とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part01

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My anxiety


 とある冬の日。
 この季節になると、太陽の昇っている時間は短く、まだ17時をまわった頃だというのに辺りは既に暗くなり始めている。
 だが、それも一二月の頃を考えれば、二月ももう終わろうとしているこの時期はまだ日は長い。
 それでも言うまでもなく、夕暮れ時はまだまだ春が近いということを感じさせないほどの冷気に包まれている。
 そんな時に、私と"彼"はとても馴染み深い公園のベンチに肩を並べて座っていた。
 並べて、とは言ってもちょうどぴったり肩をくっけているわけではなく、拳一個か二個分ほどの間は空いている。
 この距離は一二月のあの時から何も変わっていない。
 そう、"彼"と晴れて付き合うようになってからと。
 私はこの進展の無さがとても心配。
 私の隣に座る、ツンツン頭をトレードマークとしている彼は、何やら眠そうな顔をしてぼーっと前だけを眺めている。
 もう少し、自分を見てくれてもいいのではないかと思ってはいるが、なかなか思うようには彼は動いてくれない。
 決死の覚悟の告白を受け入れてくれたことで一気に進展するかと思えば、状況はそれ以前と大して差はない。
 強いて言うなればちゃんと約束をして一緒に帰宅するようになったことと、偶に休日に一緒遊びに行くようになったというくらい。
 たったそれだけ。
 互いを名前で呼び合うようになったということもなければ、手を繋いだり、ましてやキスなんてものやそれ以上のことをしたこともない。
 そのほんの少しの変化だけで約二カ月が過ぎていった。
 そのあまりの変化の無さ、彼の少しでも前に進もうという気のなさに、時には彼は自分に実は興味がないのではないかということも考えた。
 もっと突っ込んで言えば、もしそうならいっそ別れてしまおうかという考えさえも浮かんできた時もあったくらいだ。
 だがそこは惚れてしまった弱みというのか、結局実際にそれを行動に移すようなことはしなかった。
 確かにほとんど進展はしていないし、今の関係に満足もしていないが、それでも彼と一緒にいられることには変わりはない。
 それだけ、たったそれだけのことで、いつの間にか何故だか彼を許してしまっている自分がいたから。
 だからと言って、心配なことが無いわけでもない。
 私という彼女がいるのに、公言していないということも一理あるが、バレンタインの日にかなりの量のチョコを受け取っていた。
 それもかわいらしい義理チョコのものから、見るからに本命のものまで。
 彼は不幸体質というただ一点を除けば、その性格、人柄から他人に慕われる。
 それ故に、彼に惹かれる女の子もまた多く、かく言う私もその一人。
 だから彼と恋人関係となれた今も、進展のあまりの無さからその点については心配している。
 誰か、他の女の子が彼にアプローチをしてやこないかと。

「ふぁ~」

 そんなことを心配している私を知ってか知らずか、彼は大きな欠伸を一つした。
 その彼の顔、態度、今の私との距離。
 私はとても心配なのだ。

「それじゃ、そろそろ暗いしさみいから帰るか」
「………ねぇ」
「んー?なんだ?」

 だから聞く。
 暗くなり始めて、そろそろお互いに家に帰ろうかと言うときに、最近最早常習化しかけていることを。
 ちゃんと、自分がいつもしている心配は杞憂であると確認するために。
 それを聞いたら、私は今の関係でも今日と明日をまだ頑張れる。
 例え自分達の進展が皆無に等しくても、その答えを聞くことで少しは安心できる。


「明日も、私だけに向かって笑ってくれる?」


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