水面下の戦い5

580 :水面下の戦い5 ◆ZNCm/4s0Dc [sage] :2012/12/02(日) 08:20:22.37 ID:YlEAj/Ut (2/7)
「…おはよう」
「!?っ。お、おはよう」

正直朝一から顔を合わせたくなかったな…。
昨日のデートから一夜明け月曜日。
最後の観覧車内でのことが思い浮かばれる…。


――――――――――――

「ふう…、結局二人で周っちまったな。他の皆がいきなり急用ができるなんてな」
「そうね、それにしてもカラオケはびっくりしたわね~」
「テロか?!って焦ったな」
「でも良かった。怪我がなくて」
「お互いな」
「…ねぇ、今日はどうだった?」
「どうって?」
「その…楽しかった?」
「そりゃ、楽しかったよ。デートなんてほとんどしたことないしな。ドタキャンした連中にある意味感謝しなきゃいけないな」

俺がそう言うと、彼女はホッと笑うような表情を見せた。
それに少し惹かれてしまった…。

「実はね、今日は他の皆にお願いしたの」
「え?」
「二人きりで過ごしたかったから…」
「?!っ、それって」
「私ね、あなたのことが好きなの。―――ずっと前から好きだった…。」
「……」

突然の告白に戸惑うしかなかった。
こいつとはずっと友達でいるんだろうと考えていたからだ。

―――?!

気付くと、目の前まで顔が迫っていた。
互いの唇が触れる距離に――――――


581 :水面下の戦い5 ◆ZNCm/4s0Dc [sage] :2012/12/02(日) 08:21:04.99 ID:YlEAj/Ut (3/7)
――――♪――――♪

ビクゥゥ!!!

急に携帯の着信が鳴り、顔が離れる。

「あ!ゴメン!!ちょっと…」
「…うん、いいよ。大事な用事かもしれないし」
「もしもし」
『兄さん?私』
「ど、どうした?」

それから妹との会話に阻まれて、観覧車内で話すことは出来なかった。
その妹はなんだか要領を得ない内容の話しかしてこなかったが…。

駅に着き解散となったが彼女は最後に一言。

「あの、その…へ、返事はすぐじゃなくていいから…。でもちょっとは考えてくれると嬉しいかも…」
「あ、ああ…」


こういうとき普通なら気の利いたことを言うんだろうな…。
そう思いながら彼女の後姿を見送っていた。

――――――――――――

嬉しくないといえば嘘になる。
だが、告白されること自体初めてなのでどうしたらいいかわからないというのが本音だ。
二つ返事でOKして付き合うのは簡単だが…そんな軽い気持ちでは言えなかった。
確かに好意を持っていたのは事実だ、でもそれは友達として…だ。
俺はあいつのことが好きなんだろうか?


582 :水面下の戦い5 ◆ZNCm/4s0Dc [sage] :2012/12/02(日) 08:21:49.23 ID:YlEAj/Ut (4/7)
「ただいまー」
「お帰りなさい、兄さん」

夕方になり帰宅する。
あれから色々考えたが、答えについて何も思い浮かばなかった。
代わりに何故あいつは俺みたいな奴に告白してきたのか、と疑問に思った。
自分で言ってしまえば終わりだが、取り柄らしいものも無し、顔も並み…だと思う。
いや中の下か?
まあとりあえずわからないのだが、男と女では考え方が違うのかもしれないな…。

そこで家族であり女性でもある妹に聞いてみることにした。

「…なぁ、俺のことどう思う?」
「え?それは大事な家族ですけど…」
「いやそうじゃなくて…男としてさ」
「?!え、い、いやそれは!あのその…」

しまった!
妹相手になんて聞き方してるんだ…。
また誤解されるぞ―――

「に、兄さんはその昔から私のこと大切にしてくれて…それで―――」
「あー、違う違う。その、俺の男の魅力って何なのかなって?」
「騙されやすいところもあるけど、そこが可愛いというか萌えポイントというか―――」
「おーい?話聞け」
「でもそんな頼りないところだけじゃなくて、いざというときには身体を張って―――」

パン!!

「猫騙し!」
「ひゃう?!」
「落ち着いたか?」
「は…はい…」
「変な質問して悪かったな」
「あ、いえ。こちらこそ取り乱してすいません。それで何でしたっけ?」
「いや、忘れてくれていいよ」

なんかぶつぶつ言っていたが…、姉さんには聞かないでおこう。
やっぱり女性以前に家族だしな…。


583 :水面下の戦い5 ◆ZNCm/4s0Dc [sage] :2012/12/02(日) 08:23:17.35 ID:YlEAj/Ut (5/7)
翌日、授業も終わり街中をぶらついていると…。

「よう、久しぶり」
「お?おう、ほんと久しぶり。元気してたか?」

高校時代の友人と遭遇した。
こいつは高卒で働き始め、今では嫁と子供までいる凄い奴でもある。
―――そうだ、調度いい。

「なぁ暇か?飲みに行かねえか?」
「まだ夕方だぞ…ま、でもいっか」

ノリが軽いのも相変わらずだ。
しかしこいつなら今の俺の疑問に答えを与えてくれるだろう…。
あ、あと妹にメールもしとかなきゃな。

とりあえず飲み屋に入り、乾杯。

「告られたのか?!付き合っちまえよ!!」
「それが出来れば苦労しないんだよ…」
「なんでだよ?こういうのは勢いだぞ!」
「お前みたいにはなれないっつーの」
「あんまりウジウジ考えてても何も出てこねーよ!変わらねーな、おい」
「どうせ根暗だよ…」
「単純に今どう思うか、だ。俺も結婚出来たのもそれに従ったからさ」
「自分に素直になれってか?」
「そうだ!!深く考えないほうがいいときもあるさ!!!」
「…そうか、そうだな」

なんとなく気持ちが晴れた気がした。
やっぱり経験者は違うな、相談して良かった。
その後は久しぶりということもあり、盛り上がった。
結局帰宅出来たのは、日付が超えるかという時間帯だ。


584 :水面下の戦い5 ◆ZNCm/4s0Dc [sage] :2012/12/02(日) 08:24:31.48 ID:YlEAj/Ut (6/7)
「いかん、飲み過ぎた…。胃腸薬…」

玄関を開けると、奥に明かりが見えた。
まだ誰か起きているのか?姉さん?

「ただいま…」
「おかえり、静かに…ね」

リビングには夜食中の姉さん、そして―――

「なんで、こいつ…」
「心配してたわよ。兄さんが夜遊びしてるって」

妹が机にもたれかかって眠っていた。

「遅くなるってメールしといたのに」
「でもめずらしいわね、深夜帰りなんて」
「高校時代の友人とバッタリ会ってさ、つい盛り上がっちゃって…」
「気持ちはわかるけど、あんまりおそくなっちゃ駄目よ。私だって心配してたんだし」
「ああ、ゴメン。姉さん…」

そういってリビングを出る。
風呂は朝にしてもう寝るか…。明日の午前は授業出れそうにないな。
そういえば、携帯の電源をオフにしたままだったな。

「―――?!!」

オンにすると、メールの受信件数が百を超えていた。
それに着信も半端ない数だ…。
全て妹から―――。

「兄離れさせるべきかな…これ…」

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最終更新:2012年12月02日 10:49
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