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IFから始まるStory 第1章 出会い編

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匿名ユーザー

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 新しい制服に身を包み満開の桜並木を一歩一歩踏みしめながら歩いていると、
新しい生活が始まったと実感するのは私だけでは無い筈。

だけど体の奥底で蠢く蟲みたいな嫌な感覚は、
右を向いても左を向いても見慣れない景色の所為なのか
又は今までとは明らかに変わってしまった生活を受け入れられない
私の心が落ち着かない所為なのか、
恐らく両方正しくて両方間違っていると思う。

もっと単純に言うならば『つかさ』が私の隣に居ない事が最大の理由。

ピンク色に染まった並木道を見ても、
高校1年生のクラス割を見ても考える事はつかさの事ばかり。
『またドジ踏まなければ良いけど』とか『気の合う友達が出来れば良いけど』とか、
姉として心配事は尽きないけど
でも本当は『つかさの傍に居たい』と思う気持ちで一杯になっている自分を認めたくないだけ。


「入学式お疲れさん。とりあえず自己紹介しとこか」
妙な関西弁を話す金髪の先生が私達のクラス、1年B組の担任で名前は黒井ななこ。
入学早々にする事と言ったら自己紹介がセオリーで、
あ行から始まるから私は中間ぐらいだけど
そういえば以前読んだラノベで突拍子も無い自己紹介をして
クラス中をドン引きさせてた話が有ったわね。
たしか・・・

「ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人・未来人・異世界人・超能力者が居たら私のところに来なさい」

そうそう、そんな感じって。あれ? 今のは空耳かしら

「そっか~、まだ放送されてないから分かんない人が多いか・・・それじゃ改めて、
幸手市在住の泉こなたです。こんなナリでも飛び級小学生じゃ無いよ。
あれ~、これもダメ?」


初日の自己紹介で1年B組のクラスメイト達を宇宙の彼方に追いやり
朝から憂鬱だった私の心を解きほぐしてくれた人物。
これが泉こなたとの出会いだった。


衝撃的な自己紹介から1週間ほど経過してクラスメイトの顔ぶれを大分把握できた頃、
私にも友達と呼べる仲間が出来た。
名前は『高良みゆき』と言い、育ちが良さそうな所謂お嬢様タイプで
何所かズレた感じの天然系。
つかさとも相性が良さそうだから今度紹介してみようかと思っているんだけど、
みゆきは東京在中で私達は埼玉県在中。
土日を使わないと一緒に遊ぶのは難しいのよね。

そういえば中学の時に一緒だった峰岸や日下部は隣のクラスになったから、
B組には同じ中学出身者が居ない。
それも少し寂しいけど気分を一新するには丁度良いわ。

「みゆき、お昼一緒に食べない?」
「あ、はい。柊さん」
その『柊さん』って呼ばれるのは恥ずかしいから辞めて欲しいと言ったんだけど、
みゆき曰く『親しい仲にも礼儀あり』だそうで中々辞めてくれない。
私も気にしないようにしているつもりだけど、
手の届かない場所が痒いような変な感覚なのよね。

「みゆきは初日の自己紹介でクラス中を凍りつかせた泉さんと何か話をしたの?」
「まだなんです。お話をしたいとは思っているのですが中々機会が無くて」

初日からクラス全員に顔と名前を覚えさせるには十分すぎる
インパクトな自己紹介を見舞ってくれた泉こなたと話をしてみたいとは思っているのだが、
当の本人は放課後になると直ぐに帰ってしまう帰宅部らしく
私が教科書を鞄に詰めている時には既に行方知らず。
お昼休みの時はいつも寝ているから話しかけにくいのよね。


そんな感じで4月も半ばを過ぎた頃、それは突然やってきた。




放課後に糟日部駅前の本屋へ立ち寄った時、泉こなたの姿が見えたから
『本読むんだ』と物思いにふけていた次の瞬間、
目の前の男性に気付かず盛大にぶつかってしまった。
「あ、大丈夫?」
「はい。私こそすみません」
本来なら此処で終わりなのに、何故か闘志を立ち昇らせている泉こなたが後ろに立っていて
「私の学校の生徒に何をする!」
と聞こえた時には惚れ惚れするくらい奇麗な正拳突とローリングソバットが
私の目の前で繰り出されていた。

「逃げるよ!」
「え、ちょっ」
有無を言わさずに私の手を引くと、全速力で走りだしたのに
「危なかったね~」
と、余裕で話しかけてくるこいつを見て思った事は
『小学生にしか見えない体の何処から、そんな体力が湧くのかしら』なんて、失礼極り無い事だった。

「な・・・ゼエ・・・なんで・・・ハア・・・わたしまで」
「あの場に居たら学校とか教える羽目になるじゃん。だから連れ出してあげたの」
『善意でやってあげた』みたいに言ってくれてるけど、
めちゃくちゃ迷惑だと感じるのは私の気のせいかしら?
「そういえば自己紹介まだだったね。私は」
「泉さんでしょ」
私が先に名前を言ったのが原因か、
又は走った事で脳に酸素が行き届いていない所為なのか分からないが、
泉さんは半目の瞳を若干開き『あれ?』という顔をしている。
「え~と、何で私の名前知ってるの?」
「だって同じクラスじゃない」
「・・・あ~、うん。そうだね」
まさかとは思うけど
「私の名前、知ってる?」
「え~と、ちょっと度忘れしちゃって」
「高良みゆきよ」
「あー、そうだった。今後も宜しく」
やっぱり知らないみたいね。


迷惑を掛けられた腹いせじゃないけど、今日だけ『高良みゆき』を語ってしまった私って
大人げ無いかなと思いつつ、泉さんは明日になれば名前を忘れてる気がするから
『別に良いよね』と自己完結する事にした。

「泉さんは、これから家に帰るの?」
「こなた」
「へ?」
「私の事はこなたで良いよ」
「えーと、それなら私も呼び捨てで良いから」
「それじゃ遠慮無く、宜しくみゆき」
後悔先にたたずって良く言ったものだわ。
あんな嘘言わなければよかった。

こうして私は二度と駅前の本屋に行けなくなったという問題を残して
泉こなたとのファーストコンタクトに成功した。


次の日。
朝のHR前にみゆきと談話しているとこなたがやって来て
「みゆき~。昨日はあの後、何とも無かった?」
「えっと・・・何の事でしょうか、泉さん」
「あれ?」
話が噛み合わないこなたとみゆきが頭頂部に?マークを浮かべている姿と、
それを見て事情を知っている私が笑いを堪えているという
傍から見れば何とも珍妙な光景が教室の隅で繰り広げられていたが、
黒井先生が朝のHRを始める為に元気良く扉を開けた事により有耶無耶になってしまった。

それでも私は『後で説明するか』と、休み時間が来るのを楽しみに待っていたり
『つかさに紹介する人物が一人増えたわね』などと、
今度の休日にこなたを家に招いてみようかと考えたりと
気がつけば、高校に入って初めて『楽しい』と感じた瞬間だった。












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  • これは… 面白い…!! -- チャムチロ (2012-09-28 07:46:41)

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