彼氏の家で

494 彼氏の家で sage 2010/04/19(月) 14:47:33 ID:J4EtzPD/
UZEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE
「む。」
はるかなる虚数空間の旅を経て届いたペケペケ星人の通信信号を受信した。
メスシンニュー チューイセヨ
まずい。まずいぞ。このままでは蓮兄に危険が!
どうやらジャガイモをシンシアかメークインか悩んでいる余裕はなさそうだ。
すぐさまスカラー波を発信し、スパイツールを起動させた。

今日、私はついに蓮君の家にあがることができた。
「ここが蓮君の部屋かあ。思ったよりきれいだね。」
「ああ。妹がよく勝手に掃除してるんだよ。ほら、そこに写真なんかも飾っちゃって。
あと、妹フィギュアブロンズver.とかわけのわからないものも…。」
机の上の写真立ての中から、黄色のリボンで髪を結んだツインテールの女の子が笑っている。
「これが空美ちゃん?可愛いわね。」
写真を手に取り、まじまじと見る。
この子が未来の義理の妹―――うふ、うふふふふふ。
「…ちゃん?…ちゃん?大丈夫?」
蓮君が心配そうに私を覗きこんできた。
いけないいけない。思わず自分だけの世界へ行ってしまっていたようだ。
「ううん。なんでもないの。」
「それならいいけど。そうだ、俺、紅茶入れてくるから待ってて。」
そういって蓮君は部屋を出て行った。お部屋チェックのチャンス到来だ。
ドアが完全に閉まるのを確認すると、持っていた写真立てを元の場所へと戻す。
私は目を疑った。
写真の空美ちゃんの目が、ギョロギョロと動き回っていたのだ。この写真、動くぞ!
なにこれ気持ち悪い。怖いと思いながらも好奇心が勝って写真を凝視し続けた。
そのうち、回転していた目玉はこちらを向いて止まった。こっちみんなぁぁぁぁ!
「きゃあ!」
私は大声を上げて後ろに飛び退いた。
「どうしたの?」
ちょうど蓮君がお茶を入れて戻ってきたところだった。
「しゃ、写真の目が動いたの!それでこっちを見てきて。」
「妹の写真が?別に何ともないようだけど。」
写真を差す私の指は震えていた。
「こっちを見ている写真はね、どこから見てもこっちを見ているように見えるんだよ。」
「そ、そうじゃなくてね。」

やはり、自宅に雌の侵入を許してしまっていた。蓮兄も困ったものだ。
SUGEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE
アカッシックレコードから奴の解析結果が届いた。
名前は鬼頭春海、蓮兄のクラスメイトで成績優秀、校内彼女にしたいランキング第一位か。
彼女としての既成行為はまだなし。
未来予測は…、家事万能、控えめで夫を立てる性格で、近所付き合いも良好、三人の子供にも死角なし。
危険だ。危険すぎる。こんな女が社会的に許されるはずがない。
即行、排除しなければ!


495 彼氏の家で sage 2010/04/19(月) 14:48:36 ID:J4EtzPD/
「あ、砂糖持ってくるの忘れた。取ってくるね。」
そういって蓮君はまた部屋を出ていった。
よくわからないが嫌な空気が部屋を漂っている気がする。何故だろう。
ギギギギギギ
後ろで何か金属音のようなものがする。
恐る恐るゆっくりと首を回す。
視界の端で、ブロンズフィギュアの腕がギシギシと動いているのが見えた。
さっと振り返るのをやめて前を見る。
なにあれ。見間違いよね。うん、間違いに決まってる。
そう、思い込ませて勢いをつけてもう一度振り返る。
棚に乗っていたそれは、何故か棚の下に立っていた。
しかも、少し大きくなっているような気がする。
また振り返るのをやめる。何かの呪?どうしよう。どうするの?どうするの私?!
こうやってパニックを起こしている間にもそれは私に近づいているかもしれない。
なんとかしなければ!意を決してさっと踵を返す。
「へ?」
そこには何もいなかった。
ふう。
ほっとして深いため息をつく。
とん。
次の瞬間私の左肩に何かが乗った。
視線を肩にやるとそこにはメタリックな手が。
後ろを向くとそこには私と10cmほどしか背丈が変わらない金属質の女の子が鬼のような形相で睨んでいた。
間違いない。写真の子、空美ちゃんだ。
しかし、写真のような明るい笑顔はそこになく、刃物のように鋭い歯がキラキラと光っていた。
「タチサレ。タチサレ。タチサレ……。」
男性の声より低いその声は直接私の頭の中で鳴り響いた。
「い、いやー!」
私は一目散に部屋を出て階段を駆け下る。
蓮君がどうしたのと顔だけ出してこちらを伺うのも気に留めず、靴をはいて家の外へと飛び出した。
どんっ!
勢いよく飛び出したせいで玄関先で誰かとぶつかって転んでしまった。
「ご、ごめんなさい。」
私は謝りながら、ぶつかった相手を確認する。
「大丈夫ですか?」
そこにはあの空美ちゃんが買い物袋をぶら下げ立っていた。
笑顔で空いている方の手を差し出し、私が立ち上がるのを手伝ってくれた。
「はじめまして。もうお帰りですか?」
「ええ、まあ。」
「そうですか。」
彼女はニコニコと笑っている。
どうやら本物の方はまともそうだと私は思った。
しかしそれを裏切るように彼女は背伸びして、私の耳元で囁く。
「次はありませんよ?」
もう一度彼女の顔をみると、それはまさしく先ほど見たあの形相だった。
私は悲鳴をあげるのも忘れて、全力でその場から逃げ出した。

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最終更新:2010年05月09日 22:06
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