ショコラのめまい

ショコラのめまいは粕谷紀子の漫画作品。週刊セブンティーン1986年48号〜1987年24号連載。

==登場人物==

天田 遙(あまだ はるか) - ヒロイン。お菓子作りが大好きで、料理人になりたいと思っている。

村上 知高(むらかみ ともたか) - 遙の幼なじみ。氏家産業に勤務。

氏家 唯人(うじいえ ゆいと) - 氏家産業の社長

鹿園寺 容子(ろくおんじ ようこ) - 氏家の秘書。

香保(かほ) - 遙の親友。

由貴&ホーイチ - 遙の友人。香保と3人でつるんでいる。

瀬里奈 利香(せりな りか) - ケーキ研究家

埴生(はにゅう) - 氏家邸の家政婦


==あらすじ==
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昭和62年(1987年)秋、遥は高校三年生。両親と死別したため、村上家に引き取られている。村上家の長男で遙より6歳年長の知高は、幼い頃から遙を可愛がり優しく接していた。幼なじみの二人は兄妹のように、そして恋人のように親密であり、遙の友人たちは「顔と手しか触らせたことがない」というのが信じられない。

ひょんなことから、知高の勤務先の社長:氏家と知り合う。

知高は遙にプロポーズするが、仕事を持つことに反対する彼と素直に結婚する気になれない。遙は料理人になりたいのだ。求婚を断られたことでプライドを傷つけられた知高は、それを何者かにつけ込まれて産業スパイに手を染めてしまう。遙は氏家に頼み込み、知高のニューヨーク左遷(表向きは栄転)で事なきを得たかに見えた。

知高と離ればなれになった遙は、徐々に氏家に魅かれてしまう。彼は、彼女のお菓子作りを反対せず「誰も食べたことのないチョコレートケーキを作ってごらん」と励ます。

知高のいない村上家では、遙は一挙手一投足を村上夫人に批判され、氏家の励ましだけを心の支えに、遙は1月の手作りケーキコンテストの準備に没頭する。ついにチョコケーキを完成させ、学校で友人たちに試食してもらう。味は好評だが、題名を問われ迷う。そして、チョコケーキのヒントになった氏家とのキスを思い出し"ショコラのめまい"と名付ける。

一方、唯人と容子は、遙の父が経営していた天田商事の倒産と管財人の弁護士:村上の関係に気付き、村上家に遙と氏家の写真を送りつける。村上夫人に叱責され、ついに居場所が無くなった遙は、容子に助けを求め、氏家の屋敷で居候することになった。

いよいよコンテスト当日、ハプニングにも見舞われるが、会場で知り合った瀬里奈の助力もあって、"ショコラのめまい"を何とか出品することが出来た。遙は自分のケーキをみすぼらしく感じ、きちんと料理を学ぶことの大切さを知った。結果発表となり、遙も瀬里奈も入選しなかった。ところが、突如"特別賞"が発表され、遙が選ばれた。瀬里奈は遙に氏家の"おともだち"じゃ仕方がない、と言い放つ。

遙はショックを受け、結局賞を辞退した。容子が策をめぐらせたせいもあり、遙は氏家の本当の姿がなんなのか揺れ動く。

遙は氏家の仕事について、スペインへともに行く。氏家は迷信に魅かれジプシーから金のイヤリングを購入する。市長ら地元の有力者とのレセプションでは、氏家が遙に影響されてリゾート施設ではなく灌漑施設に計画を変更。市長らは大歓迎でそれを受け入れる。その夜、二人は結ばれるが、氏家は容子の脅迫を思い出し、そして遙を愛情故に独占したいと思うようになる。帰国してからも、東京の氏家邸ではなく避暑地の別荘へ向かい、そこへ遙を住まわせる。

氏家の出張中、氏家産業の社長室には専務の麻倉が業務を代行していた。容子は麻倉に近寄り、彼を利用して氏家を陥れようとする。容子はNYへ向かい、氏家により監禁されていた知高を呼び戻す。知高は、氏家と容子が組んで彼を陥れたことを信じようとしないが、容子に帰りの空港で遙と氏家の寄り添う姿を見せられ、彼女に協力することになる。

遥は別荘近くの喫茶店に、自分のケーキを売り込み、なかなかの好評を得るなど、移動の自由はないが有意義な日々を過ごしていた。そこへ知高が現れ、氏家の悪意に気付かされた遙は、知高と東京へ帰る。

麻倉と容子により、取締役会が開かれた。そこで、氏家が産業スパイの首謀者だったことが明かされ、知高と遙は証人として呼ばれたのだった。二人とも有力な証言は出来なかったが、容子が氏家に知高ひとりに責任を押し付けるよう勧めたところ、氏家は全責任を負っていると認め、遙を知高に託し、そして会社を去った。容子は氏家が、会社より自分よりも遙を選んだことに驚きと悲しみを隠しきれない。

氏家産業の産業スパイは大スキャンダルとして報道され、知高も名誉を回復した。遙は村上家に帰るも、ショックを受けて寝込んでしまう。知高は遙の看病を献身的にするが、遙が氏家の愛を断ち切れないことに気付く度に声を荒げる。"遙の心を安定させるため"遙と知高の縁談もいよいよ進み、村上夫人に洗脳され、遙は従順で家庭的なふるまいを見せるようになるが、同時に自分らしさを完全に失っていた。

いよいよ結婚式の当日、スキャンダルの当事者ということで取材も入り、盛大に結婚式が行われようとしていた。式場へ向かう知高に氏家が声をかける。そして、村上夫妻の不審な点を挙げ、「遙はきみを愛している。しあわせにしてやってほしい」と言い残して立ち去る。知高は、氏家がまだ遙を愛していることに気付き、自分のすべき行動を悩む。

予定から1時間以上遅れ、知高は会場へ到着した。参列者やマスコミに結婚のとりやめを告げ、個室で村上夫妻に迫る。彼は税務署や自宅を駆け回り、両親の不正の証拠を探していたのだった。遙を愛しているから、財産を彼女に返し、結婚するか否かは自由な立場で遥かに選んで欲しい、と。

数日後、遙の引っ越しが行われた。知高は遙にこれまでの一件を謝罪し、氏家が財産のことを彼に教えたことを説明した。そして、おそらく氏家がまだ遙を愛していることも。ひとりになった遙は、氏家が何故自分を愛していながら去って行ったのか……それは遙が知高を愛していると思っていたからだということに行き当たる。遙は必死で氏家の消息をたどるが、なにもつかめない。

容子は、いまは遙を励ましてくれた。再会した瀬里奈も、試食した"ショコラのめまい"は美味しかったと、コンテストのことを謝罪してくれた。

遙は製菓学校に入学し、留学も経て独立。やがてケーキショップ「Golden Earing -金の耳飾り-」を開業した。友人たちにはその意味を秘密にしたが、知高は氏家を待ち続ける遙の想いに気が付いた。知高はたびたび遙に協力し、その生き生きとした姿に、あのときしばりつけないで良かったと思う。

ニュースで、"スペインの片耳に金の耳飾りをした日本人男性"のニュースを知ると、遙は居ても立ってもいられず、スペインへ向かう。知高はまたも協力するが、彼の本当の気持ちは以前と変わっていない。遙は知高を誰よりも素晴らしい"兄"だと思っているが、その情愛は氏家に対するそれとは違っていた。搭乗手続きの間際、遙は知高を抱きしめ、自分が今まで彼に甘えていたことを謝罪しつつ感謝した。

「妹が兄キにあまえるのは、あたりまえだろ」

知高は優しく遙を見送った。スペインへの旅路は、遙にとって少女時代との決別でもあったのだ…

スペインでわずかな手掛かりから、必死に氏家を探す。

ようやく遙は氏家の家にたどり着き、埴生と再会する。そして、彼が自分の農園から作ったワインを"ハルカワイン"と名付けていたことを知る。遙は勇気を出して、彼のいる格納庫へ歩き出す。

氏家は、以前と変わらない姿で、そして片耳にイヤリングを付けてそこにいた。遙は嬉しさに涙を流す。やがて氏家が顔を上げ、遙に気付いた。遙と氏家は、互いに歩み寄る……

(終)
最終更新:2009年08月25日 21:56