キモウトの反応

310 :【キモウトの反応(SIDE-A)】:2007/12/20(木) 20:40:59 ID:uvBZZ9gx
 部屋のドアを開けると、何故か妹がオレのパソコンに向かってた。
「あ……」
 オレが何か言うより早く、振り向いた妹がディスプレイを指差して、
「――ちょっと何このブックマーク、お兄ちゃん!」
「え?」
「キモ姉とかキモウトとか、リアルで妹いる人が、こんなキモいの見ないでくれる!?」
「あっ、えっ……」
 オレは慌ててパソコンの前に行き、妹の肩越しにディスプレイを覗き込む。
 ブラウザで開かれていたのは、オレの巡回先の一つである「キモ姉&キモウト小説を書こう!」スレだ。
「あり得ない! ちょーキモい! こんなの見てるお兄ちゃんのほうがキモアニキだよ!」
 ぎゃーぎゃー騒いでいる妹の手からマウスを奪い、とりあえずオレはブラウザを閉じた。
「というか何でおまえ、オレのパソコン勝手に使ってるんだよ!?」
 逆ギレといわれても仕方ないが、オレにもそれくらい主張させてほしい。
 すると妹は口をとがらせ、
「パパの許可とったもん。居間のパソコン使おうとしたら、パパが仕事で使うからお兄ちゃんに借りろって」
「だからってオレのパソコンなんだから黙って使うなって……!」
「黙って見られたら困るブックマークしてるお兄ちゃんが悪いんでしょ! ヘンタイ!」
 妹は椅子から立ち上がると、わざとらしくのけぞるようにオレから身体を離し、
「近づかないでくれる? ヘンタイが伝染るから。我が家にキモい人はお兄ちゃんだけで充分でしょ」
 そして大股に部屋を横切っていき、廊下に出たところでオレを振り返り、
「そんなブックマーク、消してよね。今度パソコン借りるときまで残ってたら、パパに言いつけてやる」
 オレが何か言い返す前に、ばたんと乱暴にドアが閉められた。
「……はあっ」
 がっくりと肩を落として、オレはため息をつく。
 まったく。
 リアルの妹が口ばかり達者な可愛げのない奴だから、ネットの世界の「妹」に萌えてるんじゃないか。
 でも、妹のヤツ。ネットで何を見てたんだ?
 最初からオレのブックマークをチェックする目的じゃないよな。
 ブラウザを立ち上げ直し、履歴を確かめた。
 ぬいぐるみの通販サイトと、あとはオレがブックマークしてた漫画やアニメのサイトがいくつか。
「キモ姉&キモウト」スレ以外でヤバいものは見られてないようだ。
 いや、そのスレだけで充分ヤバいけどな。オヤジに告げ口されたら誤解を招く。
 オレはリアルの近親相姦には興味ねえってのに。
 妹が見てた通販サイトでぬいぐるみでも買ってやれば、機嫌が治るかな。
 小遣いの残額と相談しながら、オレは妹への貢物を選び始めた。


311 :【キモウトの反応(SIDE-B)】:2007/12/20(木) 20:43:10 ID:uvBZZ9gx
 自分の部屋に帰ってドアに鍵をかけ、わたしは、どさりとベッドに倒れ込んだ。
 布団に顔を埋め、ため息。
 興奮してわめき散らしたせいか、まだ心臓がどきどきしてる。
 お兄ちゃんにオタクの気があることは前から知ってた。本棚に並ぶ漫画で一目瞭然だもの。
 メイドとか巫女とかツンデレとかヤンデレとか、勝手に借りて読んでるうちに、そんな言葉も覚えちゃった。
 でも、よりにもよって萌えの対象に「妹」。それも兄に恋焦がれるあまり罪まで犯す性格破綻者。
 ばかにしてる。
 ばかにしてるよ、リアルの妹を。
 涙があふれてきた。

 ――お兄ちゃん、わたしのこと一度も「そういう目」で見てくれなかったくせに。

 好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きでたまらなくて。
 でもそんなの兄と妹じゃ異常なことでお兄ちゃんに嫌われたくないからずっと気持ちを抑えてたのに。
 この想いがバレたら嫌われそうだからわざと生意気な可愛げのない妹として振る舞ってたのに。
 一番近くにいて一番好きで、でも我慢しなくちゃいけなくて一番哀しい思いをしてる現実の妹に眼もくれず。
 一線を踏み越えて欲望を充足させたネット上のニセモノの妹たちに、お兄ちゃんは心惹かれるんだね。

 オ ニ イ チ ャ ン ガ ソ ノ ツ モ リ ナ ラ。
 イ モ ウ ト ニ モ カ ク ゴ ガ ア リ マ ス。

 今夜、家族が皆、寝静まったら。
 わたしはお兄ちゃんを「犯す」ことを心に決めた。

【終わり】

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最終更新:2007年12月27日 13:44
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