ツンデレ(仮)な姉 前編

4 :がおー ◆ctpDG7E5wY [sage] :2012/01/23(月) 12:25:51.91 ID:uZN4n7bu (2/4)

 俺の名前は西村一樹、そこそこ名の知れた私立大学の二回生で、学部学科は法学部法学科。今は四日後に迫ったテストの勉強をしているのだが、正直なところこのままではやばい。ものすごくやばい。
入学した時は「首席で卒業してやる!」なんて志を抱いていたのだが、入学して二年近
くになる今となっては、その志は見る影もなくなってしまった。民法?なにそれ。
「くっそ、次のテストは二週間前から準備しよっと」
「あんた、それ前回のテストの時も言ってたけど」
突然浴びせられた声にびっくりして振り返ると、そこには俺の姉が立っていた。
西村真美、それが姉の名前だ。性格はかなりきついのだが(特に俺には!)顔立ち、スタイル共に良く、大学でも人気がある。
風呂上がりなのだろう、明るすぎない程度に染めている茶髪が鈍い光を放っており、それが姉の綺麗な顔立ちと相まって、色っぽかった。
「特に藤澤は採点厳しいから、しっかり勉強しないと単位こないわよ」
 そして、実は俺と大学どころか学部学科も同じ。
 「ね、姉ちゃん、びっくりするだろ。ノックくらいしろって毎回言ってるじゃん」
 内心の照れを隠すため少し強めな口調になったが、姉は事も無げに
「そうだっけ」
とすました顔で言い放った後、まあいいわ、と呟くと(何が良いのかさっぱりとわからんが)俺のベッドに寝転んだ。長年の経験から分かるのだが、これは姉が構ってほしい時にする合図のようなものだった。この合図をシカトすると、姉はものすごく不機嫌になるのだ。
 しかし、一度構ってしまうと時間をとられるのは明らかだ。そして、今の俺にそんな余裕はない。かといって追い出すこともできないのだが。……どうにも集中できないな。俺は、はあ、とわざとらしい深い溜め息をつくと、またも机に広がるレジュメとノートに挑み始めた。
 それからしばらくは、レジュメをめくる音と、シャーペンを走らせる音だけが室内に響いていた。
 が、やはり全く集中できておらず、内容が頭に入ってこない。やはり、ここはいい加減部屋から出ていってもらうか、と口を開きかけた時だった。
「あんたさあ、明日暇?」
「え、まあ予定はないけど」
 ……あ。突然話をふられ、つい素で返してしまった。
 「じゃあさ、買い物付き合わせてあげる、はい決定」
 姉はニヤリと笑うと、話は終わったと言わんばかりに部屋から出て行こうとした。



5+1 :がおー ◆ctpDG7E5wY [sage] :2012/01/23(月) 12:40:37.75 ID:uZN4n7bu (3/4)
 「いやいやいや、マジで明日は勉強するから無理だって。てか友達と行けばいいじゃん」
 俺は慌てて姉を引き止めると、至極真っ当な主張を並べた。
「友達はみんな忙しいの。その点あんたは暇人だし、別にいいでしょ」
「いや、だから、そのね」
「あーうるさいなあ、これは童貞のあんたをこの美人な姉が少しはいい思いをさせてやろうって気遣いなんだから、素直に感謝なさい!」
 いやいや、よくないって。マジ無理だって。俺がぶつぶつと文句を言うと、挙げ句の果てには
「あんたが女の子と買い物いく機会なんてそうそうないでしょ」
なんて、底意地の悪そうな笑みを浮かべ、そう言い放ってきた。
 ……む、確かに、1ヶ月前の俺なら何も言い返せなかっただろう。だがしかし、今の俺は違う。この質問を待っていたんだ(某宇宙海賊風)!
「いや、俺彼女いるし!」
 俺はこれ以上ないどや顔で言った。実は、日頃俺がモテないことをからかってくる姉に一矢報いようと、この日まで温めてきたのだ。
ちなみに彼女は姉とは違い、可愛い系で物静かな娘だ。……怒らせると怖いけど。
姉がどんな反応を返すか待っていると「え」と間抜けな声を発した後、意外にも腹を抱えて笑い出した。
「あんたに彼女だなんて出来るわけないでしょ! 笑わせないでよ! あー、お腹痛い!」
「な、なんだよ、ほんとだって!」
きょどった俺の反応がさらに嘘っぽく映ったのか、姉はさらに爆笑しだした。ヒーヒーとひとしきり笑った後、
「明日は午前中からだからね。勉強が忙しいのは分かってるから、夕方までには帰るようにしてあげる」
と一方的に告げると、いやマジだから、彼女いるし、という俺のしどろもどろな抗議も聞かずに部屋に戻っていった。
 一人残された俺は、あー今回のテストは終わったななんて絶望しつつ、意識はいつの間にか闇に落ちていった。


 朝、目を覚ますと俺にはブランケットがかけられといた。妙なところで気がきく姉がやってくれたのだろう。
普段強気でわがままだけど、なんだかんだで優しさも持ち合わせているのだ。
 姉に感謝しつつ寝ぼけ眼で携帯をひらくと、彼女からメールがきていた。
『おはよう。今日、10時から図書館で一緒に勉強しない? 急にごめんね。』
 時間を確認すると九時二十分過ぎ。こ、これは急がねば!
『わかった、すぐいくよ。』
 軽く返事をし、大急ぎで身だしなみを整え勉強道具をかばんに放り込むと、ばたばたとあわただしく家をでた。
 途中で姉ちゃんとの約束を思い出したが、彼女と姉ちゃんの横暴どちらが大事か?当然彼女だ。
『ごめん、彼女から図書館で勉強しようって誘われたから行ってくる。買い物はまた今度で』
俺はルンルン気分(死語か?)で姉にメールを送ると、少しあった姉への罪悪感はすぐに頭から消えていった。

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最終更新:2012年02月16日 15:36
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