【艦これ】艦隊これくしょんでエロパロ避難所1 801~900

801 :名無しの紳士提督:2014/07/06(日) 03:54:26 ID:NmPgK1uQ
注意書きが書き手のマナー、スルーが読み手のマナー、を紳士諸兄が知ってれば
同じような内容の連投等、意図的なイヤガラセ以外は規制ゼロで進められるってもんですよ

ところで武蔵の話題ばかりでようやくエロ要員になれそうな妙高姉さんは完全スルーですか

802 :名無しの紳士提督:2014/07/06(日) 04:09:05 ID:QDzU.LM6
男性向け百合がよくわからんけど、男性向けホモと女性向けホモの違いみたいなもんかね

妙高姉妹の投下がもっと読みたいので職人さんオネシャス!

803 :名無しの紳士提督:2014/07/06(日) 07:13:36 ID:uZV6E7BM
ホモォ・・・は男の娘みたいなロリにポークビッツ生やしたようなの同士なんかはいけるかな
淫乱○ディベアみたいのは無理無理り陸奥たか

804 :名無しの紳士提督:2014/07/06(日) 07:19:47 ID:48n3jbag
そもそも武蔵さんの話題もまるでないような…
自治話ほんと大好きねみんな

805 :名無しの紳士提督:2014/07/06(日) 10:37:46 ID:ZQ1pXpVI
提督一人だけでかなり頑張ってたからな、話のバリエーション増えるのは歓迎
まあおかげでなんともいろんな提督像が産まれてきたが

806 :クズ ◆MUB36kYJUE:2014/07/06(日) 20:55:04 ID:WPQREMKw
以前浜風が無理やりフェラして吐く長編を書いた者です。
上の方でトリップつけたほうがいいというような議論があったみたいなのでつけさせていただきます。

祥鳳って前付き合ってた男の事をずっと根に持ちそうだなという発想から大鳳との修羅場ものを書きました。
  • 長編未完
  • エロ薄い(後の話でもっとがっつり塗れ場を書きます)
なので苦手な方はスルーをお願いします。

行間詰めすぎとの事だったので台詞前後に空行を入れます。

807 :クズ ◆MUB36kYJUE:2014/07/06(日) 20:57:31 ID:WPQREMKw
序章

 吸い込んだ空気は容赦なく、喉を炙るように通り過ぎた。肺腑凍てつき、背筋には槍の刺さったような痛みが走り、彼は思わず真白
い吐息に手をかざした。波の岸壁に打ちつけるごぅごぅという音が、厭に大きく厭に不気味に、辺りを猛然と駆け巡っている。
 正月飾りの取り払われた玄関には、寂寞と孤独が横たわっている。目前にあるはずのアスファルトは夜の闇に解け消えて、灰色の石
段だけがくっきりと浮かび上がった風であった。未開拓の無人島にぽつねんと取り残されたような、そういった凄まじい哀情が沸いて
きて、彼は居た堪れなく焦って足を動かし始めた。吹き荒ぶ海風に当てられた耳が裂かれたかのような痛みを発し、頬は一歩踏み出し
た途端に真っ赤になる。外套のポケットに突っ込んだ掌は、それでも隙間から入り込む冷気によって一向温まる気配もない。鳥肌立っ
た背中が肌着と擦れ、ぞっとしない感触に肩が震えた。
 少しでも中から体を暖めようと、彼は足を速め岸壁沿いを進んで行く。
 寒風荒ぶ夜の中この提督が外へと繰り出したのは、何も酔狂によるものではなかった。元来風来坊の性質を持って生まれたために、
確かに周りからは変人という肩書きを与えられていた彼ではあったが、今回のこの行動に限って言えば、常識の範疇内の理由による外
出なのだと説明できる。
 腕時計を見、現在時刻が体感のものより大分遅れている事を、彼はどこか安堵した思いに受け止めた。意外にも、執務室を飛び出し
てからまだそんなには経っていない。眇めた眼にて用心深く辺りを見渡し、人の気配の無いのが分かるとまた足を速めてゆく。
 秘書艦である祥鳳が、鎮守府宿舎から出て行った。その情報の執務室へ転がり込んできたのが、つい五分ほど前のことである。
 それは当直の警備に当たっていた妖精が報告したものであった。息を荒らげ興奮気味に戸を抜けたそれは、提督に宥められつつ叫ぶ
ようにしてあらましを説明した。
 曰く、怪しい人影がふらふらと危うげな足取りにて歩いていた、そのシルエットは大きな三つ編みの二つ結びで確証はないにしても
祥鳳らしき事、声を掛けようとしたものの背後から発せられていた徒ならぬ雰囲気に怖気づいてしまい、結局は黙って見送ってしまっ
た事。大雑把にそんな内容である。
 日はとうに西に沈み、月とクレーンの航空障害灯だけが静かに闇を照らす時分。霧のようにぼんやりとした白光を赤い明滅が彩る様
は、途方も無く寂しいものである。秘書仕事を終え部屋に戻ったはずの彼女が、今こんな時に外出するなど俄か信じがたい事であった。
急ぎ内線で門の警備に連絡を取った所、一切外へ出て行った者はないとの返答。恐らくは、鎮守府の敷地内を放浪しているらしかった。
 そこまで差し迫った危険性は無いと分かったにしろ、やはり憂慮せずにはいられない。もしかしたら余計なお節介なのかもしれない
と、そう思う気持ちもありはした。しかし、胸を締め付ける気遣わしさには到底敵うわけがなく、提督はラックに掛かった外套へ急ぎ
袖を通したのだった。
 彼女の赴きそうな所に、幾つか当てはあった。事の報告をした妖精は他の艦娘にも協力を仰ぐよう提言したが、すかさずにそれは却
下された。この破滅的行動は間違えなく心内の問題から発生してるのだろうし、だとしたら解決しやすいのは自分であると、提督には
そういった自負があったのだ。
 何も自惚れであるとか、過剰な自意識によるものではなかった。客観的に見ても、彼の考えは実に妥当なものだと言えた。おおよそ、
その鎮守府の誰もが知りえない秘密が、二人の間には確かに存在していたのである。
 即ち祥鳳と提督は、実に三ヶ月ほど前より恋仲にあった。秘書と直属の上司という間柄は、厳重な秘匿の元で時に男女の関係に変化
していた。その律儀さたるや、噂好きの幾らかの艦娘にさえ、未だ疑われもしていないほどである。
 決して公に睦まじくすることはなかった。両者とも、絶対に第三者に知られてはならないと固く信仰しており、その無言に交わされ
た約定のような制限が、決して外れぬ楔となっていたのだった。
 彼らは、立場ゆえの関係の掩蔽に烈しい刺激を見出してもいた。仕事の関係から外れたたまの逢瀬は、痛く思えるほど耽美に過ぎ、
それは当人達でさえ思い出すだけでも頭を抱えたくなるような代物だった。それだけの慈しみがこもっているからこそ、提督は決して
捜索に仲間を募らなかったのである。
 凍えに凍えた空気は、しかし幾ら取り込んだところで煮えた頭を少しも冷ましてはくれない。一番近しい所にいたくせに、彼女にこ
んな事をさせてしまった事。まったく何にも気が付かなかった自身の鈍感さが恨めしく、歯痒かった。地団駄の踏みたいのをぐっと堪
え、提督は後悔と贖罪の意を胸に、暗闇に目を凝らしていった。

808 :クズ ◆MUB36kYJUE:2014/07/06(日) 20:59:47 ID:WPQREMKw
 幾らほど歩いたか。やたらに早まっている体内時計を鑑み、およそ五分は経った頃か。提督は視線の先に薄ら女性の輪郭を捕らえる
ことができた。鎮守府の敷地内でもっとも大きな防波堤の末端。海水のぶつかった飛沫がかかるのを意にも返さず、ぽつねんと体育座
りに腰掛ける、大きな三つ編み二つ結びの影である。
 彼女は身じろぎ一つせず、物思いに耽っているのかただ暗晦な海面を見つめている。暗がりからぼぅと影が浮き出た様には身の毛の
よだつ程の凄みがあって、事情を知らぬ者が見たならきっと心霊の類と見なすだろう。そう思えるほどの気味の悪さが漂っていた。
 かっぽりと削り取られるようにして作られた防波堤の階段。その小さな段を一歩ずつ昇り、とうとう彼女と同じ地平に立つ。乱雑に
詰まれた波消しブロックの、海水のぶつかる度に降りかかる霧が、途端提督をしっとりと濡らした。
 氷のような冷たさを湛えた霧である。海に向かって進めば進むほど、それはより濃くなっていった。耳の感覚は消え失せ、指先や膝
が独りでにがたがたと震え始める。
 「祥鳳!」
 防波堤の中腹、ちょうどくの字に曲がるその起点にまでたどり着いた頃、提督は彼女の名を自棄になったように叫んだ。前髪の毛先
がシャリシャリに凍り、それがちょうど眉間を叩くから不快な事この上ない。足先や指先の感覚が、末端から溶ける様に消えていた。
 かちかちと歯が鳴った。顎を震わせている姿を想像すると、何とも無様で格好の付かない様に思われ、彼は無理やり飲み込むように
してそれを収めた。状況として、決して彼はそう意図しているのではないが、どうしてもこの先颯爽と登場するようになってしまうの
だから、最低限瀟洒な風情を漂わせようと思ったのである。
 情けなく震えた叫び声を耳に入れ、祥鳳は途端無意識に背を跳ねさせた。
 すぐ近くにまで寄ると、彼女はゆっくりと振り返る。その佇まい、髪は濡れ唇は青白く瞳はどんよりと濁り、それでも微塵も震えて
はいないその様子には薄ら寒い気持ちを抱きもした。提督は彼女の頭を撫で
 「帰ろう。皆心配している」
 開口一番にそう言った。
 何故ここに来たのかだとか、何故こんなことをしたのかだとか、そういったことを聞くのはやはり憚られた。話したいのならば自分
から口を開くだろうから、今はただ何時もらしくに接すればいい。提督はそう結論付けると、あとは濡れそぼった彼女の髪をひたすら
指で梳くだけになった。
 それ以上両者から、何も言葉は発されなかった。静けさに耐えられなくなったか、祥鳳はしばらくの後、彼から目を逸らして再び海
面に視線を向けた。
 触られることに抵抗しない様子を認め、とりあえずは彼女を立たせようと、提督は地に置かれた小さい手を取ろうとした。冷えて感
覚も希薄になった掌は、それでも祥鳳に比べればまだまだ血の気は通っているらしく、握った手は吃驚するほど冷たく思えた。
 華奢で骨ばっている為か、まるで氷に厚手の布を巻いたかのような感触である。戦闘時には何時も弓の弦を引き絞っているから、人
よりも皮膚が厚くなっているのかもしれない。幾回も体を重ねその度に指を絡ませていたにも拘らず、今初めて知った事実であった。
 きっとそういう鈍感さだからこそ、今まで彼女の仔細な機微にも気が付かなかったのだ。そういった自嘲の念がわだかまり、彼は頭を
抱えたくなった。
 今すぐにでも額を地につけ、ひたすら謝罪をしたかった。彼女の望む事なら何でもこなしたい、仮にこの海に飛び込めと言われたな
ら喜んでその命に従うだろう。そういった悔悟はじくじくと胸を痛ませたが、果たしてそれが免罪符にならないことも知っていた。
 今この段階ではとにかく帰ることが先決だと、そう思い直して腰を上げる。掴んだ掌を引っ張ってみると、まるで釣り上げられるか
のようにして彼女も立ち上がったのだった。
 提督は自身のコートのポケットに、掴んだその掌を入れ、更に指を絡ませて握った。服越しの体と掌で挟みこみ、少しでも暖かいよ
うにと体を寄せる。カイロや、何かそういった類のものを持ってこなかった事が、今更になって悔やまれた。

809 :クズ ◆MUB36kYJUE:2014/07/06(日) 21:03:44 ID:WPQREMKw
 一歩、恐る恐る足を踏み出してみると、彼女も続いて歩を進めた。足取りは覚束なかったが、抱える必要があるほど衰弱しているわ
けでもなさそうである。ゆっくりと歩くべきか、冷えるから足を速めるべきか。気遣うという同じ源泉から湧き出した背反する思いは、
何とも煩悶たるものであった。

 「寒いね」

 「上のケチ共は資材上限を絞っているんだな、まったく」

 「新たにレ級なんていう敵も発見されたらしい。物騒なことだよ」

 帰路につき、そのようなことをポツリポツリと話しかけてみても、まったく何も反応はなかった。彼女はただ顔を伏せ、半歩遅れて
ついて来るだけである。握り返してくれている手の感触だけが、唯一の繋がりを示す楔に思えてきて、感じられる存在の気配はどんど
んと希薄になっていく。やがて話題のストックが消え果てると、提督もただ黙々と足を動かすだけになった。
 来た時よりも大分長く感じられるアスファルト舗装の道は、それでも何時しかその終端には辿り付けるのだった。ずっと先に見えて
いたはずの光の粒が、今でははっきりと鎮守府の窓から漏れる灯りだったのだと認識できる。そのぼんやりと浮き出た建物の影に、ど
こか安堵を覚えた。
 彼はつと祥鳳の方へ視線を向けた。もうすぐ着くぞと、そう言いたかった訳であるが、思い返せば手を握ってから彼女の顔をきちん
と見てはいなかった。腕の触れるほどすぐ近くにいたために、寧ろ何時もより様子を認めるのを怠っていたのだ。普段外では大っぴら
に、恋人のように寄り添って歩くこともままならなかったわけだから、変に緊張していたのかもしれない。だがこの時まで、祥鳳のそ
れにまったく気がつかなかったのは、間抜けとしか言いようのない愚鈍な過ちだった。
 彼女の顔を見て、提督の口からは吃逆のような音が漏れ出した。祥鳳は空いていた方の手でひたすら目元を拭い、よく耳を澄ませば、
波飛沫の音の狭間に、小さな嗚咽も聞く事ができる。歯を食いしばり、時折肩を跳ねさせながら、手の甲を湿らせている。そういった
状況を認識するのにも時間が掛かり、顔を向けてから十秒は経った頃、ようやく

 「どうした?」

 そう一言訪ねる事ができた。
 言ってしまってから、何て気の利かない言葉だろうと思った。訪ねたということは、察す事ができなかったと宣言しているようなも
のではないか。そう気が付くと、腹から脳天へ悔恨がさぁっと駆け抜ける。

 「ごめんなさい」

 搾り出すようにして吐き出された謝罪へ、提督も慌てて反応を寄こす。

 「いや、別に気にしていない。……だから、泣くのは止めなさい。何も責めないし、言いたくないことは言わなくていいんだから」

 「違うんです! そうじゃなくて……それ以外にも、私、謝らなくちゃいけないんです」

 過呼吸気味に途切れ途切れ言葉を紡ぐ彼女の様子は、とても痛々しいものである。彼女はここまで言い切ると、後から堰を切ったよ
うに漏れ出す嗚咽に、続きを言う事ができなくなった。

810 :クズ ◆MUB36kYJUE:2014/07/06(日) 21:04:09 ID:WPQREMKw
 気まずい間が開いたが、提督は決して先を急かすような事をしなかった。そんな事のできる権利はないと思われたし、悪意はなくと
も結果的に追い詰める事になってしまうのは厭に思えた。
 気が付けばポケットの中に手は無く、いや向かい合っているのだからそれも当然な訳であるが、掌に残っている温もりの残滓が寂寞
を掻き立たせてならなかった。一抹の不安感が足元を通りすぎ、胃がきゅうと縮み上がる。ぞっとしない感覚に、提督は思わず生唾を飲
みこんだ。

 「一つお願いがあります」

 意を決した風に、祥鳳は彼を見つめた。纏う雰囲気からいうならば、睨むと形容してもおかしくは無い。語気は冷静沈着なれど、滲
む凄みは紛れも無く、高ぶった感情のそれである。

 「うん。何?」

 「私と、別れてください」

 提督の口からは、再び引き攣った吐息が漏れだした。
 意外にも、その言葉を聞いたときに何かショックを受けるような事はなかった。ただ厭な予感が的中してしまったと、そういった納
得のようなものが漠然と心内に広がっただけである。一旦は流れを止めた彼女の涙も、だがすぐに眼は潤みだす。それをぼんやりと眺
め、しかし頭はそういった視界の状況さえ処理できないほどだった。真っ白に、虚無が果てまで伸展する。

 「ごめんなさい。理由は聞かないで。……ごめんなさい」

 やがて彼女は泣きながら、走って提督の横を通り過ぎた。
 その場に立ち続けていると、今更遅れて防波堤で座るという行為の意味を理解できた気がするのだった。極寒が自身を罰してくれ、
しかも地平線に広がる闇は思考を煮詰めてくれる。
 一体自分は、彼女の何を分かっていたというのか。
 自嘲の念は何時までも、彼の心に纏わりついていた。

811 :クズ ◆MUB36kYJUE:2014/07/06(日) 21:07:25 ID:WPQREMKw
一章


 煌びやかなオレンジの眼光が、舐めるように空を仰ぐ。その先、雲の白壁の向こうからサイレンの如き音が鳴る。
 察知は同時。深海棲艦隊は、まるで息を合わせたかのように、一斉に駆動を開始した。
 空母ヲ級を、残り五隻の船が取り囲むように移動する。足早な重巡が転回しヲ級の後方に張り付いて、ル級戦艦は正面に立つ。その
機敏な陣展開は、まさに熟練の妙技と呼ぶに相応しい。
 カレー洋東方主力艦隊。数多ある深海棲艦隊の中、古参にして最強の一角。その旗艦を努めるヲ級の航行は、まるで茶会にでも赴く
かのような優雅さを纏う。戦闘準備下のその余裕は、見た者悉くに畏怖を覚えさせるものであった。
 数多の艦娘を屠りさったその矜持。この海域の覇者として君臨し続けたという気位こそが、この艦隊の牢固たる強さの源泉だった。
 今、金城鉄壁たるを更に強化せんと、哀れにも羽虫が灯に迫る。
 しかし、手を抜くつもりはない。愚行なれど勇敢なその意気は、それだけで充分に賞賛足り得るものであった。故に、例え相手がい
かに弱卒であっても常に全力で相手になる。それがこの艦隊の数少ない流儀であるのだった。
 各艦各砲塔がまるで独立した生き物かのように動き出し、一様に雲間の向こうへと照準を向ける。速度を維持し間隔を維持し、しか
し意識は徐々に増大するプロペラの風切り音に集中していた。
 輪形陣の中心で、ヲ級は青白い口角を吊り上げた。戦闘の愉悦が、久方ぶりの興奮を連れて空高くから舞い戻ってきたのだ。黒金色
の格納庫から白煙が昇り、その狭間から艦載機が出撃する。立ち上る煙を裂いてそれらは空高くに舞い上がり、数多の赤い光芒を空中
に刻み付けていた。
 やがて雲をエアインテークに巻き込みながら、無数の艦爆艦攻、戦闘機が頭上に姿を現した。ヲ級艦載機を見つけるや、敵方の零戦
は急激に降下を開始。脅威の全てを撃ち落さんと、軍団に向かい突進する。それを正面に見据え、ヲ級艦載機も戦闘機動を開始した。
 腹の底に響くような機銃の音が十重二十重と折り連なって、空一帯を多い尽くしたようだった。
 フリントホイールの回されたジッポーのように、突如火の粉を噴出して墜落してゆく戦闘機。尾を伸ばす黒煙が無数の筋となり、群
青と白の彩を穢していく。その間を器用に縫いながら、彼の飛行機たちは翼を翻して踊り続ける。
 空での戦いが勃発した頃、海面でも今まさに、砲火の交わりが始まらんとしていた。
 視認された六隻の艦。うち旗艦の空母は始めて見る形のものであった。小柄な体躯に見たこともない武装を施し、悠然と艦隊の先頭
を航行する。その双眸、愛らしい童顔がもったいないと思えるほど、険しくこちらを睨みつけていた。
 十一時半の方向、速度を維持し彼の艦隊は直進してくる。恐らくは、反航戦を仕掛ける算段であるらしい。
 当然、深海棲艦隊とて速度、航路共に変えず。猛る闘争心に身を任せ、正面から迎え撃つ体勢をとった。
 単縦陣。その意気やよし。
 対空火器はそのままに、主砲副砲を正面へと向けた。射程に彼女らが入ってもしかしすぐには発砲せず、より命中するように、より
被害を与えられるように、目を眇め限界まで近づいてゆく。興奮や恐怖、トリッガーに掛かる指の衝動や緊張。それらから耐えに耐え
忍びに忍び、訪れる筈の時を待つ。
 無限とも思える時間の果て、しかし彼我の距離は着実に詰まる。両者の交錯する視線は、敵味方の区別なく同じ色を湛えていた。
 即ち、それは焦燥。逸る思いは頂に登り詰め、とうとう好機が到来した。
 ヲ級は異形の白い腕を、ゆったりと高く持ち上げた。弾着観測後の修正時間を鑑み、ここがまさしく限界点。今まさに手を振り下ろ
し、一斉射の号令を下さんとした矢先、だがここで敵方に意外な動きがあった。

812 :クズ ◆MUB36kYJUE:2014/07/06(日) 21:08:14 ID:WPQREMKw
 あろう事に、敵旗艦の新型空母はおよそ百六十度急速回頭。艦隊全体の動きを止めたのだった。
 恐れを為したか、最悪手としか思えない行動を見、ヲ級は憫笑を漏らさずにはいられなかった。こうも情けない姿を見せられると、
骨がありそうだと意気込んだことに羞恥の沸く思いである。
 抱いた失意の憂さ晴らしをすべく投げやりに斉射命令を出そうとして、だが突如彼女の脳内には一つの懸念が浮かび上がった。もし
かしたらと思わずにはいられないその脅威は、状況を客観視するととますます現実味を帯びてくる。
 ヲ級の下した判断は、一見すると用心に過ぎるかもしれないものであった。だが、果たしてそれは賢明でもあったのだ。
 東郷ターン。その名を知らぬほど軍事に疎いヲ級ではない。敵は日露戦争、日本海海戦におけるあの奇策を、今この場で再現しよう
としたのである。
 一見無謀なこの回頭は、しかしその実こちらを誘い込む周到な罠である。旗艦に砲火を集中している間に、状況は丁字不利へと変遷
する。肉を切らせて骨を断つ、その真髄を見せんとする幻惑の戦術だ。
 ヲ級が察知できたのは、敵新型空母の特徴的な艤装からであった。彼奴の左舷、艦載機マグの格納庫を兼ねた飛行甲板は通常のそれ
とは違っていた。その厚み、なにより特徴的なハリケーンバウ。兼ねてより噂の流れていた装甲空母に相違ない。
 この策は旗艦の防御力にその成否が掛かっている。陣の先頭を切るに、まさしく彼女が相応しかった。
 策を看破したヲ級は、素早く自身の隊の陣形を組み直した。輪形陣から単縦陣へ。二時の方向へ回頭しながらの滑らかな展開である。
 敵の戦術が看破された今、丁字になる恐れは完全に消え去った。なれば来たるるべきは同航戦。より早く戦闘準備を整えた方が、こ
の海戦に勝利するのだ。
 懸命の陣再展開に、しかし一片の焦りもありはしなかった。舞踏の名手は、どれだけ性急な拍子においても決して動きを崩したりは
しない。それと同じ事である。
 狂いの無い一直線の陣が完成すると、ヲ級の橙の瞳はすかさずに敵方に向けられた。果たして戦の女神は、尚天秤を揺るがさない。
彼の空母との視線の交錯が、心拍を跳ね上げさせた。その眼から察するに、胸中の意図は自身のそれとまったく同じ。そして号令が下
されるも、まったく同時であった。砲打撃戦、その火砲の交わりが今この時より始まった。
 次々と繰り出される砲弾が、互いの袂に殺到した。無数の水柱が湧き上がり、空間一帯には突如として霧の幕が現出する。それが視
界を阻もうと、攻撃の手は緩めない。観測、そして誤差修正。砲弾は徐々に着実に、目標にひたひたと近づいてゆく。
 火炎の残滓が空間の霧を真っ赤に染め上げた。花が咲いては散る。そんな優美ささえ感じられる朱の明滅である。響く轟音に空気は
痺れ、衝撃波が海面を真白く泡立たせた。
 互いの砲撃により、互いが消耗してゆく。じわじわと膾にされるかのような砲戦であった。活路は見えず、ただただ無闇に損傷が増
えてゆく。だが、飛び散る破片の中、ヲ級の口元には悦楽の笑みがあった。
 今までに無い、拮抗した実力を持つ敵艦。まさに彼女らは、好敵手と呼ぶべき存在であった。恐怖と歓喜との交錯によって、最高の
緊張が練り上げられる。火炎がその身を舐めるとヲ級は痛みより先、絶頂の恍惚に体を震わせた。
 後方、重巡リ級がとうとう機関を爆発させた。前方、敵戦艦が左舷艤装を吹き飛ばされた。そんな様子に視線を廻らし、抱くのは更
なる戦果への渇望であった。目の前の敵は、必ず、潰す。憎悪と呼ぶには清らかで、歎称するには妬ましい。そんな激情がどろどろと
腹の底へ溜まっていった。
 それからどれほど経ったか。転機は不意に訪れた。
 遥か頭上ジュラルミンの屑と化した艦載機が、敵艦隊の進行方向に墜落した。予期せぬ突然の衝撃に、旗艦の空母はたまらず停止す
る。極一瞬生じた隙を、果たして逃す事はしない。
 ル級戦艦の砲弾が、一斉に敵新型空母に襲い掛かった。あわや、ステップを踏むように彼女はその弾幕を掻い潜り、しかしそれで終
わりではなかった。

813 :クズ ◆MUB36kYJUE:2014/07/06(日) 21:09:38 ID:WPQREMKw
 避けられた砲弾は海面に着弾すると、大きな水飛沫を巻き上げた。そのどれもが明確な攻撃性を持ったように、空母の頭上に降りか
かる。
 覆われた視界。巡った好機にヲ級はすかさず追撃する。幾つかの艦載機が彼女の意を汲み取ると、一斉に急降下を開始した。目標は、
今まさに体勢の乱れた敵空母。その頭上めがけ、腹に抱えた爆弾を一斉投下する。
 大規模な水柱、いや柱と言うに、その形は余りに巨大で歪。塊と呼ぶ他ない、そんな飛沫が彼の空母を原点に盛大に立ち上った。
 必殺の一撃に手応えはあった。着弾の寸前、垣間見た彼女の体勢は余りにバランスを欠いていた。片足を海面から離し、充分な速度も
出ていなかった彼女が、この攻撃を避けられたとは思えない。
 飛沫が収まる。そこにあるは残骸か、いや形さえ残らなかったのか。ヲ級は目を見開いて、その波の随に漂うはずの何かを捜し始め
た。
 窮まった進退。だが突然に、それは起こった。
 水霧のカーテンの狭間、一つの白銀が瞬き煌く。その光は瞬間膨張し、ヲ級の視界を目一杯に覆った。混乱の中、しかし電源が落と
されたかのようにその思考は瞬く間に消失する。
 ヲ級は光の正体に気が付く暇なく、果てはあの空母の様相を確認することもなく、気が付けば、あっさりと絶命していた。
 ル級戦艦は艦隊の旗艦が轟沈するを、視界の隅で捕らえていた。彼女の頭部を焼いたその爆風。しかし元凶は、それが何であるのか、
どこにあるのかさえ分からない。
 ル級は見る。目を見開き、その正体を確認しようとする。沈んだはずの、木っ端微塵に破裂したはずの、あの空母を認めんとした。
 だが、そんな彼女を嘲笑うかのように、正体不明の煌きが再び艦隊に牙を剥いた。旗艦喪失の混乱の中、一隻また一隻と沈められて
ゆく仲間達。そしてル級は絶望と恐怖の渦中において、遂にその姿を垣間見た。
 あの空母は健在だった。右手に持ったクロスボウが火花を咲かせ、双眸は冷酷に的を睨む。左舷の装甲甲板が焦げ付いている以外、
まったく外傷は見当たらない。
 半ば恐慌状態で、ル級は全火砲を彼女に向けて発射した。弾は我武者羅に繰り出され、発砲音は止め処なく空気を振るわせ続けてい
る。飛沫が再び彼女を覆い隠し、尚その水壁は増大し続けた。
 だが恐怖に凝ったル級の視線には、その姿が映っていたのかもしれなかった。死神の似姿、その佇立した影を、何万リットルもの海
水の向こうに捕らえていたのか。
 突如、水壁に穴が開く。飛沫の尾を引きながら、彼女は旋転して舞い上がった。クロスボウの照準、その先が自身の頭部のすぐ横だ
と察すと、途端謎は解きほぐれた。
 彼女が行ったのは、艦爆の直接照準爆撃。本来ならば、敵に向かって艦載機を発進させるのは愚行の極み、恥ずべき真似である。そ
れは照準を付け、構え、発射された時点でその艦載機の向かう先は敵に容易に予測されるからだった。七面鳥を撃つより、哀れな親に
操舵された艦爆を打ち落とす事のほうが遥かに容易なのである。
 だが、あの新型空母は飛沫の霧の中にいた。ましてや誰もが轟沈したと思った中、奇襲のように艦爆を繰り出していたのである。当然
察知は遅れ、果てはその航空機の姿さえ見つけられなかったのだ。耳のすぐ横を風切り音が過ぎ去ると、後に待つのは避け様のない死
だけである。
 艦載機操縦者の、最早狂気とさえ形容できる絶対の信頼。そして圧倒的錬度。ル級は長大化した意識の中、他人事のようにその音を
聞いていた。耳元を颯爽と過ぎ去る、風の音。
 諦観の境地、武人として求め続けた明鏡止水。皮肉なことに、それを会得したのは事切れる寸前の事であった。
 僅か数瞬の間、勝敗は呆気なく決した。


 呆然と見守る仲間達の視線に、大鳳は遅れて気が付いた。あの爆弾投下を自慢の装甲で往なした後、気が付けば全てを撃滅せんと、
身体が勝手に動いていた。意識の外、まるで右手のクロスボウが勝手に戦闘したかのようでもある。自身の危機のその先に、果たして
絶技が成ったらしかった。

814 :クズ ◆MUB36kYJUE:2014/07/06(日) 21:11:23 ID:WPQREMKw
 「だい、じょうぶ?」

 すぐ隣、祥鳳が呟くようにそう聞いた。目を見開き、何が起こったか理解が追いついていないのか未だ弓は引き絞ったままであった。

 「ええ。大丈夫、だった、みたいだわ」

 大鳳自身混乱はあったが、それでも微笑み、何とかそれだけ返すことができた。
 勝利の認識には間があった。時の止まってしまったような一息の後、気まずい空気を打ち壊す、姦しい歓声が木霊する。先ほどまで
の張り詰めた緊張が、途端たち消えになってしまった。
 艦娘達は大鳳の周りに殺到すると、それぞれがそれぞれに勝手に褒め湛え始めた。喝采を惜しみなく浴びせると、大鳳は照れくさそ
うに謙遜し、それが更なる賞賛を呼び起こすのだった。すっかりこの艦隊にも馴染んだ彼女の、大規模海戦の勝利である。その声は何
時までも、鳴り止むことはなかった。
 鎮守府に電信を送った後、この戦果を報告せんと彼女達は嬉々として帰路についた。何時もより気持ち駆け足で、日に赤く染まる海
を行進する。凱旋しているかのような、そんな誇らしさが大鳳の胸には芽生えていた。
 昼間の茹だる様な暑さは、何時の間にやら和らいでいた。海風は夏特有の湿った空気を含み、それが皮膚を舐めるように通り過ぎる
と途端背筋が鳥肌立った。焼けた鉄板の如く熱を発していた艦装も、既にひんやりと冷たくなっている。
 やがて地平線の向こうに薄ら鎮守府の影が現れた頃、祥鳳が不意に声を掛けてきた。

 「ねぇ。最近、提督は元気にしている?」

 逸らされている瞳は俄かに揺らぎ、その表情には悲しみと官能が織り交ぜられている。伝播した純真に何やら、意味も無く恥ずかし
くなってしまう。そんな視線を向けられた。
 自身が秘書になる前は彼女がその任を負っていた事を大鳳は頭の隅に思い出した。言葉の裏、微かに匂う色恋の暗香。それを感じた
気になって、だが彼女はすぐに否定した。唯の一言で余りに不謹慎で突拍子もない思考であると、そう思ったのだ。

 「ええ。何時も通り」

 「……そう。なら、良かった」

 「私が改造できたなら、またあなたが秘書艦になるのかしら」

 何の裏も無くただ口から漏れ出した言葉に、祥鳳は分かりやすく反応する。頬を染め、しかし瞳の悲哀は変わらない。

 「……だと、いいけれど」

 吐息のように、それは空気に交じり合った。
 彼女の様子を眺めながら、大鳳の胸中には模糊な焦燥感が湧き出していた。無意識の内に航行速度は速くなってゆき、祥鳳の怪訝そ
うな視線を感じてようやくそれを自覚する。
 慌てて減速しながら、しかし煮え上がったままの頭は痛痒を抱え込んでいる。鼓動が高鳴り、胸が締め付けられたように苦しくなる。
腹の底から沸いてくる悪寒、苛立ち、不安感。それらに囚われ、尚その誘因は分からなかった。
 徐々に鎮守府がはっきりと、視界に映りこんでくる。反対の雲間、空は桔梗色に染まっていた。

815 :クズ ◆MUB36kYJUE:2014/07/06(日) 21:15:55 ID:WPQREMKw

 「大鳳、出頭しました」

 先の戦闘で錬度は充分高められたらしく、入渠ついでに改造まで済ました大鳳はその足で執務室に訪れた。扉越しに声を掛けるとす
ぐさま中から返事があり、彼女は目の前の木戸を躊躇い無く開いた。

 「お疲れ様。黒も似合うね」

 傾注していた書類仕事から一旦目を離し、提督は彼女の姿を見、そう言った。黒と緑を基調とした改装後の服装は、よく引き締まっ
た体躯を気韻に彩っている。玲瓏たる色白の肌がその服の隙間から覗く様は、例えようも無いほど妖美だった。

 「解語乃花とはこのことか」

 「もう、褒めたって何もでないんだから」

 おどけて言って見せると、大鳳は恥ずかしそうにはにかんで胸元の辺りを腕で隠した。余りに純真に過ぎる仕草だった。提督はわぁ
っと湧き出した羞恥に、何が何やら落ち着かず、居た堪れない思いに焦がされる。乙女らしい姿と気障な自身の台詞が、部屋の空気を
甘ったるく淀ませたようだった。
 誰に弁解する必要も無いのに一人で勝手に高ぶってしまい、自身の姿がおかしくないか、疑心暗鬼になるほどだった。大鳳の視線に訝
しみが無いか伺いつつ、深呼吸して平静を装う。
 彼はさっさと話を進めてしまうことにした。机の下に手を伸ばし、硬質の一升瓶を掴み取つつ、余っている手で彼女を手招きする。小
首を傾げながら距離を縮めた彼女に、見せびらかすようにして机の上に置いた。

 「……これは、何かしら?」

 「地酒だよ。昨日取り寄せたんだ。今日の戦闘のMVP記念と、改造が終わったお祝い。……すまない。本当は盛大に祝ってやりたい
んだがな。この情勢下でパーティーを開くと、上にばれた時が恐ろしいんだ」
 大鳳は目を丸く見開いて、深緑の瓶を手に取った。冷え、結露で濡れたその表面から、中の液体が透き通って見える。

 「ささやかだけど、まぁ酒さえあるなら酒宴は酒宴だ。誰か呼びたい奴はいる?」

 「え?……あ、いえ。提督と二人がいいわ」

 まじまじと充分すぎるほどに見つめた後、彼女は悪戯っぽい微笑を湛え提督に向き直った。

 「あなたがお酌をしてくれるの?」

 「君さえよければね」

 「ふふ……嬉しい」

 ハスキーな彼女の声が、執務室の空気に溶けていった。
 机の上を片付け、奥の物置から椅子を引っ張り出す。嬉々としてそれに座る彼女の様子を眺めると、罪悪感も薄れるようであった。
この程度しかできなかったという鬱屈した思いが、嫣然とした笑顔に癒される。

816 :クズ ◆MUB36kYJUE:2014/07/06(日) 21:20:53 ID:WPQREMKw
 悪い癖だとは知りつつ、どうにも祥鳳の一件以来、自嘲癖が染み付いてしまった提督である。人に喜ばれるということが、今何より
の幸福だと感じられていた。彼女が喜ぶというのならきっと素っ裸で海にも飛び込めるなと、そう妄想を脳内に再生すると、余りの馬
鹿馬鹿しさに噴出しそうになった。
 棚から適当に見繕ったグラスとつまみ、氷やらを机に置きつつ、席に座る。小さな宴は朗らかな空気の中、誰に知られることも無く
始まった。


 話題は、先の戦闘の事に終始した。敵の今までに無い強さ、戦局の動き、そして自身の活躍ぶりを彼女は肩を弾ませ、欣喜と語って
いる。
 時折酒の入ったカップを呷りながら、身振り手振りを交え話し続ける。瓶内の液体はあっという間に半分まで減っていて、そのほと
んどは彼女の胃の中に下っていた。
 酌の度軽くなってゆく瓶の重量に、提督は冷や汗をかき始めていた。たった一口飲んだだけでも、臓腑が焼き爛れたかと思えるほど
の焦熱感である。彼女が嚥下に喉を震わす度、提督は生唾を飲み込んだ。
 このような飲みの席では、何時もは下戸な提督が彼女に介抱されるが、今日ばかり立場の逆転が起こりそうなことは誰の目にも明ら
かである。提督は否応なく、腹をくくらざるを得なくなって、既に胃の痛む心地であった。
 赤い顔を弛緩させて、大鳳はグラスを差し出した。もう何度目かも分からない酌の催促である。
 提督は瓶を手に取って、しかしその段になって躊躇いが生じた。これ以上彼女にとって悪い酒になったなら、結局煩わしい思いをす
るのは自分である。今ならまだ間に合うという楽観があった。
 酒を抱えたまま動かなくなった彼を見、彼女は桜色の頬を膨らませると大きく喉を震わせた。

 「提督! ください!」

 「……飲みすぎ」

 「そんなこと無いわ! まだまだ全然、酔ってなんかいないんだから! ほら、早く。ください!」

 「酔ってないってのは酔っている奴の台詞なんだよ。もうやめておきなさい」

 「酔ってません! 何処をどう見たら酔っているって、思うの? 信じられないわ。酔ってないから、ください! 早く!」

 応酬はしばらく止まることなく、最初渡すものかと意気込んだ提督も、しばらく後には心の天秤をぐらつかせる様になっていた。机
がびりびりと震えるほど彼女は声を張り上げて、宥め続けても声量は微塵も変わらない。背中から湧き出している威圧感たるや、普段
の大人しい印象とのギャップの為に、とても耐えられるものではなかった。彼女の目はどんどんと細められてゆき、その険しさは背筋
をさぁっと凍えさせた。

817 :クズ ◆MUB36kYJUE:2014/07/06(日) 21:21:24 ID:WPQREMKw
 もう既に出来上がっていた。燻っていた火種へガソリンをぶちまけてしまったという事へのどうしようもない悔悟に、提督は頭を抱
えたくなった。

 「もう。もう、もう! 信じられないわ! 私が頑張ったから今日の海戦も勝てたんですよ? その事きちんと分かってるの!?」

 「ああ、分かってるよ」

 「なら少しくらい我が儘聞いてくれてもいいじゃない! ほら!」

 「だめだ。頼むから……」

 そうして飽きるほど繰り返されたやり取りに、ついに転機が訪れたのは、ようやく五分ほど経った頃であるか。
 大鳳はがなりの狭間に、ただ一回だけ大きく吃逆を上げた。顎をくいと引き肩を大仰に震わせて、その後は急にむっつりと押し黙る。
おやと思うより先、ふらっと体躯が揺れ動くと、そのまま机に引き寄せられるようにして上体が倒れた。
 中毒で倒れたのかとぎょっとした提督ではあったが、背中が寝息で上下しているのを認め、ほうと胸を撫で下ろした。彼女の表情は
腕枕の敷枯れたその上で、憑き物が落ちたかのようにさっぱりとしていた。
 静けさの中、耳がキンキンと鳴り続き、それが先ほどまでの喧騒を意識させた。途端訪れた部屋の静寂は、空調の音までもがはっき
りと聞こえてしまうほどである。胸に迫る厭に大きな寂寞が、何とも居心地を悪くさせた。
 ようやく潰れてくれたかと安堵のため息を漏らした提督は、手にしていた酒瓶を恐る恐る机に置いた。くびれを握った掌をしばらく
開かなかったのは、一つの懸念が払拭し切れなかったからである。つまり、大鳳が突然飛び起き強引に奪い去るかもしれないと、そう
穿ったのだった。
 提督は焦れったい速度で、徐々に腕を引っ込めていった。机の中心で無防備に鎮座する酒は、だがしばらくしても何も脅かされはし
ない。心配は杞憂に終わったようであった。
 何となく、時計を見る。何故か物事の区切りには、意味もなく時刻を気にしてしまうものである。時の進みは思ったより遅く、眠気
がないのも納得であった。
 そういえば、祥鳳に別れを告げられた時にも、時計を確認したのであった。ただ一人呆然と立ち尽くし、手持ち無沙汰と思う余裕も
なかったはずなのに、二三三○と刻まれた盤面を見た場面は今でもはっきりと思い出せる。嫌な記憶のリフレインに胸は歯痒い疼痛を抱
え込み、蕭索とした部屋の空気と相まってやたらに気が沈むのだった。
 ふと目を向けると、大鳳のうなじが後ろ髪の狭間から覗いていた。よく目を凝らせば、服の膨らみの隙間からは流麗な背中も見て取
れる。色白の肌の、滑らかで何より艶かしい質感が、くっきり浮き出したかのよう視界に入ってきた。
 邪な考えを持ってしまったのは、果たして生理的に仕方の無かったことなのか。以前の恋人、しかもまだ未練があると言ってもいい
ほど引き摺っている彼女の事を思った直後に、あまりに不謹慎な想像をしてしまったことを、提督は独り恥じたのだった。首をぶんぶんと
振って、頭に沸いてしまった、口に出すのも憚られるような妄想をなんとか打ち消す。とにかく落ち着けと、胸中で自身に向かって繰
り返し言って、昂ぶった気持ちを鎮めたのだった。

818 :クズ ◆MUB36kYJUE:2014/07/06(日) 21:22:26 ID:WPQREMKw
 提督はゆっくりと椅子に腰掛けた。力が抜け幾らか冷静になり、彼は再三のため息をつく。何はともあれ宴は終わったと、そう心弛
んだ矢先、しかし気を抜くには余りに早すぎた。
 提督は、突如耳に入ってきた水音に過敏な反応を寄こした。予想だにしなかった、だが何よりトラウマを刺激するその音を果たして
聞き間違う事があるだろうか。蕎麦をたぐったかのような音は、間違いなく鼻を啜った時のそれであった。
 狼狽し、思わず席を立ってしまう。音はくぐもり不明瞭なものではあったが、視線の先、彼女の肩の震えが目に入ると、もう状態を推
し量るには充分だった。
 恐る恐る名を呼びかけてみる。するとすかさずに、予想通りな涙声の返事。確証が得られると心拍は途端跳ね上がり、ばつの悪さは
彼の瞳をあちこちへ揺らがせた。

 「おい、大鳳? なんで泣いているんだ。お前別に、泣くことはないじゃないか」

 「提督が、お酒くれないから……。私、嫌われたんだわ。提督は、もう改造の済んだ私の事なんて、どうでもいいと思っているんで
しょう」

 「そんなわけ無いだろ」

 「嫌われたわ。私明日から生きていけない。嫌われた! 嗚呼、もう駄目。死んでやるんだから……」

 「なぁ、頼む泣かないでくれ。酒は好きなだけやるから。ほら酌するぞ」

 目の前で女性に泣かれるというのは男性なら誰しも苦手とする所であろうが、提督のそれは何より格別なものであった。今再びあの
時のことが脳裏にまざまざと蘇り、息苦しさを感じるほど胸が締め付けらているのである。泣きたいのはこっちだと、そう叫びたい衝動
に駆られながら、彼の指は独りでに震え始めていた。
 そんな様子には構うことなく、大鳳は酌という言葉にだけ迅速な反応を寄越した。
 がばっと顔を持ち上げて、カップを勢い良く差し出す。彼女の瞼は赤く腫れ上がり、目じりからは大粒の涙が零れ落ちていたが、そ
れでも屈託無い笑顔を爛漫と振りまいていた。
 諦観や呆れの交じり合った感情が、彼の口から吐息となって溢れ出す。とくとくと注がれる液体の波紋を、大鳳はニコニコと見つめ
ていた。

 「ふふ……大好き」

 「素面になったら覚えていろよ、お前」

 発せられた言葉の意味さえ最早理解できないのか、彼女は何度も首を縦に振り、カップの中身を飲み干した。
 結局その後も酒は大鳳一人が消費し続け、ようやく本当に宴が終わったのはもう深夜と呼ぶことのできる時間であった。
 今度こそ潰れ机に伸びた彼女を他所に、提督は空になった瓶とカップを片付けた。グラスのぶつかる音は、意図しないでも大きなも
のであったのだが、それでも大鳳はこの不快な音を気にすることもなく、ずっと安眠し続けていた。
 一通り片付けが済んでしまうと、提督は歯を磨き、遂には寝巻き浴衣にまで着替えてしまった。気持ち良さそうな彼女の寝顔を見て
しまうと、どうしても肩を揺する気にはなれないのである。
 同室に女性がいるのに服を脱ぐというのは何とも背徳感の沸く行為であった。ただ脳内には早く寝たいという欲求が渦巻いていたし、
多少は彼も酔っ払っていたから、気も大きくなっていたのである。焼けるような胸のむかつきは体をひたすら重くさせ、しかし不快か
と言われればそんなことはない。彼女の耳や背中の線、椅子背もたれの付け根に押し付けられた尻の膨らみ、そういった所にちらちら
と目が行こうとするのを何とか自制しながらの着替えであった。

819 :クズ ◆MUB36kYJUE:2014/07/06(日) 21:23:18 ID:WPQREMKw
 そもそもこの執務室のすぐ横には提督の寝室があったのだ。何もここで脱ぎ着することはなかったはずなのだが、そういった思考に
行き着く前までに習慣が体を支配してしまっていた。気が付いたのは、丁度帯を締めた直後である。
 何もする事がなくなってしまうと、とうとう役目を果たさなくてはならなくなった。彼は大鳳の元へ行き、不承不承にその小さな肩
を揺すった。
 耳元で名を連呼すると、彼女はこの世全ての倦怠を一手に引き受けたかのような緩慢さで体を起こそうとした。腕の力だけで上体を
持ち上げたのか、ちょうど背のラインが地面と垂直の線を過ぎると、途端椅子の背もたれにしな垂れかかる。

 「立てるか?」

 聞くと、首を横に振る。まだ目元のあたりは赤く、しかし反対に頬や口の周りは血が抜けたかのように青白かった。小さな顔に背反
する色を持って、見るからに病的である。
 水の入ったコップを目の前に差し出すと、彼女はおずおずと、しかし顔つきはだけは必死な様子でそれを受け取った。どうにも、意
思と体の連携が上手くいっていないらしい。手を小刻みに震わせながら焦れったい速度で口にまで運び、だが一旦コップの端が唇に触
れると、夏場の運動後のように中身を飲み干していく。

 「もう一杯いるか?」

 机に置かれたコップを見、そう問いかける。大鳳は首を横に振った後、呻くように

 「せ、洗面台に……」

 と言った。
 皆まで言わずとも、提督には彼女の意が分かっていた。すぐ側にまで近づいて、脇に腕を挿し込む。体重を支えながら半ば引き摺る
ようにして、執務室奥の自室へとその体躯を誘導していった。
 本来、艦娘は進入を禁止されている場所である。着任してからというもの、今までこの部屋の中へ招き入れたことがあるのは祥鳳、
唯一人だけであった。救護処置なのだから仕方ないと心の中で弁解しながら、彼は部屋を突っ切って水回りへの扉を開けた。
 大鳳は混濁した意識の中で、彼の香りを嗅いでいた。唯でさえ今までに無いほどに近づいて、しかもあたりは提督だけの生活の場な
のである。空気が肺に満ちるとどこか幸福に包まれて、身体が浮いているかのような心地である。
 こんな状態なのに異性の匂いに意識を向けるとは少々色欲過ぎるのではないかと、洗面台の前に立つと彼女はそう思い至った。それ
からようやく提督の前で無様を晒そうとしていることに意識が向いたのだが、どこかに行ってと言うより先に、逆流してきたものが喉
を占拠した。
 吐瀉物が陶器を汚し、胃酸の匂いがあたりに散らばる。彼女はえずきに任せるまま二、三回続けて嘔吐した。
 つまみをそんなに食べなかった為か出てきたものはさらさらで、思いのほか苦しいということは無かった。ただ食道に焼け付いた残
滓の感触は不愉快極まり、それが気持ち悪さと似たようなものだから迂闊に動く事ができない。
 胃の縮こまる疲労感が、むしろ感情を高ぶらせたらしい。大鳳は荒くなった息の合間、搾り出すように

 「ごめんなさい」

 と言った。それを皮切りに不甲斐なさや羞恥の念が勢いよく湧き出し、それは意識せずとも涙となってぼろぼろと零れてくる。抑え
きれない嗚咽が、夜中の静かな空気の中で震えた。

820 :クズ ◆MUB36kYJUE:2014/07/06(日) 21:26:54 ID:WPQREMKw
 「別に気にしてないよ。だから泣くのは止めなさい」

 彼女の背を摩りながら、提督はそう口にした。慰めではなく、本心からの言葉だった。
 ただただ居心地が悪いから、どうやったら彼女が落ち着いてくれるかと考える。感じている体温を見通そうとしているかのように、
彼は摩る自身の掌をひたすら見つめていた。
 しばらくの場の沈黙と自身の思考の果て、ふと脳裏によぎる事があった。自制もせず半ば自棄になったかのように酒を呑み、そして
いざ峠が過ぎると反省と悔恨に涙を流す。普段では絶対にあり得ない大鳳の行動に、提督はずっと得心いってなかったのである。
 何が彼女をここまで乱れさせたのか。ずっと頭に居座っていた雪礫が、今音を立てて溶け出したようだった。そしてそれは余りに都
合の良い状況を現出させ、果たして逆らう事ができるほど、提督も強固な意思を持ち合わせてはいない。

 「なぁ、大鳳。もし良かったら、この後も秘書艦も続けてくれないか」

 思わず滑り出すように吐き出された言葉は、自身の鼓膜を震わせ骨を震わせ、脳内に伝道した途端に後悔の念を噴き出させた。目の前
にしている問題から目を逸らして、ただ逃避をしているのだ。無意識に吐き出された言葉であった。より一層、自身が矮小に思えた。
 本来なら彼女の体調の事を考えて、今この場で言うべきではないことだったのかもしれない。しかし、それに意識が向かないくらい
に、今の提督は逸る感情に駆られていた。急く必要は欠片もありはしないのに、何か処理のしきれない焦りがわだかまるのである。
 どうか断ってくれと、そう何度も心の中で唱えながら、彼はそっと大鳳の反応を見る。だが心理の機微に、今の彼女が気づくわけも
無く、止んだ嗚咽がまさに回答そのものだった。

 「もちろんお前がまだ秘書艦をやりたいって言うなら、だがな」

 提督はあわててそう付け足した。自分の願望の発露ではないのだと、そう言い訳したい気持ちが独りでに口を開かせたのだ。
 幾らか色の戻った顔を上げ、大鳳はゆっくりと視線を向けた。

 「いいの?」

 「悪いことがあるかよ。どうだ、お前は秘書艦を続けたいか」

 「……嬉しい。私、本当に嬉しいわ。……ありがとう」

 そっと伸ばされた手が、控えめに提督の上着の裾を摘んだ。はにかんだ表情を見、彼の心持は暗澹たるものである。

821 :クズ ◆MUB36kYJUE:2014/07/06(日) 21:27:33 ID:WPQREMKw

 驚くほど自然な目覚めであった。寝起き特有の、あの蒲団に身体が沈みこむような気だるさが一切まったく無いのである。頭部を絶
妙な堅さに支える枕や下半身を柔らかく包むタオルケットの感触が、むしろ心地良いものとは思えず、自身が横になっているという事
自体、違和感を感じてしまうような、せせこまった感覚が体を支配していたのだった。
 視界に映る天井が驚くほど近くに感じられ、そしてそれは決して心象による錯覚などではないという事に大鳳は遅れて気が付いた。下
に引かれたものが蒲団ではなくベッドであること、着ている服が寝巻きでないこと。そういった差異が徐々にだんだんと知覚されてい
って、混乱は頭のクロック数を猛然と加速させていった。
 そこが提督の部屋だと気が付いたのは、たっぷり一分は経った後である。彼女は昨日の記憶を掘り起こし、しかしどうしても就寝に
至るまでのプロセスを思い出せないでいたが、今体を包んでいる心を痒がらせる匂いは間違えなく彼のものであるから、ここがどこなの
か疑問を挟む余地はないのである。
 タオルケットを跳ね除けながら、彼女は体を起こした。提督を探し辺りを見渡してみても、だが姿は見当たらない。部屋の調度品が
じっとこちらを見つめているようで、どうにも居心地が悪かった。まるで、お前の昨日の醜態を私たちはずっと見ていたぞと、或いは
お前の欠落した記憶の場面を私たちは覚えているぞと、そう言い詰め寄られている気になるのである。
 いち早くここから逃げ出したくなって慌ててベッドから降りる。小走りに扉にまで近づき、焦燥に駆られるままドアノブを回した。
背中に感じる視線のようなものが、酷く恐ろしいものに思えていた。罪悪感が足を急かし手を震わし、きりきりと胸を締め付けている。
今の彼女の様子は、さながらホラー映画を見た後にトイレへの廊下を歩く怖がりそのものであった。
 扉が開くと、恐怖はさっと霧散した。溢れてくる光量は随分多く思えて、それは先ほどまでいた寝室はカーテンが全て閉じられてい
た為であった。その事に気が付くと、ただ薄暗いというだけでここまで狼狽した自分が恥ずかしく思えて、大鳳は独り勝手に胸の奥を
熱くしていた。
 勢い良く開いた扉は相応に音を出して、執務机に座っていた提督の背は思わずびくんと跳ね飛んだ。その拍子に机の上の書類がぐら
ついたが、崩れるほど傾きはしない。ほうとため息一つ、彼はほんの少しの倦怠を滲ませながら、ぐるり大鳳の方へ振り向いた。

 「おはよう。吃驚した」

 「ごめんなさい! そんなつもりはなかったの」

 「いいよ。どうしたの、慌てて」

 訝しげに細められた目にさっきまでの不恰好を看破されたかのようで、彼女の心中は途端波風立った。泳いだ視線の先に、ふと壁掛
け時計が映り、それが逃げ道を作ってくれた。裏返りかけた声で少々露骨に、彼女は話の方向を逸らす。

 「も、もうお仕事しているの? 随分早いんですね。まだ五時なのに」

 「いや“もう”というか、むしろ“まだ”なんだよな」

 「え?」

 「えっと、昨日の夜の事はどれだけ覚えてる?」

 突然の問い掛けに、彼女は心臓をきゅっと縮こまらせた。頬がじっとりと、果実が熟れゆくように染まっていった。

822 :クズ ◆MUB36kYJUE:2014/07/06(日) 21:28:56 ID:WPQREMKw
 自身の痴態について、一度はベッドの上で平然と思い出していたはずなのである。だがその罪深さは本人を目の前にして、ようやく
悪意の針を覗かせる類の物らしい。音を立てて湧き出した羞恥がぼっと体を茹らせて、背筋のむず痒さにもんどりを打ちたくなってし
まう。顔が赤くなったことには自覚があったから、焦り両手で頬を覆った。眼前にしているこの人にあのような無様を晒したのだとい
う、そういった自意識が平静を装うとする心中を容赦なく攻撃してくるのだった。彼に見られているということが、今この上ないほど
勘弁ならない。
 提督は意地の悪い笑みを浮かべながら、そんな彼女の様子を眇めた眼で見つめていた。別段、特別な意図でもってこの問いを投げか
けたのではない。だが煽られる嗜虐心、その高揚たるや話の本題がすっかり頭の隅に追いやられるほどだった。

 「別に夜這いをかけた覚えはないぞ」

 もののためしといった心緒で、そう口にしてみた。言葉での追い討ちをかけてみて、彼女の反応を見たかったのだ。
 果たして、満足の行くリアクションである。大鳳は赤い頬を尚一層朱に染めて、

 「馬鹿!」

 と一喝、提督を睨んだ。凄んで見せた所で、そんな愛嬌のある頬の色をして恐れおののく者があるだろうか。むしろ彼は恍惚の中、た
だただ慈しみの念を覚えていた。今すぐにでも側に駆け寄り慰撫してやりたいと思うほどに、愛らしさは胸をじくじくと疼かせる。
 自身の変態性に危機感を持って、彼は衝動を我慢することにした。怒らせたいわけじゃなく、ただ可憐に恥ずかしがる様を見たいだ
けなのだ。これ以上調子に乗ることは、矜持が許しはしないのだった。

 「お前が寝た後、妙に目が覚めちゃったからずっと仕事をやってたんだよ」

 視線を机に戻しながら、提督は気だるさを装い言う。先ほどまでの錯乱は急になりを潜め、彼女は目を大きく見開いた。
 例え直接見ていなくとも、愛らしくころころと表情が変わっているその様子は充分に察知ができて、思わず口元には笑みが浮かんだ。

 「昨日からずっと?」

 「時々休憩は挟んでたけどね。……お前、もうはやく自分の部屋に帰ったほうがいいんじゃない?」

 「どうして?」

 「別に私は困らないがね」

 言われ、彼女の頭には失念していた問題がわっと花開いたようだった。艦娘の起床時刻は六時。ここに泊まったということを誰にも
気づかれてはならないし、その為には様々に身繕いも必要だった。

 「失礼します!」

 ぱたぱたと足音を響かせながら彼女は廊下に飛び出していった。顔色は、今度はさぁっと青白くなり、頬も無意識に引き攣っていた。
 部屋を出ると、遅れて聞こえた提督の笑い声。それが耳に入った途端、地団駄の踏みたい思いを抱いた。誤解される事が恐くないの
かと、耳を引っ張りがなり立ててやりたかった。生憎今は湧き出す焦燥感に命じられるまま、足を動かすことに精一杯だ。
 踏みしめられた木の板の歪む音は、ポジティブにリズムが良く、まるでフラメンゴの演奏のようでもあった。心情とは裏腹な、その
愉快な音が神経を逆撫でして、どうにも気分は宜しくない。執務室を出てからというもの苛々は正の一次関数グラフのように、止め処
なく募っている。階段を降り、尚足は速めたまま、大鳳は鎮守府本棟の出口へ向かった。
 渡り廊下の屋根の向こう、青の抜けすぎて紺になった空色がじっとりと彼女を見下ろした。昂った感情が冷えたのは、棟を移り艦娘
宿舎に足を踏み入れた時である。
 途端に音を立て始めた心臓の脈動は、きゅうと息を詰まらせた。それは何も走り疲れた為ではない。この宿舎内、今誰かが気まぐれ
にふらっと外へ出てきたなら、誤解の種は見事芽を出し決して収まりはつかなくなるだろう。その恐怖が、緊張の糸をきりきりと張っ
ていたのだった。

823 :クズ ◆MUB36kYJUE:2014/07/06(日) 21:29:21 ID:WPQREMKw
 つくづく普段着である事が恨めしかった。まだ五時である。着替えたと言うには余りに早い。脳裏には執務室に戻るという選択肢も
浮かびはしたが、どちらにせよ部屋に帰還しなくてはならない以上、意味の無い事だった。
 忍ばした足音の板張りの床を滑る音に、一歩一歩精神が削り取られてゆく。部屋の戸が延々連なる光景。誰かの部屋の戸を横切る、
その数十センチ間隔数秒おきの緊張が、過敏な神経の表面をごしごしと容赦なく摩るのである。
 珠の汗が頬を伝い、幾つかが床に滴り落ちる。決して暑いと感じているわけではない、はずであった。彼女には最早自身の体温さえ、
判別ができていなかった。
 時間の感覚の希薄になりだした頃合、目的の場所にたどり着くと、大鳳は涙が出そうなほどの歓喜に打ち震えた。緩んだ心が触れた
ドアノブへ流れ出すようで、足腰に力が入らなくなる。何とか自身の部屋の中に転がり込んで、閉まった扉に背を預けた。しゃがみこ
み、達成感と徒労感の混ざった空虚にじっとりと浸る。何をするのでもなくただただ背を扉に預け、部屋の天井にある染みを意味もな
く見つめ続けた。
 結局は、起床のベルの鳴るまでずっとそのままの体勢であった。ただ有りのままの沈黙、その範囲は脳内にまで及び、ふとすると喧し
い目覚ましの鐘音さえ意の外に追いやられかけていた。何せ俄か廊下に眠気眼の喧騒が響き始めてようやく、彼女は動こうという意思
を取り戻したのだ。茫然自失のその境地は、先の戦闘時、一気に敵艦隊を撃滅に追いやったあのときの状態とどこか似ている気がした。
 立ち上がるときには尾てい骨から背骨に沿って鈍痛が顕れ、しかし致し方無いことだろう。痛みの範囲は筋肉から体の奥へ侵食する
ように広がった。我慢して無理やり腰を回してみると溶けだす風に痛みは引いて、その段になると、まだ自身が身繕いを整えていない
ことに気が付いたのだった。
 替えの服はぱりぱりと、折り目に一切乱れは無い。だがいざ着込んでみると、途端柔らかく体躯を包み込んでくれるのだった。支給
されたばかりの、新品の、新型改装服である。着心地に不満はあるはずもない。
 替えは今着たこの一着のみで、脱いだものと合わせ二着でのローテーションである。着替える必要があるか判断の難しい所ではあっ
たが、一応酒盛りをしてしまった手前どうしても不安は残ってしまう。大鳳は脱いだ服にネームタグをつけると、洗濯用ネットに入れ
て出口の方へ放っておいた。食堂に向かいがてら、後で共用洗濯機まで運ぶ算段である。
 その他身の回りを整えて、彼女は再び廊下に出た。艦娘達がぞろぞろと食堂へ向かう中、動揺を胸に秘めながら顔を伏せて歩く。
 片端から、今朝は早起きしていないよねと聞いて回りたい気分であった。こういった確証の得られない状況というものを、果たして
好む者がいるだろうか。大鳳とて、例外ではない。
 つい一時間ちょっと前に通った渡り廊下を、今度は反対方向に行く。食堂は本棟一階の西、艦娘宿舎から見ると右手の廊下の最果てにあ
る。ガラス戸二枚に隔てられその間も大分長いから、最早棟として独立しているような造りであった。
 大鳳が本棟に入ってちょうど右折しようとした時、階段からはぽつねんと提督が降りて来るのが見えた。彼女はその姿を視界の隅に
捉えるや、反射的に顔を逸らして、逃げるように廊下を突き進んだ。幸い辺りは艦娘によってごった返していたために、小柄な彼女の
姿はすぐ雑踏に消え溶けた。或いは、気を使って見逃してくれたのか。恐る恐る後ろを振り向くと、彼は第六駆逐隊の面々に囲われな
がら愉快そうに口を動かしている。
 気をつかう、というフレーズが頭にどこか残り続けた。平静に戻った上で彼を見ると、思い出された場面があった。
 曰く、提督は眠れないからずっと仕事をしていたというのだった。しかし普通に考えれば、ベッドを自身が占領してしまったために、
むしろ夜を明かすためにやる事というのが仕事しかなかった、というほうが自然である。起床時は半ばパニックの中にあったから、こ
んなことにさえ気が付けていなかったのだ。
 後でお礼を言おうと考え、しかし胸がむず痒くなる。それは申し訳なさによるものか、はたまた羞恥によるものか。彼の顔を見るこ
とに抵抗を覚えてしまっていること。しかもそれは決して不愉快からくるような代物ではなくて寧ろもっと甘い、じくりと滲む胸奥の
痛みからきているということ。
 果たして、大鳳の頬は朱色だった。

824 :クズ ◆MUB36kYJUE:2014/07/06(日) 21:32:31 ID:WPQREMKw
二章


 暦の上では秋にもなれど、赤トンボが飛ぶわけでもなく椛が色付くわけでもなく、早秋とは名ばかりに、海面は未だぎらつく太陽に
焦がされ続けていた。滲む汗は珠となり、いつかはつぅと滑り落ちる。それが上着の肩口に吸着すると、接着剤のように皮膚と肌とを
張り付け始める。不快な感触に、だがもうすぐそれも終わると胸の中で唱えれば、幾らか気分はましになるのだった。
 北方海域への遠征任務。航空機輸送の報酬として鋼材とボーキサイトを受領するその作戦は、丁度往路の半分にまで差し掛かったと
ころである。祥鳳を旗艦とする軽空母三隻(此れを特務臨時編成航空戦隊)護衛の駆逐艦三隻(此れを特務護衛駆逐隊)それらを纏め
て『第三特務臨時編成艦隊』は、茹った海に波紋を刻みながら粛々とと航行していた。
 睦月型三隻を率いるように鳳翔が先導し、後方警戒には龍驤、祥鳳がついていた。空に木霊する駆逐艦の姦しい声は、鳳翔によって
やんわりと包み込まれていた。それは窘めているのではなく、ただその煩い会話がきちんと管理されているという風である。彼女の持
つ天性の母性が駆逐艦達の喧しい声を、それでも煩過ぎることにはしていなかったのだった。
 残された年長組二人は、実に気楽なものである。和気藹々とした朗らかな雰囲気に、だが片一方祥鳳だけは取りこぼされたかのよう
に物憂げだった。
 龍驤との会話に返事はする。その話の内容もきちんと理解はしている。別段心ここにあらずといったことではなく、ただわだかまる
憂鬱が気を萎えさせていた。
 看破されることはないだろうと高を括っていた。今の自身を客観視する分には、どこにも異常はないはずだと思われた。そう思った
矢先にしかし、突飛に放たれた龍驤の一言はその考え全てを否定した。

 「なんや、うち小難しい話しとるつもりないんやけど」

 会話の最中に脈絡なく、ふとしたら聞き逃してしまうような自然さ。思わず顔を向けてみれば、訝しげに眇めた眼がちくりと刺すよ
うな視線を送っていた。
 祥鳳の失敗だったのはその後何も言い返すこともできず、息を詰まらせてしまったことであった。取り繕わなかったということが、
まさしく肯定の返事そのものである。すかさずに龍驤は追撃の次手を口にする。

 「こないなしちめんどくさい遠征任務なんやからおもろい話があるなら出し惜しみせんでほしいんやけど。……提督やろか? 原因
は」

825 :クズ ◆MUB36kYJUE:2014/07/06(日) 21:32:50 ID:WPQREMKw
 果たして図星の真ん中をつかれ、祥鳳の反応は分かり易さの極みである。「そんなんじゃない」と「ちがう」を壊れたように繰り返
し、頭の飛んでいきそうなほどかぶりを振る。けらけらと笑い続ける龍驤は、得心いった様子で先を続けた。

 「ええでええで、隠さんでも。きょうび提督は大鳳にぞっこんやからなぁ。寂しくなるのもようわかるで」

 「ほんとに違うんだから!」

 「まぁ予想の範囲ではあったけどね。キミ分かりやすいからなぁ」

 流石に、過去の関係のことまでは漏洩していないようだった。そこに安堵を覚えつつ、しかし龍驤の言葉は本質を悉く突いていた。
 即ち、提督と大鳳の様子が視界に入ると、それだけでもう面白くないのである。この遠征任務の通達、つい二時間ほど前のことであ
ったが、当然執務机に腰掛ける彼の隣には、あの秘書艦の姿があった。
 以前は自身のものであった役職に他人が収まっている様子。それを受け入れるには、未だ整理というものが終わっていなかった。自
分から去っておきながらと、何も弁明しない決意をしておきながらと。自嘲は重ね重ね、だが勝手な感情は際限なく胸の内をのた打ち
回る。惰弱で幼稚で惨めであった。そういった自覚が、より一層彼女を病ませていた。
 祥鳳は消化しきれない思いを抱き続け、今この時でさえ彼らの様子を気にしているのである。まさかまだ進展と呼べるような事は起
こっていないはずだと、妄想と焦燥に頭を疼かせ、兎にも角にもいち早く帰りたかった。

 「まぁあの提督は色恋に興味無いやろうから、当分心配は無いんやない? あの子も仮に気があったとして、どう見ても晩生やから
なぁ」

 彼女が悪気無しに放ったこの慰めの言葉に、息の詰まる感じがした。彼は色恋に興味は無い。その一文が、心内でしつこく反芻される。
 まさしくそれが、その思い込みこそ祥鳳の決意の源泉だった。自身が他の娘とは違うという確証を得る事ができないでいた事。たと
え同衾したとて、夜が明ければ他の娘との区別はない。秘匿が完璧であったからこそ、恋人である意義も薄れていたように思えたのだ。
 嫉妬ではなく、不信。普通以上のことを求めた故の破局だった。自身が特別だという確証が、そんな何をどうやっても得られないよ
うな代物が欲しくて仕様がなくなった。その自分勝手な驕慢さへの自覚から、提督に苦しみを告白することもできなかった。そして挙
句、精神的な破裂を感じ取ったその日に、彼女は別れを告げたのだ。
 今、当時の胃を痛くしながらの心配が杞憂に終わった。大鳳の様子を見れば、あの時の自分が周りからはどう見られていたか、推し
て知るべしである。特別な場所にいた事を知らなかった愚鈍さが、悔悟となって嫉妬へ変わる。
 水面の波紋を消す術は、唯一つ待つことだけである。心内のざわつきは、未だ留まることを知らなかった。

826 :クズ ◆MUB36kYJUE:2014/07/06(日) 21:38:07 ID:WPQREMKw

 遠征に空母が必要となれば、必然的に祥鳳を組み込まざるを得なくなる。つい何時間か前、この執務室には彼女がやって来て、もう
それだけで提督はこの上ないほどの憂鬱に苛まれていた。
 吐き出される溜息は際限なく、肺の奥底から湧き出している。これでは良くないと自身の仕事に傾注するも、そこに並ぶ事柄に愉快
なものなどある訳がない。先に送付した支給資材上限拡張の依頼書が、慇懃な“お断り”と共に返送されたのを視界に入れ、遂に彼は
机に伸び伏せた。

 「えっと、何かお茶でも入れてきましょうか?」

 何回聞いたかも分からない大仰な溜息に被せ、大鳳はおずおずとそう聞いた。気遣う顔つきをしながらも、決して提督の方を見よう
とはしていなかった。書類の淵を指でなぞりながら、几帳面にその線を合わせている。時折落ちてこようとする髪の一束を、指で掬い
取っては耳に掛けていた。
 実を言うならば、この艦娘の態度そのものにも、いくらか煩わしさを感じている提督である。樽俎、と言うには余りに煌びやかさが
足りなかったが、あの酒の席以来、彼女の提督に対する素振りは露骨に変わった。
 具体的には、視線を合わせなくなった。別段、今まで顔を突き合わせて会話したことなど一度もなかったが、普段の生活の中でふと
目が合いそうになるだけで、仰々しく不自然に顔を背けるのである。見せ付ける為にわざとやっているのだとしたら何とも腹立たしい
事この上ないのだが、しかし当の彼女を観察すれば悪意というか、下心に基づいた行動ではないらしい。腹の色が淀んでいないのは彼
女の美点でもあるが、だからこそ接する方としては、厭に気を使ってしまう。
 この執務室にやたら長く居座ろうともしだした。業務の終わった後、何かと話題を見つけては、ずっと側を離れないのだ。恐らくは
再びの酒宴を待ち望んでいるのだろうが、生憎尻尾を振ってる様を見せ付けられると意地の悪くなる彼の性癖。就寝時刻が遅くなる苛々
も相俟って、願望を叶える気は絶無となっていた。
 兎に角、気に入らなかった。一挙一動が悪意の針となって、脳みそをつついているのだった。
 嫌悪の削ぎ落ちた煩わしさである。まさしくそれを部屋中に振りまかれているから、どうにも鼻について仕方ないのだ。

 「あの、提督?」

 不安げな声音が、静けさに圧迫された鼓膜を撫でた。体は起こさず顔だけ大鳳の方へ向けてみると、不安げに揺れた瞳が視界の中央
に鎮座した。勿論、ただの一瞬で目は逸らされ、後には視線の紡いだ糸らしきものの残滓が、眉間に感じられるだけになった。

827 :クズ ◆MUB36kYJUE:2014/07/06(日) 21:38:38 ID:WPQREMKw
 胸の内で散々悪態をついてみる。お前は少女漫画のヒロインか。無自覚なあざとさの、どれだけ煩わしいかを知っているのか。そう
いう態度は同姓から一番に嫌われるぞ、等々。
 じっと横顔を見つめ続けていると、ほんの少しだけ瞳の見ることのできる瞬間がある。大鳳はちらりと提督へ眼を向けては、慌てて
逸らすのを繰り返していた。

 「飯、食いに行かないか」

 姿勢をそのまま、彼は口だけ動かしてそう言った。空調の音に紛れてしまいそうなほど、弱く覇気の無い声音であったが、大鳳はすか
さずに反応を寄こし、

 「え?」

 首を傾け、そう聞き返す。

 「飯食いに行こう。腹減った」

 視線がしっかりと交錯したことに満足を覚えながら、彼は腕立て伏せをするような格好で体を起こした。膝裏で椅子を押しのけ立ち
上がり、欠伸をしながら伸びもする。
 戸惑う彼女は、外出の準備をし始めた彼の周りを、おろおろとうろついているだけであった。ものの一分で支度を終えた提督は、一
旦の制止を呼びかける大鳳を無視し、そのまま出口へと向かっていった。
 もちろん執務中の外出は、原則禁止されていた。しかも彼は見るからにこの鎮守府の敷地外にまで出ようとしている様子。秘書であ
る所の大鳳がこれを看過できる訳は無かったのだった。
 とうとう扉が開かれて、その足は廊下へと伸びていった。執務室に留まり、

 「わ、私は行きませんからね」

 そう言ってみても、彼の歩みは止まらない。酷薄な態度に苛立ちは募り、このまま一人で行かせればいいんだわと心内で愚痴を零す。
だが、こちらは何も悪くないのに、大人気なく駄々をこねた風な状況になっているというのも癪に障り、結局は彼を追うこととした。
 提督は気障ったらしく、壁に背を付け待っていた。

 「戻ってください」

 幾らそう繰り返したとて何も反応は返されず、小言は孤独にただ廊下をひた走っていた。見えない磁力に引っ張られるようにして、吐
き出す言葉とは裏腹、彼の後ろから離れられなかった。
 いよいよ玄関にまでたどり着く頃、彼女はもう沈黙してしまい、ただとぼとぼと金魚の糞をするだけになった。だがそれは決して精
神が諦観の域に達したのではない。むしろ、提督の暴走を止める事のできる防波堤をついぞ発見した為である。
 鎮守府正門。その脅威の枢軸は、大仰で荘厳な鉄柵門そのものよりも、横にあるこじんまりとした警備常駐室である。そこには守衛
の妖精が、それこそ物の怪の類というのは決まって土着しているように、四六時中いつでも一人は居るのだった。
 どうやら鎮守府の主が近づいてくるのを察したらしい。遠く小さい窓の向こう、一人の妖精が顔を覗かせた。

 「やぁ、君。ちょっとお願いがあるんだけれど」

 提督は警備室に近づくと、馴れ馴れしく小窓に顔を突き合わせて言った。一枚のガラス越し異様に接近した顔に、堪らず妖精は後ず
さる。ファンシーな見た目とは裏腹、渋い声音の返答がある。

828 :クズ ◆MUB36kYJUE:2014/07/06(日) 21:39:09 ID:WPQREMKw
 「仕事をおっぽり出してデートとは感心致しませなんだ」

 「いやなに、甲斐性さ。ねぇ、ここを開けてくれ」

 「さぼってもいいですが、人を巻き込むのはいただけませんな」

 「まぁそう言うな。私は何も君にボランティアを強いているんじゃない。これは取引なんだよ」

 提督は、細めた眼を横へと滑らす。相手の反応を楽しみにしている際の癖のようなものである。
 彼が嗜虐への愉悦に造詣の深い事を、大鳳は身をもって知っていた。湧き出す危機感と焦燥、無意識の内に拳を握りしめ、祈るよう
な心地に二人のやり取りを盗み見る。望み薄なのは重々分かった上、それでもこの妖精に屈強な精神力のあることを、望まずにはいら
れなかった。

 「君はたしか、今月の酒保の購入分が給料を上回っていたね」

 妖精は堅く締まった表情を気丈にも維持しようとしていたが、生憎口角の吊りあがったことは一歩離れていた大鳳にも見て取れた。

 「私たちがここを通り過ぎるのを見過ごしてしまったなら、私も君の酒保記録を誤って紛失してしまうかもしれない。仕事でミスす
るのなんて、幾ら気をつけても起こるときは起こる物さ。ねぇ、どうだろう。君は、今日、少し仕事でミスをする。誰にも気付かれない
些細なミスだよ。そして私も、帰ってからミスをする。ね? いいだろ?」

 果たして、きりきり音を立てながら開いてゆく門である。恨めしい視線から逃れるように、妖精は部屋の奥へと姿を消した。
 アスファルトの発する熱が、靴越しに足の裏を焦がしている。歩くだけで汗の止まらない厳しい残暑だが、肌に感じられる海風は幾
らか乾いてもいた。そう遠くない秋の予感が、過ぎた日々を意識させた。
 海鳥の舞踏を横目に見ながら、提督はかつての恋路を思い出した。海軍兵学校時代、初めてできた恋人との睦みである。
 丸顔でよく笑う、気の置けない娘であった。ロマン・ロランであったか。恋愛的友情は恋愛よりも美しいと言うが、あの娘との関係は
友情に限りなく接近していたように思う。
 様々な所に遊びに行った。暇さえあれば常に一緒だった。往来で手を繋いでいたのを見咎められた事もある。だがキスをしたのは一
度、体を重ねたのも一度きり。祥鳳とは真逆の方向性において、育まれた恋慕であった。
 横須賀の街の細部を知り得たのも、彼女と遊び練り歩いたおかげである。今、大鳳を連れて外へ出たのは、きっと無意識にその初恋
を追い求めているからであろう。祥鳳への当て付けとして、懐古に楽しさを再現しようとしている。
 下種な事をしているという自覚はあった。大鳳が自身を慕ってくれているということを、知った上で、その純真を踏みにじっているの
だ。寂しさを紛らわせるためだけに、想いを利用している。苛立たしげなのを装い、しかし瞳からは隠しきれない期待があふれ出して
いる。この娘のあどけない純真、白壁に爪を立てる心地だった。
 七百メートルは歩いた後、デフォルメされたマグロの看板を掲げる、一軒の寿司屋が見て取れた。学生の頃、その彼女とよく昼を食
べに行っていた店である。ムードも何も無い所であるが、だからこそあの時の二人には都合が良かった。安く、気軽で、高尚じゃない
ことが至上の価値だと、斜に構える時代には思えるものなのである。

829 :クズ ◆MUB36kYJUE:2014/07/06(日) 21:39:52 ID:WPQREMKw
 横滑りの戸を開けると、中はまばらな賑わい。昼時というには少し遅い時分であるから、繁盛していないという訳ではないだろう。レ
ジに立っていた年増の女給は、提督の姿を見るなり、

 「あら、お久しぶりね」

 「うん。久しぶり」

 「お二人? もしかして新しい……」

 「違うよ。さぼりできているんだ。内密に頼むよ」

 「まぁ、べつに言いふらしたりしないけど、あなたはいいとして後ろのお嬢さんの格好は中々目立つわね」

 口を開くのも億劫になり、むっつり黙って提督に続いていた大鳳は、その言葉を聞き、途端羞恥に駆られた。鎮守府ではより露出の
多い艦娘が跋扈しているために、自身の服飾デザインの大胆さには気が付かなかったのだ。大きく開いた脇や短いスカートに、何とも心
細い感じを抱き、しかし露骨に腕で隠そうとすればそれはそれで恥ずかしい。
 ぼっと頬を染めた彼女を見、女給はにたついた笑顔になる。

 「なら二階を使っていいわよ。特別にね」

 「ありがとう」

 提督は慣れた様子で、レジ奥に伸びる階段へと向かった。
 六畳一間、ぽつねんと机の置かれた畳の部屋である。メニュー表のある所を見るに、特殊な客を匿う事など日常茶飯事であるようで
あった。
 腹を膨れさせれば機嫌も直るだろうという提督の予想は、果たしてまったく正解であった。むっつりと黙ったままであった大鳳は、
しかし満腹の幸福を隠しおおせるほど器用な娘ではない。
 この店で昼時に最も人気なのは、六百五十円の海鮮丼である。日毎に余りそうなネタで作るそれは、日替わりなのは当然として机に
置かれるまで何が入っているのかも分からない。手頃な値段とこのマンネリの無いシステムが受けて、とりあえず迷ったらこれにしと
こうというような、定番の地位にあるメニューである。
 この丼をそれぞれ一つずつ、更に提督は追加して、小うどんと穴子、イカ、ハマチ、それから目に付いたオコゼなどという変り種の
握りを一つずつ。握りは一貫に二つ皿に載り、大鳳と分け合う形となったが、唯一オコゼだけは彼女が全てをたいらげた。
 肝心の丼であるが、今日は運よく当たりの日であったらしい。ネタの種類、量は記憶にある中で最大級に豊富であり、多かった。
 まず中央に艶やかなイクラ、その脇には大葉が敷かれ、わさびと極少量のツマが上に乗る。放射状に外へと伸びる刺身は薔薇の大輪
のようであった。透き通った油が蛍光灯を反射していた。マグロは赤味とトロが同等量。主役たらんと白米を覆い隠し、補色のアジが
脇を支えている。良く見ればネギトロによる小皿の上、凝った造詣のイカが、良家の娘の髪飾りが如く置かれている。提督にはそれが
つつましく、含羞の表情をしている風に思われた。
 飾りの菊がさり気ないコントラストであった。丼ものの多くにありがちな、白米の量が多すぎて余るという事は起きず、ぴったりと
同時に胃に収まった。食後に茶を啜りつつ、機嫌の回復した彼女は気に掛かっていた疑問を口にする。

 「前にも、ここに来たことがあるの?」

 言外に問われている事が何なのかを察知し、提督は逡巡した。正直に答えたところで特に不都合は無いらしいことが分かると、ようや
く遅れて返答する。湯飲みに手を伸ばし、この開いた間は特に不自然な風にもならなかった。

830 :クズ ◆MUB36kYJUE:2014/07/06(日) 21:40:13 ID:WPQREMKw
 「鎮守府に着任してからは初めて」

 聞き、大鳳は理由無き嬉しさに微笑した。
 つまり、以前の秘書艦は連れられて外出する事をしなかった。頭の中に浮かんでいた祥鳳の影は霧散して、遂には一、二時間程前の
自身の生真面目ささえなくなったようだ。ついてきてよかったと心の中で独り言ち、表情が緩んでいることにも気が付かない様子。そ
うしてうとうと睡眠欲の出始めた頃合、まさか心地よく昼寝する訳にもいかない。多少の倦怠を我慢しつつ、席を立ち、店を出た。


 鎮守府正門妖精詰所。悪魔の取引に矜持を投げ打ったあの妖精は、陽気な声音の会話を耳に捉えると、ただ押し黙って門を開けた。
そうして彼らがくぐる前に部屋奥の暗がりに身を隠し、気配を完全に消失させる。味方であったはずの大鳳は、すでに篭絡されている。
最早この妖精の行動に同情を示す者は無く、談笑の種として消化されるのみであった。忌々しさに握られた拳が、閉と書かれた緑のボタ
ンを叩く音を、果たして気に留めた者はいない。
 やがて提督は、執務室前にまで辿り着き勢い良く戸を開けた、その瞬間である。散歩の心地よい疲れが、安堵の途端に表層へ顕れ、
気の弛ぶほんの一瞬に、彼女が視界に映り込んだ。
 意想外な事は、大抵罰の当たったと思えるような状況下にて発生する。何時だかに聞いたこの言葉が記憶の底から引き摺りあがった。
直面した状況が、無意識に思考を逃避させるほどの衝撃を孕んでいた。
 驚懼に瞼が震え、目の前に認めた彼女、祥鳳の姿は、おぼろげに霞んだようだった。

 「……提督、あの。波の良かったおかげで予定より早く遠征が終わって……その報告を、えっと」

 目を逸らし、途切れ途切れ言葉を選びながら彼女は言う。今、両者、脳内に遠征についての思考はない。そして、状況の理解につい
ては提督の刹那の知覚が悉くを当てている。
 彼と大鳳が二人で外に出ていた事について、それを認めての猛烈な感情の濁流に、祥鳳は眩暈を感じるほどである。晩生、と龍驤は評
した。それに安心を感じていた。報告のためこの部屋に立ち入り、しかし二人そろって姿は無く、焦燥と不安の疑心がわだかまった。
 待機する事、既に一刻。最早弁明もできやすまい。否、弁明する気さえも起きないのだろう。怒りか、虚しさか。わだかまりはその
中間点のものに変化をし、伸展留まりもしない。
 提督は、彼女の胸中に増大する黒い物を察知している。決して誤解だとは言えないが、意味する所についてはまったく違う。乖離し
てゆく想いが目に見えるようで、もどかしく苦しかった。

 「あとで資材の増量を確認してください」

 「……あぁ。ありがとう」

 表面上、何も無かったかのような、至極何時も通りのやり取り。どこかぎこちなく感じられる動きで、祥鳳は提督の横を通り過ぎ、
早足に執務室を後にした。
 大鳳は両者の仔細な顔つきを見た。かつて抱いた疑念、恋の暗香が再び鼻につく。気のせいだと断じるには、部屋の空気が、或いは
今目の前にする彼の雰囲気が余りにも気まずさに包まれている。
 午後の長閑は一瞬にして崩れた。

831 :クズ ◆MUB36kYJUE:2014/07/06(日) 21:43:52 ID:WPQREMKw
 3

 外出は萎えた気分を立て直すためであったのだが、しかし現状彼の憂鬱はより一層酷くなっている。集中は途切れ、自己弁護と弁解
の言葉が頭を馳騁し、書類や事務的な懸念に思考を割く余裕は無かった。
 海の暗黒に航空誘導灯の赤が差し込む。窓からの景色を漫然と見ていた提督は、大鳳に肩を叩かれ我に帰った。

 「ここ、記入漏れです」

 その言葉と共に、視界には幾枚かの書類と、それを摘む大鳳の細い指が映り込む。午後、仕事を再開してより既に五回目のミスである。
 この一時だけで、この鎮守府着任以来の緩怠の総数は二倍に増えた。自身の貧弱なメンタルが情けなく思え、しかもそれがよりにも
よって大鳳に咎められるのである。彼女の怪訝な、それでいてどこか憐憫も滲んでいるような視線に、屈辱の怒りが腹底より湧き出す。
そしてとうとう煮えた感情の我慢できなくなる一瞬、提督は欝々しく立ち上がった。

 「あの、どこへ?」

 「トイレ」

 言い捨てて、早足に執務室を出る。
 行く当ても無く、ただ感情の昂ぶった衝動が足をせわしなく動かしていた。勿論、厠などに行く気はない。ただあの空間にいるのが
苦痛でならないだけである。どこか遠くへ、大鳳のほんの少しの気配も感じられない所へと、独り物寂しい廊下を突き進んだ。
 腹内に抱える原理が同じならば、行動が似るのも当然なのだろう。彼はやがて正面玄関にまで辿り着き、そのまま靴を履いて外へと
向かった。意識の下で、祥鳳の影を追い求める自身というものが、足先の指す方向を定めたらしかった。
 昼間蓄えられた日の温かみは既に無く、ひんやりとした肌寒い空気に露出した首が鳥肌立つ。時折夜空を仰ぎ見ながら岸壁沿いに歩
を進め、海風を浴びる。肺腑が淀みのない空気に洗浄されて、熱くなった頭は徐々に冷静さを取り戻していった。
 ふと、平常の中に佇むと湧き出してくる予感があった。確信に限界まで接近した直感らしきものである。何ヶ月もわだかまり、まる
で腐ったようにもなっている胸中の疑問が、喉元近くにまで競りあがった。情動の高鳴りが、センサーの如くその存在を知らせてくれ
るのだ。歩は速めず、驚くほど起伏の無い心緒のまま、彼は注意深くあたりを見渡した。
 因縁の防波堤、黒い海へ突き出た姿がうっすら暗闇に顕れだした頃合。向こうからてくてくと歩いてくる、一人の女の姿が認められ
た。予想が的中した事に薄寒さを覚える提督は、或いは彼女も同じような心境にあるかもしれないと思い至ると、その胸のうちに微笑
ましい、愉快な気持ちが沸きだすのを感じた。

 「お前も、夜の散歩か?」

 声の聞こえる距離にまで近づくと、彼はその娘、祥鳳に向かって声をかけた。

 「はい」

 「奇遇だね」

 「そうですね」

 互いに停止し、開いてしまった微妙な距離が、彼らの気まずさを無言のうちに表現している。

832 :クズ ◆MUB36kYJUE:2014/07/06(日) 21:44:19 ID:WPQREMKw
 奇遇、と提督は言ったが、寧ろこの邂逅は、両者の意思の介在によってなされたものであった。実は冬以来、たびたびこの防波堤に足
を伸ばしている二人である。今まで鉢合わせにならなかったのは、巡り合わせの悪さもあるのだが、どこか望み通りの出会いを果たし
た時への、恐怖があったのだった。相手が来るわけのない時間を選び取り、しかしもしかしたらと期待を胸に抱き続け、部屋に戻ると
運の無さを無念がる。
 今日、二人は大鳳という一艦娘によって、恐怖を上回る欲求を得た。それが、いかにも偶然らしき巡りあわせに作用したのだ。
 取りとめもない会話は、鎮守府玄関の見えるまで続いた。本題を放出する機会を伺う、その緊張感を保ったままのダイアローグにつ
いては、記すにも及ばない。拮抗した実力を持つ武士が、両者決め手に欠ける状況下、型の決まった打ち合いをするようなものであっ
た。
 先に踏み込んだのは祥鳳である。

 「最近大鳳さんと仲がいいみたいですね」

 不気味なほどいつも通りな声音に、提督はすかさず反応した。

 「別に、そんなことはないと思うが」

 これもまた、平常どおり。彼女は聞くや目を眇め、忌々しげに口を閉ざした。
 言動と反応を見て、寧ろ不満を抱えたのは提督である。なぜその立場にありながら、嫉妬を匂わす発言をするのか。彼女の身勝手と、
僅か期待を抱いてしまう自身の惰弱さに拳が震える。罵りの言葉が幾らも頭に沸いたが、どうにか何重にもオブラートに包んだ表現へ
変換して、生唾を飲み込んだ後それを口に出した。

 「前から疑問があった」

 「はい」

 「なんでお前は、私をふったんだ」

 提督は、自身の未練が醸し出されやしないかと危惧していた。何か下を見られるのは嫌であったし、感情はどうであれ理性の方では、
もう諦観を享受しているのである。
 実際には、この言葉は彼の意図したものとは違う解釈をされた。彼は彼女が持つ未練について一切気が付いていなかったし、燻って
いる情緒の本懐についても認知できている訳が無かったのだ。
 即ち祥鳳は、彼が大鳳と恋仲になるために自身との関係を完全に切り離そうとしているのだと考えた。別れを切り出した理由を聞く
事によって、漫然としたつながりを断とうとしているのだと。
 不服である。納得できるわけは無かった。未だ自分は引き摺っているというのに、彼は心に痛みを感じる事も無く鞍替えするのだ。
その怒りが、胸を焼き、目の前が真っ赤に染まったようだ。
 嫉妬深い自身を自覚したのは、今この時が初めてであった。彼女は未知の、熱く暗い怒りの爆発を他人事のように感じていた。もう
一人の自分が、殺意の湧き出すのを一身に受け止める。宥める事は叶わず、とうとう獣の咆哮が如き、悪意と敵意の言が飛び出した。

 「飽きたからです」

 どうすれば相手を傷つける事ができるか。それだけを考え、ひねり出した答えである。執着や憎しみが事実を押し込め、意想外の事
を表に出した。果たして彼は目を瞠っている。その様子に溜飲下がる様な悦びを覚え、彼女は衝動のままに喉を振るわせる。

833 :クズ ◆MUB36kYJUE:2014/07/06(日) 21:44:51 ID:WPQREMKw
 「逢えず話せずで、もういいかなって思ったんです。楽しいって思えることが少なかったし……。ごめんなさい。でももう時間も経
ったから言ってもいいですよね。未練なんて、あなたも無いでしょう?」

 「……ああ。うん。そうか、聞けてよかった」

 既に場所は、鎮守府の中である。互いにおやすみを言って、別れた。提督は失意によって、何も視界に入れることができなくなって
いた。彼女の僅かに赤く腫れた眼や、握りこみ震える拳などにも、気が付くことはなかったのである。
 ふらふらと覚束ない足取りで階段を昇り、壁にもたれながら廊下を進む。思考が放棄されたとき、人はなすべきことをなさねばなら
ぬと、自身の任務に傾注する。提督も、意識の上に昇るのは仕事のことのみであった。
 執務室の戸を開けると、頬を膨らました大鳳が見えた。

 「もう、提督! どこに行っていたんですか」

 快活な声に彼女は言い、彼の神経を逆撫でたのにも気が付かず言葉を続ける。

 「休憩したいのなら言ってくれれば、私そこまで鬼じゃないわ」

 「うん。ごめん」

 許容の限界を超え、その為にか提督の外見は朗らかだった。詫びの笑顔に屈託はなく、大鳳は彼の不調を看破できなかった。
 仕事の中断ついでにと、彼女は昼からのわだかまりを口にすることにした。外の空気を吸った事でリフレッシュもされて、機嫌もい
いだろうから聞いてしまっても大丈夫だろう。そういった判断である。運の無さと感情の機微に疎い性質が、迫る最悪を知覚できなくさ
せた。

 「提督、そういえば昼の事なんですけど……」

 「うん」

 「祥鳳さんと提督って、昔なにかあったの?」

 蓄積し続けた感情へ、重い撃鉄が振り下ろされた。一度引かれたトリッガーに、もう後戻りは許されない。彼女の声を端緒として、
提督は我に帰るような心地だった。
 目の前の娘について、極限まで憎らしい存在だと思われた。糾弾し、矯正しなくてはならない。ただ胸の内に蠢く暴力性によって、
屈服させなければならない。散々痛めつけられた自身を、更に足蹴にしたこいつには、然るべき報いを受けさせなければならないのだ
と、猛然と暗い感情が馳騁する。様々な要因にて溜まった鬱憤が、今一個人に向け晴らされようとしていた。
 のしのしと無言に近づいてくる提督を見て、ようやく彼女は、地雷を踏み抜いたらしい事を自覚した。

 「あの、提督?」

 声をかけ、だが無視をされ、肌にぴりぴりと感じられる危機感は抱く信頼によって黙殺される。胸元に両手を置き、下から伺い見る。
その様子は、彼の嗜虐心を駆り立てた。
 頤に指が這わされた。親指が唇を撫でた後、上向きに力が働いた。たまらず彼女は顎を上げ、まるで口を突き出すような格好になる。

834 :クズ ◆MUB36kYJUE:2014/07/06(日) 21:46:08 ID:WPQREMKw
 キスされたことを認知したのは、かなり遅れてからだった。ただ目を見開いていただけだった彼女は、顔の間近に息づかいを感じて、
ようやく顔を朱に染める。しかしその段になっても未だ現実感は沸かず、何をどうすればいいのか検討もつかないのだった。
 抵抗の少ない事を意外に思いつつ、提督はより深く彼女を求めだした。掌を顎間接の奥へ這わせ直し、強引に舌を差し込んでゆく。
強張り縮こまっているだけだった腕が、彼の胸板を叩いた。引き剥がそうと力を入れても、既に体は密着している。鍛錬の怠らない屈強
さを持ってしても、この状態にあっては体格差を覆せはしないのだった。くぐもる悲鳴を聞き、腰に回されていた提督の腕はより強く
彼女の体躯を引きつける。
 小柄を自称する祥鳳よりも、更に小さく細い体である。比較をしながら、彼は確かめるような手付きで服越しの肌をなで始める。
 そこにはしなやかさと強かさを両立した、合理的な美があった。柔らかくふくよかな、母性を感じさせるものではなく、だが故に、
寧ろ促される情欲もあるのだ。
 腰骨の出っ張りを過ぎ、とうとう尻の膨らみへその手がかかる。腰まわりの引き締まりから、途端弾力のある部位に指が沈む。彼女
は背筋をびくつかせ、キスの合間に抗議の声を出した。舌の嬲られたままでは、到底言葉にもならないが、良く聞けば、どうやら謝り
ますからと繰り返しているらしい。その余りに嗜虐のそそられる様、女性的柔らかさの欠ける者の女性的か弱さ。そういった背反が異
常の興奮を引き出すのだった。
 臀部からは一旦手を離し、脇の開口部から覗く肋骨の窪みをなぞった。危うい所へ触れかける、そのスリルがこそばゆいのか、彼女
の悲鳴はより一層その音階を高くした。二本、三本と撫でるたび指はより奥深くへ進行し、遂に僅かな膨らみを登攀するにいたる。
 口を離すと粘性の橋が両者の間に掛かる。それが自重で崩れる間の後、彼女の大きな瞳からは雫が零れた。
 躊躇が生まれた。震盪によって機能のほとんどを失った頭が、提督の眼前に幻を見せる。祥鳳の泣き顔、そのリフレインによる胸の締
め付けが、一瞬の硬直を引き起こしたのだ。
 隙をつき絡みつく腕をはらうと、大鳳は涙の流れるまま走り、執務室を飛び出した。嫌悪や怒りはなく、ただ驚懼による反射だった。
漫然としたショックに、心臓の跳ねる感じがしている。自身の荒れた息づかいや濡れた唇、掌の感触の残滓が、羞恥と寂寞の複雑に混ざ
り合った感情を沸き立たせた。
 開け放たれた戸を眺め、追い縋ることもせず、提督は立ち尽くしている。余りに感情が揺れ動きすぎた。その倦怠によって、もう何
も感じる事ができなくなったのだ。
 祥鳳との記憶を掘り返し、俯瞰して無感動に眺め続ける。それだけであった。

<続く>

835 :名無しの紳士提督:2014/07/06(日) 21:48:28 ID:A0G/dbHc
クズ提督氏待ってました
祥鳳さん絡みの修羅場とか胸熱

836 :クズ ◆MUB36kYJUE:2014/07/06(日) 21:48:46 ID:WPQREMKw
以上になります。本当に長々とすみませんでした。

837 :名無しの紳士提督:2014/07/06(日) 21:52:17 ID:dCKkTCqU
超力作乙ですー!

838 :名無しの紳士提督:2014/07/06(日) 21:57:09 ID:ElZeOOUE
うえー祥鳳さん…何がしたいんや…

839 :名無しの紳士提督:2014/07/07(月) 00:12:06 ID:5S/LXmIs
結婚してるのに結婚してる感じがしない
そもそも目の前の女は自分を愛してくれているのかわからない
でも笑ってる
そんな怖さを感じさせる古鷹のケッコンカッコカリセリフ

840 :名無しの紳士提督:2014/07/07(月) 12:13:52 ID:jB4lM1Bg
七夕が似合いそうな艦娘は誰だろうか

841 :名無しの紳士提督:2014/07/07(月) 12:29:33 ID:WrXq17.U
なにげに七夕伝説ってアダルトよね
夫婦生活が楽しくて仕事サボってたら怒られちゃってさあ大変っていう

あれ? これ提督と艦娘に当てはめれば…

842 :名無しの紳士提督:2014/07/07(月) 12:49:04 ID:9ftKD1jE
840
これは圧倒的に時雨

843 :名無しの紳士提督:2014/07/07(月) 12:53:57 ID:g9Mjq3hg
836
戦闘シーンの装甲空母さんが鳥肌立つほど格好良い
ヒロイン二人も提督も心情の切なさに心を掴まれる

長篇GJした、続きまってます

844 :名無しの紳士提督:2014/07/07(月) 17:03:47 ID:oyVLyNgs
841
怒られていいから龍田さんといちゃいちゃしてるのを天龍ちゃんに見せつけたいです

845 :名無しの紳士提督:2014/07/07(月) 21:21:24 ID:5S/LXmIs
842
うそこメーカーで遊んでみたらこれだよ
http://usokomaker.com/negaigoto2014/r/%E6%99%82%E9%9B%A8
辞めたいのか時雨…

そして改ニでこれである
http://usokomaker.com/negaigoto2014/

846 :名無しの紳士提督:2014/07/07(月) 21:22:07 ID:5S/LXmIs
845ミス

847 :はかりしれるもの、はかりしれないもの:2014/07/07(月) 21:29:14 ID:474Nq31c
「どうしたの、〇〇君?」

俺のちんちんをしゃぶっていた鳥海は口を離し、俺が昔聞いたことがあるような、
だけど、ほんの少し違う声色と喋りで俺の名を呼ぶ。

「これは一体何の真似なんだ鳥海…」
「何の真似って…」
「寝ていることをいいことに俺のちんちんに変なことして…いや、それよりもその格好は……?」
「この格好ですか?この格好を見て何もグッと来ませんか?」

目の前にいる鳥海はいつもの調子の声色と喋りで言った。
鳥海はいつも着ているようなミニミニなセーラー服ではなく、
俺がかつて通っていた中学校の女子生徒の制服ような、黒衿の白いセーラー服と、膝まである黒いスカートという出で立ちだった。
そしてその姿をした鳥海はいつもかけている眼鏡と相まってまるで懐かしい想い出の中の少女のようだった。
……体つきは全然違うけどそこは仕方ないだろう。

「司令官の好みのタイプ、ちゃーんと調べましたわ。
 司令官は眼鏡をかけた女性に特別に惹かれることがよくおありでしたから、
 まことに勝手ながら色々と調べさせていただきました。
 調べているうちに司令官が一番好きなタイプはこういった見た目の女の子だとわかりました。
 司令官の初恋の女の子も確かこのような見た目をしていましたね。
  そしてその女の子を好きになった理由は貴方のお母様が眼鏡をかけていらしたから…なのかもしれませんね」

どうやって調べたのかはともかくとして、鳥海の調査と分析はとても正確だった。
俺は幼かった頃に親しき女性達が眼鏡をかけていたからこそ、
眼鏡をかけた女性に特別な思い入れを持つようになったのだろう。
鳥海がわざわざ理由を明かしたのもこのような格好なら確実に俺を落とせるとふんだのだろう。
だがそんな目に見えるような罠に引っ掛かるような俺では…

「あぅっ…」
「どう?気持ちいいでしょ?さっきからこんなに大きく固くして……」

再び幼い声色を使う鳥海。体はとても正直だった。俺のちんちんを扱く鳥海のテクは女性経験のない俺にも上手いとは思えなかったが、
女性経験がなかったが故に鳥海の拙いテクでも十分に感じてしまうのであった。
はっきりいってもうすぐ射精してしまいそうだ。

848 :はかりしれるもの、はかりしれないもの:2014/07/07(月) 21:29:43 ID:474Nq31c
「もうそろそろ射精ちゃいそうなの?」
「…………」
「そうみたいね。じゃ、ここに入れて射精してね」

そういって鳥海はスカートをたくし上げ、ブルマを見せ付けた。
スカートの中にブルマとか本当によく調べたなあと現実逃避して性感を誤魔化そうとしたが、
鳥海はブルマとパンツをずらし、自身の濡れた秘所を俺の鈴口にくっつけた。
ええい、ずらすなんて本当俺の好みをよく調べたなあ、
などとやけくそに感心して性感を誤魔化そうとした俺だったが、
鳥海は自らの秘所に俺のちんちんを入れようとする行為に俺は現実に戻された。

「やっぱり……初めてじゃ……簡単にはいかないのかしら……」
「初めてって…待てよ!」

鳥海も初めてって、これでいいのかと思い止めようとした。
そしてなんとか鳥海がこんな形で処女喪失をすることを止めさせた。
ただし、それは意外な形でだが…………

ドクン!

「…………え……」

ビュルルルルルッ!ビュルルルルッ!ビュルルルッ!

膣口に触れた鈴口から勢いよく吐き出される白濁液。俺は呆気なく射精してしまっていた。

「……嘘……もう出ちゃったというの……私の計算では……こんな事…有り得ない…………」

想定外であろう出来事に彼女の口調はいつもの彼女の口調に戻っていた。
早いのを馬鹿にされたとしてもそれは童貞なわけだから仕方ない。
だが射精が終わり、所謂賢者タイムとなって落ち着いた俺はなぜか怒りが沸いてきていた。
それは彼女の行動が愛情からではなく、あくまでも計算ずくのものであり、
俺を上手くハメるためのものなのではないか、と思っていた。
正しいのかどうかわからないが、一度そう思ってしまったら止まらない。

849 :名無しの紳士提督:2014/07/07(月) 21:30:07 ID:C3S.Y1C.
841
星の寿命を考えると一年に一度しか会わなくても人間の感覚的には毎日イチャイチャしているようなもの
みたいな話もある。
つまり誰と年がら年中イチャイチャしたいかということですねわかります。

850 :はかりしれるもの、はかりしれないもの:2014/07/07(月) 21:30:12 ID:474Nq31c
「……お前は一体、何が目的なんだ………!」
「え……司令か…」
「こんなことをして……俺の事を色々と調べて…策を練って、…
 ……それで俺の心が動くって思ったのか!?」
「そん……な……」

予想外であろう俺の言葉に余裕がなくなっている鳥海。
直後俺も言い過ぎたとハッと気付き、言葉を選びながら言う。

「いや…お前が俺の事をどう思っているのかわからないが……
 もし俺の事が好きでないというのなら……こんなゲームみたいな真似はやめてくれ……」

俺は喋り方に怒りを隠せていなかった。別にどうでもいいような相手ならこれほどまでに怒ることはなく適当にあしらっていただろう。
だが俺がこれほどまでに怒りが込み上げてきたのは彼女に好意を持っていたからである。
鳥海の見立ての通り、俺の好みは俺が今まで関わってきた人が密接に絡んでいる。
彼女に好意を抱いたのは眼鏡をかけたかわいい女の子だったからというのが大きいかもしれない。
もちろん彼女自身も魅力的である。スタイルのよさ、戦闘時の勇ましさと平時の穏やかさのギャップ、
司令官を立ててくれる姿勢……そういった面に俺は惹かれていった。
だから……だからこそ!『こうすれば靡くだろう』と遊び半分で迫るような感じが俺には許せなかった。

「………ゲームとか、そんなことではありません……好きでもなければ……
 ゲーム感覚でやるんだったら…霧島さんや望月ちゃんにやらせてますよ……」

なんか微妙に酷い事を言っていたような気がするが無視しよう。
彼女の態度から見るに策略も遊び半分で行っているわけではないというのか……
もしかして俺はとんだ見当違いをしてしまったというのか?
もしそうだとしたら、まるであの時と同じ……

「でも…私の気持ちがあなたに伝わらなくて……それどころか心まで傷付けてしまって……ごめんなさい……!」
「!?…待てよ………待て!」

鳥海は俺の声も聞かず走り出していった。俺は追い掛けようとしたが……

851 :はかりしれるもの、はかりしれないもの:2014/07/07(月) 21:30:38 ID:474Nq31c
ジリリリリリン!

突如電話が鳴った。資材搬入等の知らせを伝えるものであった。
こんな深夜に資材搬入と思われそうだが、本当は夕ご飯を食べた後の頃に着くはずだったものが、
様々なトラブルがあったらしい為、こんな時間になってしまったわけだ。
それだけならみんなが寝静まるこんな時間に来る必要などなく、朝方にでも来たらいいわけだが、
本来予定されていた時刻に資材搬入した後に、この鎮守府で開発された新装備のサンプルの数々を
資材と引き換えに翌日の昼過ぎ頃には本部に届くようにしなきゃいけなかった為、
こんな時間だろうが作業せにゃならなくなった。
俺は鳥海との一件で眠気など吹き飛んでいたので、気遣いする声に大丈夫だと答えながら急いで着替え、
念の為に缶コーヒーを飲んでから資材の受け取りに向かった。
受け取り口では一人の女性が待機していた。その姿と俺への呼びかけを聞いた俺は一瞬ドキリとしたが、
すぐにドキリとするような相手ではないと気付いた。
この女性は通称任務娘と呼ばれていて、鳥海とは外見がかなり似ていて、
声に至っては俺でさえも聞き分けられないものであった。
心配する任務娘の言葉に大丈夫と答えた俺は早速仕事を始めた。
期限までに間に合わせなければならないということもあったが、それ以上に鳥海の事を考えないようにする為でもあった。
仕事が終わったのは明け方だった。資材搬入と新兵器のサンプルの受け渡しを滞りなく終わらせ、俺は眠りにつこうと部屋に戻ろうとした…………

「提督ぅー!」
「ドアッ!」

いきなり背後から突き飛ばされて壁に激突した。間髪を入れずに胸倉を掴まれる。

「お前、鳥海に何をした!?鳥海が泣いていたぞ!」
「ぐっ…」

俺を突き飛ばしたのは摩耶だった。摩耶が物凄い怒りの表情で俺に迫る。
摩耶の言葉に凄く心当たりがあったが、どう説明すればいいのかわからなかった。

852 :はかりしれるもの、はかりしれないもの:2014/07/07(月) 21:31:06 ID:474Nq31c
「やめて!」
「ッ…鳥海…」

不穏な雰囲気を取り払ったのは鳥海の言葉だった。だが彼女の雰囲気は少し違っていた。鳥海は長かった髪をばっさりと切って短くしていた。

「鳥海…お前コイツに変なことされたり言われたりしたんじゃなかったのか?」
「そんなことないの……全部私が悪いの……この人は何も悪くない……みんな私のミスなの……だからこの人を責めないで…………」

涙ながらに訴える鳥海。さすがの摩耶もこれ以上は自分が鳥海を悲しませると思ったからか俺を放した。

「…今回は鳥海に免じてこれ以上何もしない。けどな、もし鳥海に酷い事をしていたら許さないからな!」
「司令官さん……本当にごめんなさい…………」

二人が去っていき、再び静寂が訪れた。いや、この騒ぎの間にみんな起きはじめたようだ。

「はわわわわ、ど、どうしたんですか司令官さん!?」

騒ぎを聞いたからか電がやってきた。彼女は少々要領が悪いところがあるものの真面目な為こんな時間には既に起きててもおかしくはなかった。

「司令官、夜遅くに資材搬入があったんだってね。私に声をかけてくれたら一緒に頑張ったよ。私を頼っていいのよ」

続いて雷がやってきた。

「さっき摩耶さんが大声をあげてましたけど……」
「鳥海さんも泣いていたみたいだし、何かあったんじゃないの?」

割と図星である。俺は鳥海のことが頭から離れなかった。鳥海を傷付けてしまったことは下手したら一生後悔するかもしれない。俺は決心した。

「お前達、後で…今日の任務が終わった後で手伝ってほしいことがあるんだ」

853 :はかりしれるもの、はかりしれないもの:2014/07/07(月) 21:31:35 ID:474Nq31c
そして翌朝――


「どうしたんですか、司令官さん、その頭!?」

俺を見た鳥海は驚きを隠さなかった。

「手触りが気持ちいいのです~」

電が俺の頭を触りながら言う。昨日あのあとバリカンを買いに行き、彼女達に手伝ってもらって坊主頭にした。
俺の髪質は固めだからか手触りが気持ちいいらしい。学生時代女の子に坊主頭を触られていたことが何回かあります。

「お前…こんなんで許されると思って…」

鳥海と一緒にいた摩耶が俺の頭を掴む。

「あ…ちょっと気持ちいいかも……」

簡単に堕ちた。なんだかなあ。そう思いながら俺は鳥海に切り出した。

「鳥海…この前はごめん。君の気持ちに気付いてやれなくて君を傷付けてしまって……
 こんなことではけじめにならないかもしれないけど……でもあえて言わせてくれ。
 鳥海、俺は君の事が好きだ。初めて会った時から君に少しずつ心惹かれていったんだ。
 でも自分に自信がなくて人もそれほど信じにくい俺は君の気持ちをわからず傷付けてしまった。本当にごめん。
 ムシのいい話かもしれないけど…鳥海、俺と付き合ってくれ」

その場にいたみんなが固まる。そりゃあ酷いことをしておいてけじめ付けたから付き合ってくれとかムシが良すぎる話だろう。

「………嬉しいです」

それが鳥海の答えだった。

「私、既成事実を作りたいが為にあなたの心を弄ぶような駆け引きをしてしまって……
 それであなたを少しでも傷付けてしまって……
 自分の気持ちをさらけ出せずあなたの純粋な気持ちを踏みにじってしまって、もうダメだって思ってました……」
「俺もあの時に怒ったのは君が好きだからこそって言っていればここまで大きな事にはならなかったと思っていたんだ……本当に俺なんかでいいんだな?」
「はい。これから二人きりで人生の戦略を立てていきましょうね」
「二人とも仲直りしてよかったのです」
「司令官が暗い顔してるのなんて誰も見たくないからね」
「提督……これからは鳥海を絶対に傷付けるなよ」

雷電と摩耶が思い思いに祝福する。俺の頭を撫でながら。
というか俺が告白している間もずっと撫でていた。端から見たら全然締まらない。
まあ雨降って地固まるって感じで俺と鳥海は恋人同士になった。

854 :はかりしれるもの、はかりしれないもの:2014/07/07(月) 21:32:03 ID:474Nq31c
三ヶ月後――


「あの……お話があるの……」

髪がのびてきた鳥海が少し困った顔で言う。

「実は……出来ちゃったみたいなの。三ヶ月みたい……」

お腹をさする鳥海。確かに少し膨らんでいる気がする。

「あなたとは関係を持ったことないし……いえ、生まれてから誰とも関係を持ったことないのよ。ほら!」

そういって鳥海が秘部を見せる。女性経験もない俺には文献だけの知識しかないが、そこから考えて確かに鳥海は処女である。
俺は鳥海と恋人同士になったが、体の関係を持ったことはない。どうせなら結婚するまで互いに綺麗な身体でいようと思ったからだ。
あの時迫っていた鳥海も普通に納得………え……確かあの時って……?

「……あの時の事を覚えているか?あの時君が俺と一つになろうとしたとき、入れる前に俺があっさりと果てたという事を。
 もしかしたらその時膣口に付いたのが子宮まで昇っていって受精したんじゃないかって。そういう事例もないわけじゃないみたいだし……」
「……どちらにしろ、私が妊娠したという事実に変わりはありません……ごめんなさい、まだ結婚もしてないのに…」
「じゃあ、結婚しよう」
「……え……?」

唐突な言葉に驚く鳥海。

「戦いが落ち着いてからって思っていたけど、戦いが落ち着く気配なんてないから、だったらこの際今結婚しちゃおうかってね」
「……嬉しいです。ありがとうございます。三ヶ月前からいつ結婚してもいいように準備しておきました。
 こんな最中に結婚なんて…って思われそうですけど、今だからこそって面もありますね。
 もし戦いが落ち着いた頃に結婚していたら、織姫と彦星みたいなことになっていたからかもしれないですからね。
 それに今この鎮守府は激しい戦いの中でみんなの気持ちが沈みつつあります。
 犠牲者こそいませんが、みんな疲れ果ててしまっています。だからこそ明るい話題が必要ですからね。
 それにこの子がいますし……」

実利的な結婚でもあったが、今回は互いに気持ちが通じ合った上でのことであった。
俺達は二人の為、みんなの為、これから産まれてくる命の為、結婚した。

855 :はかりしれるもの、はかりしれないもの:2014/07/07(月) 21:32:29 ID:474Nq31c
それから更に月日が流れた――


「やっと帰ってこれたな……」
「ええ、久しぶりの鎮守府です」

出産の為に入院していた鳥海が鎮守府に戻り、職務に少しずつだが復帰しようとしていた。

「……ねえあなた。私と……セックス……しませんか……?」
「え?」
「ほら、『せっかく処女懐妊したんだから処女出産しよう』って言っていたから、今までずっと…一度もしたことありませんし。
 だからもう…セックス…してもいいでしょ?」
「でも…」
「あの子は摩耶に預けました。摩耶は意外と面倒見がいいんですよ」
「そうか……なら!」

俺は決心し、寝室に向かった。そして一つになる為に互いに生まれたままの姿になった。

「あ……」
「え……ああっ!お乳が出て!さっきあげたのにまだ…」

彼女のおっぱいから母乳が出ていた。それを見て俺は……

「ふぁあんっ!?あなた!」

彼女の乳首に吸い付いた。溢れ出る命の滴はとても温かく、濃厚で甘かった。

「そんっ…あっ…や………」

感じる彼女だが、俺は乳を飲むのをやめなかった。乳を飲みながら、彼女の体中を愛撫し続けた。
彼女はとても肉付きがよく、暖かい。触れ合っているだけでも幸せだった。

「ん……あ…もう………あんっ!!」

俺が飲み終わるか終わらないかの頃に彼女の身体がビクビクっとした。どうやら軽く達したような気がする。

「はぁ…はぁ………次はこっちに……」

そう言って彼女は秘部を開いた。そこはとても濡れていた。

「今までずっと我慢していたあなただから、すぐにでも入れたいって思ってたでしょう……
 一応ローションも準備しておきましたけど必要なかったみたいですね」

俺は彼女の秘部に硬くなったちんちんをあてがった。そして、挿入した。

856 :はかりしれるもの、はかりしれないもの:2014/07/07(月) 21:32:49 ID:474Nq31c
じゅぶり…

処女とはいえ経産婦だったからか膜はなく抵抗も思ったよりはなかった。
ただ思ったよりは、だから抵抗がないわけではなかった。
彼女は出したことはあっても入れられたことはない。それゆえにきつく締め付けてきた。
俺は全部入れる前に達しそうになり、慌てて思いっきり突き入れた。

「ああっ!?」

じゅぶっ!どびゅーーっ!ビュルルルッ!ビュクン!

最奥まで入れたと同時に俺は果ててしまった。

「私の膣内で…あなたのおちんちんが…脈打っている……
 これが……膣内射精……お腹の中に出されている……」

わりと冷静に分析するように彼女は言った。なんだか俺だけが先に達して、彼女を気持ちよくさせられなかったみたいな…

「あ…大丈夫です…私もさっきイッちゃいましたから……」

彼女はすぐに気づいて慰めた。彼女を好きになったのは外見だけじゃなく、こういう気遣いできるところに魅力を感じたからだろう。

「お互い初めてで、しかもあなたはずーーっとこの日を待ち望んで我慢していたんでしょう」

そう、俺はこの時を待ち望んでいた。あの時、彼女を傷つけてしまった俺は、こんな時が訪れるなんて思ってもいなかった。
俺はかつて、好きだった女性を傷つけてしまい、古くから結んでいた絆を断ち切ってしまったことがあった。
だからあの時も、また同じ過ちを繰り返してしまったと、心の底から恐れていたのだった。

「ね…夜は長いですから…もっと、愛し合いましょう。今まで愛し合えなくて、互いを分かり合うことができなかった分、たくさん……」

優しい眼差しで俺を見つめる彼女。そんな彼女に甘えてばかりもいるわけにはいかない。
俺自身ももっと頑張る必要があると決意を新たにし、彼女に口づけをした。
俺と彼女は提督と艦娘という間柄だ。だが今だけ…今だけは愛し合う二人でいたい。
人が誰かの為に戦う、それははかりしれない力を生むものと思っている。
この愛し合う瞬間の為に全力で戦い続ける。それが俺達の新たなる決意だった。


―完―

857 :名無しの紳士提督:2014/07/07(月) 21:36:35 ID:474Nq31c
そんなわけで鳥海とのSSを投下しました
七夕なのに七夕の要素がかけらしかない
(というか今日思いついて入れた)のは申し訳ありません
あと始まりが台詞からだったのでインパクト重視で予告なしで投下しました
司令官のキャラが自分を切り売りした感じなので不快に思った方はごめんなさい
では

858 :名無しの紳士提督:2014/07/07(月) 21:39:44 ID:q6i.RCmU
857

GJ

859 :名無しの紳士提督:2014/07/07(月) 21:40:19 ID:fkgGKqM.
処女懐胎だなんて鳥海ちゃんマジ聖母!乙!

860 :名無しの紳士提督:2014/07/07(月) 21:54:26 ID:5S/LXmIs
こうなったら、摩耶も落として欲しいところですねぇ

861 :名無しの紳士提督:2014/07/07(月) 22:38:34 ID:wpFFe41k
834
ンフー
これは・・・いいものですね・・・

862 :名無しの紳士提督:2014/07/08(火) 00:28:10 ID:y8kodRf.
845
つまりこんなん?


幸運であると誰かがいった。
だけど僕は不運だ。
何度目だろうか、彼女たちが海の底へと消えて行くのを見るのは。
それに心を痛めてしまう僕には艦娘など向かないさ。
彼女たちはそれほど深い仲だとは思っていないだろうけど。
何年も共に戦い、何度も看取った僕からすれば、おおらかな姉とその姉が好きな活発な姉、それにボーイッシュな姉に囲まれるような気分だ。
だから、口には出さないけど、心で呟く。
家族が増えるよって。本当にやったねと祝福できるまで、繰り返す。

863 :名無しの紳士提督:2014/07/08(火) 04:07:04 ID:2zl.nI0c
何だろうこの鳥海から何処と無くやんアホの匂いがします

864 :名無しの紳士提督:2014/07/08(火) 07:27:18 ID:Y9AGRw4.
806
乙、大鳳ちゃんは酔うと確かに面白そう
847
鳥海さんのよく分からなさが逆に良く表現されているw乙

昨日の人気ページが大鳳だらけで草、まさかの装甲空母の時代か…

865 :名無しの紳士提督:2014/07/08(火) 09:27:15 ID:OCkfG/yQ
836
大作超乙、一度に投下された文字量としては過去最大ではなかろうかw
中身こそ前回の浜風提督と似てるけど、今回は提督クズちゃうやろ…全部祥鳳さんが悪いやろ…
そして一番可愛可哀想な大鳳ちゃん。
あとまさかここで飯テロ食らうとは思わんかったぞ。海鮮丼食いてえ

866 :クズ ◆MUB36kYJUE:2014/07/08(火) 12:54:26 ID:NoQZuXQc
すみません!!
807の中の
そのシルエットは大きな三つ編みの二つ結びで確証はないにしても……
の部分。
祥鳳はただの二つ結びでしたので
『そのシルエットは大きな二つ結びで確証はないにしても』
に訂正します。推敲甘かったです。申し訳ない!!

なんで三つ編みがでてきたんだろ……

867 :名無しの紳士提督:2014/07/08(火) 15:21:16 ID:u9S9n8Fs
我々の艦隊には、チームプレーなどという都合のよい言い訳は存在せん。
有るとすればスタンドプレーから生じる、チームワークだけだ。


ほんとそれ…

868 :管理人:2014/07/08(火) 16:32:36 ID:???
【艦これ】艦隊これくしょんでエロパロ13 (避難所2)
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/16725/1404804363/

管理人の都合で早めにスレ立てしました。
スレ名に避難所のナンバリングもいれています。
ここは1000まで書き込みできますので1000まで使ってください。
投下するSSが長くて途中で切れてしまう場合は次スレに投下してください。

現在スレ立ては管理人しか行えません。
ゆるい管理で進行しますがよろしくお願いします。
夏イベの新艦娘が楽しみです。

869 :名無しの紳士提督:2014/07/08(火) 17:01:09 ID:VguPtIis
868
お疲れ様です。

870 :名無しの紳士提督:2014/07/08(火) 17:56:41 ID:NoQZuXQc
868
乙乙乙乙

あと1ヶ月でエロパロスレ発足から1年か……

871 :名無しの紳士提督:2014/07/08(火) 18:47:06 ID:q7SkyjNM
868
乙乙ちゅっちゅ

2レスお借りしてぺたぺたします。別にエロくないよ

「提督、こちら、確認を願えますでしょうか?」
「やあ、すみませんね、榛名さん。何から何まですっかり、手伝わせてしまって」
「いいえ……提督、そんなこと。ただ、榛名が好きでやっているのですから」
「……ありがとう、嬉しく思います。さて……今日はもう、この辺りにしておきましょう」
「いいのでしょうか? まだ、幾分お仕事が残っているように見受けられますが」
「もう、こんな時間になってしまいました。これでもし、なにか間違いが起こったらいけませんからね」
「まあ! この鎮守府で提督、何か間違いが認められると、そう仰るのですか?」
「女性ばかり、というわけでしょうか」
「その通りです」
「部屋に戻るのが遅くなってしまえば、嫌な噂の一つでも聞こえてくるかもしれませんよ」
「榛名は、大丈夫ですよ?」
「榛名さんは真面目ですね。……アア、今度からは、代わりに秘書艦を務めてもらうのも良いかもしれません。金剛さんの代わりに」
「もう、提督ったら……怒られてしまいます。……でも、なれば秘書艦任務、全力で務めさせて頂きたく思います!」
「ふーむ? 別段、無理に、とは言わないのですが」
「榛名は、提督のお役に立てれば嬉しいです。無理にだなんて、とんでもないです……」
「そうですか? では、そのように。お言葉に、甘えさせてもらいましょう。金剛さんも、負担が減ったと喜んでくれるでしょうし。明日にでも、その旨、伝達致します。朝、金剛さんと一緒に、ここまで来て下さい。僕の方から言います」
「いえ。それより先に、榛名から多少でも話しておいた方が、何かと都合がよいかと思われます」
「すみません」
「多少……そう、多少……時間が遅くなるかもしれませんが……!?」

872 :名無しの紳士提督:2014/07/08(火) 18:48:22 ID:q7SkyjNM

「きゃっ!」
「おや。蛾、か……窓は開けていたから、入ったのでしょうね。大丈夫ですか?」
「はい……申し訳ありません、提督」
「いいんです。虫には、同じ侵攻路を利用する知恵もありませんしね。虫は苦手ですか」
「榛名……情けないです……」
「そんな事ありませんよ。むしろ、普段凛々しくある榛名さんの、意外な一面といいますか」
「う、うう……」
「……おや。霧島、さん?」
「失礼します、指令――ん、どうしたんです? 榛名姉さま?」
「何でもないですよ。ただ、虫が入っただけです。霧島さんこそ、どうしてこんな時間に」
「上の姉さまが、榛名姉さまをお呼びですので。たぶん、提督のトコロが怪しいネー! ……だとか仰いまして。さすが姉さま、慧眼でした」
「ほら。榛名さん、やっぱり心配されていますよ。早く、部屋に戻りなさい」
「ところで……あのう、榛名姉さま? 姉さま、この前、部屋で虫を手づかみで外に放りなさって……」
「――ああ?」


(霧島は榛名を榛名姉と呼ばずにただ榛名と呼び捨てしてるけどこれは霧島の霧島っぽさ、貴重な霧島の妹っぽさを半減させる愚行だと思います霧島)

873 :名無しの紳士提督:2014/07/08(火) 20:00:03 ID:u9S9n8Fs
そりゃ、船底には虫なんてめじゃないものがウジャウジャいるしな

874 :名無しの紳士提督:2014/07/08(火) 21:19:08 ID:OCkfG/yQ
海のはグロ生物にしか見えないものが実は激ウマだったりするらしいからな
エボシガイとか

875 :名無しの紳士提督:2014/07/08(火) 22:01:56 ID:2zl.nI0c
ふむ、駆逐イ級も美味いのかもしれん

876 :名無しの紳士提督:2014/07/08(火) 22:55:39 ID:m2cop4K.
ウニみたいなトゲトゲしている物を食べようと思ったのも大概だよな
ご先祖様は偉大やでぇ……

877 :名無しの紳士提督:2014/07/09(水) 02:59:13 ID:Fhc90n1Q

「ああ、しかし……」
 栄えある長門型戦艦一番艦は、悲しげに首を振った。
 彼女に誇りがある限り、彼女は己の心のままに従う事だけは、絶対にできなかった。
「結局のところ、卯月。お前と私では、好きという言葉の意味が違うのだ」
「……そんなコトないもん。うーちゃん、長門が大好きだから!」
「私もだよ、卯月。でも、それは……」
 長門はそこでふと言葉尻を切り、目の前の彼女を、睦月型駆逐艦四番艦の卯月の事を、ほとんど睨むのに近い鋭さで見つめた。それは、飢えて干乾びた者が決して手の届かない場所に滴る水の一滴から目を離せないのに似ていた。
 柔らかい臙脂色の頭髪から、膝の下まで。襟元の肌色、小さな頤、未発達の胸、眩しいむきだしの太腿。じろじろと、舐め回すような、それはそういう目つきだった。
「……長門、さあん」
 不意に彼女はぴょんぴょん跳ねて、長門の前に立った。見上げる。背丈はその肩のところにも届いていない。
「卯月?」
「……うーちゃん、ね」
 形の良い唇からちらと舌が覗いた。無垢な少女には酷く不釣合いな仕草だった。
「何を……うっ!? や、卯月、やめ……!」
 長門は腰砕けになり、へなへなと床に座り込んだ。武装も、自慢の重装甲も役に立たなかった。
 違うのは立った。
「いけない……卯月、私は……」
 呻く長門の頭を彼女は優しく胸に抱え込んで、その耳元に、ぴょんぴょんと、理性の最後の壁を突き崩す言葉を囁いた。甘い声音はあらがい難い何かと禁忌とを同時に感じさせる、幼い少女のものだった。
「夜のうーちゃんはぁ……とっても凄いんだぴょん……?」

(続省略わっふる)

878 :名無しの紳士提督:2014/07/09(水) 04:35:50 ID:Hyi0J8Kk
わっふ…け、憲兵さーん

879 :名無しの紳士提督:2014/07/09(水) 10:23:12 ID:CVS/ypQc
そういえばうちの鎮守府には長門さんも卯月さんもいないと気付かされた
長門さんはエロそうなのに残念

880 :名無しの紳士提督:2014/07/09(水) 14:54:32 ID:yllaklE6
あら、あらあら

881 :名無しの紳士提督:2014/07/09(水) 14:56:32 ID:wrmSWCiA
ながもん
弱点
駆逐艦、オーク、触手、アナル、おっさん

強みはないんですか!?

882 :名無しの紳士提督:2014/07/09(水) 15:24:22 ID:TB915SP6
敵駆逐艦には無類の強さを発揮するよ

883 :名無しの紳士提督:2014/07/09(水) 18:28:03 ID:zVtkDfYM
傷付いた状態で核を二回くらっても平気だからソロモンへGO

884 :名無しの紳士提督:2014/07/09(水) 19:26:47 ID:wrmSWCiA
上部構造物が吹っ飛んでるから無事というわけでは

クロスロード作戦の戦艦ネバダが何とも言えんな、2回も戦艦を時代遅れにした場所にいるとは…

885 :名無しの紳士提督:2014/07/09(水) 23:28:11 ID:0u7uEyS2
というか基本的に水面下にダメージなきゃ船は沈まんし……
長門以外も生き残ってたろあの時は

886 :名無しの紳士提督:2014/07/10(木) 00:06:35 ID:uZKu/dOk
ながもん「あぁ^~心がぴょんぴょんするんじゃぁ ^~」

887 :名無しの紳士提督:2014/07/10(木) 08:38:04 ID:bci/xog6
わっふるわっふるわっふるわっふるわっふる
やっぱりロリコンながもんさんは攻められてるのが似合うな!

888 :名無しの紳士提督:2014/07/10(木) 14:55:01 ID:EOrO8.fk
887
ほ~ら駆逐艦だよぉ
http://kancolle.x0.com/image/77614.jpg

というか、なんでながもんはショタではなくロリという風潮になったのか…

889 :名無しの紳士提督:2014/07/10(木) 15:19:37 ID:HGjh90x.
Z1やZ2が実装されるまでは
ちんちん付き扱いされる駆逐艦が殆どいなかったから

890 :名無しの紳士提督:2014/07/10(木) 16:11:58 ID:zMe.EmR.
皐月も時雨も一人称はともかく見た目が可憐な少女だったしな

891 :名無しの紳士提督:2014/07/10(木) 16:15:43 ID:Y0OGWe3g
なんもかんもコンプ表紙が悪い
あと4コマ

892 :名無しの紳士提督:2014/07/10(木) 16:48:15 ID:i4KL011I
889
残念!
そこはZ1とZ3だ。

893 :名無しの紳士提督:2014/07/10(木) 17:14:54 ID:EOrO8.fk
889
ZⅡ「ふえぇぇぇ…ながもんが性的な目でみてくるよう」
http://kancolle.x0.com/image/77634.jpg

若葉とかもいるが、むしろ宝塚的な意味で男ぽいだしな
あの子はバレタインに同姓からチョコ貰うイメージがある
全部食べて腹下して「痛いぞ! だが、悪くない……」とか言うのだ

894 :名無しの紳士提督:2014/07/10(木) 18:13:02 ID:WuscZmGE
1番少年っぽい最上でもないわけじゃないしな(何がとは言わない)

895 :名無しの紳士提督:2014/07/10(木) 19:11:55 ID:zMe.EmR.
一方作中でそんな描写全くないのにショタコンの女王扱いの愛宕
赤城さんのあれとは違って逆輸入はされていないけど

896 :名無しの紳士提督:2014/07/10(木) 19:25:44 ID:teweYM/Q
そこら辺まで逆輸入されたら見限るわw

897 :名無しの紳士提督:2014/07/10(木) 19:47:29 ID:gPnqTi7o
パンチラ差分が改二の18禁ゲーム

898 : ◆NQZjSYFixA:2014/07/10(木) 21:50:32 ID:94IPi2O.
前のナイトウォッチとのクロスSSの続き投下します。
っていうか完全にやってるだけなんで設定どうでもいい感じですが。

899 : ◆NQZjSYFixA:2014/07/10(木) 21:50:59 ID:IQGC8CfY
 普通の学生生活を送っていた俺は、ある日学生全員が受ける『適性検査』なる
検査に合格し、あっという間に人類を深海棲艦から守護する鎮守府の一員として、
深海棲艦と戦う力を持つ、人にあって人にあらざる艦娘を指揮する提督となった。
 人員は俺一人と聞いてどうなることかと思ったが、艦娘は任務に忠実だし
俺に対してもおおむね好意的に接してくれるので、何とかやっていけそうだった。



 ……雷と肉体関係を持ってしまった衝撃的な初日から、早一週間。
「あっ……ん、しれ、い、かん……こう? これで、いい?」
 騎乗位で俺のペニスをくわえ込みながら、雷に腰を振らせている。
その動きは滑らかで、下半身だけが別の生き物のようでもあった。
「ああ、気持ちいいよ、雷。腰使いもすっかりうまくなったな」
 そう、初日から毎日、執務が終わった後は雷を自分の部屋で抱いている。
最初は寝静まった後であったが、3日目には既にばれていたらしく、叢雲あたりは
たまになんとも言えない視線を俺に向けてくる。そのほかの艦娘……3日目にして
既に8人になっていた艦娘達に、昼と晩の食堂で好奇の目を向けられて居心地が
悪かった。
 とはいえ、雷とこういう関係になったことに後悔はなかった。人数が増えてみて
改めて思うことだが、艦娘は全員が美少女だ。しかも俺に対して妙に好意的で、
配属された艦娘を目覚めさせるには俺のキスが必要。
 そんな環境で誰とも関係を持たずに我慢し続けることが俺に出来るだろうか?
多分無理だ。ならば変態の謗りを受けても誰か特定の相手を作った方がいい。
 雷も可愛いしな。
 雷はセックスの時は体格差をものともせず、俺のペニスを膣いっぱいにくわえ込み、
一突きごとに甘い声を漏らして身体をくねらせる。
 昼間は快活で面倒見がよく、俺にも公私共に何くれと無く世話を焼いてくれる。
そんな女の子が夜は俺とのセックスに夢中になって思うように絶頂させられるのだ。
これが楽しくないはずがない。
「んっ、あっ、しれーかんっ、しれーかんっ! あ、あたし、もうっ!」
 騎乗位で腰を振っていた雷は切羽詰った声を上げて、俺の上にぺたりと倒れ
こんだ。俺の仕込みで一番奥の感度を開発されていた雷は、突かれるたびに
きゅうきゅうと俺のものを締め付けてくれる。。
そんな状態で奥をこね回すように腰を振らせていたから、大きな絶頂を迎える
寸前だった。雷は膨らみかけという感じの小さな胸を俺に押し付けて全身で
しがみついてくる。 
 だが、俺はそんな彼女の腰を押さえつけて、動きを止めさせてしまう。
「ふあぁ……? なんで、イキたい、イきたいの、もう我慢できないのぉ!」
 快楽でどろどろになった顔に、懇願の涙が伝う。それを指でついとぬぐいながら、
俺は少し身を起こして雷の唇を奪った。やわやわと舌を絡ませながら、そっと
子宮口を突き上げ、絶頂寸前の状態を維持しながら雷の小さく柔らかな身体を
抱き締める。そのまま有無を言わさずにじっとりと腰を使って、上ることも
降りることも出来ない快楽にさらしてやった。
 その状態で数十分責め続けられ、全身を緊張させて絶頂寸前なのに寸止めを
続けられて、視線は焦点を結ばず、とろとろと唇の端からよだれが垂れ流れている。

900 : ◆NQZjSYFixA:2014/07/10(木) 21:51:13 ID:94IPi2O.
「んんーー……ん゛お゛お゛ーーー……」
 言葉さえも忘れたように快楽にどっぷりと浸かった雷に、ようやくトドメの
射精を一番奥にくれてやる。
「お゛うううぅうううう……んお゛ほおおおぉぉおおおおお」
 獣のようなよがり声を上げながら、ずん、という強い突き上げとともに
放たれた射精が、待ちわびていた絶頂を雷にもたらした。びくんっ、びくんっ、
と全身を大きく痙攣させ、体中で絶頂する彼女が可愛くて、俺は雷を抱き締めた。
頭や背中をゆっくり撫でてやると、それが愛撫の役割を果たしているのか膣が
きゅんきゅんと反応しているのが分かる。
 それが分かっていて、絶頂が長く続くように雷を撫で続け、とろとろと精液を
流し込み続けた。
 ぎゅう、とひときわ強く締め付けた後、ふっ、とスイッチが切れるように
雷が失神する。気絶しながらも絶頂を続ける雷の膣でペニスをしごきながらも、
一緒に掛け布団をかぶり、挿入しながら眠りに付いた。

 翌朝、珍しく俺が先に目を覚ましたのでキスで雷を起こしてやると、セックス
したままなのに気づいて雷が頬を赤くする。
 むーと唇を尖らせて、
「しれーかんのイジワル」
 と文句を言ってきた。俺は雷の頭を撫でながら、目覚めのキスをする。
「でも気持ちよさそうにしてただろ?」
「それは……だって……」
 寝ているときに抜けていた俺のものが、朝立ちと雷の照れた顔で硬く勃起する。
毎日犯してもまだマン汁焼けしていない、しかし一本筋ではなくなって花開いてきた
雷の膣にぐりぐり押し当てる。
「あんっ! もう、こんな朝から……したいの?」
 そういいつつ、雷は自分から腰をくねらせ、膣とペニスの粘液をこすり合わせて
にちゃにちゃと音を立てた。
「ああ。雷が可愛くて我慢できそうに無いんだ。頼めるか?」
「ふふっ。しれーかんは私がいなきゃダメね……♪」
 いつもの口調とは違う甘くささやくような声音は、少女ではなく女のそれだった。
腰を浮かせてクリトリスを自ら弄り、蜜を溢れさせていくセックスに慣れきった
その仕草に俺のペニスがさらに硬くなる。つぷ、ぷちゅ、と相変わらずきつい
膣にペニスが押し込まれ、中の愛液が音を立ててあふれ出てきた。
「昨日は上で腰を振ってもらったからな。今度は俺がさせてもらうよ」
 それに、遅くなって朝練に間に合わなくなっても悪い。挿入したまま寝転がって
雷を下にすると、その細い左足を持ち上げて深く挿入した。松葉崩しというやつだ。
「んあああっ!! い、いきなりそんなことっ、されたら……すぐイッちゃうぅ!」
 寝起きにハードではあるが、さすが艦娘は丈夫と言うことなのか、雷は感じすぎて
失神する以外は体力を理由にセックスをやめたりはしたことがない。
 俺はただ射精するためだけに雷の穴を使い、ゴリゴリと子宮口をこね回す刺激に
逆らわず朝一番の射精を雷の膣奥に放った。
「あっ、イッ、く、イくイくぅうううぅ……!」
 射精に合わせて雷が絶頂する。これもまた仕込みの成果だ。イッた時の報告も。
とても物覚えがいい雷の頭を撫でて、絶頂を長引かせてやる。
 その軽い身体にはめたまま抱き上げて、風呂場で雷を洗いながらもう一回射精した。
さすがに泡踊りはまだ教えていない。ベッドの上でたっぷりする方がまだまだ
楽しい時期なのだった。
最終更新:2014年07月13日 22:01