■1.思想の図式化【試論】


先日、国体論の纏めページ 国体とは何か① ~ 『国体の本義』と『臣民の道』(2つの公定「国体」解説書) を作る中で、戦前の国体論の集大成である『国体の本義』の論旨と、西洋近代思想との関連表を作成した(下図)。

△『国体の本義』と、西洋思想の対応関係



そこで今度は、これを更に一般化させて、日本思想と西洋思想の関連図という形に概略して見た。
(もっとも、現段階では、まだまだイメージ先行であり、内容については検証性が乏しく粗雑ではあるが)

△日本思想vs.西洋思想、保守思想vs.革新思想



これと以前に作成した下の保守主義の概略図

△保守主義と、対抗思想・周辺思想



を更に組み合わせると、下図になる。

△日本思想・西洋思想の統一的把握



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(関連)保守主義の纏めページ 保守主義とは何か

これで、日本思想-西洋思想、保守思想-革新思想、相互間の関係が、イメージ的にかなりクリアに表現出来たのではないか。
(但し、内容の妥当性検証は今後必要)


■2.日本保守思想および革新思想の明確化


日本の保守思想については、バーク『フランス革命の省察』やハイエク『自由の条件』に相当する、「これが日本の保守思想だ」と提示できるような代表的著作をこれまで探しあぐねており、そのために日本には保守思想は存在しない、という誤解を抱きがちである。
(これは革新思想に関しても、ルソーやマルクスに相当する著作の提示が出来なかった点で、同様)

なぜそうなったのかを考えていくと、国体とは何か② ~ その他の論点 で示したとおり、西洋における保守思想の発達とは対照的に、日本では「国史(歴史)」が保守思想を代位する顕著な傾向があったことが挙げられる。
我々の経験からは、100の理屈よりも1つの事実の方が説得力があると感じるのが普通であり、日本は奇跡的に万世一系が続いている国であって、西洋の様に抽象的な理屈・思想で国家の正統性を確保する必要は薄かったのである。
つまり、日本では「保守-思想」ではなく「皇国-史観」が前面に出て皇統と国体を護持していたのである。

しかし、日本型保守思想の代表的著作を提示できるに越した事はなく、かつ、『国体の本義』の内容は、十分にその役目を果たし得るものであると思う。
(因みに、『臣民の道』は、日本の革新思想の代表的著作と云い得る内容を持つと考える)

さらに言えば、『国体の本義』には好都合なことに下記の秀逸な解説書まで存在する。

佐藤優氏著『日本国家の真髄』(月刊誌『正論』に2008年10月~2009年9月まで掲載分を単行本化)

佐藤優氏に関しては、産経新聞出版の『正論』から、新左翼の『情況』まで幅広く執筆活動を行っており、右派系雑誌では「大東亜戦争」、左派系雑誌では「太平洋戦争」などと左右の読者で巧みに用語や説明を使い分ける器用さが気になるが、大変に博識であり、かつ愛国的な人物であることは間違いないと思う。
ただ、私見では、佐藤氏は元々の左翼思想(マルクス主義への強い関心と共鳴)から外務省時代に次第にナショナリズムに目覚めて、所謂「両翼(nationalism + socialism = national socialism すなわち国民社会主義)」的な立場に発展したタイプと思われ、それが大川周明や北一輝に対する佐藤氏の肯定的評価に反映されていると思う。
しかし、保守主義とは、「両翼(右翼+左翼の融合形)」では決してないのであり、その点は確りと留意すべきだと考える。
(参考)保守主義とは何か

予め指摘しておくと、日本主義かアジア主義か、という観点から見ると、大川周明への強い共鳴に端的に現れるように佐藤優氏は国家改造主義者であり、戦前の革新右翼(アジア主義者)に近く、それゆえに若干奇妙な解釈が入る場合もある(例えば『国体の本義』は「君民共治」を明文でもって否認しているにも関わらず、佐藤氏は日本国憲法の国民主権を擁護する立場からこれを屈折して解釈している)のだが、それにも関わらず『国体の本義』の内容が強い説得力を持っていることが重要である。革新右翼に近い国家改造主義の佐藤優氏すら絶賛する内容であれば、当然に現在の私たち普通の日本人にとっても十分に通じる内容と考える。「国体」を語ろうとする者には必読の図書である。

上記のとおり佐藤優氏に関しては、「自分は自由主義的保守主義者である」とする本人の主張にも関わらず、その大川周明に対する共感、マルクス主義に対する共感、更には二・ニ六事件と北一輝への評価などから見て、左翼から出発してナショナリズムに目覚めた所謂「両翼」つまり「右翼+左翼 nationalism + socialism = national socialism 国民社会主義」の立場に立つ人物と見るほうが妥当である。
しかし、その点にだけ予め留意しておけば、上記の著作は、『国体の本義』の全文と、難語・和歌・詔勅などの完璧な説明や現代語抄訳が付されており、解説も分かり易く非常にお勧めである。
おそらく、この本を読むか否かで、日本の保守思想に対する認識度合いが大きく違ってくると考える。
そして、佐藤優氏の著作を通じて『国体の本義』がカチッと読み込めたのならば、『臣民の道』の方は自力でも容易に読めるはずである。


■3.ご意見、情報提供


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最終更新:2019年11月30日 18:39