体の手順は以下の通りです。

 初めに「姿勢を変えたくなったら、どんどん変えて構いませ
ん。ただ、ユックリ動いてください。」と声を掛けておきます。
それから、連続して操体をしていきます。

(1)ラクな寝方になってもらう

(2)イイ感じを探し、切っ掛けにする 

(3)色々な付け足をして、イイ感じを増やす

(4)イイ感じがあるか確かめ、味わい続ける

(5)姿勢を変えたくなったら終え、次へ

(…)(1)〜(5)を繰り返す

 これから、(1)〜(5)を、詳しく説明していきます。

2.ラクな寝方が分からないときは、横向きから


 ラクな寝方が分かる人が相手なら、その寝方を少し強調する
ように操体していきますが、ラクな寝方が分からないと言う人
もいます。

 そういうラクな寝方に成れない人には、先ず横向き寝の操体
(写真1)から始めると、上手くいくことが多いです。

写真1

 前にも書きましたように、身に付けていくときには、寝方は、
仰向け、うつ伏せ、横向きの順で練習していく方が分かりやす
いし、修得しやすいです。が、実際に臨床の場で操体するとき
には、これと逆の順序の方が効率が良いことが多くなります。
つまり、横向き、うつ伏せ、仰向けの順で操体していきます。

 もちろん、イイ感じが自分で明確に分かる人なら、その人が
感じるラクな寝方から始めても、余り効率に影響しません。が、
現代では歪みも多いせいか、初めからイイ感じが分からない人
も多いです。それで、受け手がラクな寝方が分からないような
ら、横向きから始めた方が効率が良い場合が多いです。

 寝方が横向きからが良いのは、おそらく、歪みが大きくなる
程、横向き寝がラクな人が多くなることに由来するようです。
歪みが少ない人は仰向けで寝るのがラクな人が多く、歪みが増
えていくとうつ伏せを好む人が増え、もっと歪みが多くなると
横向きを好む人が多いという傾向が有ります。

 それで、歪みの多い人は、最初に仰向けで操体してもイイ感
じが分からなくて、タワメの間が上手く見付からないことが多
いです。

3.足指を痛くしてよりラクになってもらう


 横向き寝になってもらったら、今までも説明してきたように
足指裏の痼りを少し痛くして逃げてもらい、足指裏の痛さが減
る姿勢になってもらいます(写真2)。

写真2

 その姿勢の方がよりラクなことが多いからです。

4.ラクな姿勢を強調するとイイ感じなことが多い

 今まで寝方別操体で説明してきたようにラクな姿勢、特に足
指を少し痛くしてよりラクになった姿勢を少し強調するとイイ
感じがあって、そのままタワメの間に入っていくことが多いで
す。

 ですから、今まで寝方別に説明してきた定番の操体の姿勢に
近い姿勢なら、それを先ず試してみるのが良いと思います。試
してイイ感じならやってみて、姿勢が変わったら、また、近い
ものをやってみればよいだけです。

 問題なのは、受け手が操体慣れしていなくてイイ感じが分か
らない場合と、初めて見る姿勢になった場合です。

5.イイ感じが分からないときには、重さ、皮膚、動きの順で定番を

 操者がラクな姿勢から定番の操体を思い浮べられなかったり、
思い浮んでも試してみて受け手がイイ感じが分からない場合に
は、重さ、皮膚、動きの順で定番をしていきます。

 練習のときは、動き、皮膚、重さの順でしましたが、それは
その方が理解しやすいし、修得しやすいからです。臨床のとき
には、重さ、皮膚、動きの順でした方が効率が良い場合が多い
ので、そうしています。

 つまり、重さの操体を先ずして、それから皮膚や動きの操体
という順番の方が、現在では、全体の施術時間が短縮できるこ
とが多いし、受け手の満足度も高いことが多いし、効果も上が
りやすくなるということです。

 これは、重さの操体というのは、体重移動を切っ掛けにして
いるので、体の歪みの基本調整になるからだと思います。体重
の移動は、体の中心、重心を移動するということです。地球の
上で引力に従って活動しているヒトという動物にとって、その
重心のズレは、体の歪みの基本に関わっています。

 経絡、特に十四経は、立位での重力負荷分担であることも関
係しています。

 動きや皮膚の操体をしてから重さの操体をして、重心の調整
をすると、先に動きや皮膚の操体で調整した体のバランスが少
し違ってくるせいか、もう一度、動きや皮膚の操体をしたくなっ
てしまうことも多いように思います。

 そういう理由で、ラクな寝方が分からない人には、横向き、
うつ伏せ、仰向けの順で、重さ、皮膚、動きの順で操体します。
つまり、ラクな寝方も分からないし、どうするとイイ感じか分
からない人が受け手の場合には、横向き寝からの重さの操体か
ら始めるということです(写真3)。

写真3

 ただし、実際には、横向き寝の場合には、重さの操体を単独
で…と言うよりも、皮膚の操体も交えたものになってしまうこ
とが多いです。

 ただ、どういう操体をしていいか分からなくなったら、先ず
重さの操体が試せないか考えてみたり、重さの掛け方を意識し
て皮膚操体してみるという選択肢を思い出すようにしてくださ
い。

 そして、重さの操体で済んでしまうことは、皮膚や動きの操
体では省略することが多くなります。また、皮膚の操体で済ん
でしまうことは、動きの操体では省略することが多くなります。

 また、現在では、動きの操体よりも、それと同じタワメの間
になる皮膚の操体を好まれる人が多いので、ラクな動きを確か
めてから、それを少し強調する皮膚の操体をすることが多くな
ります。

 例えば、仰向けからの踵踏み込みは、肩の方に体重を移すこ
とで済んでしまうので、動きの操体としてはしないことが多い
です。

 膝倒し、踵突き出しなどの足伸ばし、うつ伏せからの足伸ば
し代わりの尻叩きなどは、ラクな方に軽く動かした後は、それ
をほんの少し強調する皮膚の操体でしてしまいます。それで、
動きの操体としては確認程度になることが多いです。

 結局、仰向けからの動きの操体として残るのは、膝裏痼り取
りのための膝裏の痼りを痛くして逃げてもらう操体(写真4)
位のことが多くなります。

写真4

この辺り、詳しくは、仰向けからの操体を読み直してください。

6.初めて見る姿勢になったら

 ラクな姿勢を強調すると言っても、今まで寝方別に説明して
きた定番の操体の姿勢に近い姿勢なら、それをしてみるのが良
いと思います。今まで見たことの無い、初めて見る姿勢になっ
たら、どうするか、いくつかコツがあります。

1)伸びようとしているラインを伸ばす

 初めて見る姿勢になったときに、最初に目を付けるのは、そ
の姿勢で体が伸ばしたがっているラインは何処かということで
す。

 操体はアクビやノビの様式化で、赤ちゃんのときには無意識
で動いていたことを思い出すだけです。

 ですから、操体のタワメの間は、アクビやノビでイイ感じに
なったときに暫(しばら)く同じ姿勢を続けるときの状態と同
じです。ノビという言葉で表現されるように、そういう暫く同
じ姿勢が続いているときには、体の何処かのラインが伸ばされ
続けています。

 そのとき体が伸ばしたがっているラインをより伸ばしてあげ
ればイイ感じのことが多く、腹の息も直ぐに深くなることが多
いです。

 最も現在では、伸ばすと言っても動きの操体でするよりも皮
膚の操体をする方がよりイイ感じという人が多いので、伸ばす
ことに連動するように皮膚をズラすことが多くなります。

 例えば、仰向けで膝を曲げて倒し大腿内側を上に向けている
(写真5)の場合には、その上になっている大腿内側が伸びる
ように、大腿の膝近くの皮膚を膝の方にズラす(写真6)のが
イイ感じの切っ掛けになることが多いです。

写真5

写真6  

 その時に体が伸ばそうとしているライン上で、釣り合ってい
る互いに逆向きの二つの力の向きと、それら二つの力の境目を、
その2つを見付けるようにしてください。

 それが分かると、よりイイ感じにしやすいです。その境目を
基準にして、伸びようとしている向きに沿って、互いに反対方
向になるように皮膚をズラすとイイ感じになります。

 ただし、受け手の胴体の重さが反対方向の力になっていると
きには、片方の方向にズラすだけで済んでしまうことも多いで
す(写真6)。

ref(p操体あ0810#06.jpg)写真6

 もちろん、こういう場合にも反対側に手を添えて、より伸ば
すことを強調することができます(写真7)。

写真7

 どちらが良いかは受け手によります。例えば、異性で初めて
の人の場合には、下腹部に近い所を触れられると緊張してしま
う場合も有り、そういう場合には、触れない方が良い場合が多
くなります。

 伸ばすのが実行しにくい場合には、それと反対側を縮めるこ
とを実行することもあります。伸びようとしている所と縮もう
としている所は、前後左右表裏の対称関係になっています。

2)体が変えたがっている所を見付ける

 体が変えたがっている所は、伸ばそうとしている所以外にも
あるかもしれません。足首、膝、大腿、上腕などの位置や向き
から、動きやすそうな所、皮膚がズレやすそうな所、体が今変
えたがっている所を探していきます。

 足首や膝の位置や方向が左右で違えば、その差を強調してみ
ることが考えられます。

 例えば、仰向けで足の倒れ具合が違えば(写真8)、倒れて
いる方の足の膝裏外側に痼りがないか確かめます。(写真9)

写真8

写真9

 膝裏に痼りが有れば、その痼りから逃げる操体をしてみる
(写真10)ことなどが考えられます。

写真10

 大腿屋上腕の向きの延長線上や、それと直交したり平行した
りする線上と背骨が交わる辺りにツボが出やすいことも、今ま
で寝方別で説明してきた通りです。

 例えば、うつ伏せで肘を肩と同じ以上に挙げている場合(写
真11)には、顔の向いている側の腕の延長の華陀経にツボが出
ていることが多いです。

写真11

 それで、そちらの肘を持ち上げる操体を切っ掛けに、指反ら
しとそのツボへの指圧を付け加える(写真12)とイイ感じなこ
とが多いです。

写真12

 背骨の捻れ曲がりも目安になります。特に腰椎の部分は、胴
体の前屈後屈、左右捻転などの境目なので、よく調べてみてく
ださい。腰椎の次は頚椎ですね。特に首から上の症状を訴える
人は首の筋肉に痼りが出ている場合が多いです。

 首や胴体の歪みと経絡的に関係のある手足のツボも一緒に使
うと効果が上がりやすいです。例えば、関係する手足の指を反
らすとか。

3)仰向け大の字に近くなったら

 操体してイイ感じのタワメの間を幾つか味わっていると、仰
向け大の字に近い格好になる時があります。そういう時には、
その姿勢で、仰向け大の字と違っている所を強調すると、イイ
感じが味わえることが多いです。

 例えば、片足の膝だけ少し曲がって下腿の内側が上を向いて
いるとき(写真13)は、下腿内側に痼りがある場合が多いです。

写真13

 下腿内側の痼りを確かめ、その痼りとその経絡的な関係のあ
る指など足首から先を利用する操体をしていく(写真14)と、
より仰向け大の字に近付くことが多いです。

写真14

7.付け足してイイ感じを増やすコツ

 切っ掛けが決まったら、それに付け足してイイ感じを増やし
て行きますが、イイ感じを付け足すコツは、先ず何と言っても
窮屈そうに見える所を動かしてもらうことです。

 そんなの分からないと言わずに、それを何時か分かるように
なろうと言う感じで、操体中の受け手を眺めるようにしてくだ
さい。だんだん分かるようになっていきます。

 窮屈そうな所は、受け手の体は、何とかして変えたがってい
ます。ですから、声を掛けるだけでイイ感じを探して動いてく
れることが多いので、操者はラクです。

 具体的な目の付け所としては、手首、足首の位置や向き(足
首の場合は、反り具合も)、膝の曲がり倒れ、顔の向き、大腿
上腕の向き、背骨の特に腰椎の部分の捻れ曲がり具合などです。

 そういう所を少し強調してもらったり、窮屈そうなら変えて
もらったりします。

 そして、そういう所と経絡的に関係する手足、特に肘膝から
先のツボに皮膚操体や指圧をしてみたり、経絡的に関係する指
を反らしたりも試してみてください。

 この辺りは、今まで書いてきた寝方別の操体を読み直してみ
てください。

8.イイ感じなら、腹の息が深くなる

 今までも何度も書いてきたように、イイ感じのタワメの間に
入ると、腹の息が深くなります。痼りに触れていれば、痼りが
弛んだり、痼りの周りで動悸がしたり温かくなったりするのを
感じることが多いですし、姿勢も余り変わらなくなります。

 現在では、その日に体が求めているタワメの間に入ると、そ
のまま10分以上姿勢を変えたがらないで、そのままの格好をし
続けるということが、結構、多いです。

9.姿勢を変えたくなったら、次へ

 姿勢を大きく変えたくなったら、その操体を終わりにして良
い合図で、またラクな姿勢を探して、新しいラクな姿勢から次
の操体をします。

 ラクな寝方が分からない人は、既に書いたように、横向き、
うつ伏せ、仰向けの順で寝方を変えて、重さ、皮膚、動きの順
で操体をしていきます。

 いつまでもラクな寝方が分からないと言う人も居ますが、途
中でラクな寝方が分かる人が多いです。

 そんな風にして、ラクな寝方からの操体を連続していきます。

10.頻繁に見られる二つの例

 私は、今まで書いてきたように、ラクな寝方からの操体を連
続していくことを、臨床の場で操体を中心に施術していく場合
の主な手段にしています。そして、受け手がとても喜んでくだ
さることが多いです。

 それで、読んでいる皆さんにも、ぜひ身に付けて、臨床の場
で生かして欲しいと思っています。

 とは言っても、読んでいるだけでは分からない人もいると思
うので、次回、次々回で、連続操体をしていくときに、よく見
られる例を二つ解説します。

 ラクな寝方が分からない人を横向きの操体から始めた場合の
頻繁に見られる例です。ただし、実際に受け手にラクな姿勢を
次々探していってもらった例なので、最も頻繁にあるケースと
は少し違っているという点は理解するようにしてください。


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最終更新:2017年02月25日 06:33