とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part7

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だれでも歓迎! 編集


嵐のように中学1年コンビが去った後。
「さてと。美琴どうする?4時って半端だな。そっちも門限あるしなー」
「んー、門限はなんとでもなるんだけどね……」
美琴はちょっとうつむきながら、
「えと、当麻の家いくのはダメ?ご飯も作っちゃう」
「え! い、いやいいんだけど、インデックスいるとおもう、ぞ……」
「分かってるわよー。ま、いつまでも避けるわけにいかないし」
最悪修羅場か……と思いつつ、
「おっし。じゃあスーパー寄ってくか」
「うん。何つくろっかなー」

スーパーに着くと、美琴は
「いま料理推測されるとツマンナイから、ひとりでみてくる~」と先に駆けていった。
上条は、前に五和が来た時の事を思い出し、高級ネコ缶やお菓子、ペットボトルを押さえておいた。
思ったより早く美琴は戻ってきて、上条の持つナイロン袋を覗き込む。
「ん?ネコ缶?」
「ああ、お前ネコにエサあげたいかなーと思ってな」
「ネコ!?ネコいるの!?」
「スフィンクスって名前の三毛猫だ。あんまり人見知りしねーはずだ」
「やったー♪電磁波で抱けないけど、エサやりなら!」
「ん?俺が美琴の……そうだな、背中辺りに右手あてておけば電磁波でねえんじゃねー?抱けるだろ」
「あー……じゅあ抱けるんだ!やったー♪」
美琴は足取りも軽く、上条の家に向かう。

「そうそう、ちょっと携帯貸して。メール設定みたい」
「ん?ああ」
携帯を手渡し、荷物を代わりに持つ。
「あたしのメールがスパムになったりしてるの、突き止めてやる……」
美琴が携帯とにらめっこしている。
「これかな……『mikoを含むアドレス+内容に…をスパムへ』ってあるわね。これがクサイ」
「ああ、何だか『巫女巫女クラブ』だっけか、そこからメールがしつこくて。……俺は行ってないからな?」
「……ほほう。じゃあ『mikomikoを含む…』に変更してっと。これでテストしてみよう」
美琴は携帯を返し、自分の携帯で手早く……一瞬ためらったのち送信した。

すぐに上条の携帯が反応する。成功したようだ。
「一応、返信してね。念のため」
内容を見た上条は、一瞬詰まり、
「上条さんは、中学生になった気分ですよ」と言いながら返信する。
「うっさいわね!」美琴の携帯でメール着信音が鳴る。

お互い内容は一文字、キスマーク絵文字だった。

◆         ◇         ◆         ◇         ◆

「ただいま~」
「あー、おかえりなさい、とう……ま……?」
「あははー……こんちわー」
美琴が小さく手を振りながら、インデックスに挨拶する。
「とうま。これはどういうこと?なんで短髪がいるの?」
「友達を呼んで、何かおかしいか?」
「む~~~~~~!」

(まず、敵対モードか。まあしょうがないわね)
美琴は予想通りとはいえ、相手の縄張りに入ったが故の拒絶を感じ取る。
(この子とは仲良くしなくちゃ、当麻が挟まれて困らせてしまう)
今日は怒らず、ニコニコとかわしながら対処、と心に誓う。
あれ?
奥にまだ人がいる。

巫女服の姫神秋沙が座っていた。

「よお姫神、来てたのか」
上条は白いシャツをハンガーにかけ、部屋着を羽織った。
「うん。正月旅行の写真できたから。持ってきた」
テーブルの上には、写真が散らばっていた。
「あっはっは。いい写真が取れてるなー。……先生が一番幼く見えるな……」
「あの。そちらは。ひょっとして前にそこでネコのノミ取ってくれた人?」
「え? ……あー!」
姫神秋沙は御坂妹と会っていた!
(これはあとで美琴に怒られる……な。これは、誤魔化せん……)
「いや、あいつはコイツの妹。えと、紹介するよ」
「御坂美琴です。常盤台中2年です。よろしく」 
美琴は上条をにらみつつ挨拶する。
「姫神秋沙です。上条くんのクラスメイト。ひょっとして超電磁砲の御坂さん?」
「はい、ご存知なんですか」
姫神は頷いて、
「相変わらず。君は。様々な人脈を構築していくね」
「返す言葉もございません」

(妹が家知ってるってどういうことよ!それに同級生の美人巫女って!)
美琴は不機嫌モードに切り替わっていた。
(留守中に上がるほど仲良くて、同級生?『恋人』の条件満たしてるじゃないの……)
「え、えと姫神さん。貴方もコイツに命を助けられたり、とか?なんて……」
「はい。一度……いえ二度かな。……御坂さんもですか」
「はあ……」
(ほんっとに、こいつは~~!)

とりあえず、最近はおとなしくしているとはいえ、ブチ切れ電撃は避けねばと、
上条をスフィンクスを腕に抱え、蓋を開けたネコ缶を持って美琴に差し出す。
「うひゃは♪」
変な声をあげた美琴はしゃがみこみ、餌やりモードに切り替わり、
スフィンクスと遊び始めた。
上条は美琴の背に右手を当てながら(当然緊張しつつ)、
「今日は美琴がメシ作ってくれるって言ってるんだが、姫神も食ってくか?」
「いいのかな。私も後で買い物に出て、作ろうかなと思ってたけど」
「インデックスが大食いなのは知ってるから、材料多めのはず。大丈夫だよ。だよな」
美琴は「うんうん」と頷いてるが、スフィンクスを撫で回してご満悦だ。

それはそうと、なんでインデックスはおとなしいんだ?
と上条はベッドに座り込んでるインデックスを見ると……写真を見てる?
顔を上げてジロリと睨まれる。
「……とうま」
口調がとってもコワイ。
「ハ、ハイ」

「なんで短髪の背中に馴れ馴れしく手をおいてるの?」
「こ、これはやむを得ない事情でして。俺のイマジンブレーカーが必要なんです、ハイ」
「なんで短髪を美琴って呼んでるの。初めて聞いたよ」
「え、これはその。ケンカ停戦条約に基づきまして、その、名字は堅苦しいので名前で呼び合おう、と」
「この写真はどういうことなの?」
写真?
インデックスから受け取った姫神が中継して上条に渡そうとする。姫神が目を光らせる。「ほう」

1時間前に「鼻の下のびてる」と評された、美琴との2ショット写真だった。

「てめえインデックス。おれのシャツさぐったな!」
「ポケットから見えてたから、抜き取って見ただけだよ!それより何なのその写真!1月1日ってなってるし!」
うかつに回収してしまったツケがここで来た。
美琴は聞いているのかいないのか、スフィンクスを抱いて違う世界へ旅立っている。

「あーたーしーを追い出して、短髪とデートってわけ?……ゆるさない」
「ちがう!落ち着け!偶然だ!」
「なにが誤解?名前で呼び合って体ふれあっても問題なくて。明らかに恋人だよ!」
上条は頭を抱えた。最悪のストーリーになりつつある。

「心配しなくていいわよ、インデックス」
上条が手を離したため、スフィンクスに落ち着きがなくなる。
美琴はスフィンクスを優しく置き、インデックスを見つめる。
「私はコイツにフラれちゃったから。だから恋人じゃないわよ」

「え?」
インデックスは目を見張る。姫神もさすがに驚いているようだ。
「写真では仲いいでしょ?でも次の日フラれちゃった」
「そ、そんな……」
基本的に心優しいインデックスは完全に動揺している。
「ま、図太い私は、あきらめきれず、引き続き友達として近づかせてもらってるけど」
「ああ、帰省が一緒になったのは偶然。実家が近かったから初詣に誘ったのは私。母親もいたし2人きりでもないわよ」
「名前で呼ぶくらいは許してよね?アンタだって呼んでるんだし」

「美琴!……もういい。ありがとう」
「……ん」
美琴は廊下の食材を取り、台所に入った。
上条はうつむいているインデックスに近づき、頭をくしゃっとなでる。
「とうま……」
「インデックスは何も気にすることはねーよ」
「ホントに……振ったの?」
「……んー、まあ形の上ではそうなるか、な。でも俺も美琴も普通にしてるだろ?問題ないって」
「う……」

インデックスは台所に駆け込むと、美琴にしがみつく。
「ごめんなさい……」
「なんであやまんのよ」
「思い出したくもないことを、私が変なこといったせいで、あの」
「大丈夫よ。当麻の抱えてる理由も聞いて理解したから。……でも理由だけはシークレット、ね♪」
美琴は手を差し出し、インデックスも握り返す。
「んじゃちょっと待っててね。美琴さんのデビュー戦お見せするから!」
「うん!」

上条は唖然としていた。
話を無難にまとめたあげく、インデックスが借りを作ったような気分にさせてる?
俺が噛み付かれて終わるパターンだと思ってたのに。
しかし振った振られたって言葉にすると……
あの電車のシチュエーションからするとニュアンス絶対違うよなあ、と首を傾げる。

「ねえインデックス~」台所から声をかける美琴。
「なーに?」
「あたしのことは美琴って呼んでもらえない?短髪じゃ髪の毛伸ばせないじゃないw」
「うん、わかったミコト~」
着々とインデックスは美琴に攻略されていた。

「彼女は。料理に慣れてるね」
「そうなのか」
「うん。ハンバーグとシチュー作ってるみたいだけど、動線が滑らか」
なんだか美琴が完璧超人に見えてきた上条である。
しかし何のことはない、その完璧超人を上条は打ち負かしてきたのだ。
美琴がムキになるのも当然なのである、が……。


「できたぞ~♪」
出てきたのはハンバーグシチュー……いわゆる煮込みハンバーグだった。
いわずもがな、インデックスには大盛りである。
「「「「いっただきまーす」」」」
「うん、うまい!」
「おいしい」
「……」←インデックス食事中
「よかった~。あと3人分ぐらいあるから。ご飯も炊いてあるから、欲しい人言ってね」
「美琴はどこで修行したんだ?やっぱり常盤台で実習とか?」
「そうね。でも結構寮で作ったりしてるのよ。門限のせいで時間余ったりすること多くて」
ピンポーン!ドアホンが鳴る。

ドアを開けると土御門舞夏が立っていた。
「この上条家に似つかわしくないニオイはなんだ?というかアタシのニオイだ」
「犬かお前は……って勝手に入るな!」
「あ!みさかー!?」
「土御門?なんでここに?」
なるほどなるほど、と舞夏はニヤリと笑う。
「得意の煮込みハンバーグでオトコ攻略か。みさかもやるねー」
「な、なに言ってんのよ!」
しかし真っ赤になった美琴の声に元気がない。言えば言うほど舞夏に倍の反撃くらうからだ。
「そう、みさかの料理の先生はワタシなのだ!当然、どこに出しても恥ずかしくない腕にしてある!」
「……うぅ~」
「ま、別に元ネタが分かっただけで、美琴が上手いってことはかわらないし、いいんじゃねえ?」
「当麻と土御門が知り合いだなんて……やりにくくなったじゃない……」
「……美琴と当麻、ね。ネタ提供ありがとう~」
「ちょっとまって土御門!」
美琴のシナリオは土御門舞夏に全てひっくり返された……。

◆         ◇         ◆         ◇         ◆

「うーん、目的は達成したけどなんだかねえ……」
美琴はボヤきながら帰路についている。寮まで、と上条も一緒だ。
「しかしインデックスを手懐けてしまうなんて、お前怖すぎるぞ(汗)」
「んまあ、成せば成るっていうのかしらねー」
美琴は上条の腕に手を回す。
「おいおい、公園に入ったら明るいから見られるぞ」
「まあ今日組むチャンスなかったし。ちょっといいじゃない」
「なにが恋人じゃない、だ。インデックスに噛まれるぞ」
「えへへ~」
公園に入り、よく美琴が蹴っ飛ばす自販機のあたりに差し掛かる。


「かみじょう とうま」

白井黒子の声だ。
美琴は組んでいた腕を振りほどく。
最近の黒子は様子がおかしく、今日の初春たちとの誘いにも来ず、
夕方の門限対応の電話でも、なにやら素っ気なかった。

「勝負をお願いしますわ」

「黒子アンタ!」
「いえ、お姉さまがどうこうという話ではございません。単純な勝負ですの」
上条は無言で美琴を制し、一歩前に出る。
「美琴、下がってろ」
「当麻、でも!」
「何かケリつけたがってるんだ。俺は救いを求めてる奴は、救う」

考えろ……白井はテレポーター、俺を倒すのが目的なら不意打ちで終わりだ。
致命傷を与えるような事は……ないと信じたい。あいつの正義を信じる。
逆に言えば、飛び道具はない。至近距離の本体テレポートもない。
俺がうかつな動きをすれば、当たり所では即死だからだ。
つまり、テレポート奇襲から俺を転ばせての関節技……? なら……

上条は拳を握った前傾体勢に入る。
「来い!」
白井黒子が消える。
その瞬間、上条は左斜め後ろに振り向き、下方に意識した構えを取る。
……そこにタックルの形で突っ込んできた黒子を受け止める。
勢いもあって後ろには倒れたが、体の内側に黒子をしっかりとホールドし、動け無くした。
「……なぜわかりましたの?」くぐもった声で黒子は問う。
「まあカンだ。お前の優しさを考えると、消去法であそこになる」
「……なんで」
白井黒子は泣き始めた。

「どうして、お姉様も、私のプライドも、心も、全部もっていきますの!」
「どうして!どうして!」
黒子の嗚咽が続く。美琴も心配そうに駆けつける。
「……とりあえず今は、全部ぶつけてくれ。俺ができることは、それだけらしい」
上条の胸のあたりがぐっしょりと濡れていくのが分かる。

……おそらくは美琴の心が完全に上条へ移り、また自分の拠り所であるテレポートを破られたこと、
そして上条への微かに秘めたる想いが、綯い交ぜになって混乱をきたしているのであろう。
美琴も推測する事しか出来ないが、黒子を抱きしめてやりたい思いにあふれる。


泣き疲れと、張り詰めていた精神が切れたためか、白井黒子は眠ってしまっていた。
寮前までは上条が背負っていたが、さすがにここからは美琴に任せるしか無い。
「大丈夫か?」
「うん、この子軽いし。……ごめんね、迷惑かけたわね」
「いや、俺の問題だろうしな……」
「ううん。この数日で色んな事が解決できたと思う。非常にスッキリしてる。でも」
「でも?」
「こうやって新たに悩んでる子が出てくる。救いを求めてる奴を、救う。当麻だけの専売特許じゃないわよ♪」
「ああ、……美琴は強いな」
「うふふ。今日は楽しかった。じゃあね!」
美琴はよいしょっと黒子を背負い、寮に走っていった。


御坂美琴。常盤台中学2年、7人しかいないLV5のひとり。
パーソナルリアリティに「上条への想い」を融合できなかった情緒不安定な時期は過ぎ、
新たなパーソナルリアリティを持って、更なる成長を見せようとしていた。



fin.


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