kairakunoza @ ウィキ

泉こなたの人生が変わる瞬間 PM8:24

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
「あとちょっとだよ。頑張って、こなちゃん」

つかさに促されて、どうにか足を動かしてた。
『足が棒になる』とはこういうことを言うんだろう。
もう自分の意思では足が動いてくれない。
もう私の足が動く理由はひとつしたかなった。

右手に触れる確かな温もり。

それを少しでも長く感じていたいから、なんとか足が動いてくれた。

「あそこを曲がれば、もうすぐゴールだよ、こなちゃん」

言うなれば、最終コーナー。
50回も曲がれば、さすがに見慣れる。
それもこれで最後だと思うと、少し気が楽になった。
と同時に、ゴールしたら手を離さなきゃいけないことが少し残念だった。

最後の曲がり角を曲がった先、私の目にあるものが見えた。

「ゴールテープ……」

かがみとみゆきさんが持っているもの。
それは紛れもなく、50kmのゴールを告げるテープだった。
よく見ると、かがみが髪を下ろしている。
きっとあのテープは、かがみのリボンなんだろう。

つかさは、何も言わずに笑顔を返してくれた。
最初はただ、つかさに見てほしくて始めたことだったのに。
かがみもみゆきさんも、ずっと待っていてくれた。
応援してくれる人も、助けてくれる人もいなかったけど。
それは何万もの声援と同じくらい胸に響いた。

あとは、私がゴールすれば全てが終わる。





――あと5メートル。

みゆきさん、なんか雰囲気変わった?
いい笑顔しちゃって、まったく……。

――あと3メートル

あ、かがみってば今にも泣きそう。
いや、もう泣いてるか。
顔が涙でグシャグシャになってるし。

――あと1メートル

つかさの手、あったかかったなぁ……

二人そろってゴールテープを切った。
ボーッとする頭の中で、やっと終わったんだなって思った。


「おめでとうございます、泉さん」
「よく頑張ったよ、こなた~」「ありがと、二人とも……」

今にも倒れそうな体を支えて、二人に応えた。
本当はもっとちゃんとお礼を言いたいんだけど、今はこれが限界。
そして、もう一人……

「こなちゃん……」
「つかさ……」

つかさは今にも泣き出しそうだった。
それでも、私の手は握ったままで。

「こなちゃん……こなちゃ~ん!!」
「うわっ!」

しびれを切らしたつかさが、私の胸に飛び込んできた。
後ろに倒れそうになった体を、かがみとみゆきさんが抱えてくれた。

「こなちゃん……頑張ったね……」

今はつかさの頭を優しく撫でてあげるくらいしかできないけど。
そんな私たちに、かがみやみゆきさんも加わって、ひとつの輪になって。
昨日のテレビで見たまんまの光景が、ここにはあった。

「みんな、ありがとね……」



「こなちゃん、足は大丈夫?」
「う~ん、もうちょっと休んでたいかも」

こなちゃんがゴールしたそのあと。
私たちはまだ校門の前で座り込んでた。
お姉ちゃんたちは、

『さて、お邪魔虫はそろそろ帰りますかね』

なんて言って、先に帰っちゃった。
だから、今は二人だけ。
そろそろ先生が見回りに来るはずだから、あんまりノンビリもしていられないけど……。

「そういえば、まだつかさには言ってなかったっけ?」
「え? なにを?」
「私が走ろうって思った理由」

……すっかり忘れていた。
ゴールの感動で、聞きたいことがスッポリと頭から抜け落ちていた。

「つかさにさ、見てほしかったんだ。今日の私を」
「今日の、こなちゃん?」
「つかさのことが大好きなんだって私に、つかさに会ってほしかった」

なんだか、意味があんまり分からなかった。
でも、こなちゃんだからなんとなく納得できた。

「大丈夫だよ、ちゃんと会えたよ」
「つかさ……」
「だって、私のために頑張ってくれたこなちゃんは、ちゃんとここにいるんだもん」

そう言って、私はまたこなちゃんの胸に飛び込んだ。
疲れてるはずなのに、ちゃんと受け止めてくれた。

「私のことも、ちゃんと受け止めてくれるしね」
「これくらいは……ね」
「私はそんなこなちゃんの事が……」

――大好きだよ




そう言おうとした言葉は、なにか大きな音にかき消された。

「つかさ、花火だよ」
「ほんとだ、きれい……」

見上げた夜空に、大きな花火があった。
まるで、ゴールのお祝いのように。
大きく開く花火が次々に打ち上げられていく。

「つかさ」
「ん? なに?こなちゃん」
「そういえば、私まだご褒美をもらってないよねぇ~」
「ごほうび?」

いたずらっぽく笑う顔は、もういつものこなちゃんだ。
な、なんだか嫌な予感が……

「キス……してもいい?」
「ふぇっ!? き、キスって」
「ご褒美のキ・ス」
「ご、ごほうびってそんな……」
「うぁ~。つかさはこんなに頑張った私にご褒美をくれないほどSだったのかぁ~!?」

な、なんだか急にいつもと変わらなくなっちゃったな……。
でも、これがいつもの私たちだもんね。

「わかったよ、じゃあ……」
「待って、私からするから……」
「こなちゃん?」

そういえば、こなちゃんがしてくれるのって初めてだっけ。
そんなことを考えているうちに、二人の距離はなくなっていって……

「つかさ、大好きだよ……」













コメントフォーム

名前:
コメント:
  • よくがんばった!感動した! -- 名無しさん (2011-04-27 22:16:35)
  • なんかいいですね。心が温まりました
    -- 九重龍太 (2008-03-29 00:20:38)
  • 過去スレを見て意味が分かりました、↓のレスをつけた者です。 -- 名無しさん (2007-12-21 16:53:30)
  • この作品は  ? -- 名無しさん (2007-12-07 22:51:03)

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー