マユの日記

78 マユの日記 sage 2009/08/31(月) 03:33:21 ID:Jj14F5TZ

 おにいちゃんが、まるでぶたさんみたいなこえですすりないてます。
 でも、ゆるしません。
 ゆるしてあげません。
 ここでやめたら、マユのおにいちゃんは、まともにしつけもされていない、だめにんげんになっちゃいます。
 せけんから、しろいめでみられて、どこにもしゅうしょくできない「にーと」とかいう、ざんねんないきものになってしまいます。
 だから、こころをおににして、マユはつづきをします。
 みぎてににぎったなわとびをふりあげ、おもいっきり、おにいちゃんにたたきつけます。

「~~~~~~~~~~~~~~ッッッッ!!!」

 おにいちゃんが、まるでおさかなみたいに、びくんびくんとのたうちます。
 おにいちゃんのはだかに、くっきりと、あかいせんがあとになってのこります。
 すっごくいたそう。
 はだかのうえから、なわとびなんかでぶたれたら、マユだったら、しんじゃうかもしれません。
 でも、ぎゃくに、いたくなかったら、おしおきにもしつけにもならないって、てれびでいってました。あいじょうがあれば、きびしくてもへいきだって。いたくてもわかってくれるって。そうもてれびでいってました。
 だから、マユはてかげんしてあげません。
 なんどもなんども、なわとびをおにいちゃんにたたきつけます。

「~~~~~~~~~~~ッッッ!! ~~~~~~~~~~~~~~~ッッッ!!!」

 おにいちゃんは、そのままごろんごろんところがって、マユからにげようとしますが、りょうてとりょうあしを、てじょうでしばられているので、にげることもできません。
 でも、マユはやめません。
 きっと、おにいちゃんも、いつかはマユにかんしゃしてくれるひがくる。
 マユはおにいちゃんをしんじているからです。



79 マユの日記 sage 2009/08/31(月) 03:34:29 ID:Jj14F5TZ

「あ――」

 おにいちゃんのくちもとをしばっているタオルから、ちがにじんでます。
 つよくかみしめすぎて、はがおれたのかもしれません。
(ちょっと、やりすぎちゃったかな……?)
 きがつけば、マユはおにいちゃんのからだを、なんどたたいたのか、わからなくなっていました。
 とちゅうから、もがきくるしむおにいちゃんをたたくのが、なんかたのしくなってきちゃって、かいすうをかぞえるのをわすれていたみたいです。
(ま、いいか。これも、おにいちゃんのためなんだから)
 マユは、そのままたたくのをやめると、おでこのあせをぬぐいます。
 たいいくのじかんのあとみたいに、からだがとてもとてもあつくなっているのをかんじます。あと、おまたが、じゅんってなってて、おへそのしたから、なにかがうずくようなかんかくがあります。
――おにいちゃんにおしおきをしたあとは、さいきんはいつもこんなかんじなのです。
 マユは、おにいちゃんのじょうはんしんをだきかかえて、ひざまくらのたいせいにしてあげると、おくちをしばってあったタオルをはずしてあげました。

「マユッ! マユッッ!! マユゥッッ!!!」

 おにいちゃんがなきさけびながら、マユのおひざに、おかおをこすりつけてきます。
 とってもこわくて、とってもいたかったんでしょう。ぜんしんに、とりはだがたっていました。

(うふふ……かわいいかわいい、マユのおにいちゃん……)

 マユは、あまえんぼうのおにいちゃんのあたまを、やさしくなでてあげました。
 さっきまでとは、ちがうかんじのきもちよさが、あります。
 そうやって、いっぷんくらい、マユはおにいちゃんにあまえさせてあげました。
 でも、やっぱり、いうべきことはいわねばなりません。ちゃんとしかってあげないと、おにいちゃんはだめにんげんになってしまうからです。

「ねえ、おにいちゃん」

 おにいちゃんが、とたんに、びくってなりました。
 そんなにこわがらなくてもいいのに。
 おにいちゃんが、きちんとわかってくれたら、マユもこれいじょう、おこったりしないのに。

「おにいちゃんは、なんでマユにおしおきされたか、わかってる?」

 おにいちゃんは、おそるおそるマユのおひざから、ごろんところがってからだをはなすと、――でも、そのめはマユじゃなくて、きまずそうにゆかのほうをみていましたけど――まだ、ちがにじんでいるくちびるをうごかして、いいました。


「俺が……マユのうんこを……食べなかったから、ですか……?」





80 マユの日記 sage 2009/08/31(月) 03:35:34 ID:Jj14F5TZ

 そのしゅんかん、マユは、またまたおにいちゃんを、なわとびでぶっていました。
「ちがうでしょっ! これは『ごちそう』でしょっ! マユがおにいちゃんのためにだしてあげた『ごちそう』でしょっ!! なんでそれを、うんこなんてきたないなまえでよぶのっっ!! おにいちゃんのばかぁっっ!!」
「ごっ、ごめんなさいっ!! ごめんなさいっ!! 『ごちそう』ですっ!! これはマユが俺のために用意してくれた『ごちそう』ですぅっ!!」
 ひめいみたいに、おにいちゃんがさけびます。
 でも、それはともかく、おにいちゃんが『ごちそう』をたべなかったのがおしおきのげんいんなのはただしかったので、いちおう、ぶつのをやめてあげました。

「で――?」
「は、はい……。マユが俺のために折角用意してくれたご馳走を無下にして、マユの優しい心を傷付けてしまいました。……ごめんなさい。本当に、本当にごめんなさい……」

 おにいちゃんがなきながら、あやまってくれています。
 マユは、そんなおにいちゃんをみていると、また、むねのあたりがきゅんってなって、おまたがじゅんってなるんですけど、とりあえずがまんします。
「じゃあ、たべるの? マユの『ごちそう』」
「はっ、はい……食べさせて頂きます……」

 おにいちゃんは、そのままいもむしみたいに、じゅうたんのうえをはいずって、へやのすみにいくと、おさらにもられた、やまもりのマユのうん――いいえ、『ごちそう』にかおをよせて、……そこからまた、おびえたようにマユをみました。
(まだ、ためらうんだ……!)
 マユは、いつまでたってもグズなおにいちゃんに、ちょっとむっとして、なわとびでじゅうたんをたたきました。

「ッッ……!!」

 びくっとしたおにいちゃんは、そのままふるえながらおさらにむきなおると、……やがて、がつがつとマユの『ごちそう』をたべはじめました。




81 マユの日記 sage 2009/08/31(月) 03:37:48 ID:Jj14F5TZ



 おにいちゃんはいま、マユのまえでねむっています。
(よかった。おにいちゃんがやっとたべてくれて……)

 ちらりとマユがめをうごかすと、そこになわとびのあとでまっかになった、おにいちゃんのはだかがあります。
 おにいちゃんはもう、マユの『ペット』なので、ふくをきることはできません。だから、おにいちゃんのからだは、とてもがりがりにやせこけて、むねのほねがうきでているのが、よくみえます。
 まるで、しゃかいのきょうかしょでよんだ、アフリカのなんみんのひとみたいです。
 でも、それも、おにいちゃんがいけないのです。
 おにいちゃんが、マユの『ごちそう』をたべるのをいやがったので、たべるというまでごはんをぬいてあげたのです。――もう、おにいちゃんは、にしゅうかんくらいなにもたべていません。
 さすがに、マユのおしっこ――もとい、『みず』だけはいっしゅうかんで、のんでくれるようになりましたが。

 でも、いくらおにいちゃんのすききらいがはげしいといっても、そろそろたべないと、おにいちゃんがしんでしまうとおもったので、きょうはマユも、じつりょくこうしにでたのです。
 だしたてのほかほかの『ごちそう』を、おにいちゃんのめのまえにおいて、なわとびでたたいて、おにいちゃんのはんせいをうながしたのです。
――で、しつけのかいあって、おにいちゃんもわかってくれました。
 でも、まだまだ、おにいちゃんは『ごちそう』がにがてみたいなので、あしたからも、なわとびのでばんが、とうぶんつづきそうです。


 でも、なぜ、おにいちゃんはマユの『ごちそう』をたべてくれなかったのでしょうか。
 あいするひとに、じぶんのからだでつくった『ごちそう』をたべさせたいとおもうのは、あたりまえだとおもうのですが。なぜ、おにいちゃんはマユの『おんなごころ』をわかってくれなかったのでしょうか。
 そうかんがえると、マユはなんだかとてもせつなくなります。

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最終更新:2009年09月05日 22:26
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