kairakunoza @ ウィキ

Crush

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匿名ユーザー

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 私は知っている。
 かがみが私のことを好きなことを。
 もちろん、友人としてではなく、恋愛感情を抱いているという意味で。

 かがみはほぼ毎日、隣のクラスから昼食を食べにやってくる。
 帰りはほとんど一緒だ。かがみの好きなラノベを買うのに付き合うこともあるし、私の好きな漫画や
ゲームを買いに付き合ってもらうこともある。
 かがみの家に私が遊びに行くことも、逆に、かがみが私の家に遊びにくることも多い。
 一緒に映画やコンサートを見に行くこともあるし、コミケに付き合ってくれたこともある。
 もちろん、ひとつひとつの出来事は、親しい友達なら別にごく普通のことなのだけれど、
高校時代の誰よりも長い時間を共に過ごしていくうちに、いくら鈍感な私でも、かがみが向けてくる想いに気付かざるを得なかった。
 例えば、かがみの家でうんうんと唸りながら難解な宿題に取り組んでいる時に、ふと顔をあげてみると、
かがみが真剣な表情を浮かべながら、熱を帯びた視線を向けてくることがある。
 私が驚いて、「かがみ、どうしたの?」と尋ねると、我に返り、
「もうできた? まだなの?これくらいの問題くらいさっさと解きなさいよ」と、小言が始まるのだが。

 しかし、私は、同性に恋をするということができない。かがみの想いに共感することは不可能なのだ。
 もちろん、同性愛について理解することはできる。マリみてや、ストパニのような百合アニメを見ることもあるし、
エロゲでも百合のえっちしーんを愉しんだりはする。
 しかし、それを自分自身のこととして置き換えることはない。アニメと現実との区別はついているつもりだ。

 逆に、男性に向ける感情についてだけれど、小学生に間違えられそうな体型をしている私だって、一応にしろ第二次性徴やら、
生理やら、思春期やらを迎えた女性であり、男性に対してほのかな恋心を抱いたことはある。
 中学の時にほとんど唯一といってもいい友人だった魔法使いさんや、オンラインゲームのキャラクターとして
結婚をした人がそうだ。
 後者の人とはネット上での関係と現実とは違うと誤解されそうだが、数度オフ会で話をしており、
嫁と言ってはもったいないほど、『魅力的な男性』だった。もっとも、それ以上の進展はないのだけれど。

 高校の男子生徒に対しては、クラスメイトとしては気軽に話す人はいたけれど、これと言って恋心を抱く人はいなかった。
 つかさ、かがみ、みゆきという、仲良しグループといつも一緒に行動していたから、男子が割って入りにくかったということもある。
 私達の中でも、恋愛の話題はなるべく出さないようにしてきたし、何かの拍子に話題に上ったとしても、
曖昧な笑いを浮かべながら、誰かがそれとなく話題を流してしまっていた。
 だから、ゆーちゃんが持ちこんできた、友達が好きな人にあげるプレゼントは何にすれば良いか、という恋愛に関する
相談を受けた時には、激しく狼狽してしまったのだ。

 もっとも、私は最初、私達4人が恋話をしない理由は、仲間内の居心地の良いコミュニティが壊れてしまう
心配をしている為であると思っていた。つかさとみゆきさんについては今も考えは変わらない。
 しかし、かがみは、私を女の子だけの関係という、『枠』の中にとりこめておこうとしている、言い換えれば、
私の目を異性に向けさせないように、故意に恋愛に関する話題を避けていたのではないだろうか。

 しかし、かがみに面と向かって問いただすこともできず、私は長いようで短い高校生活を淡々と消費していった。
 高校生の誰かにフラグを立てたり、逆に立てられたりすることもなく、卒業していくのだろうと何とはなしに思っていたが、
それが大きな間違いだということを思い知らされたのは、3年生になってから間もない、初夏を迎えたころだった。


 その日は、暑くてアイスが欲しいと思うような陽気で、私はTシャツと短パンというラフな姿でベッドに寝転んでいた。
 昼過ぎにかがみがいつものように遊びにやってきて、シューティングゲームと格闘ゲームで勝敗を重ねてから、お菓子を食べて、
ベッドでだべりながら漫画を読むところまでは、普段と変わらなかった。
 しかし、太陽が西に傾き、空の色が山吹色に変わりだした頃、かがみの何気ない、否、後から振り返ると機会を狙い澄まして
告げた言葉によって全てが動き出した。

「ねえ。こなた……」
「うん?」
「アンタって好きな人とかいるの?」
 私は無警戒に「いないよ」と答えると、かがみが立ちあがった。
「どしたん?」
「私ね。好きな人がいるの」
「そ、そう」
 急に喉が干からびるように乾いてしまい、声が上手くでない。
 かがみは、ベッドで転がっている私のすぐ横に座ってから宣告した。

「私ね。こなたのことが好きなの」
「……」
 考えないようにしていたこと、視界から逸らそうとしていた事を、いきなり喉元に突き付けられる。
 かがみは、3年間を過ごし終える前に親友というポジションについに我慢ができなくなっていた。

「ねえ。こなた、こなたはどうなの?」
 かがみのトレードマークであるツインテールの先端が頬にかかる。
「あの、あのね。かがみ」
 胸がとても苦しい。真上から凝視してくるかがみの顔をまともに見ることができない。
「わ、わたし、かがみのこと……」
「好きなのね。私のこと好きなんでしょ」
 かがみの瞳は凄く綺麗なのだけれど、今は鋭すぎて正直言って怖い。
「わ、わたし…… その」
 臆病な私は、迫ってくるかがみを拒むことも、応じることもできずに、意味不明瞭な言語を囀ることしかできない。
「ううん。いいわ。こなた。何も言わなくても」
「え!?」
 戸惑う私に構わず、かがみは謡うような口調で続ける。
「言わなくても分かっているから」
 かがみは二度同じことを繰り返してから告げた。
「こなたも私のことを好きなんでしょ」
「えっ、違っ」
「ふふ。照れなくてもいいのよ。こなた、いつもいっていたわね。『かがみは私の嫁』ってね」
 かがみは微笑んでいる。表情はとても恐ろしいと同時に、美しい。
「お嫁にしたいくらい、私のことが好きなのよね」
「そ、それは、言葉のあ」
「大丈夫。私はね。最初はこなたが私をからかっていると思っていたわ。でもね。こなたって、いつも私のことみているし、
べったりとひっついて構ってくるし、優しく微笑んでくれるから、本気なんだなって分かったの」
 かがみは、妄想と言われてもおかしくない思い込みをしたまま、ひたすら突っ走ってしまっている。
 でも、私はかがみを焚きつけるようなことを、今まで散々言ってきたのだから、ある意味では自業自得なのだ。

「だからね。私の片想いじゃなくて、ちゃんと告白して、こなたと恋人になりたいと思ったの」
「そ、そうなんだ……」
「ふふ。良かった。私、本当は凄く怖かったわ。こなたに振られることが怖かった。もし、こなたに振られたら、
私、もう生きてなんかいけないから」
 心底、ほっとしたような表情に変わっている。
「かがみ……」
 伝えるべき言葉を探そうとするけれど、唇が上手く動かない。
 それに、不用意な言葉でかがみを傷つけたら、本当に自殺してしまいそうだ。


「ねえ。こなた。晴れて両想いになったんだから、もう良いわね」
「な、何が?」
 覆いかぶさっているかがみの表情と言葉に戦慄すら覚えながら、私は辛うじて問い返す。
「もう、分かってるでしょ」
「だから、何?」
「どうしても言わせたいのね。とってもいじわるなこなた…… 分かった。ちゃんと言ってあげるわね」
 かがみが、ニマっと笑ってから、長い指先で私の頬をすっと撫でる。

「キスするわ」

「ええっ!?」
 私の首の後ろに腕が回され、かがみの顔が更に迫る。
 狼狽して顔を背けようとするけれど、首のあたりががっちりと固定されており、避けられない。
「んっ」
 ごくあっさりと、何の心の準備のないまま、私は恋愛感情を抱いていない女の子とファーストキスを終えてしまった。
「ん……」
 かがみの唇が少し動いて、小さな声を漏らす。
 顔はあんなにも熱っぽいのに、唇はとても柔らかくて…… 冷たい。
「よかった……」
 一旦、唇を離したかがみは、とても嬉しそうに呟いた。
 かがみは、私の唇を奪ったこと事実によって、恋人になれたと信じている。
「んんっ」
 私はかがみの間違いを正すこともできずに、再び、唇を塞がれてしまう。

「んくぅ」
 時折、かがみの小さな声があがって、その都度、顔に息がかかる。
 唇を右端の方にゆっくりと動かしながら、私の掌をぎゅっと握りしめてくる。
「ん…… んん」
 くぐもった声をあげながら、私は無理やり思考を巡らせて、考え直すことにした。

 かがみが望むならキスくらいは、良いのかもしれない。
 女の子に対する性的な興味はないけれど、かがみは親友というべき大切な友達だから、
すげなく拒絶して失いたくない。
 私が何も言わずに我慢すればいい。かがみもそのうち、自分のやっていることの異常さに気づくだろう。
 同性愛なんて、思春期の高校生がかかる麻疹のようなものだし。


「んぐっ」
 自分の心を必死に騙そうとしているうちに、生温かい、ぬめっとしたものが差し込まれてきた。
 これは、何?

「んむぅ――」
 一時の混乱の後、ようやく分かる。かがみが舌を入れてきたんだ。
「ん、んんんっ!」
 嫌だ! 離してと叫んだつもりだけれど、声もでないし、身体も金縛りにあったようで動かない。
 抵抗できない私を嘲笑うように、かがみの舌が、大胆に私の口腔内を這いまわって、歯茎や、白い歯の裏側や、
頬の裏側の粘膜をくまなく舐めはじめる。
「ん―― んんんっ」
 唇の端からよだれを垂らしてシーツを汚しながら、私は擦れた悲鳴をあげるが、かがみは夢中になって舌を絡ませて、
私の体液を吸収する。

 正直言って、気持ちの良いものではなかった。
 しかし、いくら離れようと思っても、身体の力が抜けてしまい拘束から逃れられない。
「んんっ…… んくぅ」
 かがみの荒い息と、私のくぐもった悲鳴が舌端が動くたびに奏でられる。
「ぐぅ…… んんっ!」
 かがみの唾液が大量に流れ込んでくるが、私は涙目になりながら、何度もえづくことしかできない。そして――

「ぷはっ」
 何十回と、口の中をくまなく舐め回された後、ようやくかがみの唇から解放された。
「はあっ、はあっ」
 永久に続くかと思われた拘束から逃れ出た私は、何度も肩で息をする。
「ねえ。こなた」
 かがみが私を、ぎゅっと抱きしめながら耳元で囁いてくる。
「キス…… どうだった?」

 私は思わず、かがみの顔を凝視した。
 なんて答ればよいのだろう?
 キスが上手かったとでも言えば良いのか、それとも、感じてしまったなんてエロゲの女の子でも口にしない言葉を出せば良いのか?
 結局、私は、決めることができず、
「わからない」
と、お茶を濁したような答えになってしまう。

「こなたとキスできて嬉しかったわ」
 一方、かがみは満面の笑みを浮かべている。
「そ、そう」
「こなたが愛してくれると分かったから」
「そ、それはっ」
 否定しなくてはいけないと思うけれど、どうしても口にすることができない。
 誤解されたままでは、さらに暴走してしまうと分かっているのに。


「ねえ。こなた」
 かがみが、私のシャツをめくると、白いお腹が外気にさらされる。
「私ね。こなたのこと昔から見ていたのよ」
「そ、それは光栄だね」
 私は、酷くこわばった笑顔を無理矢理つくって答える。

「私ね。こなたの蒼い大きな瞳も好きだし、長い揃った睫毛も、さらさらに流れるようなとても長い髪も好き。
子猫のような小さな口も、ふわふわとしたほっぺたも、関東平野のような凹凸の少ない胸も気に入っているし、
幼児のような腰回りも、可愛らしいお尻も、細い二の腕も、小さな掌も、カモシカのようなしなやかで引き締まった
脚も大好き」
 何かに取り憑かれたように、滔々と話すかがみを、私は唖然として眺めている。
「こなたの眠たそうな声も好きだし、宿題を見せてと頼る甘えたところも好き、ゲーマーズに付き合ってとねだってくるところも、
いつも目を輝かしながらからかってくる茶目っけのあるところも、チョココロネをちょっとづつ舐めながら食べている仕草も好き。
誰に対しても優しいところも嫉妬してしまうけれど大好き。こなたが好き。こなたは私の全て、こなたの全部が愛しい。
こなたがいない世界なんて意味がないし、こなたを汚す人間は存在する価値はないわ」
「かがみ……」
 上から覆いかぶさった態勢のまま、かがみは一方的に想いをぶつけてくる。
「でもね。私は…… ずっと我慢していた。もしこなたに嫌われたらどうしよう、レズ…… 同性愛者って分かって避けられたり、
引かれたりしたらどうしよう、ってずっと悩んでいたわ。だから本当に良かった。こなたも私が好きでいてくれて嬉しい。
もう、こなたのことを絶対離さないわ」
 かがみは宣言するようにして述べると、怯えた私に構わず、白いブラに手を伸ばす。その時――

「こなたお姉ちゃん。ドア、開けてくれても良い?」
 ノックをする音とともに、廊下からゆーちゃんの声が聞こえてきた。
「ちょ、ちょっと待って」
 私は転がるようにして、圧し掛かっていたかがみから逃れ、距離をとる。

 乱れた息と服を整えてから立ち上がり、入口の扉をあけると、ゆーちゃんがお茶とお菓子を載せたお盆を持って立っていた。
「あ、ありがとう。ゆーちゃん」
「かがみ先輩。いらっしゃい」
 ゆーちゃんはいつもの温かい微笑みを浮かべながら、部屋に入ってくる。

 予想に反してかがみは何も言わない。
 ただ、湯のみを置いている少女の背中に向けて、ほんの一瞬だけ、射殺すような視線をひらめかせた。


(おしまい) 



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  • ヤンデレでも、かがみは
    最高の女性! -- チャムチロ (2012-08-25 12:16:15)
  • 続編が読みたい -- 名無しさん (2010-10-06 03:58:25)
  • ゆーちゃん避難非難w
    -- 鯨皇 (2010-02-18 11:53:21)
  • かがみこわいおwww でもそれがいい!GJ! -- 名無しさん (2010-01-16 13:50:11)
  • ヤン…デレ…。か、可愛い…。 -- 名無しさん (2010-01-16 09:13:06)
  • ゆーちゃん、逃げて!! -- 名無しさん (2010-01-08 19:57:08)

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