小ネタ~思い出の桜の樹~

269 小ネタ~思い出の桜の樹~ sage 2007/08/24(金) 04:07:30 ID:cVWlMbh+
「綺麗ね…」
家の庭には一本の桜の樹がある。
春になるとこの異常気象をものともせず、
規則正しく花が咲き、そして、散って逝く。
強く逞しく、そして可憐に。
誰かが植えたという物ではない。元からここにあったそうだ、
それが何年、何十年いや、何百年であろうと、
俺の知る限りこの樹は何一つ変わらず生きていた。
生まれた頃から一緒だったのだ、愛着というか、純粋に家族の一員と思っている。
それは姉、今隣にいる姉も同じであろう。
「昔よくここで遊んだよな」
懐かしい、けれど決して遠い訳ではない。何故か、
「樹の寿命は長いもの、私たちの10年なんて、ほんの数秒、
 忘れるはずないわ」
樹の話であるのに、安宅も自らの思いであるかのように、
呟く、姉は。
日に照らされた姿は神秘的であり、神々しく、
思わず俺は目を細めた。
樹も、姉も。
暫しの静寂、横切る春風…
「俺…この樹が好きだ、愛してる。変かな…」
が止んだ。
「………」
あれー?辺りが暗くなったよー?



270 小ネタ~思い出の桜の樹~ sage 2007/08/24(金) 04:14:10 ID:cVWlMbh+
「ね、姉さ「四季」
名を呼ばれ、ものすごい圧力で名を呼ばれ
思わず直立不動になる俺。
「明日は何日何曜日?」
笑ってるけど、微笑って無いとはこの事か?
「サー、13日の金曜日であります、サー!」
とにかく姉の顔は俺の知る限り人生で一番恐ろしい物と化していた。
「そう、13日の金曜日…あの方が来てもおかしくないわ…
 あの方が来ても…!」
ふふふと、妙な、至って妙な含み笑いを残し、
姉は室内へ戻った。

その夜、ものすごい爆音と共に何かの倒壊した音が鳴り響き…
翌朝目覚めてみると綺麗に丸太となったわが家自慢の桜があった。
「あらジェイソンさんでも来たのかしら?」
呆然としている父、母、俺の後ろから来た姉の顔は…

…恐らく俺の知る限り世界最高の笑顔だった。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2007年10月21日 00:46
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。