ルチアーナの涙

ルチアーナの涙」は粕谷紀子の漫画作品。原作:邦一恵。

あらすじ

15世紀半ばのイタリア。17歳のルチアーナは、40過ぎのフェラーラ領主エルコレのもとへ嫁ぐ。

エルコレには、母親違いの息子が3人おり、長男ジュリオを寵愛していた。

エルコレはルチアーナに冷たく接し、再び領地を巡ると言って留守にする。政略結婚とはいえ夫に尽くそうとしていたルチアーナは深く傷つく。ジュリオは義母が傷つかぬよう、使用人たちに父の愛人のことを固く口止めする。

しかし次男ペーザロは、ルチアーナの元を訪れ、10日間の不在すなわち10人の愛人の存在を仄めかす。ルチアーナは、侍女も知っていながら口止めされていたことを知り、ジュリオの気遣いに心動かされる。

戻ってきたエルコレは舞踏会を開き、ジュリオにルチアーナの相手をさせる。1歳違いの二人は、誰が見ても似合いの男女だった。宴の場で、エルコレはジュリオを後継者とすることを発表する。ペーザロはそれを屈辱に感じる。

一方のジュリオとルチアーナは庭園で心のうちを語りあい、ジュリオはルチアーナに口づけして去る。ルチアーナは寝所でエルコレを拒み、愛人と別れることを条件にする。ジュリオはペーザロに、愛人の存在を告げたことを叱責するが、ペーザロは後継者に慣れなかった不満をぶつけて去る。そこにエルコレが現れ、自分を拒むルチアーナに心惹かれていることを打ち明ける。

エルコレは毎日ルチアーナに花を贈り、ルチアーナは困惑する。一方のジュリオも、義母ルチアーナを忘れられず苦悩する。ついに、エルコレは、愛人と全て縁を切ったとしてルチアーナと夜を共にしようとするが、ルチアーナは激しく拒絶する。彼女の心には、すでにジュリオがいたのだった。

苦悩したルチアーナは出奔し、嵐に遭い、高熱にうなされる。うわごとで、ジュリオの名をつぶやき、ペーザロは二人の秘めた思いを知る。ジュリオは回復したルチアーナを見舞う。ルチアーナは手を差し出し、遠回しに愛を伝えるが、ジュリオはそれを受け止められず出奔する。ルチアーナは、たまらず馬でジュリオを追い、ふたりはついに思いを伝えあう。

ペーザロは、兄を陥れる計略を練る。父エルコレに二人の関係を告げるだけでなく、その現場を押さえさせたい。ペーザロは、ジュリオとルチアーナの密通を父に伝える。父は最初はまじめに受け取らなかったが、ペーザロを追い出すと、密かにルチアーナの寝室へ行く。そこには幸せそうに寄り添って眠る二人の姿があった。

エルコレはジュリオだけは助けようと、誘惑されたと言えと恫喝するが、ジュリオは清々しくルチアーナへの愛を語る。エルコレは自分がルチアーナを冷遇したことがきっかけだと気付き、苦悩する。

姦通の罪を犯した二人は別々の塔に拘束され、やがて死刑が宣告された。執行の前日、ジュリオはエルコレの配下から、ヴェネチアに脱出する手はずになっていることを告げられる。しかし、ジュリオはルチアーナに殉じる覚悟だった。

日の出、エルコレはルチアーナの誇らし気な表情に動揺する。首を台に置いたルチアーナに、斧が振り下ろされる。しかし時を同じくして、ジュリオも短剣で自殺していた。エルコレはジュリオを抱えて嘆く。ペーザロは、密告以来、行方不明になった。

エルコレは二人を並べて埋葬させることを命ずる。並べられた遺体のうち、ルチアーナの瞼から一筋の涙がこぼれ落ちる。エルコレは目を見開いて驚き、寂寥に苛まれるのだった。
最終更新:2019年05月13日 15:36