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お花を食べましょ性の花

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だれでも歓迎! 編集
 三月上旬になると頭の中で自動再生されるワンフレーズ。
 女雛と男雛の人形を飾り女の子の健やかな成長を祈る日。
 そう、今日は楽しい雛祭り。





 お花を食べましょ性の花





「バ、ル、サ、ミ、コ、酢、っと……」
 三月三日の昼下がりの事。我が家の居間には私とつかさの二人のみ。
 メールをしているのだろう、打っている文字を無意識なのかわざわざ口に出しながら携帯を操作するつかさ。
 そんな妹の様子を、私はいつになったら慣れるのだろうかと少し呆れながら、ちらりと横目で覗き見る。
 目的の文字を画面に表示するボタンを探しているしかめっ面。
 それを発見して瞬く間に歓喜に満ちる明るい顔。
 二つの表情を忙しなく繰り返すつかさに、私は何となく微笑ましさを覚える。
「グ、グ、レ、カ、ス、っと……」
 僅か数秒で前言撤回。何を打っているんだ何を誰に送るんだ誰に。
 頭のほんの片隅でも想像出来なかった妹の言動に何も言う気になれず、私はただ眺めていたテレビへと視線を戻す。
 画面には最近知った番組『伊藤誠家の食卓』が放映されていた。
 この番組は全国各地から取り寄せられた日常で役立つ簡易なテクニックや、身の回りのちょっとした工夫で出来る便利な事とかを紹介するものだ。
 毎週火曜日の夜七時から絶賛放送中で、視聴率は毎回フラン○ースの犬の最終回を越える数値を叩き出していると専らの噂。
 ちなみに寄せられるお便りの大半は誠氏ねというものらしい。
「では最初はこのコーナー!君が使っている丸秘テクニックを紹介するぞっ」
 この時間帯だからこれは再放送なのだろうかとか、高視聴率の噂話は本当なのだろうかとか、番組の内容とは掠りもしない事を頭に浮かべながら頬杖をつく。
「まずはこのお便り、高良みゆきさんのじゃんけんの新勢力につい」
 即座にリモコンを取り電源を切ったから、音声が途切れた。
「あれ、何でテレビ消したの?」
「不可解な映像が流れたもんでね」
 それを変に思ってか尋ねてくるつかさに事実のみを伝える。
 そう言えばこの番組度々途中にトラブルが起きて、その時は事態が好転するまで美しい湖を漂う船の映像が流れるんだったなと、自分で静まり返らせた電化製品を見て思い出す。
 まぁそんな事はさっさと脳内から削除するけど。
 っていうかみゆきまだじゃんけんの研究してたんだ。
「あのね、今こなちゃんとメールしてたんだけどね」
 さっきのメールはこなた宛だったのかよ。目まぐるしく変動する状況や思考についていけず溜め息が出る。
「今お雛様飾ってるから家に来ないかだって」
 一体あの内容でどうやってそこまでのやり取りをしたのか甚だ気になったが、世の中には不条理な事はいっぱいあるんだと浮かび上がった疑問を無視する。
 もしかしたらただ手伝いに借り出されるだけかと思ったが、こなたの誘いを断るには至らず私達は早速家を出て行った。

「おー、いらっしゃい」
 泉家のインターホンを押した後、程なくして扉が開かれ歓迎の言葉と共にこなたが姿を現した。
「おっすこなたー」
「お邪魔しまーす」
 軽く挨拶を返して用意された室内履きに履き替える。
「それにしてもあんたの家、まだ雛人形飾ってたのね」
 先導して居慣れた家を案内してくれるこなたの背中に、声を掛ける。
「ゆーちゃんがやりたいって言っててね、まぁ私も反対じゃないからって」
「家も昔はやってたけど、今はやらなくなったよね」
「皆成長したからね」
 つかさの発言に合わせたところで、ふと思う。
 ひな祭りって女児がいる家庭でその子の成長や幸福を祈る行事だ。
 という事は、こなたもまだ身長や胸囲が伸びる可能性に賭けているのだろうか。
 子供っぽいところがあるから、そうなんじゃないかと本気で考えてしまう。
 今のままで十分可愛いのになぁ。あ、でも大人の雰囲気を醸し出すこなたもちょっと見てみたいかも。
 網タイツとか黒ストとかガーターベルトとか、思いつく限りの大人の女性のファッションを脳内のこなた着せ替えツールで試してみる。
 私の中で大切な何かが次々と爆ぜていった。
 仕上げに純白のキャミソールとペティコートを着せて上目遣いプラス赤面で何かを期待しているようなかつ切なげな目線アンド口調で私の名前を呼ばせて、フィニッシュ。
 これは良いフィニッシャー。太陽神に頼らずともワンターンキルも三タテも可能だろう。
「お姉ちゃん、魂が時空の壁を凌駕して未知なる世界に旅立とうとしてるよ」
「あ、ごめんつかさ、呼び戻しといてくれる?」
 数秒後、正常に戻った私は今その事を考えるのは止めておこうと思い立つ。目の前に張本人がいるんだし、帰ってから自室でやろうっと。
 何だかんだしている内に居間に到着。
「古いものを引っ張り出してきたからね、埃とか凄かったんだよ」
 こなたの言ったとおり結構な年代物かと思える雛祭りの用具一式が、箱に入ったまま蓋を外され床に置いてあった。
「灯りをつけましょ燭台に~、お花をあげましょ蓮の花~、五人囃子と増えたIKKO~、今日は楽しい雛祭り~」
 ゆたかちゃんが歌いながら飾りつけに勤しんでいた。でもそんな雛祭り絶対楽しくないから。
「お稲荷様とお雛様~、二人並んでスガ○カオ~、余命の少ない姉様に~、良く似た患者の白い顔~」
 正規の歌詞なら非常に素晴らしい光景なんだろうなと思った。
「あ、柊先輩方、いらしてたんですね」
 私達の存在に気づいたゆたかちゃんは、一旦作業の手を止めて振り返る。
「こんにちはゆたかちゃん」
「わざわざ呼んでくれてありがとうね」
「いえいえ、枯木も山の賑わいですから」
 そう言ってゆたかちゃんは笑う。
 その諺意味理解して使っているのかと指摘したくなったが、ゆたかちゃんの満面の笑みが何故か制止を掛けた。
 笑い返しているつかさを見る限り、きっと本当の意味を知らないのだろう。
 私はふと、近くにあった何かの衣装らしきものに目が留まった。
 雛祭りにこんなものを使用する知識は、私の中にはない。
「何だろこれ……」
「雛人形の衣服を再現したコスプレ用品ですよ。泉さんが私達の為に用意したらしいです」
 ああ、なるほど。となると私達はこれの為に呼ばれたのだろうか。
 …………
「みゆき、いつからいた」
「才女には神出鬼没のアビリティがデフォルトで備わってるんですよ」
 聞き覚えがあるようなないような台詞を吐くみゆきは、ソファーに座って自宅のようにくつろいでいた。
「才女って自分で言うか」
「ちなみにじゃんけんの勢力を作り出すアビリティもデフォルトで備えられています」
 聞けよ人の話を。っていうかそのネタはもう良いから。
 何処かおかしい友人に溜め息を一つ。
「かがみさん、溜め息をつくとハッピーがエスケープしますよ」
「みゆき、日本語で喋れ」
「ソーリー」
 取り敢えず数発殴っておいた。

「あ、かがみ見ちゃった?」
 こなたが私と衣装を交互に見ながら聞いてくる。
 その視線の移り変わりで、私はこなたがこの事を内緒にしてて私達を驚かせたかったんだなと理解する。
「ごめん、見ちゃったわ」
 先に隠し事を発見してしまったという事実は変えようがないので、私は正直に謝る。
「いや、良いんだよ。どうせ皆にも見せるしね」
 あっちが終わったら皆で着替えよっかと、こなたはつかさとゆたかちゃんが準備をしている方を向いて付け加える。
「それまで雛霰でも食べてようよ。かがみの為に奮発したんだよ」
 そう言って台所に向かうこなた。すっかり私達が強制的にコスプレさせられるのを反対する機会を逃してしまった。
 でも偶には良いかと、私はみゆきの真向かいに腰を下ろす。
「それにしても人形飾るなんて久し振りね」
「そうですね」
 昔を懐かしみながらみゆきと会話を交わす。
「昔は全て飾り終わった後に人形をどれだけ倒さずに雛壇の赤い毛氈を抜けるかなんて、テーブルクロス引きみたいな事やりましたよね」
「やってねーよ」
 私のパン工場より奇怪だなそれ。そして成功率が異常に低そうだ。
「お待たせしました、お嬢様。雛霰の盛り合わせで御座います」
 執事喫茶の見よう見まねをしながら、小皿に出しただけの砂糖入りの蒸したもち米を持ってくるこなた。
「あのね……そういうのは正装で私と二人っきりの時にやりなさいよ」
 パンダのトレーナーを着用しているこなたに言う。
「ツッコミを入れる箇所が違いますよ」
 まさかみゆきに言われるとは思っていなかった。
「流石みゆきさん、ボケもツッコミもこなせるんだね」
 こなたはこなたで変に感心しながら手に持った容器を机の上に乗せる。
 そして私とみゆきが取るよりも早く一粒摘み、私の方を向いた。
「鬼は外っ」
 叫んで霰を斜め上前方に指で弾く。
 流動的に放物線を描き、私目掛けて飛んでくる菓子を、口を開けて器用にキャッチする。
「節分はもうとっくに終わったわよ」
 口内に入ったものを噛み砕きながら、こなたに告げる。
「だって誰かさんの所為で豆撒き出来なかったんだもん」
 ああ、そう言えばそうだったわね。私は丁度一ヶ月前の出来事を思い返す。
「すみません泉さん。全て私の責任です」
 何故か私の代わりに謝罪をし始めたみゆきにこなたは驚きの色を隠せていなかった。
 私は何だか面倒になってきて、我関せずというオーラを放ちつつ色取り取りの雛霰を食べていた。
「そんな食べると太るよ?」
「良いのよ。こなたと運動するから」
 しれっと返すとこなたの顔が瞬時に沸騰して真っ赤になった。想像力が豊かだな。
「もう、みゆきさんもいるんだからね……」
 そう言って羞恥心に満ちたこなたは唇を尖らせて俯く。
 MK5、マジで恋する5秒前だ。もう恋してるけど。
「ダイエットにはブルーベリーが良いですよ」
 別に良くないと思う。
 ああ、こっちもMK5、みゆきが壊れる五秒前なのか。もう壊れてるけど。

「終わったよー」
 暫く経って、つかさが私達の方に近づきながら教えてくれた。後ろにはゆたかちゃんもくっついて来ている。
「おー、お疲れさん」
 こなたが片手を上げて二人を迎える。
「お手伝い出来ずすみませんでした」
 ソファーでだらけて動こうとしなかった奴が何言ってんだ。
 助力の意志も謝罪の気も微塵も感じられないみゆきを心の中で毒づく。
「いえ、最初から期待してませんでしたから」
 笑顔と毒舌を同時に振り撒くゆたかちゃんは、間違った事は言っていない。
 みゆきは悪たれ口を叩かれても特に動じていないようだった。
 温厚なのか気づいていないのか。
 もしかしたら怒りを溜めていて、みゆきがキレる5秒前なのかもしれない。
「普段は大人しい委員長がキレる姿かぁ、ちょっと見てみたいね」
 何故か私の心の中を読むこなただったが、こなただから別に構わない。
 だってこなただから。
 もしかしたらテレパシーみたいなものがあるのかもしれないと思い、私はそんなものよりもスクール水着を肌蹴させたあんたの妖艶な姿の方が見てみたいわよと念じを送ってみる。
 伝わらなかったようなので実際に耳元で囁くと、こなたは茹蛸みたいに顔を上気させていた。
 相手だけ読心術を取得しているのは卑怯な気がしたが、気にしない。
 だってこなただから。
 こなたの興奮が冷めるまで暇になったから、私は近くにあったリモコンを手に取りテレビの電源をつける。
 『伊藤誠家の食卓』が終了しようかというところだった。
「皆からのお便りどしどし募集します。電話番号は0120 510-427」
 0と5の空白は何なのだろうか。
「覚え方は、誠死にな、誠死になです」
 ああ、空欄、つまり間なのか。意外と考えられてるのね。
 つーか自分で死ねって言ってんのか。
「あ、この番組……」
「みゆき知ってるの?」
「はい、毎週標準録画しながらリアルタイムでも見て寝る前にスロー再生で見返してます」
 どんだけファンなんだよ。これが高視聴率所以の現実か。
「そろそろ皆でコスプレパーチーだね」
 落ち着いたこなたはそう呟いて何着もの衣装を取り出す。頭の上にクエスチョンマークを浮かべているつかさとゆたかちゃんにみゆきが説明をする。
 広げられた衣服は一通り揃っていた。お内裏様やお雛様は勿論、五人囃子や官女とありとあらゆる雛人形のコスチュームが目の前に広がっている。
「あんた、これどうやって手に入れたの?」
「企業秘密です」
 てっきり禁則事項がくるのかと思ってたけど違った。元ネタ分かる人そっちの方が明らかに少ないだろ。
「じゃんけんで勝った人から選んでいこうか」
 こなたの発案にみゆきの目が光ったのは、決して幻覚ではない。
「私のじゃんけんは百八式までありますよ」
「一から百八まで全部言ってみろ」
「では、少し長くなりますが……」
 全て割愛させて頂きますとは作者の弁解と言い訳。
 小一時間後。
「おっけー早速やろうか」
 これ以上時間を引き延ばされては堪ったもんじゃないので、話題を切り上げてとっとと勝負に移る事にする。

 更に小一時間後。
「勝負つきませんね……」
「だ、だね……」
「疲れたぁ……」
「……みゆきいい加減グーかチョキかパー出しなさいよ……」
「い、嫌です……」
 決して最初の三通りを出そうとしない意固地なみゆきに、私達は決着がつかずに疲労困憊といった様子だった。
 ちなみにみゆきは我々のじゃんけんを無効化してあいこにする能力も持っている。
「この際、皆で五人囃子というのはどうでしょうか」
 ゆたかちゃんが提案する。
「お姉ちゃん、五人分ある?」
「うん、あるよ」
「じゃあそうしようよ」
「仕方のない人達ですね」
「主にお前の所為だからな」
 思い思いの事を口に出し、こなたから服を受け取る。
 しかしこれを着るのかと思うと、先程のゆたかちゃんの案が少しだけよろしくないものに思えてきた。それは他の四人も同様らしく、マイフェイバリットコスプレイヤーこなたも例外はなかった。
 やっぱり、お雛様になりたかったのだろうか。
「自分で用意して何だけど、これはちょっと抵抗があるね……」
 やっぱりお雛様が良かったのね。
「ん?何?かがみ」
 私にも読心術あるんじゃないと上機嫌になりながら、こなたに歩み寄る。出動命令がでた私は、右手でこなたの手を引いて左手でまだ残った衣装が入ったままの箱を持つ。
「ちょっとこなたの部屋まで行ってくるわ」
「ちょ、かがみっ!?」
 別にこんな縛りがなくても、私達は着たい服を着られる権利があるのだ。
 そういうわけで、これから泉こなたのファッションショーを開催する。場所はこなたの部屋、私は司会兼解説兼着付け兼観客兼審査員兼ゲスト。
 観客の興奮が高まって乱入や襲い掛かりが発生するかもしれないが、許可する。
 カメラやビデオの撮影もまた、許可する。
「何をされるつもりですか?」
 脳内でおかしな規則を作っていると、みゆきの声がした。
「恋人同士が二人きりになってする事なんて決まっているでしょう?」
「しりとりですね」
 何でだよ。
「つかさ、もし私の精神が崩壊して自我が閉鎖空間で暴れ出した時は頼むわ」
「うん、任せて」
 妹に緊急事態時の対処を一任して、私はこなたと一緒に部屋へ向かう。
「先輩、これをどうぞ」
 ゆたかちゃんが何処からか取り出してきたのは、私が持っていこうとしている箱と形状が全く同じ、やはり箱。英語でいうとボックス。
「これは?」
「中にスク水、ブルマ、ナース服、メイド服、エプロン、パジャマ、巫女服、浴衣、チアガール、セーラー服に団長腕章、サンタ服ミニスカバージョン、ツーピースの鬼の衣装が入ってます」
「ゆーちゃんっ!?」
 分量的にその全てが収容されているのは不思議だったが、特に気に掛からなかった。
「足りないものがあれば言ってください」
「そうね。取り敢えず白のキャミソールとゴスロリの衣装の追加をよろしく」
「分かりました」
 了解の意を示す返事をして、ゆたかちゃんは何処かへ行ってしまう。
「ゆーちゃん!助けてよお姉ちゃん自分で自分が心配だよっ!」
「大丈夫。パジャマはボタン付き、ネグリジェ、スリップと各種揃ってるよ」
「いや!そんな心配これっぽっちもしてないし!」
「キャミソールとペティコートは?」
「入ってますよ」
「ん、了解。さ、行くわよ~」
「いや待って待って!またこんな展開っ!?何で特別な日に限ってこうなっちゃうのさ~!」

 どうなったかは特に述べるまでもないだろう。

 時は五日ほど流れて。
「来たわよー」
 私は再びこなたの家を訪れていた。
「いらっしゃい」
 同じようにまずは居間に通される私。
 私が今日訪問した理由は、ゆたかちゃんからまだ家に雛壇が飾ってあるという有力情報を聞いたからだ。
 私はそれを知った時、とある作戦を思いついたのだった。
 その内容を反芻しつつ、こなたの背後に人形が飾られてある事を確認する。
「こなた、今日ゆたかちゃんとおじさんは?」
 まずは下準備。
「……二人とも出掛けてる」
 私の思惑を汲み取ったのか、ぶっきらぼうに答えるこなた。
 目線を逸らしたから、きっと今こなたの頬は紅潮してこれから起こる事態に期待を寄せているのだろうと身勝手な解釈をする。
「それにしても雛祭りの日はお楽しみでしたね」
 普段のお返しの意味も込めた、作戦の第一段階。
「!……あれ大変だったんだよぉ!終わった後凄く疲れたんだからねっ」
 そんな事、着替えるのを手伝いながら身体を触ったり開幕三秒で襲い掛かったりした私が一番良く分かっている。
「服装が変わる度にあんな事してたんじゃ、そりゃ疲れるに決まってるわよ」
 私の他人事みたいな言い方に、こなたの顔が益々色づく。
 事実私も疲れ果てて何度もつかさの世話になったり、家に帰ってからも脳内のこなた着せ替えツールを起動し忘れたほどだ。次の日起動したけど。
「っていうかあのカメラとビデオ何処から持ってきたのさ」
 始終三台のカメラをスタンバイさせて五台のビデオを回していた風景を思い出したのか、こなたが訝しげな目線を向ける。
「こなたのコスプレ姿を取りたいですって言ったらおじさん、快く貸してくれたわ」
「お父さん……」
 こなたは顔を引き攣らせて失望しているようだった。私が言うのも何だが、確かに親としては間違っていると思う。
 でも人としては間違ってませんよおじさん。また後日約束の写真渡しに伺います。
 一人ぶつぶつとぼやくこなたを目の前に心の中で語り掛ける。
「でも何だかんだ言って、こなたも楽しそうだったじゃない」
 私の言葉にこなたがむくれる。
 そろそろかしらね。私は作戦を第二段階へと進める。
「あれっ……」
「ど、どったの?」
 わざと目を見開いて驚いた様子を見せると、思ったとおりこなたが食いついてきた。
「あんた……まだ雛人形片付けてなかったの……?」
 その事実に震えているかのように先程とは印象をガラッと変えて呟く。
「う、うん。まだ良いかなって……」
「そんなっ」
 私は叫んで泣き崩れる真似をする。
「雛人形は早く片付けないとお嫁に行くのが遅れちゃうのよっ」
「へ?ああ、うん、良く言うね……って」
「あんなに楽しそうだったのに、実は私のところに来たくなかったなんてっ……」
 我ながら上手な演技だと思う。
「か、かがみ!泣かないでよっ!」
 手を目元に宛がうと、こなたは明らかに狼狽し始めた。
「そんな事ないよっ!私、かがみの事大好きだよ!」
 からかわれた所為もあって冷静な判断が出来ないのだろう。すぐに見抜かれてしまいそうな偽りの態度も今のこなたには判別がつかないようだ。
「じゃあ、証拠を見せて」
「しょ、証拠?」
「うん、こなたが私を好きって言える証拠よ」
 こなたは腕を組み考え始める。
「かがみギザカワユス!」
「それは翔子でしょ」
「うう~……一回だけだからねっ」
 こなたはそう言って、ズボンを脱ぎ始めた。

「んっ……」
 私の眼前で仰向けになって、ショーツ越しに手で快楽を弄っているこなた。
 その淫猥な光景に私は唾を飲み込み喉を鳴らす。
「はっ……かがみぃ……」
 甘い吐息に混じって私の名前が呼ばれる。
 こなたの指が秘所を刺激し悩ましげに身体が揺すられると、それに応じるかのようにちゅぷちゅぷと水音が響く。
 利き手はそのままに、持て余されていた逆の手がボーダーのセーターの中に侵入していった。
 そして器用にそれを捲り上げ、小振りな乳房を包むブラを露出させる。
「んはぁ……」
 少しの間下着の上から胸を触っていたが、すぐに隔たりを排除して直に揉み始めた。
 全体を撫でたり突起を摘んだりをひたすらに繰り返す。
「慣れてるものね……」
 手つきを見て正直な感想を言う。
「もしかして毎日やってたりとか?」
「ま、毎日じゃ……な、いっ……!」
 手を止めずに律儀に事実を述べるこなた。
「じゃあ三日に一回ぐらいかしら?」
 意地の悪さを思わせる微笑みを止めない私の質問に今度は、返答は聞こえなかった。
「んんっ」
 その代理のように鼓膜を振るわせたこなたの嬌声は、確実に今までのものよりもボリュームが上昇していた。
 すっかり余裕がなくなってしまったこなたはたった一つの、快感を得るという事だけに全神経と感覚を使っているのだろう。
 絶え間なく押し寄せる快楽の波に理性が完全にさらわれないように、今にも消えてしまいそうな歯止めを掛けている。
 私に好意を伝える為にしているんだという事を忘れまいと、必死になって自我を失わないようにしている。
 その一生懸命な姿勢はまるで、開花寸前の風に揺られる一輪の花のようだった。

 作戦は少々の誤算を経たものの、無難に成功したと言えるだろう。
 いつも私とこなたが交わる時は、私が強引に済し崩す傾向が多かった。
 そんなシチュエーションに飽きて思いついたのがこなたから誘ってくるというものだった。
 それなら斬新だし私も満足するだろうと考えたのだ。
 しかし、面と向かって私を誘ってとは頼めない。そんなのこちらから誘っているようなものだ。
 そこで思い及んだのがこの計画だった。
 想定ではこなたが私に懇願するはずだったのだが、これはこれで非常に良いので贅沢は言わない事にする。
 随分と自分勝手だと思うかもしれないが、こなただって私の事を想っていなければこんな決断しないはずだ。
 私だってこなたの事を想っているから、こなたの全てを見たいと願うのだ。
「はっ……はぁっ……」
 どうやら私は相当な天邪鬼っぽい性格らしい。
 正面から頼む事が出来ないから、回りくどい手法を取ってしまう。
 だからツンデレって言われるのかもしれないなと軽く嘲笑しながら、私はこなたに覆い被さる形になって顔を接近させる。
「すっごい良いよこなた。頑張ってくれたからご褒美あげようね」
「かがみ……」
 口では素直に言えないから、態度でこなたが好きだって表そう。
 私はそう誓い、こなたの唇に自身の唇を重ねていった。

 余す事なくこなたの柔らかい唇を舐め回す。
「ん……」
 自然と漏れる声に私の気持ちは更なる高ぶりを見せている。
 それに身を任せて口内に舌を差し入れれば、同じ形状のものと絡み合った。
 触れ合う事で引き起こされる淫靡な感覚に、息遣いが徐々に荒くなっていく。
 制御機能が働かなくなっていく。
「んはぁ……」
 銀色の糸が私達を繋いでいる。
 光を複雑に反射する唾液は唇を離すとその細い姿を現し、すぐにまた繋がる事を予知しているかのように煌いていた。
「かがみ……きて」
 頭をショート寸前まで追い込む電撃のような感じにこなたも酔い痴れているのだろうか。私を見る目は何処か焦点が一致しておらず、しかししっかりと私を射抜いていた。
「こなた……」
 私は期待に応えるべく、再び顔を近づける。
「ひゃっ……」
 首筋にキスの雨を降らすと、こなたが不定期に震えた。
 舌を這わせたまま、舐める場所を首から鎖骨、胸へと移していく。
「ふあっ……」
 綺麗な桜色の突起物を口に含めば身体が弓なりに反られる。
 舌で転がせば振られる。
 舌先でつつけば声がする。
 私の愛撫に愛くるしい反応を見せるこなたに、胸から溢れる想いは増加の道を辿る一方だった。
 空いた手でもう片方の乳首を弄べば、より一層過剰に応答する。
「うんっ……」
 私はそれでこなたが股を擦り合わせている事に気づく。ついさっきの自慰行為で私が思っている以上に絶頂に近づいたらしい。
「もう我慢出来なくなった?」
 手を休めずに問い掛ける。
「う、んっ……お願いっ……」
 断る道理はなく、私は人差し指をこなたの秘裂に挿入する。
「んんっ!ああっ!」
 際立って強い電流に耐え切れず、半ば叫ぶように声を出すこなた。
 溢れ出る愛液の量は止め処なく増えて、私の指をあっという間にベトベトにしていく。
 中を掻き回すと、こなたが痙攣を起こしたかのように小刻みに肢体を揺り動かす。
「ひゃうんっ!」
 もっと感じて欲しくて、私は舌を差し込んだ。粘着性のある液体が口の周りに、床につく。
「かがっ、かがみっ……!ああっ!あああああっ!」
 一際長い喘ぎ声が室内に響いたかと思うと、それは一気に泉のように陰唇から湧き出してきた。
 蕾は美しい花を開き、素直じゃない私を受け止めてくれた。

「かがみ……」
 達した後、事後の余韻に浸るような目をしてこなたが私を呼んだ。
「私の気持ち……伝わった?」
 その言葉に私は笑顔が零れるのを自制出来なかった。
 わざわざ堪える必要もないかと思い、中途半端に服を脱いだままのこなたを抱き締める。
「ちゃんと伝わったわよ」
 温かい何かが流れ込んでくるのを感じながら、私はそう告げた。
「お雛様、片付けよっか?」
「……良いのよ、もう」
 伝統的な言い伝えを私欲に利用して、今更ながら後ろめたさが生まれてきたが、今はもう少しだけ欲望を追及したかった。
「お内裏様とお雛様に私達のラブラブなところ、見せつけてやりましょ」
 適当に言い訳を作り、私はまたこなたの唇を奪う。
 こなたはしょうがないなぁと笑い、開花するように両手を開いて私を受け止めてくれた。




















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  • GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-09-27 01:48:59)
  • 作者さんスゲエッスよww  
    ギャグは面白いしエロは綺麗だし。 
    GJでしたぜ。 -- 名無しさん (2012-12-27 15:59:17)
  • MK5www
    巧すぎるwww -- オビ下チェックは基本 (2009-06-07 23:38:23)
  • 誠関係ねえwwwでも 誠死ね(挨拶的な意味で) -- 名無しさん (2009-04-05 09:35:18)
  •  510-427 -- 名無しさん (2009-04-04 22:46:44)
  • センス良いですねー

    誠氏ねwww -- 名無しさん (2009-04-04 16:53:41)
  • 何気に替え歌も神レベルカオスwww -- 名無しさん (2008-12-14 23:28:27)
  • 今あるかがこなエロパロの中で一番好きだなあ。
    なんかもう、全てが巧い。 -- 名無しさん (2008-12-14 16:09:02)
  • めちゃめちゃ面白かったwwwエロと萌えと笑いのごちゃ混ぜスープ堪能しますたw -- 名無しさん (2008-10-07 21:10:48)
  • 「ハッピーがエスケープ」wwww -- 名無しさん (2008-07-24 18:29:32)
  • 取り敢えず挨拶的な意味で誠氏ねw -- 名無しさん (2008-07-23 16:20:40)
  • やべぇwwwイイwww
    誠氏ねよwwww -- 名無しさん (2008-06-23 13:39:03)
  • >「ソーリー」wwwwww
    このシリーズのみゆきさん大好きw
    えっちぃシーンの描写も上手くて素晴らしいです。 -- 名無しさん (2008-06-01 20:04:39)
  • このこなた可愛すぎるwww誠死ねwwwww -- 名無しさん (2008-05-04 23:30:44)
  • みゆきGJ
    誠氏ねよww -- 名無しさん (2008-05-04 21:50:59)
  • テンポのいいギャグとエロが高いレベルで融合。GJでした -- 名無しさん (2008-03-04 05:09:02)
  • GJ -- 名無しさん (2008-03-03 18:11:09)

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