マボロシの森

ここホウエン地方にはタブンネは生息していないとの認識が一般的だ。
しかし、最近になって潮流や天候の関係で人が立ち入らない島に
ホウエン地方以外のポケモンが生息していることを突き止めた。
その中の一つ、便宜上マボロシ森と名付けた島は素晴らしい。
なんと生息ポケモンはタブンネとヒマナッツのみ。
タブンネにとって天敵となるポケモンが環境であり、タブンネは凄まじい生息数を誇っている。
今まではネット上のタブ虐記事を見るだけだった。
しかし、ここなら心置きなくタブ虐ができる・・・
私の心は歓喜に震えた。

マボロシ森発見後はただひたすら、タブ虐に勤しんだ。
相棒のキノガッサに命令し、みねうちでギリギリまで体力を削ってそのまま放置する、
どくどくで体調が悪化し力尽きていく様を観察する、ただひたすらマッハパンチでタブンネ達を叩き潰す、
瀕死の親タブンネの目の前で子タブンネの串焼きを作る等々、
今までタブ虐ができなかったうっぷんを晴らすかのように暴れた。

しかし、最近になって困ったことにただタブ虐を行うだけでは満足できなくなってきた。
(何か・・・こう・・・もっと画期的なタブ虐はないものか・・・)
アイデアを考えながらふと図鑑に目をやると、タブンネの図鑑サーチレベルが800を超えていた。
タブンネを800匹以上虐待してきたことになる。

(そういえば、サーチレベルが上がると高個体値や色違い等希少種もサーチできるって話を聞いたな・・・)
と思った瞬間、新しいアイデアをひらめいた。

      • まずは色違いタブンネの確保からだ。

根気強く図鑑サーチを行い、とうとう色違いのタブンネを見つけた。
どうやらまだ生まれたてのようで、通常色の兄弟と共に母親からお乳をもらっている。
ミィミィと小さな鳴き声を上げ、一生懸命お乳を吸う子供たちと
それらを幸せそうに見つめる母親。
彼ら見るとあまりの愛らしさに顔がほころぶと共に、
その幸せをぶち壊してやりたくなるドス黒い感情が腹の底から湧いてくる。

「いけ!キノガッサ!」
ボールからキノガッサを出し、キノコ胞子で親子ともども眠らせる。
その間にお目当ての色違いタブンネ(色違いンネ)をゲットする。
色違いンネ以外のタブンネには、小型発信器を取り付けてそのまま放置。
当面の目的は達成したので、私はマボロシの森を後にした。

自宅に戻り、ボールから色違いンネを出すと、まだスヤスヤと幸せそうに眠っている。
生まれたてで目も開いていない状態で、時折ミィ…ミィ…と可愛らしい寝息をたてている。
ここまで小さいと、ママンネの顔も覚えていないだろう。
(これからは私が親だ・・・ 立派なタブンネ虐殺マシーンに育ててあげるよ)
邪悪な笑みを浮かべながら、ここから先のことに思いをはせる。

捕まえた色違いンネには最高の生活環境を与える。
ミルタンクの高級ミルクをあげ、排せつの世話も数時間ごとにこまめに行う。
寝る箇所はふわふわの干し草の上。
世話を続けていると、色違いンネが私のことを親と思いこみ、
全幅の信頼を寄せるまでそう長い時間はかからなかった。

目が開き、ミルク離れできるくらいまで育ったら、いよいよトレーニングを開始する。
強制ギプスをつけ、ただひたすら戦わせる。
戦わせる相手は、まだ幼い色違いンネでも相手にできるジグザグマやキャモメなどの小型ポケモンだ。
ただ倒すだけでなく、状態異常を駆使するなどしてジワジワ追い詰める戦法も教える。
自分より弱いものを虐げる喜びを徹底的に仕込んでいく。
さらに思想教育も行う。
色違いンネの触角を掴み、私の思考を流し込む。
色違いである存在がいかに希少か、いかに優れているかを徹底的に説いていく。

タブンネは本来、非常に仲間、家族意識が強い。
また、温厚な性格であり自分から他のポケモンに戦いを挑むようなこともほとんどない。
しかし、このように戦いを繰り返させ、さらに思想教育を行うことによって、
「自分が特別な存在である」「弱い者は何をされても仕方ない」
といった傲慢で残虐なタブンネを育てるのだ。

このような育て方を続けていると、色違いンネに変化が表れた。
度重なるバトルで体全体が引き締まり、(タブンネにしては)随分とスマートな体形になっている。
くりくりしたサファイアの瞳は、暗く濁り目つきも鋭くなっている。

(そろそろか・・・)
頃合いと見て、色違いンネの故郷、マボロシ森へ向かう。
マボロシ森に降り立つと、さっそく一匹のタブンネが現れた。
こちらもすぐに色違いンネをボールから出す。

ミィ?ミミィ?
色違いンネは初めて見る同族に興味津々のようだ。

ミィ♪ミィミミミ♪
一方、タブンネの方は色違いンネの後に立つ私を警戒しているものの、
色違いンネを敵とはまったく思っていないようだ。
ミッミッミッ♪と「お友達になりましょう!」とでも言いたげに、
ぽよぽよとした体を揺らしながら近寄ってくる。

「そいつを倒せ」
いつもと変わらない口調で、さも当然のように命令を出す。

色違いンネは躊躇いを見せ、私の方を何度も振り向く。
当然だ。色は違えど、自分と同じ姿をした存在が、親しげに話しかけているのだから。
おまけに相手には敵意はない。
そいつを無下に倒せと言われても、本来持つ優しい心がストップをかけてしまうのだろう。

私は色違いンネの触角を握り、強く念じる。

(お前は色違いの特別な存在だ、そいつとは比べ物にならない尊い存在だ)
(そいつの体を見ろ 外敵もなく、ただ恵まれた環境で過ごしただけの体は醜く肥え太っている)
(お前がためらう必要はない むしろ堕落した生活をおくるポケモンは粛清すべきだろう?)

ミィィィ!?ミィィィッィィィィ!???
色違いンネは発狂したかのような大声を上げる。
私が育てた傲慢で好戦的な心と、同族を見て蘇った本来の優しい心がぶつかっているのだろう。
私は色違いンネの触角を握り、もう一度念じる。
(聞こえなかったのか?そいつを倒せ)

ミィィィィ!
次の瞬間、色違いンネは叫びながらグロウパンチを放った。
放たれたパンチは、無防備なタブンネの腹にさく裂した。
ミギャァァァ!!!
まさか同族から攻撃を受けるとは思っていなかったようで、タブンネはまともに攻撃を受けてしまった。
なぜ!?どうして?とでも言いたそうな顔で色違いンネを見つめ、反撃や防御の姿勢を取れていない。

色違いンネは攻撃の手を緩めない。
動けなくなったタブンネの四肢をグロウパンチで攻撃していく。
右手、左手、右足、左足…
ギャ!ギャ!ギャ!ミギャアァァァァ!!!
体を破壊されるたびにタブンネが叫ぶ。
その叫び声には痛み以外に、同族に攻撃されたショックと絶望が混じっている。
タブンネの四肢は完全に破壊され、今やダルマ状態だ。

ミィィィィ!
息も絶え絶えのタブンネに、トドメと言わんばかりに色違いンネのすてみタックルがさく裂する。
いや、動けなくなり地面に伏した相手に放ったので「すてみプレス」と表現した方がいいだろうか。
ミギャッ・・・
短い悲鳴を上げ、タブンネは動かなくなる。
グロウパンチで攻撃が上がった後のすてみタックルをまともに食らったのだ、即死だろう。

ミヒィミヒィ・・・ミヒィ・・・
一方、色違いンネは虚ろな顔をしながら、激しく呼吸している。

私はそんな色違いンネの触角を掴み、念じてやる。
(よくやった)
(何も罪に思う必要なない。相手は死んで当然の堕落したポケモンだ)
(弱い者は強いものに何をされても仕方ないのだ)
(色違いという特別な存在のお前には、その行為が許されるのだ)

ミィ・・ミヒィ・・・ミヒャッ・・・ミヒャッ
少し落ち着いたようだが、相変わらずその目は虚ろだ。
まだ罪の意識があるのだろう。
しかし、ここで休ませてはダメだ。
色違いンネと共に森の中を進み、出てくるタブンネ達を色違いンネに次々と始末させる。
ミギャァッ!ミギャギャァァァ!ミビャアァァ!
同族から攻撃を受け、「まさか!」「なんで?」「どうして?」といった断末魔をあげながら
命を散らしていくタブンネ達の叫び声が心地よい。

そうしている内に色違いンネにも変化が訪れた。
最初は戦うことに躊躇していたようだが、何度も同族殺しを繰り返す内、
自分から進んで同族殺しを楽しむようになったのだ。
残虐さも増しており、動けなくした親ンネの前でミッ♪ミッ♪と楽し気な声をあげながら
子タブンネを嬲り殺すことも平気で行うようになった。
(もはや退けない道と諦め、同族殺しを楽しむようになったか・・・頃合いだな)

(さて・・・このあたりか・・・)
以前、色違いンネの家族に取り付けた発信器が指す地点にたどり着いた。
器用に木や草を使って雨風がしのげるようになっている。恐らくここが巣だろう。

ミィ!?ミィィィッ!ミッミッ!♪
巣の前に来ると、驚きと喜びが混ざった声で巣の中から一匹のタブンネが飛び出して来た。
さらにその後に2匹のタブンネがついてきている。
最初の一匹は色違いンネのママンネ、後の2匹は兄弟ンネと言ったところか。

ミィ!ミィミィ!ミッ♪ミッ♪
ママンネは嬉しそうに飛び跳ねながら色違いンネの前にやってくる。
恐らく「ママよ!分かる?あなたのママよ!よく帰ってきてくれて・・・」
とでも言っているのだろう。しかし・・・

次の瞬間、色違いンネのほのおのパンチがママンネにさく裂した。
ミギィィィィィ!心地よいママンネの悲鳴が森に木霊する。
痛み以上に自身の子供にやられたことが信じられないようだ。
私はこれから始まるであろう、虐殺ショーに期待しつつ心の中でつぶやく。
(残念だったな お前の目の前にいるのは、お前の子供じゃない 心が壊れた虐殺マシーンだ)

ミヒャヒャッ!ミヒャッ!ミヒャァァァ!
色違いンネは嬉しそうにママンネの体をほのおのパンチで破壊していく。
ママンネの体はやけどで焼けただれ、もはや一歩も動くことができない状態だ。
倒れこんだママンネの触角を色違いンネが掴む、さらにママンネの体に色違いンネの触角を当て・・・
色違いンネがママンネの触角を一気に引きちぎった!

チビャアアアアアァァァァアアア!!!!
チギャ?チギャァァ?チィィィィッ!?

ママンネのすさまじい叫び声が響く。
ちぎれ残りの触角に手を当てながら、こらえ切れない体と心の痛みにイヤイヤと頭を振っている。
やけどにより先ほどまでほとんど動けなかったのに、ここまで暴れまわるとは。
どうやら触角を傷つけられるのは想像以上に痛いらしい。

ミッミッ♪ミィミィ♪♪
一方、色違いンネはご機嫌のようだ。
邪悪な笑顔を浮かべ、触角を失い苦しんでいる母ンネに自分の触角を当てている。
どうやら、色違いンネは触角で相手の感情や体調を読み取る機能を利用し、
相手の痛み、絶望を感じ取って満足しているようだ。
ママンネのいたぶりをひとしきり楽しんだ後、
虫の息のママンネを放置し2匹の兄弟ンネに目を向ける。

ミヒィッ!
兄弟ンネ達は恐怖に震え、巣の隅の物陰で2匹抱き合っている。
ミィ~?ミミミ♪ミィミィ♪♪
巣の隅に行き、「見つけたよ♪」と物陰を嬉しそうに覗き込む。

ミギャアアアアアアァァァ!
兄弟ンネは恐怖に包まれた顔で叫ぶ。
体は小刻みに震え、サファイアのような眼からは光が失われつつある。

そんな兄弟ンネ達の反応を楽しむかのように、色違いンネは1匹の兄弟ンネ(A)の頭をわしづかみにする。
ミギャミギャミギャァァァッ!
頭をわしづかみにされながら、兄弟ンネAは必死に手足をじたばたさせる。
しかし、鍛えられた色違いンネから逃れることなど不可能だ。

ミヒャッミヒャヒャヒャッ!
片手で頭をわしづかみにした兄弟ンネAの腹をもう片方の手でグロウパンチで殴りつける。
一方的に攻撃する色違いンネの顔は、とても嬉しそうでこの行為を心から楽しんでいるのが分かる。
ミバァツ!ミバァ!
兄弟ンネAは苦しそうな顔を浮かべるが、腹に力を入れて全力で耐えている。
しかし、無情にも色違いンネのパンチの威力はどんどん高くなっていき・・・
ミグヘァッ!
兄弟ンネAは血を口から吐き出し、それっきり動かなくなった。
動かなくなった兄弟ンネAをママンネのそばに投げつけ、兄弟ンネBの方に目を向ける。

ミィィィィィ!兄弟ンネBは涙目で駄々っ子のようにパンチを繰り出している。
しかし、色違いンネにはまったく効いていない。
ミヒヒッ!
背筋が寒くなりそうな邪悪な声をあげ、色違いンネは兄弟ンネBに紫色の液体をかけた。
どくどくだ。
ミバァ!ミグッ!
兄弟ンネBは苦しそうに倒れこむが、巣の片隅にある木の実に手を伸ばす。
モモンの実で毒を治そうとしているようだ。
ミッミッ♪「させないよ」と言わんばかりに、兄弟ンネBに色違いンネが馬乗りになる。
そのままトドメ・・・とはいかず、色違いンネは触角を兄弟ンネBに当てる。
ミィミィ♪ミィミィ♪
「このままモモンの実を食べられずに、猛毒で少しずつ死んでいく君の様子を観察させてよ♪」
とでも言うかのように、色違いンネは楽しそうにしている。
ミガッ!ミグッ!ミィィィ!
兄弟ンネBは何とか色違いンネを振りほどこうと、
顔面蒼白になりながらタブンネとは思えないスピードで手足をじたばたさせる。
しかし・・・
ミガッ!ミガガガッ!
ミグゥ・・・
ミィ・・・
ミ・・・
徐々に動きが鈍くなっていき、絶望の表情を浮かべながら兄弟ンネBは力尽きた。
毒を直す手段が目の前にありながら、それを使えずに死んでいくのは何よりも無念だっただろう。
ミミミッ♪ミッ♪
色違いンネはまたまたご機嫌の様子だ。
恐らく、先ほどの兄弟ンネBの無念の感情を読み取って満足しているのだろう。
猛毒により青紫に変色した兄弟ンネBの遺体をママンネに投げつける。

ミィ・・・
ママンネは先ほど受けたほのおのパンチによるやけどで、もう長くはないだろう。
色違いンネはそんなママンネの近くにより、ミッミッ♪と楽し気な声をあげる。
「みんな死んじゃったね?ねぇ、今どんな気分?」とでも言っているのだろう。
ママンネは無言だ。絶望感から泣くことすらできないのだろう。
そんなママンネに色違いンネは興味を失ってようで・・・
ほのおのパンチで頭をつぶしてトドメを刺した。
ミバッ!というママンネの断末魔があがる。

全てが終わり、色違いンネは目を輝かせながら私の方へ戻ってくる。
私はそんな色違いンネの触角を掴み、
(よくやったな!)
(流石は私が見込んだ、色違いのポケモンだ!)
と称賛の感情を込めてやる。
ミッミッ♪
色違いンネはそんな感情に答えるかのように小刻みに飛び跳ねる。

できたぞ・・・
どのタブンネよりも傲慢で、残虐なタブンネが・・・
こいつがいれば、当分飽きが来ないだろう。

私はウキウキしながら、マボロシの森を後にした。

おわり
最終更新:2016年01月11日 17:57