「あとちょっとだよ。頑張って、こなちゃん」
つかさに促されて、どうにか足を動かしてた。
『足が棒になる』とはこういうことを言うんだろう。
もう自分の意思では足が動いてくれない。
もう私の足が動く理由はひとつしたかなった。
『足が棒になる』とはこういうことを言うんだろう。
もう自分の意思では足が動いてくれない。
もう私の足が動く理由はひとつしたかなった。
右手に触れる確かな温もり。
それを少しでも長く感じていたいから、なんとか足が動いてくれた。
「あそこを曲がれば、もうすぐゴールだよ、こなちゃん」
言うなれば、最終コーナー。
50回も曲がれば、さすがに見慣れる。
それもこれで最後だと思うと、少し気が楽になった。
と同時に、ゴールしたら手を離さなきゃいけないことが少し残念だった。
50回も曲がれば、さすがに見慣れる。
それもこれで最後だと思うと、少し気が楽になった。
と同時に、ゴールしたら手を離さなきゃいけないことが少し残念だった。
最後の曲がり角を曲がった先、私の目にあるものが見えた。
「ゴールテープ……」
かがみとみゆきさんが持っているもの。
それは紛れもなく、50kmのゴールを告げるテープだった。
よく見ると、かがみが髪を下ろしている。
きっとあのテープは、かがみのリボンなんだろう。
それは紛れもなく、50kmのゴールを告げるテープだった。
よく見ると、かがみが髪を下ろしている。
きっとあのテープは、かがみのリボンなんだろう。
つかさは、何も言わずに笑顔を返してくれた。
最初はただ、つかさに見てほしくて始めたことだったのに。
かがみもみゆきさんも、ずっと待っていてくれた。
応援してくれる人も、助けてくれる人もいなかったけど。
それは何万もの声援と同じくらい胸に響いた。
最初はただ、つかさに見てほしくて始めたことだったのに。
かがみもみゆきさんも、ずっと待っていてくれた。
応援してくれる人も、助けてくれる人もいなかったけど。
それは何万もの声援と同じくらい胸に響いた。
あとは、私がゴールすれば全てが終わる。
――あと5メートル。
みゆきさん、なんか雰囲気変わった?
いい笑顔しちゃって、まったく……。
いい笑顔しちゃって、まったく……。
――あと3メートル
あ、かがみってば今にも泣きそう。
いや、もう泣いてるか。
顔が涙でグシャグシャになってるし。
いや、もう泣いてるか。
顔が涙でグシャグシャになってるし。
――あと1メートル
つかさの手、あったかかったなぁ……
二人そろってゴールテープを切った。
ボーッとする頭の中で、やっと終わったんだなって思った。
ボーッとする頭の中で、やっと終わったんだなって思った。
「おめでとうございます、泉さん」
「よく頑張ったよ、こなた~」「ありがと、二人とも……」
「よく頑張ったよ、こなた~」「ありがと、二人とも……」
今にも倒れそうな体を支えて、二人に応えた。
本当はもっとちゃんとお礼を言いたいんだけど、今はこれが限界。
そして、もう一人……
本当はもっとちゃんとお礼を言いたいんだけど、今はこれが限界。
そして、もう一人……
「こなちゃん……」
「つかさ……」
「つかさ……」
つかさは今にも泣き出しそうだった。
それでも、私の手は握ったままで。
それでも、私の手は握ったままで。
「こなちゃん……こなちゃ~ん!!」
「うわっ!」
「うわっ!」
しびれを切らしたつかさが、私の胸に飛び込んできた。
後ろに倒れそうになった体を、かがみとみゆきさんが抱えてくれた。
後ろに倒れそうになった体を、かがみとみゆきさんが抱えてくれた。
「こなちゃん……頑張ったね……」
今はつかさの頭を優しく撫でてあげるくらいしかできないけど。
そんな私たちに、かがみやみゆきさんも加わって、ひとつの輪になって。
昨日のテレビで見たまんまの光景が、ここにはあった。
そんな私たちに、かがみやみゆきさんも加わって、ひとつの輪になって。
昨日のテレビで見たまんまの光景が、ここにはあった。
「みんな、ありがとね……」
「こなちゃん、足は大丈夫?」
「う~ん、もうちょっと休んでたいかも」
「う~ん、もうちょっと休んでたいかも」
こなちゃんがゴールしたそのあと。
私たちはまだ校門の前で座り込んでた。
お姉ちゃんたちは、
私たちはまだ校門の前で座り込んでた。
お姉ちゃんたちは、
『さて、お邪魔虫はそろそろ帰りますかね』
なんて言って、先に帰っちゃった。
だから、今は二人だけ。
そろそろ先生が見回りに来るはずだから、あんまりノンビリもしていられないけど……。
だから、今は二人だけ。
そろそろ先生が見回りに来るはずだから、あんまりノンビリもしていられないけど……。
「そういえば、まだつかさには言ってなかったっけ?」
「え? なにを?」
「私が走ろうって思った理由」
「え? なにを?」
「私が走ろうって思った理由」
……すっかり忘れていた。
ゴールの感動で、聞きたいことがスッポリと頭から抜け落ちていた。
ゴールの感動で、聞きたいことがスッポリと頭から抜け落ちていた。
「つかさにさ、見てほしかったんだ。今日の私を」
「今日の、こなちゃん?」
「つかさのことが大好きなんだって私に、つかさに会ってほしかった」
「今日の、こなちゃん?」
「つかさのことが大好きなんだって私に、つかさに会ってほしかった」
なんだか、意味があんまり分からなかった。
でも、こなちゃんだからなんとなく納得できた。
でも、こなちゃんだからなんとなく納得できた。
「大丈夫だよ、ちゃんと会えたよ」
「つかさ……」
「だって、私のために頑張ってくれたこなちゃんは、ちゃんとここにいるんだもん」
「つかさ……」
「だって、私のために頑張ってくれたこなちゃんは、ちゃんとここにいるんだもん」
そう言って、私はまたこなちゃんの胸に飛び込んだ。
疲れてるはずなのに、ちゃんと受け止めてくれた。
疲れてるはずなのに、ちゃんと受け止めてくれた。
「私のことも、ちゃんと受け止めてくれるしね」
「これくらいは……ね」
「私はそんなこなちゃんの事が……」
「これくらいは……ね」
「私はそんなこなちゃんの事が……」
――大好きだよ
そう言おうとした言葉は、なにか大きな音にかき消された。
「つかさ、花火だよ」
「ほんとだ、きれい……」
「ほんとだ、きれい……」
見上げた夜空に、大きな花火があった。
まるで、ゴールのお祝いのように。
大きく開く花火が次々に打ち上げられていく。
まるで、ゴールのお祝いのように。
大きく開く花火が次々に打ち上げられていく。
「つかさ」
「ん? なに?こなちゃん」
「そういえば、私まだご褒美をもらってないよねぇ~」
「ごほうび?」
「ん? なに?こなちゃん」
「そういえば、私まだご褒美をもらってないよねぇ~」
「ごほうび?」
いたずらっぽく笑う顔は、もういつものこなちゃんだ。
な、なんだか嫌な予感が……
な、なんだか嫌な予感が……
「キス……してもいい?」
「ふぇっ!? き、キスって」
「ご褒美のキ・ス」
「ご、ごほうびってそんな……」
「うぁ~。つかさはこんなに頑張った私にご褒美をくれないほどSだったのかぁ~!?」
「ふぇっ!? き、キスって」
「ご褒美のキ・ス」
「ご、ごほうびってそんな……」
「うぁ~。つかさはこんなに頑張った私にご褒美をくれないほどSだったのかぁ~!?」
な、なんだか急にいつもと変わらなくなっちゃったな……。
でも、これがいつもの私たちだもんね。
でも、これがいつもの私たちだもんね。
「わかったよ、じゃあ……」
「待って、私からするから……」
「こなちゃん?」
「待って、私からするから……」
「こなちゃん?」
そういえば、こなちゃんがしてくれるのって初めてだっけ。
そんなことを考えているうちに、二人の距離はなくなっていって……
そんなことを考えているうちに、二人の距離はなくなっていって……
「つかさ、大好きだよ……」
コメントフォーム
- よくがんばった!感動した! -- 名無しさん (2011-04-27 22:16:35)
- なんかいいですね。心が温まりました
-- 九重龍太 (2008-03-29 00:20:38) - 過去スレを見て意味が分かりました、↓のレスをつけた者です。 -- 名無しさん (2007-12-21 16:53:30)
- この作品は ? -- 名無しさん (2007-12-07 22:51:03)