kairakunoza @ ウィキ

七月の雪。 第五話

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
つかさの部屋に入るとつかさは自分のイスに座って、日記帳を書いていた。
そして、私が入ったのに気付くとゆっくり後ろを振り向いた。
「待ってたよ、こなちゃん♪」
その笑みがなぜかいつものつかさを連想させてはくれなかった。

第五話 【 -アメとムチ- 】
「話って・・・、何?」
とりあえず、私はとなりの部屋で寝ている二人を起こさないように、小声で話した。
小声ながらも、私の声からは明らかに動揺していることが分かっただろう。
「わかってるでしょ、こなちゃん。『お姉ちゃんのこと』っていったら一つしかないってこと。」
予想はしてたけど、驚いた。なんで?なんでつかさが私とかがみのこと知ってるの?
まさか、かがみが喋ったとか・・・、いやそれはない。
そんな考えを巡らせているうちに、つかさが俯きながらゆっくりとそして力強く喋り始めた。
「隠してたんだ・・・・・・。」
重々しい言葉。
信用していた友達に裏切られた、そんな言葉も連想させる発言だった。
「い、いや、ちょ違うんだって!ちょっとこれには訳が・・・」
「訳って何!!!? 」
さっきまでの静けさを突き破るつかさの声。こんなつかさ見たことない・・・。
そしてつかさの声に目を覚ました二人が どうしたの? と言いながら廊下を歩いてくるのが聞こえた。
二人が起きたのに気付いて、いつものつかさに戻った。
「なんでもないよ~」
と、さっきまでのつかさと別人のような顔で、つかさは部屋を出ていった。


部屋に一人取り残された私。
私の頭のなかではなぜ?の二文字が点滅していた。
ふとつかさの机の上を見ると日記帳があった。
色々な色の蛍光ペンで彩られたきれいな日記帳。悪いこととは知りながらも、気付けば私は日記帳のページをめくっていた。

7月20日
――――――――――――――――――――――――――――――――
今日、こなちゃんと、ゆきちゃんが私の家にお泊りしに来た。
その日の夜、久しぶりにお姉ちゃんと一緒に寝た。
嬉しかったなぁ・・・。
そう思っていると横でまだ起きていた、お姉ちゃんとこなちゃんが何か話していた。
話の内容を聞いて、びっくりした。二人が付き合っていたなんて・・・・・・。
お姉ちゃんは私が好きなのに・・・、こなちゃんよりずっと、ずっと前から知っているのに・・・。
私は決めた。今日から
―――――――――――――――――――――――――――――――――
この日記は途中で終わっていた。さっきこれを書いてたんだ。
つかさがかがみを好きだってことには驚かなかった。
前から、つかさのかがみに対する態度は明らかに恋の二文字がある、と確信していた。
つかさがかがみを好きだって知ってたのに、私はなんて軽い気持ちでOKしてしまったんだろう、と今改めて後悔した。
それにしても、あの時つかさが起きてたなんて・・・・・・。
そんなこと思ってるとかがみが部屋に入ってきた。
「どうした~? こなた。あんたにしては早起きじゃない? 」
何も知らないかがみに、今見たことを全て言った。
つかさが私たちの関係を知ってること。
隠してたことを怒っていること。
ただし、つかさがかがみのことが好きだってこと以外は・・・・・・。
そして、これからの為にどうすれば良いか、も聞いてみた。
「まさか、つかさが知ってたとはね・・・・・・。」
かがみはしばらく考えてから、真っ直ぐ視線を私に向けて話した。
「隠し通すのも、だめだから・・・、いっそのこと二人に話しちゃおっか? 」
少し、ふざけた感じでかがみが言った。
あまりにも軽薄な発言に私はすこし苛立った。
「かがみ、真剣に考えてる? 」
私の言葉に苛立ちが染み込んでいたのが自分でも分かる。
「考えてるわよ、あんたよりはね。」
私の言葉にムッときたのか、かがみも苛立った口調で言い返してきた。
「かがみが真剣に考えてくれないと、つかさと私たち、ギクシャクしたまんまだよ!? 」
「私だってちゃんと考えてるわよ! ただ、姉妹だから言いにくいってだけで・・・。」
かがみの言い訳を俯いたまま聞いていた。
手は拳を握っていて、今にも出てきそうな怒りをそれで何とかこらえていた。
かがみの家族だからって理由はもう聞き飽きた。
家族だから、家族だからって、何なの一体!?
「もういいよ! 」
俯いたまま、かがみに叱咤した。
かがみの横を早歩きで通り過ぎて、つかさの部屋を後にした。
居間に行く途中、玄関にもうみゆきさんとつかさが居るのに気付き、
急いで食パンを食べ、玄関に向かった。


四人で学校にいるときは、とっても辛かった。四人で話しているときも、どこかぎこちなく、気まずかった。
そして、つかさが口を開くたびに、私とかがみのことを話すかもしれない極度の不安に襲われた。
やっとのことで全ての授業を終え、私は机に突っ伏していた。
これからどうしよう・・・・・・
ふと窓を見ると夕焼けに赤くそまった雲がゆっくりながれているのが見えて、
校庭から部活動の元気な声が聞こえていた。
今日は、三人で先に帰っててとみゆきさんに言っておいたのでいつまでもこうしていられる。
開いてる窓から涼しい風が吹いてきて、長い髪が私の頬と耳をくすぐる。
―――今日帰ってからじっくり考えよう、それがいい―――
そう考えた私は一人教室を出て、いつもより長く感じる廊下を歩いていった。
廊下には、私の足音と、セミの鳴き声だけが響いていた。
次の日、私は放課後、机の上で脱力していた。
すると、私の異変に感づいたみゆきさんは、私のそばに寄ってきた。
「どうかされたんですか?」
机の上で脱力している私に、横から心配そうな眼差して声を掛けてくれた。
みゆきさんに話してもいいんだろうか―――――――――――――
そう考えてるうちに、数分たってから私は気付いた。
何で私は今まで隠してたんだろ。――――
私がかがみを好きで、
かがみが私を好き。
ただそれだけなのに――――
つかさが怒っていたのは
ライバルとしてとかじゃなくて
仲間として友達として
相談してくれなかったからなのかもしれない――――
今までなんで、こんな当たり前のことに気付かなかったんだろう。
そう考えれば、つかさが言ってたことが身に沁みた。
『隠してたんだ・・・・・・。』
あの時のつかさの目には怒りの他に悲しみが混じっていた気がする。
つかさにもちゃんと言おう。もちろんみゆきさんにも。
そう決心した私はみゆきさんに一切を打ち明けた。私とかがみの関係のこと。
それと、つかさが私とかがみの関係を知ってること。かがみとケンカしたことも全部・・・。
私が話し終わるまで、みゆきさんは何も言わず、黙って聞いてくれた。
全て話し終わると、みゆきさんはう~ん、一段落つかせてからゆっくりと話し始めた。
「ちょっと厳しい言い方かもしれませんが、それは隠していた泉さんが悪いですね。」
みゆきさんの鋭い指摘に心が痛む。
隠し事は悪い、とみゆきさんにも怒られると思った。
「けど、今、泉さんは私に話してくれたんです。」
みゆきさんの温かい言葉に、怒られる、嫌われるとばかり思っていた私はちょっと驚いた。
「それだけでも、泉さんは成長したと思います。」
みゆきさんと私が小さいころに亡くしたお母さんと重なった気がした。
私はお母さんを写真でしか見たことないけど、母親ってこんなカンジなんだろな、と思った。
そして同時に、早くつかさに話さなければ、という気持ちにとらわれた。
「じゃあ、私。つかさに話してくるね。許してもらえるかわかんないけど」
そういうとみゆきさんが、体の前で小さく拳を握って、
「大丈夫ですよ。今の泉さんなら大丈夫です」
と明るく励ましてくれた。



私には、その優しい笑顔がとっても温かくて、


後ろに、笑っているお母さんの顔が見えた気がした。















コメントフォーム

名前:
コメント:
  • (≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-09-22 08:13:51)

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー