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秋の七夕

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匿名ユーザー

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こなた曰く『桜吹雪での出会いシチュ』から数ヶ月。
もう季節はすっかり秋。
夏休みも遠い思い出に感じるような秋風を感じながら例の如く私達4人は下校していた。
「ふぉ、寒いぃぃ。」
私の右側を歩いていたこなたが寒さに身を縮める。
「もうそろそろコートが必要な時期ですよね~」
はぁ、と両手に息をかけながら答えるみゆき。
確かに冬の訪れを間近に感じるこの時期に制服だけで寒さを凌ぐというのは少々無理のあることである。
「そろそろウチもコタツも出すころだね、お姉ちゃん」
「そういえば、まだ出してなかったわね。」
ストーブでも温かいんだけど、やっぱりコタツにみかんが日本人の冬の必需品よねー。なんて考えていると、
「かがみの場合、コタツにみかん…それに饅頭、煎餅って続きそうだよね」
「うっ…うるさいわね」
図星のため反抗する言葉が見つからない。
にしても何故コイツは私の考えてる事を的確に指摘するんだ?
「でもコタツに入るとついついお菓子とかに手がのびちゃうよねー」
「しかもコタツの中は温かくて、すぐ寝てしまいますしね」
ねー、と言いながら顔を合わせて笑うつかさとみゆき。

「学校もコタツ持ち込み可!みたくしてくれないものかねぇ」
「いや、無理あるだろ。ていうか持ってくる気はあるのか」
勿論、とこなたがガッツポーズをする。
相変わらず自分の興味のあるものには即行動するのね、と半ば呆れて溜め息を吐く。


こなたと出会って数ヶ月、登下校、休み時間、休日などほぼ毎日顔を合わせているわけで、お互いの性格を分かるには十分の時間を過ごしていた。
まず最初に分かったことは、相当のアニメ、ゲームヲタクであること。
しかもギャルゲやエロゲを平気でやる限り、私には未知の世界の住人だ。
こなたに誘われて秋葉原にも行ったし、ゲマズやアニメイトなどにも連れていかれた。
中学の頃からラノベを読んでいた私はそういう店に少々驚いたが、特に抵抗も感じず、ほぼ毎日の様にこなたの寄り道に付き合っている。


「…あ、雨」
つかさの一言で私は視線を空へと向ける。
いつの間にか灰色の雲が広がり、ぽつぽつと雨が降り出していた。

「……」
「どうしたの?こなちゃん」
空を見て急に立ち止まったこなたにつかさが尋ねる。



「あ、いやー……学校に忘れものしてきちゃったよ。私戻るから先帰ってて」
と私達の返事も聞かずに走り出りだした。
って相変わらず足早いわね。
「泉さん、何を忘れたのでしょうか」
「忘れ物ったって、きっと漫画かなんかでしょ」
テストが近いわけでもないのにこなたが教科書なんかを家に持ち帰るはずがない。

「こなちゃん傘持ってるのかなぁ…」
心配そうにこなたの背中を眺めるつかさ。
「……ったく、仕方ないわね。つかさ、みゆき、先帰ってて!」
「……え、かがみさん?!」
「ちょ、お姉ちゃん?!」

二人の驚く声が聞こえたが、私は数分前にこなたが走って行った方向へと走り出していた。


「あちゃー、本降りになってきたよ」
ツインテールをなびかせながら土砂降りの雨の中を走る。
濡れた制服がじかに皮膚に触れて気持ち悪い。
ていうか何で私は走ってるんだ?
半ば勢いで走り出してしまった自分に問う。
雨が降ってきて、思い出したのは梅雨の時期に言っていたこなたの言葉。
『置き傘はしてたんだけど、この前雨降った時家に持って帰ちゃって、それきりに』
こなたの事だからホントにそれきりなんだろうな、と思った途端、走り出していた。

「ったく、世話がかかるんだから」
そういいながらも自分の世話好きな行動に苦笑する。



大多数の生徒はとっくに帰宅したのか、学校はちらほらとしか電気が付いていなかった。
全身ずぶ濡れのまま廊下を歩く。帰りるとき雑巾で拭かなきゃ、なんて考えながらこなたの教室へと向う。
教室に明りがついてる事を確認し扉を開ける。
「こなたー」
「うぎゃっ!!!」
突然声を掛けられた事に驚いたのかこなたがシェーのポーズをしていた。
リアルにやってる人始めてみたわよ。
ふと、こなたの足下を見ると折り紙と…すすき?
「何やってんのよ」
忘れ物を取りにきた状況ではないであろうこなたに聞いてみる。
「むむ、少々のんびりし過ぎたかー」
顎に手をあて、計算ミスと呟くこなた。
「はぁ?」
わけが分かららず唖然とする私を一瞥して折り紙に何か文字を書きながら話しを続ける。
「いやさ、七夕をね」
「…は?」
「七夕だよ、七夕」
「いや、七夕は分かるけど…」
七夕の季節はとうに終わってるし、この状況と七夕との共通点が全く見つからない。



「夏に七夕したじゃん?」
「したわね、つかさとみゆきの4人で」
私とつかさの誕生日会も兼ねて4人で短冊を書いたことを思い出す。
「あの時の私の願い事覚えてる?」
「確か『なんかの懸賞があたりますように』とかじゃなかったっけ?」
夢がないなぁ、とつっこみを入れた記憶がある。
「うん。かがみはなんて書いたの?」
「…わ、忘れちゃったわよ、そんなの」
つかさやみゆきやこなたと同じクラスになれますように、なんて書いた事を言えるはずない。
「で、それとこれとはどんな関係があるのよ」
本題に戻すためにこなたを促す。
「当たったのだよ、懸賞が」
「ふーん、良かったじゃない……ってだからこれとそれとは「だから」
「…だから新しい願い事考えた」
ぐいっと先程まで何か書いていた折り紙を私に押し付ける。
もしかしなくても、これは短冊のつもりなのか。
よく分からないまま短冊にかかれた文字を読む。



《かがみは私の嫁》



……これ、笑うとこ?
いやいや、笑えない。
「えっと、時にこなたさん。これは一体なんでしょう」
「何って、短冊」
「いや、あの…」
「叶うかな」
「いや、だから」
こなたは放心状態の私から短冊を抜き取り、すすきにくくりつけている。

からかわれているのだろうか。

「あ、かがみもなんか願い事書く?」
「……今の状況を詳細にこなたが説明してくれますように」
短冊に書くまでもなく、伝えたい相手に願いを伝える。
「だーかーら、かがみが私の嫁になりますようにって」
「それはアニメのネタかなんかなのか?」
「違うよ、正真正銘私の心からの願いだよ」
腰に手をあて、威張るように胸をはっている。
頭痛がする、そういえば濡れてままだったんだっけ。
「ほら、バカな事はもうお終い。帰るわよ」
「かがみ」
本格的に風邪をひく前に帰ることを促した私をこなたは少し怒ったような声で呼んだ。
「好きだよ、かがみ」
真剣な、でもちょっと恥ずかしいそうな顔で私を見つめる。
「…な、何言ってんのよ。ふざけるのもいい加減「かがみが好き」
すすきが揺れるのが見えたと同時に冷えていた体に暖かさを感じる。
って、私こなたに抱き締められてる?!
「ちょ、こ、こなた」
焦る私。
今まで冷えていた体が急に熱くなる。
こなたがぎゅうと抱き締める力を強める度に体が硬直していくのが分かった。



混乱してる私の頭をフル回転させて今の状況を把握しようとする。
こなたは私を好きだと言っている、これはきっと友情の好きじゃない…と思う。
じゃあ、私は?
私だってこなたの事は好きだ。でもそれは友情の好きであって…
しかし、抱き締められただけでこんなに鼓動が早まるのだろうか。
「かがみ」
いつもより緊張したような声で私の名前を呼ぶ。
呼ばれた瞬間、胸の奥がきゅんと締められるような感覚に陥る。
これ以上ないくらい心臓が早い。

いやいや、待て待て。よく考えろ、自分。
こなたは女の子で私だって女の子だ。女の子同士が付き合うなんて、私には縁の遠い、漫画の中だけのフィクションとしか認識していない。

「かがみ?」
何も喋らない私に不信を抱いたのか、こなたが顔をあげる。
「…っ」
困ったような、心配そうな顔をするこなたを見た瞬間、私の中で何かが外れた気がした。

「わ……か……も」
「え?」
「私も好き…かも」
頭よりも口が勝手に動いていた。
自分で言ったにもかかわらず言い終えた瞬間、かぁっと顔に血がのぼるのを感じる。
きっと今私の顔は真っ赤になっているだろう。

「……ぷはっ、あはははは」
恥かしさで穴があったら入りたい状況の私とは裏腹にこなたが笑い出す。
「…な、なによ」
まさか本当にからかわれていたのか。
「…だ、だって…クッ、ハハハハ」
笑いを押さえる為なのか深呼吸をしたのを肩の動きで悟る。
「告白されて、その答えが『好きかも』って。かがみらしいなぁって」
まだ笑いを押さえられないのか、抱き締めていた手を緩め、私から離れた。
「し、知らなわよ。そんなの」
「強気なくせに、押しに弱いかがみ萌え」
「…うるさい」
恥かしさのピークを迎えている私は、こなたを直視できず自分の足下に視線を落とす。
「いやー、でもお月見シチュを準備しただけのことはあったよ」
うんうん、と納得するこなた。
「お月見?」
「うん、ほら」
と指をさされた方向を見ると、黒板に大きな丸が描かれていた。
「なに、あれ」
丸というよりは楕円形に分類するだろう絵を指差し尋ねる。
「あれは月、んで、すすき。お月見の完成~」
「七夕うんぬんってのは?」
「竹を集める時間がなくてさー、それに時期的にすすきかなーと思って。竹とすすきって似てるじゃん。」
「いや、全然似てねぇよ!!」


大体短冊の願い事は誰に叶えてもらうつもりなんだ。
織り姫と彦星だってもうそれぞれの星に帰って互いのことで胸がいっぱいだろうに。

「…というか、もし私が来なかったらどうするつもりだったのよ」
恥かしさを誤魔化す為、疑問に思ったことを聞いてみる。
「かがみなら来てくれると思ったよ」
予想より早くて驚いたけど、と両手をあげて驚いたポーズをとる。
「そんな無計画な…」
確かに傘を持ってないこなたを心配して追いかけたけど、それだけで私が学校へ戻る確証には至らない。
「でもかがみは来てくれた」
いつもの猫口スマイルとは違う優しい笑顔。
初めて見たこなたの表情に見とれてしまった。
「かがみはさー、私の事好きかも、なんだよね」
言いながらこなたが迫って来る。
「うっ…そ、そうよ。悪い?!」
「      」
「え…」
至近距離にいるのに聞き取るのが精一杯という位に小さく囁かれた言葉。
聞き返えそうと口を開いた途端「そろそろ帰ろ」と、こなたは床に散らばっているススキや折り紙を片付け始めた。

昇降口まで戻るとまだ雨が降り続いていた。
そういえば、と思い出す。
もとはと言えば私はこなたが雨に濡れないように向かえにきたんだ。

「あ、私傘持って…」
ん…?って私、傘持ってないじゃない?!
なんの為にわざわざ学校に戻ったのよ。
「ほいっ」
はぁ、と自己嫌悪気味の溜め息をついた私の目の前に左手を差し出すこなた。
「えっ」
顔をあげると、こなたはさっきの優しい笑顔をしていた。
「さっき答え」
この左手の意図が告白の答えを促すものではない事は分かっていた。
こなたが教室で最後に呟いた言葉の事を言っているのだろう。

『本当に好きかも、なの?』

小さすぎて聞こえずらかったが、確かにこなたはこう言った。


こなたは私に選ぶ余地を与えてくれてるのだ。
『友達』と『それ以上の関係』の選択肢を。
好きかもなんて、ただの妄言にすぎないことは分かっていた。
こなたと話しをする度に、こなたの事をもっと知りたいという気持ちが高まっていたし。現に告白された時、驚きの反面に嬉しさを感じていた事は私自身が一番よく知っている。
これを恋と呼ぶのだろうか、こなたとずっと一緒にいたいと思う感情が私を支配していく。
私は………こなたが好きなんだ。

そう思った瞬間、差し出されていたこなたの左手に自分の右手を重ねていた。
こなたは少し照れたような、満足そうな顔を私に向け「ひゃっほーい」と走り出した。
相変わらず濡れた制服は気持ち悪いけど、それ以上に握られた手から伝わるこなたの体温が心地よかった。


《ずっとこなたといられますように》


こなたに渡された短冊付きススキを胸に抱きながら、時期外れな願い事をされて迷惑してるだろう織り姫と彦星に願った。













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  • (≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-08-25 10:09:53)

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