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真逆の世界へようこそ!

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hakureikehihi

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「コナタのおかげで、バグガゾウのアリガタみがワカリマシタッ!」
 放課後、かがみの用事が終わるのを待ってぶらぶらしていると、私を見つけたパティが駆け寄ってきた。
「ど、どったのパティ?」
 なんか、みょーにいつも以上にニコニコしてるんですけど。
「Oh! ジツはきのう、アキバでそーゆーゲームをたくさんオトナ買いしてみたのデス!
そしたらスゴイデスネ! モザイク、ミスト、ガラススティック! そんなバグの中でも、
ボディ・フリュイドはしっかり描きこむとは、プロフェッショナルのあかしデス!」
「ちょっ、パ、パティ、ここ学校、ここ学校」
 ところどころ英語だからボカシたような感じだけど、お昼休みの廊下で大声で言うこと
じゃないヨ、コレは。

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 真逆の世界へようこそ!
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「Sorry. デモ感心しまシタ。ニッポンのグラフィッカーはプロフェッショナルデス」
「まあ、確かに描き込みが細かいからね」
 少し小声になったのを確認して、私たちは廊下の端に寄って話し出した。
「今はフルカラーだけど、一昔前なんかは4096色中の16色だけを使ってああいう画像を作ってたんだってさ」
「Really? そんなコトができるなんて、アーティストじゃないデスカ」
「まあ、芸術家といったら芸術家かもね。ポチポチポチッてドット単位で描き込んでたから」
「シンジラレマセン。アメリカのそーゆーゲームは、スキャンした写真を加工したポーカー
とかブラックジャック、ジャックポットが多かったデス」
「そこは国民性の違いってヤツなんだと思うよ。それに、日本のエロ絵の歴史は結構息が長いし」
「『ウタマロスピリッツ』ですネ!」
「よ、よくわかんないけど、そうなのかも?」
 って、パティってばなんでそんな時代のを引っ張り出してくるかな。
「でも、最近はお上も厳しいから、最初から描き込まないでつんつるてんなメーカーもあったり」
「Hum……それはさみしいデス。もっともっとこういう文化は大切にするべきカト」
「ふっふっふっふっ……甘いっ! 甘いっスよっ! 泉先輩もパトリシアさんも!」
 二人してため息をついたその時、後ろから聞こえてくる勝ち誇ったかのような声。
「ひ、ひよりんっ!?」
 振り返ると、そこにはひよりんが腕を組んで仁王立ちしていた。
「そんなものが無くとも出来るものは出来るんでス!」
「いや、そうは言うけど、やっぱり無いものが無いってのはさみしくない?」
「スシにネタが乗ってないようなモノデス」
「まだまだ二人にも知らない世界があるんですねー……わかりました、今からアニ研の部室に来てください!」
「う、うん」
 ひよりんの眼力に負けた私とパティは、導かれるようにしてアニ研の扉をくぐった。
「ささっ、コレを」
「コレって……も、もしかして、ボーイズラブゲー?」
 もう既に立ち上げられていたPCには、5人の男性キャラが思い思いのポーズをとっている
ゲームらしきウインドウが開かれていた。
「いえいえ。これぞ女の子が主人公で、男の子にどんどん"落とされて"いく大人向けの『乙女ゲー』!」
 なんか、ひよりんの背後にザパーンと波が立ったのは気のせいだと思おう。そう思おう。
「Oh! オトナ向けのオトメゲーとは初めて見マシタ!」
「昨日発売日だったんですけど、今日締め切りの原稿をやってたらカバンに入れっぱなしにしちゃって」
「だから、ここでやろうって?」
「さすがにちょっぴりだけですけどね」
 そう言いながら、ひよりんがカチカチとマウスをクリックしてロードを選択した。
 ……うわー、やばい。コレやばいって。
「コノ声、どこかで聴いたことがアリマスネ」
「あー、国民的メカものとか、頭脳はオトナで体はコドモのオトナのほうとか、そういった
作品に出てる人がやってるみたいだよ」
「うおっ、浩之ちゃんと孝之の競演まで?!」
 パッケージを見ると、ちゃんと実名で声優さんたちの名前が載っていた。
「この業界は結構おおらかみたいなんですよ。大御所さんともなると偽名を使う人はいますけど、
それでも声を聴けば一発でわかります」
 ああ、確かに出てくるキャラ出てくるキャラ聴いたことがあるキャラだ。というか何やってるんですか司令。
「でも、絵はフツーだよね? 別段エロいとかそういう感じはしないんだけど」
「まだまだ待ってください。たぶんこの展開だと、もうすぐそーゆーシーンに突入しますから」
 言われてみてみると、確かにヒロインとキャラの一人がいい感じになってきてる。
「……こ、これは、まだきっかけなのにエロい」
「主人公のオンナノコのボイスが、なんだかアマいデス。とってもアマいデス……」
 主人公とキャラのキスが始まったんだけど、主人公にもボイスがついているせいか喘ぎ声とか
吐息とかがみょーに艶めかしい。
 そして、そのうちそーゆーシーンに突入して……ええっ?!
「モザイクも無い! ボカシも無い! ガラス棒も無い!」
「というか、腕にカクレてしまってマス!」
 パティの言うとおり、肝心なトコロは腕や腰で隠れている。でも、コレはコレで逆に
みょーに生々しい! しかも、二人分の声があるから……うっわー、エロっ。
「絵にそういうトッピングが無くとも、声とゆー調味料があれば美味しくなるんデス!」
 せ、説得力あるなぁ、大御所がちょっと初々しいヒロインをリードしてる演技を聴くと……
「エロゲーに主人公ボイスって、まず無いからね」
「コレはコレで、ショクニンゲイってものなのかもシレマセン」
「ふっふっふっ……でしょう? だから……
 ひよりんがゆら~りと立ち上がって、私たちのほうを振り向く。
「……ど、どしたの? ひよりん」
「今からすぐにでも、先輩もパトリシアさんもこの世界に――」
「ちょ、おま、まっ、待ってよ、ね、ひよりん」
 そう言いながら、私たちの手を取ろうとするひよりん――
「なぁぁぁぁぁにをしとるかっ! このバカもんがぁっ!」
「はぎゃっ!?」
 ――の頭に、カバンの角が突き刺さった。って、この子は一体?
「原稿が終わったかと思って来てみれば、神聖な部のパソコンにエロゲーなんざ入れて!」
「ちっ、違うんデス先輩! これはたまたま、たまたまでっ!」
「うるさいっ! もーこうなったら今日は説教タイム! さあ、準備室に来るよーに!」
「そ、そんな殺生な! せっ、先輩、泉先輩っ、たすけでーっ!」
 私たちがボーゼンとしているうちに、色黒金髪の子に襟首を掴まれて奥の準備室へと消えていくひよりん。
「「無茶しやがって……」」
 私たちはただ、その姿に敬礼することしかできなかった。

 結論:乙女ゲーでも、ソフ倫メディ倫シールがついていたら18歳未満は学校でプレイしちゃダメだぞ!














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