非エロ:提督×加賀

662 :名無しの紳士提督:2014/08/18(月) 23:05:44 ID:MViLrD82
先日カレー作ってる時に思いついたネタ
非エロ
飯テロかと思ったらそうでもなかった
新婚さん可愛いよ新婚さん



「できました。冷めないうちに召し上がってください」

ある提督のこの日の夕食はカレーだった。
提督の前におかれた食欲をそそる皿の向こうで、作者の加賀は料理のために外した指輪を再度指にはめなおしている。

「では、いただきます!」
提督は目の前の皿にスプーンを沈め、その上に皿の上を再現するような比率で米飯とカレーをすくう。

(夢のようだな。『愛する嫁の手料理』俺の人生には無縁と思っていた代物。幸せの象徴。
それが今目の前にある!それを堪能できる!……結婚って、良いな。カッコカリだけど)

提督はまさに夢心地であった。
愛妻の貴重なエプロン姿という眼福もあり、
この食事が仮に最後の晩餐となろうとも、何一つ悔いが無い程の幸福に包まれていた。

(ああそうか。あいつらの言っていたのは、幸せと言うのは、こういう事を言うのか)

他の提督たちが以前、艦娘の愛妻料理を嬉しそうに語っていたことを思い出していた。
羨ましくも思いながら、自分には一生縁のないことだと思っていたが、今それは実現され、目の前にある。
その幸せの象徴を口の中に収め、舌の上に置く。

瞬間、提督に衝撃走る。
表現しがたい独特で複雑な、非常に難解で他に例のない味。
端的に言うとまずい。

(まずっ!なんだこれ……焦げ臭いのと生臭いのが同居するってどういう事だ……!?
このじゃりじゃりする食感は何だ!?これがカレーであるという事を忘れさせるほどの苦みは何だ!?)

カレーを不味く作るのは一種の才能ともいわれるらしいが、だとしたら彼の愛妻は天才である。

混乱する提督の頭にある仮説が浮かび上がる。

愛妻料理を喜んでいた連中は、皆赤城や伊勢といった実物が料理上手で知られた連中の夫だった。
そして、実物の加賀は飯が不味いことで有名だった。
もし、それらが艦娘にも反映されているとすれば―

「どうですか?提督」
「う、うん……」

加賀が提督の顔をまっすぐに覗き込む。
この時の「どうですか」は拷問吏が捕虜に対して口を割る気になったかの確認ではなく、
ごく普通に料理の味を聞いているのだが、提督の受けたダメージからすれば前者の意味に捉えたとしても不思議では無い。

(どうする?正直に言うべきか…?いや、でも……)

折角自分のために作ってくれたものに対して文句を言うのは気が引けるものだ。
それも、まっすぐな目で自分を見つめている愛する加賀のお手製カレーとなれば尚更だ。
だがこれを美味いというのは同じくらいに気が引ける。

「お、美味しいよ。……とても個性的な味付けだ」

結局、提督は嘘を選んだ。
それを嘘とは気付かずに、加賀は嬉しそうに微笑む。
感情表現が得意ではない加賀にとって、目に見えるほどの微笑みとは金剛なら飛び上がらんばかりの無上の歓喜という事。

「そうですか。良かった」
(かっ、かわいい!!微笑んだ加賀さんめっちゃ可愛い!!)

白い歯が少し見えるくらいはにかんだ加賀は、普段より穏やかで慈愛に満ちた眼をしている。
エプロン姿で頬をほんのりピンク色に染めてはにかむ姿は、初々しい新妻そのものだ。

(反則だろこれは。何、何なの?天使?天使なの?ボーキサイトの天使なの?こんな姿見せられたらいくらでも食えるよこのカレー的な何かでも!)
思わずスプーンを再度カレーに沈める。

「そんなに喜んでもらえたなら、嬉しいです」
今度はにっこりと、本当にうれしそうな笑顔を浮かべる加賀。
二人の間に幸せな時間が流れる。

「まだまだ沢山ありますからどんどんたべてくださいね」
「!?」

「二人の」幸せは唐突に終わる。
小型の五右衛門風呂とでもいうべき巨大な鍋によって。

提督は思い出した。大食いで有名な赤城より加賀はよく食うということを。

加賀は特に多く作ったとは言っていなかった。加賀基準でいえば二人で食べるには常識的な量なのだろう。
これはつまり、今後このカレー的な何か=この量ということ。

「えっ……いや、あの……」
「あら、もう二〇〇〇ですね。少し赤城さんのところに行ってきます」
加賀はそう言って部屋を後にする。本当に、本当に珍しく上機嫌で鼻歌交じりに。
残されたのは提督と、カレー的な何かと、鍋。

提督地獄のカレークルージングは、まだ始まったばかりだ。




+ 後書き
流れ無視&スレ汚し失礼しました
クールキャラに欠点があると可愛いと思ったなどと意味不明の供述を(ry


これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/

最終更新:2014年11月09日 01:29