蝶変態超変態

223 ◆.DrVLAlxBI sage 2008/12/17(水) 00:36:28 ID:xihrhaXe
『蝶変態超変態』

「ヒロ、お前はいつまでもあたしの下僕なのよ!」

姉に関して思い出すのは、辛いことばかりだ。
冒頭のセリフが俺の姉の酷さを象徴しているだろう。俺の姉は尋常ではないほどの俺様主義であり、俺は姉に逆らえたためしがなかった。
男なら腕っ節は上だろうと何度も人からは言われたのだが、姉は凶悪なまでの俊敏さと、その源である脚力をふんだんに使用したキックによって俺のささやかな反抗すら過剰鎮圧した。
曰く、「姉たるあたしに下僕(=弟)程度のあんたが逆らうとは、いつからあんたは戦国大名を気取るようになったのかしら? 日本史の教師が悪影響なのかしらね。あのハゲが……あたしの下僕に何を吹き込んだのかしら」
日本史の先生ごめんなさい。カツラはバレバレですが、俺はあなたの教育は偉大だと思っています。
とにかく、そんなこんなで理不尽に姉に下僕あつかいされ、俺の少年時代は抑圧とともに歩んだ歴史だったのだ。
俺は主張した。俺曰く、「友達の家に行きたい」「姉ちゃんの買い物長い」「荷物重い」「俺に金出させるのやめて」。
姉は反論した。姉曰く、「友達とお姉ちゃんどっちが好きなの?」「あんたはあたしに適当でダサい服を着たブス姉になってほしいの?」「男の子なんだから重いのを持つのが当然」「デートは男が貢ぐものよ」。
ああ、マイシスターよ。確かにそなたは美しかった。しかし、その美しさをたたえるのは弟たる俺ではないと思うんだ。
姉は美人だった。気の強そうなツリ目、艶のある黒髪、自信満々の笑顔、スタイルも良い。どこをとっても、男受けしそうな要素をもっている。
しかし姉はそれを特に有効活用しようとはしなかった。彼氏を作らないばかりか、男の友人を作らなかった。
言い寄ってくる男は多数いただろうに、姉はその全てを断り、中学高校の青春の時間を全て俺いじめにつぎ込んでいた。
俺は姉をなんだかんだで心配していたから、あるときこう聞いたことがある。
「姉ちゃんは、なんで俺ばっかりにかまっているんだ? 姉ちゃんだったらどんな男でもつかまえられるだろ?」
姉は小ばかにしたようにふんと息を吐き、即答した。
「下僕はあんたで足りてるわ、ヒロ。お姉ちゃんの一番好きな玩具は、あんたなのよ」
姉にとって、男とは下僕にすぎず、今の時点では俺という存在がその立場をまっとうしていて、それ以外はいらないらしい。
なるほど、俺は逃れられないのだな。そのとき俺はそう悟った。
しかし、別れというものは案外簡単にやってくるものだった。


224 名無しさん@ピンキー sage 2008/12/17(水) 00:36:59 ID:xihrhaXe
姉は非常に頭が良かった。ゆえに、高校時代俺にばかりかまって、たいして勉強していなかったにも関わらず東大理三に合格してしまったのだ。
しかしここは京都。通うには遠すぎる。姉は一人ぐらしせざるを得ない状況に追い込まれた。
姉は行きたくないとだだをこねたが、学歴至上主義の両親は「他人を蹴落として合格したんだ。お前が行かなければ、おちた人々はもっと惨めになるぞ」ともっともらしい理由をつけて姉を追い出した。
姉は泣いて俺にすがってきた。
「ヒロ、あんたもお姉ちゃんと別れたくないでしょ! あんたからも父さんと母さんに頼んでよ!」
俺は、その時はまだ反抗期のガキだった。だから、あんな酷いことを平気で言えた。
「姉ちゃん。俺は、東京行くべきだと思う」
「え……」
「父さんの言うとおりだ。俺はあんまり頭よくないから、わかる。姉ちゃんに負けて落ちた人――たとえ一人でも存在するなら、その人のために行くべきだよ」
俺は姉より三歳下だから、当時中三の受験時期。俺は姉のような天才ではなく、偏差値は六十程度だった。それで両親に常に姉と比較されつづけて、姉に対する反抗心が溜まっていた。
だから……。
「ヒロ……あんた、なんで……あたしが……お姉ちゃんが、好きじゃないの……?」
わなわなと震えながら、姉は俺に問い掛けた。
「俺は姉ちゃんなんて……好きじゃ、ない……」
たぶん、本心じゃなかった。横暴な姉でも、姉は姉。大切な家族だったし、俺にだってそんなこと分かっていた。
でも、その時の俺は、くだらないコンプレックスから、無神経にもそう言い放っていた。
「ヒロ……なんで……なんでよぉ……」
力なく崩れ落ちる姉。

――その時、俺は姉の涙を初めて見た。



225 ◆VLzMxlQDWY sage 2008/12/17(水) 00:37:35 ID:xihrhaXe
それから、姉はいままでの自信家な性格はどこにいったのやら、急激に大人しくなり、両親の意見に従って東京にいってしまった。
東京に行くまでの数日間、俺と姉は一度も口をきかなかった。
今では、後悔している。あの時、何故親身になって姉の意見を聞いてやらなかったのか。なぜ、素直になれなかったのか。
東京へ行ったほうが姉の人生に良かったであろうことは事実だと思う。しかし、それを奨めるにしろ、もっと良い言い方はなかったのか。
謝りたい。ずっとそう思っていた。
そして、半年が過ぎた。この夏休みに、姉が帰ってくると母が俺に伝えてきて、俺はついに謝るチャンスを得た。
そう、今日、姉が半年ぶりに帰って来る。
今は午後五時。姉が家に到着する七時にはまだ二時間ある。両親は姉を歓迎するための御馳走を作ろうと、材料を買いに行っている。あと一時間は帰ってこないだろう。
ふぅ。俺は息をつき、考える。姉にどう言おう。
姉の姿を想像する。
たぶん、相変わらず美人なのだろう。大学生になったのだから、彼氏もできているかもしれない。そうだ、俺の分が空席だから、下僕として彼氏がいるんだ!
そう、きっとそうだ。
それなら、姉もきっと変わらない明るくて自信家な姉だろう。そう願いたい。俺程度の男の行動など、全く覚えてすらいない。そうあってほしい。
もし俺に対して何らかの嫌悪を持っていたら……。俺は、土下座でもなんでもして謝りたい。
半年前のことなど引き摺っていないだろうという楽天的な考えと同時に、姉が俺を拒絶するかもしれないという恐怖に俺は背中が寒くなる。
――あんがい、姉に依存していたのは俺なのかもしれない。
と、その時、インターホンが鳴った。だれだろう。新聞屋なら丁重にお帰りいただきたい。
玄関にさっさと歩き、扉をあける。そこには……。
「姉……ちゃん……?」
「ヒロ君。久しぶりだね……」
紛れも無い、姉の姿があった。
眼鏡をかけていて一目見た雰囲気は違っているが、間違いない。
俺の姉、澪(みお)。彼女が、帰ってきたのだった。



226 トリップめちゃくちゃですが、同一人物です ◆.DrVLAlxBI sage 2008/12/17(水) 00:39:00 ID:xihrhaXe
「姉ちゃん、随分早いんだね」
食卓の、指定席に座る姉。その感触が懐かしいのか、妙に穏やかな顔をしている。眼鏡の効果もあるのか。以前より眼力が若干緩和されている。威圧感が無い。
俺がそこに姉の好物のホットミルクを出してやると、姉はそれをふーふーしてから二口ほどすすり、一息ついてから答えた。
「うん、ヒロ君に早く会いたくて帰ってきたの」
ここで俺は違和感を覚える。
ヒロ君? 姉は俺を呼び捨てにしていたはずだ。それに、口調もなんだか柔らかい。
俺に後ろめたさを感じているのか……? だとしたら、悲しくなる。
いや、しかし、だとしても姉は勇気を出して、自分を傷つけた俺とも話をしてくれるのだ。その気持ちを無駄にしたくはない。
「ヒロ君……考え事、してるの?」
「い、いや、別に。それより、姉ちゃんが東京に行ってからのこと、聞きたいなぁ」
とにかく、気軽に会話できるようにならねば。姉も、たぶん俺との関係を修復したがっているのだ。
だから、俺も最大限、努力すべきなんだ。
「東大……、楽しいよ。ヒロ君の言うとおり、行って良かったと思う」
「そうなんだ。友達とか、できた?」
「うん、いい人がたくさんいて、みんな親切だったよ。私に、色んな知識を教えてくれて」
そりゃ、東大だ。日本最高の頭脳集団だ。当たり前だろう。やはり、両親と俺の判断は正しかった。
「生活は、苦労してない?」
「うん。バイトもしてるし、お金にも困ること無いよ……でも」
「でも?」
「ヒロ君に会えなくて……淋しかったよ……」
しゅんと眉がつりさがる姉。俺は人生最大かもしれないほどにびっくりした。
あの姉が、こんなにしおらしい女の子だったというのか? 半年の歳月は、人をこれほどまでに変えるというのか?
「な、なら、電話とかメールとかすればよかったんじゃ……?」
「そんなものじゃ、ヒロ君成分は補給できないよ」




227 ◆.DrVLAlxBI sage 2008/12/17(水) 00:39:43 ID:xihrhaXe
ヒロ君成分って、なんなんだ? いや、これはまさか、姉のジョークなのかもしれない。東大式というやつか。
うん、確かに成分がどうのとか、理三っぽいかもしれない。
「でも、これからは『ずっと』一緒だからね……ヒロ君」
そう言って、姉は微笑んだ。一夏の短い間だが、一緒にいられるのがそれほど嬉しいのか。
俺はもちろんただの高校生であり、一人暮らしの経験はない。だから、ホームシックという感覚はわからない。
姉は、ホームシックゆえにこんなに大人しいのだろうか。それとも、東大で性格が変わったのか。
どちらにせよ、姉は家族のぬくもりを求めている。ならば、俺はそれに答えるべきだろう。
もうすぐ父さんと母さんが帰ってくる。そうすれば、豪勢な料理を前にして、以前の姉の自信に溢れた笑顔が見られるかもしれない。
そんな期待をしていると、突如、携帯のバイブレーションが作動した。
メールだ。母さんから。「急用ができて、お父さんと一緒に実家に行かなければならなくなりました。今日は帰れません。しばらく澪と一緒に仲良く過ごしてください」。
はぁ……? 急用って、なんだよ。娘を迎えるより大事なようなんて、あるのか?
家族のぬくもりを求めているであろう姉、澪にとっては、両親の不在は致命的だろう。
これでは、何のために帰ってきたのかが分からないじゃないか。
なら、このような時、俺はなにができるのか。わからない。わからないけど、やるしかない。俺一人でも、姉を労うんだ。
「姉ちゃん、ごめん。父さんと母さん、今日帰ってこないみたいだ。料理は俺が作るけど、良い?」
「うん、ヒロ君のお料理、好きだから。それと……私も、手伝うよ」
またまた驚きだ。姉がこんなに協力的だとは。昔は、両親不在時にも俺に料理を作らせた姉が。
「いや、姉さんは新幹線にずっと乗って疲れてるだろ。大丈夫、俺一人でできるさ」
「そう、ありがとう。ヒロ君」
姉の感謝の言葉を聞けるのも珍しかった。
「じゃあ、私、部屋に荷物を置きに行くからね」
「ああ、ありあわせの材料だけど、腕によりをかけて美味いものを作るよ」
「うん、楽しみにしてるからね」
姉は重そうなカバンを持って二階に上がっていった。
俺はキッチンで料理の製作に取り掛かった。




229 ◆.DrVLAlxBI sage 2008/12/17(水) 00:40:13 ID:xihrhaXe
我ながら見事な出来栄えの料理をさらに盛り付け、食卓に並べる。うん、本当に美味そうだ。いや、実際美味い。味見したら完璧だった。
姉も喜んでくれるだろう。そう思い、二階の姉を呼びに行く。
二階の姉の部屋の扉をこんこんとノック。しかし、応答無し。
「入るよ、姉ちゃん」
ゆっくりと遠慮がちにあけたが、中は薄暗くて殺風景。姉が入った痕跡の無い、引っ越し後からずっと同じ状態の姉の部屋。
どういうことだ。
俺が疑問に思っている間に、隣の部屋――俺の部屋から物音が聞こえた。
不審に思いながら、俺は自分の部屋――ゆえに、ノックしなくて良いだろう――を勢いよく開けた。
「あ、ヒロ君」
姉は俺を見ると、ぱあっと顔を輝かせた。なんかかわいいなぁ。しかし、そんなことはどうでも良いんだ。
「姉ちゃん、何で俺の部屋に荷物置いてるの?」
「ヒロ君の部屋がいいの」
「部屋変われってこと? 夏休みの間くらいなら、交換してもいいけど……」
「違うよ。同じ部屋がいいの」
「……?」
さっぱりわからない。
「ヒロ君と、同じ部屋にいたいの」
眼鏡越しに見える、姉の潤んだ瞳。うっとする。だめだ。涙にはどうも弱い。
それに、俺はもう姉を泣かせたくない。
「……わかった」
それに、母も『仲良くしろ』と言っていたし、仕方が無い。



230 ◆.DrVLAlxBI sage 2008/12/17(水) 00:40:46 ID:xihrhaXe
食事を終えた後、姉に風呂を奨めた。長旅の汗を流して欲しいと思ったが、姉は拒否した。
「いいよ、ヒロ君が先に入って」
まただ。また、姉は昔と違う行動をとる。昔は、「あんたの残り湯なんかにつかりたくないのよ!」とか言って、絶対に一番風呂だった。
姉は、俺に遠慮しているのか?
やはり、あのときのことを引き摺っているのだろうか。ならば、俺は謝ったほうが良いのか?
しかし、こうしてぎこちないがうまくいっている関係を、今俺が乱すことはしたくない。姉の努力をむげにしたくないのだ。
俺は風呂で頭を洗いながら、悩んでいた。姉の言うとおり、一番風呂をいただいたのだ。
がちゃり。
と、その時、突然扉が開く。
「な、なんだ!?」
「ヒロ君。一緒に入ろう」
姉だった。いや、姉以外にはいないのだが、以外というか常識的に考えられない状況。混乱する。
「お、おいおい」
戸惑っている間に、姉は強引に突入していた。既に服を脱いでいたようだ。
さらに、温泉レポーターのように全く身体を隠す様子もなく、堂々とした――しかし、どこかおどおどしている――出で立ちでこちらに近づいてきた。
まずい、姉のすばらしいスタイルに目がいく。というより、剥き出しの……その、おっぱいとか、そういう感じのところとか……。
俺は目を逸らし、訴える。
「姉ちゃん、いくらホームシックだからって、これは!」
「だって……淋しかったし……ヒロ君と一緒にお風呂に入りたくて……。迷惑、かな?」
その声にある、深い悲しみを感じ取って、俺は姉の顔をみた。
眼に涙が浮かんでいる。だから、俺はこれに弱いんだってば。
「ごめん……。わかったよ、一緒に入ろう」
「うん!」
今まで浮かんでいた涙はどこに消えたのやら、姉は顔を輝かせた。
よく見ると、眼鏡をとっていて、昔の顔に戻っている。やはり、俺にはこのほうが自然だ。
相変わらず超絶的な美女だった。客観的に見れば、その美女と風呂に入れるなんて美味しいのではないか。それが姉でなければ。
しかし、その……姉だろうがだれだろうが、とにかく……。隠して、くれないかな?
俺は今、狭い風呂場の中ですし詰めになるのを防ぐため、湯船に移動した。姉は先に身体を流している。当たり前だ、湯船に入る前に簡単に身体を清めるのが、我が家だけでない、風呂のしきたり。



231 ◆.DrVLAlxBI sage 2008/12/17(水) 00:41:16 ID:xihrhaXe
横目にちらちらと見えるその姉の身体と動作は、一回の、つまり、盛った年頃である男子高校生にとっては、あまりに刺激の強いものだった。
全体的に肉感的な体つきをしている姉が手を動かすたびに、大き目の胸がぷるぷると揺れ、その弾力を感じさせる。
むっちりとした脚の付け根にある、茂みも本当にちらりとだが見てしまった。
姉はそんな俺の視線なぞ全く気にしないかのように、急ににっこりと俺に微笑みかけ、言う。
「ヒロ君。背中流したげるね」
何度も言うが、俺は姉に償わなければならない罪を抱いている。ゆえに、断ることができなかった。
「ヒロ君の背中、広くなったね」
姉は俺の背中をこすりながら、ぽつりと漏らした。
そうか。やっと理解した。姉は、俺の成長が見たかったのだ。
姉にあのような暴言を吐いた過去から、俺がどれだけ『大人』になったか。それを見極めたかったのだろう。
もちろんこれは身体的な成長であるから、精神的なものと直接は結びつかない。しかし、俺が大きくなったことは、姉に実感として過去の払拭を伝えることなのだろう。
「ヒロ君、かっこよくなったよ。もう、彼女とか、できたのかな?」
おもむろに姉はそんな言葉を後ろから俺に投げかけた。ああ、なんと言う残酷。
どうせ俺は非モテですよ。その旨を姉に伝える。
「そっか。そうなんだ」
なんだか、その言葉には明るいというか、喜びというか、そういった何かが含まれているような気がして、ちょいと後ろをみやる。
姉は、異様にニコニコしていた。気持ち悪いまでに。昔も、このような笑みを見たことがある。俺をいじめていたとき。
ぞっとして、前を向きなおす。
大人しい姉の殻を脱ぎ捨て、ついに昔の姉に戻ろうとしているのだろうか。いや、それはない、と、信じたい。
ここまできてそんな落ちだったら、俺はもう駄目だ。人間不信に陥ってしまう。
それを見極めるため、俺は姉に質問をし返す。
「そういう姉ちゃんは、彼氏とかできたんじゃないの? 大学生なんだしさ」
――それに、美人だし。
そう付け加えた。
姉は黙り込む。俺は答えてくれないのだろうかとかんぐったが、次の瞬間に姉は口を開いた。
「いないよ」
簡潔な答えだった。その声には何の感情もない。何の感慨も含まれていない。冷徹な否定。
「いらない」
姉はそう付け加えると、いきなり俺の背中に抱きついた。
つまりそれはそういうことで、裸で俺の背中にだきついて……背中に……背中にイチゴが……!!
「お姉ちゃんには、ヒロ君だけいればいいよ」
――昔、そう言ったはずだよね?
俺は完全に硬直して動けない。恐怖か、驚きか、よくわからない何かに身体を縛られていた。
姉は、ふっと笑い、俺の胸をしなやかな指でなぞった。



232 ◆.DrVLAlxBI sage 2008/12/17(水) 00:41:46 ID:xihrhaXe
「もっといろんなところ、洗ってあげるね」
俺の胸と腹を、ボディソープをつけた手で撫で始める。姉ちゃんよ、それはなんだか別の職業の人みたいな手つきですぜっ!?
抵抗できないのをいいことに、やりたい放題だった。
姉は一旦俺から離れると、なんと自分の豊かな胸にボディソープを垂らして再び後ろから俺の背中に抱き付き、さっきの行為を再開した。
今度は、押し付けた胸をにゅるにゅると俺の背中の上で動かす動作も含めてだ。
「どう、気持ちいいよね、ヒロ君」
俺は、全くこの状況に対応できていない。情報処理がまるで追いつかなかった。されるがままになる。
姉は、俺の首筋を舌で舐め始める。それは、洗っているつもりだろうか。
どうするか、皆目検討がつかない。これがどういう状況下もわからないのに、対応する策など思いつくはずが無い。
――否。俺の体の一部は、この謎の事件に既に対応していた。
「あ……。ヒロ君、おっきくなってるよ」
「ひぃ……!」
変な声を出してしまった。その変化を目ざとく見つけた姉が、それを手に握ったのだ。それも、ボディソープでぬるぬるの手で。
そう、大変下品なんですが……その……勃起、してしまいましてね。
そりゃそうだ。ぶっちゃけていうなら、この状況、官能的な場面だろう。
姉のおぱーいと乳首と手を俺の全身に撫で付けられて、なんていうかさ。その、あれだよね。鳴り響け、俺のエロス! って感じ。
いかんいかん、何を馬鹿なことを考えているのだ、俺。冷静になれ。姉は一体、どうしてこのような暴挙に?
まさか、彼氏について聞いたのが地雷だったのか?
こっぴどくフられたとか、ヤリ逃げされたとか、そういう苦い経験でもあったのか?
それとも、非モテなのに聞かれたのが不快だったか?
――うおぉ!
急に俺を襲った刺激に、俺の身体は一気にびくんと跳ねた。
「姉ちゃん!?」
「ヒロ君の、おっきくしちゃったの、お姉ちゃんなんだよね。なら、責任、とらなきゃ」
俺の膨張したマグナムを小さな手で掴み、しゅこしゅこと上下する。
だ、だめだだめだ! お兄さん――いや弟だけど――許しませんよ!
「だめだって……! やばいから!」
「なにが駄目なの……?」
姉が可愛らしく首をかしげる。いや、そう聞かれると、なんか説明は難しいけどな。
でも、感覚的に分かるだろうに。



233 ◆.DrVLAlxBI sage 2008/12/17(水) 00:42:17 ID:xihrhaXe
姉は、依然俺のブツを扱きつづけている。まずいな。このままでは情けないことに、姉の前でマグナム弾を発射してしまうことになる。それは避けなければ。
「そっか!」
姉はぴんと閃いたように言って、手をとめた。
やった。やっとわかってくれたか……。
「やっぱり、手じゃだめだよね。おっぱいでしてあげるよ!」
――待て。その思考は斜め上すぎるだろう。
俺はとっさに逃走を試みたが、先に動いていたのは姉だった。
俺の両肩を掴んで、風呂場の床に組み伏せる。信じ難い筋力だった。とても東大生とは思えない。
もやしっ子ばかりというのは都市伝説だったか!
姉はそのまま、俺のマグナムをその巨大な果実のようなものではさみ上げ、ぬるぬると動かし始める。
「ひ、ひぃ……」
俺は驚きと恐怖のあまり、情けない抗議の声をあげることしかできない。
しかも、その声すら、姉にとっては『興奮を示している証』と解釈されたらしく、気を良くしたのかにっこりと笑った姉は、またとんでもない行動に出た。
挟んだマグナムを、その舌でぺろりと舐め上げたのだ。
「……!?」
声にならない声で叫ぶ。今までに自慰行為で感じたことが無いような、言葉にならない感触だった。
「ふふっ、気持ち良いんだね。ヒロ君のおちんちん、おっきくて良いね。おっぱいで挟んでも舌で触れられるくらい長いよ……ほら」
と言って、姉はさらにちろちろと舌先で愛撫する。
ひ、ひえぇ。どうすりゃいいんだ。俺は昔と実質変わらないままだ。姉に全く逆らえず、玩具にされている。
思えば、似たような状況が昔あったかもしれない。
「お姉ちゃん、昔、ヒロ君に、目の前でオナニーしろって命令したことあったよね?」
それだ。
「あ、ああ」
「ごめんね、ヒロ君。昔のお姉ちゃんは悪いお姉ちゃんだったね」
そう、昔の姉は、俺をわざわざ部屋に呼びつけて、目の前でオナニーさせたことがあった。
肉親とは言え、美人の姉に見られていたのだから、興奮もひとしきりであり、すぐに果ててしまった。
問題だったのは、その時精液が、近づいて凝視していた姉の顔にかかってしまったこと。姉は激怒し、俺を部屋から追い出した。
「あの時ね、本当はね、お姉ちゃんがオナニーしたくて、その……おかずが欲しくて、ヒロ君の精液が欲しかったの……。だから、見てるとき、凄く濡れてて。ヒロ君の精子が顔にかかったとき、もうひとりえっちしたくてたまらなくて……追い出して、ごめんね」
なんというか、もう、このころには驚くのには慣れていて、姉の言葉を素直に聞くことができた。
「ちゃんとあの後、ヒロ君の精子全部口に入れて味わったから、許してね……。それに、これからは、オナニーしろなんていわないからね。お姉ちゃんが、直接飲むから……」
――だから、お姉ちゃんを嫌わないで。



234 ◆.DrVLAlxBI sage 2008/12/17(水) 00:42:47 ID:xihrhaXe
姉はそう言って、俺の巨砲(というにはおこがましいか)を唇で器用に吸い上げる。
俺はとてつもない快感を感じながらも、姉の言葉を冷静にかみしめていた。
姉は、つまり、つぐないのためにこういった変化を起こした。大人しくなったのは、昔の反動というか、反省なのだ。それも、主に俺にたいする。
姉は俺に嫌われたと思い込んでいて、その原因が、昔のあの横暴な女王様的態度にあったとして、それを自分から排除した。
その証しをいまここで、実に極端な形で実践している。おかずが欲しいとき、命令して精子を出させるのではなく、自分のご奉仕で出させるという方針に変えたという、その事実を。
それが昔と何も変わらないということに気付かず。
「う、うあぁ!」
情けない声をあげて、果ててしまう。
勢いよく――今までこんなに強い射精は見たことが無い――精液が飛び出し、姉の顔を汚した。
「はぁ……はぁ……いっぱい、出たね。偉いよ、ヒロ君」
興奮気味で、息が荒い姉。指で、顔にかかった精液をすくいとり、口に入れる。
「おいしい……おいしいよぉ、ヒロ君……!」
さらに興奮が加速されていくようで、姉は俺の性器周辺に何度も口付けを落とす。
「ヒロ君、もう、お姉ちゃん我慢できない。ちょうだい。ヒロ君の、お姉ちゃんに……」
姉は狭い風呂の床に身体を投げ出すと、足を大きく広げて俺に見せつけるように指で『そこ』を押し広げた。
「――!?」
俺は姉による拘束が解けた瞬間に、反射的に走り出していた。
「お、俺、のぼせたから、あとはごゆっくり!」
「ひ、ヒロ君!」
聞く耳持たぬ!
俺はバスタオルでさっさと身体を拭くと、まるで鎧でも着るかのようにありがたがりながら服を着て、自分の部屋に逃げていた。
さっさとベッドに潜り込み、もはや泣き寝入りだ。
姉は、本質的には昔と全く同じだった。結局、自分のエゴを俺に押し付けるだけなのだ。
またしばらくはこの生活なのかと思うと、震えが止まらない。
「ヒロ君……?」
少し後に、姉は俺の部屋に入ってきた。あたりまえだ。姉の荷物は既にここにはこばれていて、俺達は共同で部屋を使うと、もう姉に決められたのだ。
「ごめんね」
お。俺は姉の再度の反省に、関心をよせる。やはり、昔とは違う。反省ができるらしい。


235 ◆.DrVLAlxBI sage 2008/12/17(水) 00:43:19 ID:xihrhaXe
「ヒロ君と会えなくて、淋しくて。あんなことしちゃった。ごめんね。ヒロ君のこと、もっとよく考えなきゃ、お姉ちゃん失格だね……」
おお、あの姉が! あの、自分勝手で女王様気質だった姉が、俺に譲歩している。
東大に入って、理知的になったんだ。そうだ、間違いない。
「今度は、何もしないよ。だから、一緒に寝よう、ね?」
ここまで言われては、断るわけには行かない。俺は「しゃーないな。怒ってないよ」と、ベッドの奥のほうに詰めた。
姉は、ぱぁっと顔を明るくして、俺の隣に潜り込んだ。
「昔は、何回かこうやって一緒に寝たね」
そうだったな。しかし、それも姉に命令されてのことだ。
「一緒にこの映画を見なさい、じゃなきゃ死刑!」と、ホラー映画に誘ったと思えば、その夜は「あんた、怖くて眠れないでしょ? あたしが一緒に寝てあげるわ。べ、別にあたしは怖くないわ! お姉ちゃんだもの!」とか言ったきがするな。
思えば、姉の俺いじめの中では可愛いものだった。
さて、さっき出したから、疲労感が溜まっている。俺はすぐに眠りに落ちた。
「おやすみ、ヒロ君」
俺は、そのことばに返すこともなく、意識を失った。



236 ◆.DrVLAlxBI sage 2008/12/17(水) 00:43:50 ID:xihrhaXe
結局、姉は姉だった。朝のことだ。
「なにしてんの、姉ちゃん?」
俺は俺の股間辺りでもぞもぞとうごめく物体に声をかけた。
物体X=姉は、顔をこちらに向け、エンジェルスマイルで答える。
「朝だちを狙ってモーニングスペルマとでも洒落込もうかと」
何がモーニングスペルマだ! ただの痴女じゃないか!
姉は、東大に言って、サディストでなくなった代わりに、変態になったのだ。変態に変態したのだ。
もうやだ! 俺はそう叫び、一階に駆け下りていく。
モーニングスペルマならぬ、モーニングコーヒーを飲みつつ、朝のニュース番組をつける。
大事故のニュースだ。何人もの被害者が出たと報じられている。現場は結構近い。俺はそれをぼーっと見つめていた。
「父さんと、母さん、大丈夫かな」
なんとなく、なぜかは分からないが不安になって、携帯を取り出し、電話をかけてみる。
すると、不思議なことがおこった。着信音がする。この家からだ。
ばかな。昨日は母からメールが来たのだ。そんなことがあるわけがない。
着信音がするほうを目指して歩くと、いつの間にか俺は二階に上がっていた。
音の方角を見ると、俺の部屋の扉がある。
なぜ?
さっぱり意味がわからない。
その時、さらに信じられないことが起こる。
「もしもし」
電話にでたのだ。しかしそれは母ではない。
「姉ちゃん……?」
――姉だった。
「ヒロ君、お部屋に、入ってきてよ」
「……」
ごくり。俺は唾を飲み込み、意を決して扉を開く。
中には、俺のベッドに腰掛ける姉がいた。なぜか服を着ていない。投げ出された肢体があでやかで、俺は一瞬目を奪われた。
「母さんの携帯を、何で姉ちゃんが」
俺は携帯に向かって話し掛けた。眼は、姉の目を見る。姉も同様だった。
携帯に話し掛ける。



237 ◆.DrVLAlxBI sage 2008/12/17(水) 00:44:20 ID:xihrhaXe
「そうだね……。昨日、早く帰ってきた、その前にお母さんに会ったんだよ」
「先に?」
「そう。お母さんと、お父さんを、『送って』あげないといけないから」
「送る? どこに?」
「もう、お姉ちゃんとヒロ君の仲を邪魔できない場所。二度と帰ってこれない場所」
――それってつまり。
「そう。殺しちゃった」
あ……ああ……。
俺はその言葉をすんなり信じていた。姉の目は、本気だった。
「朝のニュース見た? 結構盛大にやったんだよ。いろんな人を巻き込んで、たぶん二人も喜んでるよ」
――最近は、死ぬにしても道連れが欲しい人が多いみたいだから。
くすくすと笑いながら、姉は饒舌を続ける。
「昨日の、『お姉ちゃんと仲良くしなさい』っていうメールも、お姉ちゃんの自作自演。でも、ヒロ君は律儀に守ってくれたね。偉いよ」
姉は、母の携帯を奪い、眠らせるか何かして、車にのせ、大事故をわざと引き起こし、事故死に見せかける。
それらの行動を、平気でして、いま、こうして笑っている。尋常な人間のすることじゃない。
だが。――お前は、人殺しだ――この言葉が、俺の喉につかえて、出てこなかった。
「ヒロ君は、お姉ちゃんのこと、好き?」
「……俺は」
「正直に言っていいよ」
姉は已然にこにこと語りかけてくる。まるで、「好きだ」といわれることに疑いが無いように。
「……俺は、好きだよ……」
……。そうだ。俺は、姉に結局、逆らうことができない。
両親が死んだ今、残された俺達が仲たがいしては、何もできない。それが両親を殺した張本人の、この狂人であろうと。
そして、もうひとつの理由。
それは、ほかでもない、俺が姉を変えてしまったという事実に気付いたからだ。
俺の心無い一言が、姉の心を壊し、ここまで追い込んでしまった。
「ヒロ君……嬉しいよ。お姉ちゃんが好きなんだね。なら、ここに来て」
裸の姉が、ベッドの上でなまめかしく手招きをする。
「お父さんとお母さんはね、私がヒロ君のこと、とってもとっても愛してるっていうことに気付いて、嫉妬しちゃったんだ。だから、東京に行かせて、仲を引き裂こうとしたの」
俺はふらふらと、姉に近づいてゆく。もう、なにもかもがどうでもよかった。
「ヒロ君も、こんなに私のことが好きなのに。あ、そうか。お父さんとお母さんに、無理矢理『好きじゃない』って言わされたんだね。だって、ヒロ君がお姉ちゃんを嫌いだなんて思うはず無いもん」
俺がベッドの上に力なく倒れると、姉はズボンをさっと脱がし、跨った。
「あはは……。これで、やっと……。ヒロ君と、ヒロ君と……」
何故かは分からない。俺はこの状況下で、とんでもないほどに勃起していた。
この絶望感が。この無力感が。この支配が。俺を締め付けているからか?
俺は、姉に縛られることを望んでいるのか……?
姉は俺のモノをつかみ、その上に勢い欲腰をおろした。
「い……いたいよぅ。ヒロ君のに、膜やぶられちゃった……。責任、とってくれるよね?」
もう、何もかもがどうでもよかった。
「ヒロ君……! ヒロ君……!」
俺は、嬌声を上げながら腰を振る姉を無気力な眼で見つめることしかできなかった。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2008年12月24日 17:26
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。