私の息子と,戦友と,そしてこの書物をとった全ての読者に託す.

"cras amet, qui numquam amavit;
quique amavit, cras amet."
―まだ愛したことがない人も,あすは愛しますよう.
愛したことがある人も,あすは愛しますよう.


全ての始まりは,私,ルカーン自身が住む世界への知的好奇の念と,一人の老婆が語った彼女自身の壮絶な人生を聴いた後に残った深い同情の念からである.その老婆から話を聴いた時の私は,まだ成り立ての歴史学者であった.当時の私は,その二つのきっかけから,世界探訪の旅へ出た.その旅の記録を,【ルカーン記】の「光の部」に記した.そして,「光の部」で得られた情報を元に,この世界の歴史,そして真実を探ろうと試みた結果が「闇の部」に記してある.そして最終部として,この世界の真実を知られるだけ知り,自分なりにまとめあげ,ある一つの結論に至った過程を,「無の部」に書き記している.また,その際,参考になった書簡・文献・伝説を「付録」として後世のためにまとめさせて頂いた.


今でこそ予言者,という風に呼ばれている私だが,前にも述べた通り,私は元々歴史学者であった.それがどうして予言者と呼ばれるようになったかは,至極単純な理由からだ.
「歴史は繰り返される」・・・.
この言葉を何処かで聞いた覚えがある読者もいるのではないだろうか.「秘術」という術によって数百年生き永らえることができるようになった私は,この世界のあらゆる民の栄枯盛衰を見て来た.そのどの民も・・・いや,この世界だって,同じことの繰り返しだったことを私は知ることになる.繰り返すので,先が読めるように自然となる,というわけだ.


それでは,語ろう.そして,誘おう.数多の物語の始まりとなった,「常に始まり続ける」この神秘的な世界の調べを・・・!






最終更新:2015年05月05日 13:16