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あるハンターの憂鬱 ~VH・かがみ 外伝~

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匿名ユーザー

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   あるハンターの憂鬱 ~VHかがみ・外伝~
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私は現在、ある事で頭を悩ませている。
……最近になって、私の家に居候がやってきた。悩みというのはその居候についてだ。
学校の休み時間、その時間にそいつはやってくる。ほら、今も早速……
「コーナタっ」
「んにゅ、お、お願いだから学校ではそんなにべたべたしないで……」
紫のツインテールをなびかせ、我が家の居候が私にくっつく。……さり気に手を胸の辺りに這わせているのは無視しておこう。そうしないと図に乗る。
「じゃあ家だったらいいのね?なら早退しましょうか」
「無茶言わないでよ、私だって単位がギリギリなんだから」
「そんなのいいじゃないの。私にとってはコナタが全てなのよ」
相変わらず話を聞く耳を持たないこの居候。彼女の口からはキラリと光るものが。……それが涎ではない事を付け加えておこう。
あーもう、とキスを迫る彼女の顔を抑えながら、私はこうなった経緯を思い出していた……

            ***

まず始めに言っておこう。……見た目ただの高校生である私・泉こなたは、人には言えない仕事をしている。
……とりあえず、『人に言えない』という単語から真っ先に風俗関係を思い浮かべた人の頭には一発プレゼントするからよろしく。
そんなちゃちな仕事ではない。……人知れずに夜の者達を狩る、いわゆる一つの悪魔狩人だ。
え、信じられないって?……まあ、私自身そんな者がいるなんて事を信じてなかったからわかるけどね。でも、そいつ等は実際にいる。そして、確実に暗躍しているのだ。
「さて。これから潜入しなくちゃいけないんだけど……」
今日も私はそんな悪魔(私の専門は吸血鬼)を狩るために、夜のある廃校に来ていた。
「まずこの門が問題か」
廃校の校門は年月の経過によりさび付いて、すでに移動式の柵が動かなくなっている。動いたとしてもかなりの音が鳴り、気付かれてしまう。
「仕方ないな、他の所だと罠がありそうだし……飛び越えるか」
そう言って、私は自分の身長より少し低めの柵の上に手を置き、屈んで力を溜めてから一気にジャンプした。柵の上の手を中心に弧を描き、軽々と飛び越えて向こう側に着地した。
「この時ばかりはお母さんに感謝、だね」
そう。悪魔だのなんだのがいることを信じなかった私が何故それらを信じたか。……それは、私の母親こそがその悪魔の一種、吸血鬼だったからだ。
「ま、よくあるよね、こういうパターンって」
人と吸血鬼のハーフ……ゲームとか漫画とか、そういうフィクションの世界ならわかるけど、まさか私本人がそうだとは……。
そのおかげなのかはわからないが、私は他の人より力が強いし身体能力も他人より上だ。……まあ、これはTRPG時代の先祖返り……いや、なんでもない。
「今日のターゲットは……と。えっと、体育館辺りに生息。まあ、広いしね。危険域はイエロー……か。ま、危なくなったら逃げればいっか」
指令書を読んだ後にそう呟き、もう一度装備の確認。ショルダーホルスターに装着された投げナイフ、腰の後ろには銀メッキ付き特殊警棒、後は……雑嚢に入ったその他多数。
余談だが、私は投げナイフを好んで使う。某吸血鬼や某メイド長に憧れた、というのもあるが、一番の理由は隙が少ない事。
それに、普通の投げナイフだったらどこにでも売ってるし、簡単に補充がきく。そういう所でも気に入っていた。
「さあ、ショウタイムの始まりだよ」
某ゲームの狩人の真似をしながら、私は体育館に向かった。……壊れてしまっているドアから中を覗きこみ、入り口に何もない事を確認して中に入る。
「さて。生息場所っぽい所に来てみた訳だけど……」
体育館の中に入った感想は『暗い』。母親の血のおかげで夜目が利く私でもさすがに夜の室内は暗く、月明かりも薄く辺りを見渡せない。本当にここにいるのだろうか。
「というか、ここの住人は客をもてなすことも知らないのかな?一向に出迎えの気配もないし」
『……その必要はない、と言えばいいかしら?』
突如体育館の中に響く声。……どうやらお出ましのようだ。
姿を現したのは一人の少女。紫の長髪にアメジストのような瞳を宿した吊り目。顔立ちは中性的で、声でようやく女だと知る事が出来た。
「私の住処を荒らそうとした責任、取って……もら……」
台詞を述べながらこっちを見た瞬間、相手は固まってしまった。どうしたのだろうか、と疑問に思った瞬間。

「……っか、カナタぁぁぁぁぁぁっ!」

「にょわっ!?」
突然、紫の吸血鬼が私に走り寄って、抱きついてきたのだ。……突然の行動に、私は混乱してしまう。
「カナタカナタカナタカナタカナタカナタぁっ!もう、どこに行ってたのよぉ!心配しちゃったじゃないの!」
「え、あ、あの……も、もしかしてかなたってお母さんの事?」
「…………へ?」
頬擦りをされて戸惑った私の台詞を聞き、ようやく相手は離れてくれた。
「カナタ……じゃないの?」
「私はこなただよ。……かなたはお母さんの名前なんだけど、もしかして、お母さんの知り合い?」

            ***

突然のハプニングに驚きはしたが、その後に彼女……かがみと名乗った……に話を聞いて、私が生まれる前のお母さんと知り合いだった事がわかった。
「あの子、吸血鬼の癖に体が弱くてね。いつも隣に私がいたわ」
そう話すかがみに、お母さんの事と私がここにきた理由を伝えた。
「……そう、カナタはもう……」
お母さんがもう死んでしまった事を伝えると、かがみは悲しそうな顔でそう言った。
「でも、幸せだったって。お父さんとの生活は楽しかったって言ってた」
「……人間に甘かったのよね、カナタは。そのくせ、体が弱い代わりに意志が強かったから……」
まるで思い出を懐かしむように、かがみは遠い目で呟く。
「……それで、私が来た理由なんだけど……」
続けて私は説明した。ここにかがみがいる事によって迷惑している人達がいる、という事を。するとかがみは……
「……そう。じゃあここから立ち去らせてもらうわ」
と返してきた。……しかし、次の台詞で私はもう一度驚く羽目になったが。

「だって、久しぶりにカナタ……いえ、その娘に会えたんだもの。だから、貴女の家に住ませて貰うわ」

「……はい?」
「これからよろしくね、コナタ」
……な、何ですかそれ?何故私がかがみと一緒に……
「あら、不満そうね?……いいじゃないの、いろいろしてあげるから」
「……それはどのような意味デスカ?」
「当然、こういう意味よ」
そう言うや否や、かがみは私に抱きついて首筋をチロチロと舐めてきた。
「にゃっ!?……お、お母さんともこういう事は……」
「可愛かったわ……カナタってば、私がちょっといじめるだけで甘い声を上げてくれてたのよ?」
……あ、やっぱりですか。もう拒否する気力も起きてこない。自分の貞操を諦めつつ、仕方なくかがみに体を許すことにした……。

            ***

という訳で、話は現在に戻り。かがみのキス攻撃を何とかかわしながら私は保健室に逃げ込んでいた。……先生がいなくて良かった。
「本当ね。私とコナタの愛を邪魔されたら敵わないものね」
「……なんでここにいるんだねかがみん(フリークス)や」
軽く殺意を乗せた視線を、声の主……かがみに向ける。

……あの後、ちゃっかり我が家に居候したかがみは、私の通う学校にまで転入生としてやって来た。

かがみ本人曰く、『ひと時もコナタと離れたくないの』との事だが、私はむしろ少しの間でいいから離れていて欲しい。ギブミー安息。
「……ううっ、ひどいわコナタ……私とのあの一夜はなんだったの……」
「……かがみ?とりあえず言わせて。心を読むな泣き崩れるな何なんだよ『あの一夜』って」
台詞の感じとしては某キョンの『真面目な声を出すな~』な感じで言ってみたが、このKY吸血鬼には通じないわけで。
「決まってるじゃないの。私とコナタが初めて肌を重ねたあの夜の事よ」
「あーあ、あの時かがみを問答無用で滅しておけば良かった」
「つれないのね。私はこんなにもコナタを愛しているのに……」
「……それだよ、それ」
突然の私の台詞に、かがみはキョトンとした感じで私の方を見た。
「それって結局、私を愛しているんじゃなくてお母さんを愛しているって事じゃないの?……代替品扱いは正直困るんだけど」
「あうぅっ!?」
どうやら図星だったらしく、かがみはもう一度くずおれるように地面に座り込み、俯いた。
「そ、そうよね、ごめんなさい……」
「……そういう事だよ。まあ、今更出て行けとは言わないけどさ、私には……」
「これからは過去の思いを引き摺らず、貴女だけを愛していくわ」
……はい?今、なんと言いました?今度は私がキョトンとなる番だった。
そんな私を抱きかかえて、保健室のベッドに運ぶかがみ。『ちょちょちょっと待って!?私が言いたいのは……』と叫びかけた口はかがみの唇によって塞がれた。
「ごめんね、コナタ。私はもうカナタの代わりで貴女を愛する事はもうしない。コナタという一人の女の子として貴女を愛するわ」
「だ、だから……」
「あら、ちょうどいい所にベッドが。さあ、真実の愛を深めましょう」
しかし、私の声はかがみにはもう聞こえていないようだ。……ああ、もう。どうすればいいのこの人、もといこの吸血鬼。


         ***   ***


「…………」
「…………」
現在、私こと泉こなたの部屋には三点リーダー製造機が二つ置いてある。
一つは言わずもがな、首に『私はこな×かがが好きではありません』と書かれた札をかけて正座する私。
そして、もう一つは私のPCのディスプレイを眺めてじっと黙るかがみ。
しばらくマウスのホイール音のみが部屋を支配し、ようやく読み終わったかがみがふう、と息をついた。
「いかがでしょうか」
「こなた、お茶」
「かしこまりました」
かがみに言われ、お茶の準備をする。保温状態になっている電気ポットからティーバッグの入ったティーポットに一人分のお湯を注ぎ、少し蒸らした後にカップに注ぐ。
適当だが時間がない場合にはかなり楽だ。人数分だけお湯を入れるのは一手間だが、こうしないと無駄にエキスが出てしまう。
紅茶が注がれたカップの傍らに角砂糖を二つとティースプーン。甘ァいのが三つ欲しいのかァ?とは聞かない。そんな立場ではない。
「どうぞ、かがみ様」
「ありがと」
……というか、いつまでこの某『犬なのに騎士なのでお犬様』状態を続ければいいんだろう。かがみの機嫌が直るまで?そうだよね。そうだったね。
べ、別にこの前かがみが切れた時に某虚無の使い手が見えてしまったからじゃないんだからねっ!……あー、ダメだ。私の頭がバカになってきた。
「こなた、一つだけ聞きたいことがあるんだけど」
「何でしょうかかがみ様」
「……その前に、その首に下げてる札を取りなさいよ。私はルイズかっての」
そう言われ、さっさと首にかけた札を取る。……あてつけがましかっただろうか。
「これ、どういう事?」
かがみはディスプレイ……正確には『VHこなた』と題されたメモ帳を指差す。
「かがみ様のご所望の品でございます」
「……なんで私はこなたにベタベタな訳?」
「申し訳ありません。そのような設定でなくば、かが×こなが書けなかったからでございます」
「とりあえずその微妙なですます口調もやめろ。……どういう意味よ?」
かがみのお許しが出たので、ようやく普通の口調で私は話し始めた。
「だって……どうやってもかがみが私を責めるなんてSSが書けないんだもん」
「だから、私がこなたにベタベタになるような設定にした、と。おまけに性的描写もそんなになかったしね」
そう。作品を通しで見てもエロ表現は少ない。私がかがみに責められるさまがあまり想像できなかったせいもあるが、とりあえず……
「前のSS(ヴァンパイアハンター・かがみ)がエロさを追及してたから、その逆をやってみたんだけど……」
と、誤魔化すことにした。
「……こなた?」
「何?」
「書き直し」
その言葉を聞き、視界が暗転した。……また、悩まなきゃいけないの……?
「……と、言いたい所だけど。まあ、及第点にしといてあげるわ」
続けて言われた言葉によって暗くなりかけた視界が戻る。……そこには、ばつが悪そうに頬を掻くかがみの姿が。
「というか、あ、あんたねぇ……私が書き直しって言った瞬間に物凄い顔しないでよ。何か私があんたを虐めてるみたいじゃないの……」
「だって、もう書きたくないもん……。私がかがみを欲しいのに、何でかがみに私をあげなきゃいけないの?」
そこまで言って、しまったと気付いたがもう遅い。今の言葉は全てかがみに聞かれてしまった。
「こ、こなた?今のって……」
「…………そ、そうだよ。かがみが欲しいよ。私はかがみが……好き、だよ」
「こなた……」
「ずっと思ってた。かがみが欲しいって。だからあのSSを書いたんだよ?せめて空想の世界ではかがみを自分の物にしたかったから……」
「そう、だったの……ごめん、こなた」
かがみは椅子から腰を上げ、そのまま私に寄りかかるようにして私を抱きしめてくれた。


……そして、夜になってから。私とかがみの甘い声が私の部屋に響いた。


注:翌日にニヤニヤしながら『ゆうべはおたのしみでしたね』と言ったそうじろうがツープラトンでボコボコにされましたが無害です。 


















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  • ↓ということはそうかなじゃないならかがかなという凄く珍しいカップルが……! まぁかがみが好きな小さいk(ry -- 名無しさん (2009-07-26 17:54:34)
  • 作者様、今度はかなたさんが主役の話を書いてください
    お願いします -- 名無しさん (2008-12-29 10:50:46)
  • かなたさんに1000点。

    そーすりゃ復活したりこなたとモゴモゴしたりこなかがかな、とか、夢がひろがりんぐ


    あれ、こんな夜中にお客さんだ。 -- 名無しさん (2008-12-25 01:38:17)
  • そうじろうさんが吸血鬼、かなたさんが吸血鬼
    あなたはどちらがいいですか? -- 名無しさん (2008-12-24 18:22:11)
  • すばらしい!最高だ!!ブラボオオオ!
    第一話をみても、このようにオチをつけるとは!ああ!いい!! -- 名無しさん (2008-12-24 16:08:11)
  • 何ならそうじろうさんが吸血鬼でもいいんですけどみたいな!?
    って、それじゃかなたさんの身が持たんwwww -- 名無しさん (2008-12-09 22:51:23)
  • 待て上手く組み立てればかなたさんが復活も可能かも。例えばバンパイアかなたさんは泉家の地下室に、変わらぬ姿形で柩に眠っていて・・・(後任せましたw) -- 名無しさん (2008-12-08 12:44:28)

  • かなたさんも見たいが、この調子でみなゆたやったらどうなるんだろwバンパイアハンターみなみみたいな。なんか際限なくなっていくな・・・。でも見たい・・・。 -- 名無しさん (2008-12-08 11:59:24)
  • 吸血鬼かなたさんがぜひ見てみたいです・・・・ -- 名無しさん (2008-12-07 22:13:18)
  • ぶっちゃけオチが最高だった。続きも頼む。 -- 名無しさん (2008-12-01 01:42:27)
  • こなたは本当に懲りてるのか?
    こなたの事だからあまり信用しがたいが・・・
    まあ、かがみがいいならいいかw -- 名無しさん (2008-11-27 20:09:19)
  • かなたさんを!かなたさんを出すんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
    そして、次はそうじろうがハンターだった頃の話をぉぉぉ!! -- 名無しさん (2008-11-25 20:42:44)
  • そうじろう以上にニヤニヤさせて頂きました -- 名無しさん (2008-11-25 18:51:23)
  • リク返答、ありがとうございます!!おもしろかったです!
    ただ、一言欲を言わせてもらえばかなたさんも存命の状態で
    出して欲しかったです・・・そして夜な夜なそうじろうと(待て -- 名無しさん (2008-11-25 16:24:07)

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