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言霊 2話

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「お、おじゃまします」
私に背を向けていた状態のかがみ先輩に向かって呟くと、かがみ先輩はくるっと私の方を見上げて少し潤んだ瞳を細めた。
「いらっしゃい。って普通は私の方が『おじゃまします』なんだけどね」
ハハッといつもより半音くらいうわずった声でかがみ先輩が笑った。
頬がうっすらと赤いけど…大丈夫かな?
自分が病気がちなせいか、人の体調不良には人一倍心配してしまう。そんなの杞憂なのにって前にゆいお姉ちゃんに言われたんだけど、心配なものは心配だ。
だから聞かずにはいられなかった…
「あ、あの…何してたんですか?」
と。


「へっ?」
「え…?」
それぞれ違う言葉を発したけど、お姉ちゃんもかがみ先輩もびっくりしているような顔をしている。
あれ、私なんかおかしい事言ったのかな?


「………」
「………」
「…お、お姉ちゃん?」
おかしな空気に耐えきれなくて、助け船を貰おうとお姉ちゃんの名前を呼ぶと、ちょっと困ったように眉毛をハの字にしながら溜め息をついた。
「うん、まぁいずれバレると思ってたんだけどね…」
「ちょっ…こなたっ!!」
やれやれといったように両手をあげながら話すお姉ちゃんの口をかがみ先輩が手で覆う。


いずれバレる?
なにがバレるんだろう…。
お姉ちゃんとかがみ先輩が私に秘密にしていることがある、ってことなのかな?

次の言葉を聞きたくてもお姉ちゃんの口はかがみ先輩の手で抑えられている。

……なんだろう、このモヤモヤする気持ち。
怒りでも悲しみでもない、だけど胸の奥にチクリと針を刺されたような痛み。
お姉ちゃん達が私に秘密ごとをしていたから、っていう理由じゃなくて…
かがみ先輩がお姉ちゃんに触れる度、お姉ちゃんがかがみ先輩に瞳を向ける度、感じるこの感情。



「…ぷはっ、かがみっ!!いつか話すって言ってたじゃんっ!」
「そ、そうだけど…こ、心の準備が…」
「ゆーちゃんは、私達の…声、聞いたんだよね?」
かがみ先輩が諦めたように頭を抱え込む姿を横目で見ながら、お姉ちゃんが私の瞳を見据えた。
声…?あ、確かにお姉ちゃんの部屋から聞こえてきた声で起きたけど…
「う、うん」
「…そっか。ね、かがみ、言うよ?」
私が見たことのないような優しい瞳でかがみ先輩を見つめる。

チクッ。

…まただ。
なんなんだろう。この痛み。
よく分からない痛みの元凶を和らげようと胸の真ん中を擦ってみるけど…一向にひかない。

「…分かった、わよ…」
痛みの緩和に注意が向いていたけど、かがみ先輩がはぁと溜め息をついたその言葉で私は顔をあげる。

「うん。…あのね、ゆーちゃん」
いつもの細い目じゃなくて、きちんと瞳を開いた目をして私を見据える。
なんだかその目を直視するのが気恥ずかしくて、お姉ちゃんとかがみ先輩の座っている間のテーブルの端に視線を下げる。




「私達……付き合ってるんだ」






――――へ?

今なんて…
付き合ってる?
誰が、誰と?

お姉ちゃんの口から発された言葉の意味が分からなくて…
いや、正確には分かりたくなくて…
おずおずと視線をかがみ先輩へと向けると、少し恥かしそうな、バツの悪そうな表情を私に向けていた。

「…っ」
その顔に、その表情に何故か胸のあたりから頭までカッと重力に逆らうように血液が上がった。

「ゆたかちゃん…?」
バッと顔を背けた私に心配そうにかがみ先輩が声を掛ける。

「…なんでも、ないです」
上がった血液が今度は目頭の方に下がってきたみたいで、視界が自分の意識と関係なしに歪んでいく…。
悲しい、いや違う…
切ない?でも違うような、よく分からない感情が私の胸を押しつぶす。

痛い、痛い、痛い。

心配そうに私を見つめるお姉ちゃんの視線と、かがみ先輩の視線。

胸が苦しい、呼吸でさえままならないほど、喉が焼けるように熱い。

目の前にいる二人が、どんどん霞んで…


「…っ、ゆーちゃんっ…?!」


慌てて私の方に駆け寄るお姉ちゃんの顔を最後に、私の意識は暗い暗い闇へと落ちていった。












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