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かがみは妹思い

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 つかさの様子がおかしい。
 朝、起き出してきたと思ったら、どうも足取りがふらふらしている。
 それに、なんだか瞳が潤んでいる。
「お、お姉ちゃん、けほっ。洗面所、わたしも使いたいから終わったら声かけてね…けほけほっ」
 どうやらカゼを引いたらしい。
「つかさ。はい、体温計」
 姉の権力を利用して、強制的に計らせる。
 こんなとき、妹に拒否権は存在しないのである。
「――うわぁ。38度もあるよ……ふにゃ」
 高熱があるとわかった途端、つかさは床に崩れおちた。
「ちょっ、つ、つかさ。大丈夫?」
 慌てて駆け寄って、額に手をあてる――すごく熱い。
 顔だって、夕焼けみたいに真っ赤だ。息も荒い。
 びっくりして、思わず叫んでお母さんを呼んだ。


「仕方ないわね。つかさ、今日は学校お休みしましょう」
「…う、うん。わかった。えへへ」
 お母さんに言われて、つかさは嬉しそうに表情をゆるめた。
 わかる。確かに、病気で学校を休むときは、なぜが嬉しい気分になる。
 でも、なんだか悔しいから、少しだけ意地悪を言わせてもらうことにする。
 こんなとき、妹に拒否権は存在しないのである。
「つかさ、なんだか嬉しそうじゃない。なになに? 学校を休めるのがそんなに楽しみなわけ?」
「そっ、そんなことないよっ」
 布団から顔を半分だけ出して、つかさはおずおずとわたしの方を見る。
 高熱のためか顔は赤らみ、瞳はあいかわらず潤んでいた。トレードマークのリボンは今は外している。
「あ、あのね? お姉ちゃん。帰りに、こなちゃんから宿題のプリントとか、貰っておいてくれないかなぁ?」
 カゼを引いても、やっぱりつかさは真面目だ。
 思わず笑みが漏れる。
 でも、そんなつかさは、姉のわたしから見ても可愛いので、少しだけ意地悪したくなってしまう。
「宿題を貰っても、あんたどうせ、いつもみたいにギリギリまでやらないんでしょ?」
「そ、そんなこと、ちゃんとやるよっ……けほけほっ」
 手をパタパタと振りながら否定したつかさだったが、途中で耐え切れずに咳き込んでしまった。
 しまった。ちょっといじめすぎたか…。
「了解。ちゃんとプリント貰ってくるから、しっかり寝てるのよ。じゃあ、わたしは学校に行ってくるから」
「う、うん。ありがとう、お姉ちゃん」
 弱っているつかさを見ていると、なんだか胸が締めつけられた。
 今日はなるべく早く家に帰ってくることにしよう。



「仕方ないわね。つかさ、今日は学校お休みしましょう」
「…う、うん。わかった。えへへ」
 お母さんに言われて、つかさは嬉しそうに表情をゆるめた。
 わかる。確かに、病気で学校を休むときは、なぜが嬉しい気分になる。
 でも、なんだか悔しいから、少しだけ意地悪を言わせてもらうことにする。
 こんなとき、妹に拒否権は存在しないのである。
「つかさ、なんだか嬉しそうじゃない。なになに? 学校を休めるのがそんなに楽しみなわけ?」
「そっ、そんなことないよっ」
 布団から顔を半分だけ出して、つかさはおずおずとわたしの方を見る。
 高熱のためか顔は赤らみ、瞳はあいかわらず潤んでいた。トレードマークのリボンは今は外している。
「あ、あのね? お姉ちゃん。帰りに、こなちゃんから宿題のプリントとか、貰っておいてくれないかなぁ?」
 カゼを引いても、やっぱりつかさは真面目だ。
 思わず笑みが漏れる。
 でも、そんなつかさは、姉のわたしから見ても可愛いので、少しだけ意地悪したくなってしまう。
「宿題を貰っても、あんたどうせ、いつもみたいにギリギリまでやらないんでしょ?」
「そ、そんなこと、ちゃんとやるよっ……けほけほっ」
 手をパタパタと振りながら否定したつかさだったが、途中で耐え切れずに咳き込んでしまった。
 しまった。ちょっといじめすぎたか…。
「了解。ちゃんとプリント貰ってくるから、しっかり寝てるのよ。じゃあ、わたしは学校に行ってくるから」
「う、うん。ありがとう、お姉ちゃん」
 弱っているつかさを見ていると、なんだか胸が締めつけられた。
 今日はなるべく早く家に帰ってくることにしよう。




「ただいま。つかさ、起きてる?」
 もしも寝ている最中だった場合、起こしてしまってはマズイので、あくまで小声で、わたしはそう声をかけた。
「…………」
 返答は無言。どうやら眠っているらしい。
 そろそろとつかさの部屋のドアを開けた。
 つかさは布団にくるまり、朝と同じように顔を半分だけ出して眠っていた。
 わずかに眉をたわめているように見えるのは、決して気のせいではないだろう。
 あれだけの熱が出れば、苦しくないわけがない。
 わたしは溜め息を吐くと、こなたに貰った宿題のプリントを、つかさの机の上に置いた。
 そして、起こさないように気をつけて、部屋から出て行こうとする。
「……お姉ちゃん?」
 しまった。どうやら起こしてしまったようである。
「つかさ、起きたの? 体調はどう?」
「――ん。少し頭が痛い、かな」
 つかさの声は、なんとなくぼんやりとしていた。
「安静にして、早く治しなさい。こなたもみゆきも、みんな心配してたよ」
「うん。……けほっ」
 ふたたび体温を計らせてみると、なんと39.6度もあった。
 びっくりして、わたしはお母さんを呼びに台所へと走った。
 でも、お母さんはまだパート先から帰ってきていなかった。
「ど、どうしよう」
 39度というのは、病院に行かなくても大丈夫な体温なのだろうか。
 考えるだけで縁起が悪いが、もしかして、死んでしまったりすることはないのだろうか。
 わたしは急いで電話機の前まで走り、救急車を呼ぼうとした。
「……繋がらない」
 なぜ? と考えるわたしの目の前で、電話機はツー、ツー、と無機的な音を立てていた。
 壊れてしまっているのか。よりによって、こんなときに。
 再び二階に上がる。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
 憔悴したわたしの表情に気づいたのか、つかさが心細げにこちらを見る。
 とても辛そうであり、表情は弱々しかった。
 どうしよう。
 つかさが死んでしまうかもしれない。
「ちょっと待ってて!」
 言い置いて、わたしは洗面所へと走った。
 タオルを水につけて絞る。部屋に戻ると、それをつかさの額にあてた。
「……気持ちいい。ありがとう、お姉ちゃん。……けほっ」
 不安になり、思わずつかさの手を握る。
「……お姉ちゃん?」
 つかさはきょとんとしたが、わたしは尚一層、力を込めてつかさの手を握った。
「つかさ。絶対に病気を治しなさいよ。そうでないと、ただじゃおかないからね」
 声に力を込めて、わたしはそう言った。
 力みすぎじゃないかと誰かに言われそうなほどだったが、そんなこと、今はどうでもいいのである。
「う、うん。わかった」
 つかさは気圧されたようにコクコクと頷いた。
 そう。それでいい。こんなとき、妹に拒否権は存在しないのである。



 結局、家の電話がダメなら携帯電話があるじゃないかということにわたしが気づいたのは、お母さんが帰ってきて、慌ててつかさを病院へ送って行ったあとだった。
 医者の診断によると、つかさは重めのインフルエンザに罹っていたと言うことだ。 
 薬を貰い、つかさはそのあと、一週間寝込んでいた。
 そして一週間経って、つかさがやっと全快した頃、今度はわたしが熱を出して倒れたのだった。


「あのー、お姉ちゃん、大丈夫?」
 体温計を咥えながら寝込んでいるわたしに、つかさがおずおずと声をかけてきた。
 じろっと睨むと、つかさは立ったままビクビクと怯える。
「大丈夫じゃないわよ。誰かさんに伝染されたせいで、インフルエンザに罹っちゃってるんだから……けほけほっ」
 ちなみに熱は38度ある。
「その、だって、仕方ないよね? わ、わざと伝染したわけじゃないんだし…」
 そう言って、つかさは胸のあたりで指をもじもじ絡み合わせつつ、上目遣いにわたしを見た。
 これはたぶん、『怒らないでね?』のジェスチャーなのだろう。
 まったく、姉のわたしから見ても、つかさは本当に可愛いのである。
 でも、なんだか悔しいから、少しだけ意地悪を言わせて貰うことにする。
「罰として、熱が下がるまで付きっ切りで、わたしの看病をすること。わたしがアイスを食べたいと言ったら走って買ってくる。わたしが頭痛いと言ったら冷たいタオルを持ってくる。…いいわね?」
「ええっ? そ、そんなぁ、お姉ちゃん。わたしだって、休んでるあいだに溜まっちゃった宿題をやらないといけないのに」
 わたしは不敵に笑ってみせる。
「そんなの簡単じゃない。ここでわたしの看病をしながら、ついでに宿題も一緒に片付ければいいのよ」
「ええーっ?」
 つかさはびっくりして目を点にしていたが、わたしとしては、そのくらい当然やって貰いたい。
 だって、つかさのときには、こっちだって散々に心配させられたのだ。
「これは、姉としての命令だからね。いいわね? つかさ」
「うぅ。お姉ちゃんの意地悪……」
 熱で朦朧とする意識の中、わたしはにっこり微笑んだ。
 こんなとき、妹に拒否権は存在しないのである。

 END













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  • 重要なことなので2回言いました -- 名無しさん (2009-06-16 22:43:29)
  • 重要なことなので -- 名無しさん (2009-06-16 21:48:36)
  • なぜ同じ文章が二回も… -- 名無しさん (2007-11-25 01:09:11)

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