とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part05

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-⑤上条と美琴-

それから数日後…御坂美琴はいつも通り常盤台の寮から学校に通っていた
「気付けば曜日は金曜じゃないし、一週間もの間の記憶がないなんて…まるでアイツみたいじゃない……」
学校が終った美琴は歩きながら呟きある場所に向っていた
それに…と美琴は考え込む、その記憶のない一週間の事を担当医のカエル顔の医者や担当であった看護婦に聞いても
誰一人語ってはくれなかった事にも当然疑問もある…が
「今思えば…あの時のアイツ、どこか余所余所しかったのよね…何か関係があると思うんだけどなあ…ハァ……」
と、ここ数日間同じことを考え、結局アイツこと上条当麻を探して街中をブラブラしているのだ

いつもの様にとある公園に入り、自販機を蹴って飲み物を取り出そう…
そんな作業をしようとしていたら背後から声をかけられた
「お、御坂さんやないか、そうだ…ここ数日のカミやんどうしたんや? あないな落ち込み方見たことないで」
「………へ?」
間抜けな声を出して振り返る美琴
「あの…どちらさまですか?」
そこには見覚えのない青い髪で長身の男がいた
「ありゃ? 流石にあの時のボクはボロ雑巾みたいやったけど…忘れられてるってのはちょっと悲しいな~」
と、目の前の青髪で長身のピアスをした男はちょっとばかり残念そうな顔をする
「それにアイツ…がどうかしたんですか?」
「ん? なんや知らんのかい、今カミやんはなんか死んだ魚の目をしとってな、元気がないんやで」
その男は「おっ、そろそろ帰らんと…それじゃ御坂さん、カミやんによろしく」と言い残し行ってしまった
「…元気がない?」
そんな事を聞くと居ても立ってもいられなくなる美琴、いつも以上に本腰を入れて探そうと街の方へ歩き出す

□ □ □

あれから数日、上条はどうも気持ちにけじめがつけられずに夜も眠れない日々を過ごしていた
「…………なにやってんだ俺は」
現在上条は思い出深くもある死にかけた鉄橋の上にいる
そこから川に向って小石をポチャポチャと投げ込んでは波紋が消えるのを眺めている
眺めて…と表現するが、その焦点は波紋を捉えているようで捉えてはおらず、川を見ているようで川を見ていない
そんな上条はどこからみても今にも川に飛び込もうとしている…そう見えてならない
「……上条さん、そこで何をしていらっしゃるんですの?」
急に人の気配を背後に感じ、声をかけられた…が上条は振り返る気力もないし、そんな気もさらさらない
「……別に、どうでもいいだろ?」
ぶっきらぼうに背後にいる人物にそう返す
「今にも川に飛び降りそうな少年がいる…そう通報がありましたので来たのですが…まさか上条さんでしたとは」
そう後ろから言われるが
「飛び込む気もないし、周りからとやかく言われるほど俺は迷惑を掛けてはいないと思いますがね…」
と上条は告げ、溜息をつく

「でしたら、お姉様が上条さんを探して毎晩遅くまで外出している事を知っていますか?」

その一言に上条はピクッと反応を示す
「あら? ご存知ではなかったという事はお姉様は避けられているという事ではないのですね」
ワザとらしくそう言う後ろの少女…
その少女には分かっているのであろう、この数日美琴に会わないように上条が避けている事を
「何があったかは存じませんけれど…お姉様に会って頂けませんか?」
上条は何も言わない

「お姉様は帰ってきてからずっと何か考え込んでいらっしゃいますの…夜も眠れないほどに」
上条はその言葉を聞いているのか聞いていないのか途中で歩き出す
「どちらへ行かれますの?」
怒ったように少女が聞くが返事は
「さあ…どこにいくんだろうな…」
力のない上条の返事
少女はただただ…いつもと様子の違う少年を見送ることしか出来なかった

□ □ □

美琴は現在上条と記憶を無くす前に訪れたスーパーに来ていた…が収穫はなく、トボトボと帰路につく
「ここにいないって事はアイツ、もう帰っちゃったのかな……」
そうこぼしていると声をかけられた
「あれ、御坂さん……上条さんと一緒じゃないんですか? というか退院したんですか?」
そこにはよく見知った人物、佐天涙子がいた
「佐天さん……って、佐天さんアイツの事知ってったっけ?」
「あー、それはこの間初春と後をつけて…って御坂さん…どうしたんですか」
佐天が驚くのも無理はない、美琴が急に佐天の両肩をガシッと掴んだのだから

「佐天さん、私に何があったか知ってるんでしょ? お願い! 教えて私に何があったのか……」
美琴のある意味必死な願いに佐天はうーんと考える
美琴がここまで必死なのには訳があり、実は公園の後にも二人の女の人に会い、何故か上条の彼女と言われたのだ
そんなことが続けばさすがに美琴は記憶のない一週間の事をどうしても知りたいと思う訳で
「うーん……それじゃ、御坂さんちょっと向こうの公園に行きましょう」
そう言う佐天は美琴を連れて近くのそれほど広くはない児童公園に向うのであった

「で…佐天さん、私さ…先週事故に遭ったみたいなんだけどね…それから一週間くらいの記憶がないのよ」
公園に着いて美琴と佐天はブランコに座る、元々この学区に小さな子共はほとんどいないのでがら空き状態なのだ
「だから教えてくれ…って言う事ですか、うーん上条さんはなんで教えてくれないんですかね…」
また上条の名前が出てくる
「あ、そうだ…その前に御坂さん」
「ん? なに?」
美琴としては早く話を聞きたい訳だが聞く立場と言う手前そこまで急かしたり出来ない
「上条さんのこと御坂さんは好きなんですか?」
ブッ「な、なななんであ、あああ、あんな奴…そんな……す、好きなわけ…」
「好きなんですね、わかりました」
「さ、佐天さん…あ、アイツには内緒に……」
美琴はいきなりの質問に混乱し、何故その様なことを言われるのかまで頭が回っていなかった
「それじゃ、なんも問題ないですね…だって御坂さんその一週間上条さんの恋人だったんですよ?」
…………はい?
「なんでも、御坂さんの方から告白してきて上条さんがオッケーしたとか」
……ちょっと待ってそれってどういう
「でも上条さん悩んでましたよ、記憶喪失の御坂さんの返事を受けてしまっていいものか……って」
…………、ついに美琴の思考は停止してしまう

それから数分後
「……さん、み……さん、みさ…さん! 御坂さん!」
「え? どうしたの佐天さん」
どうやら少しばかり意識が飛んでいたらしいと気付く
「話聞いてるんですか? 急に反応無くなっちゃうんですもん、心配になるじゃないですか」
「ごめん…」
いいですよ、退院したばかりなんですし……そう佐天は言ってくれる
「それじゃ、もう一度…今度は事故のあたりから上条さんに聞いた所から話しますね」
それを先に言ってくれ、と言いたいがここはぐっと押さえる美琴

それから三十分位美琴は佐天から話を聞いていた
「じゃあ、アイツは私が守って無事だったってことね…よかった……」
「まずそこを心配するあたり、御坂さん本当に上条さんに恋してますねー」
と少し笑みを浮かべる佐天だが
「そういえば、御坂さん…事故の日、上条さんに何を話したかったんですか?」
「………な、何のことかしら佐天さん」
「あっれ~、おっかしいなぁ~確か上条さんの買い物に付き合った後に何かお話しがあったんじゃないですかぁ~?」
次は下品な笑みを浮かべることになる
「あのね…佐天さん、誰にも言わない?」
ウルウルした上目遣いで佐天に聞く美琴
「大丈夫ですよ、言いませんよ御坂さん」
と激しく首を縦に振る佐天

しばらく美琴は黙って空を見上げる、今にも降り出しそうな空模様だが不思議と気持ちを落ち着かせてくれる
「……実はね、あの後に私はアイツに告白しようと思ってたの」
公園に響くのはそよ風に揺れる余りのブランコの軋む音と美琴の小さな声
「最初はホントにムカつく、私をガキ扱いする…本気で闘わないキザな奴だ…って思ってたんだけどね」
そんな中ゆっくりと…様々な想いを思い出すように語る美琴
「私のピンチを命懸けで救ってくれてからなんか気になりだして…今じゃもうアイツのことばかり考えちゃってさ」
美琴は空を仰ぎながら笑う
「終いにはほら、戦争がどうのこうのってあったじゃない? アイツを追っかけてロシア行き決行よ……」
しかし、その笑いは弱まっていく
「それからアイツにしばらく会えなくってさ…
まあ、無理矢理ロシアに行っちゃったんだから…色々規制されるのはわかってたけどさ……
それでも…会えない事で分かっちゃったんだ……私はアイツが好きなんだって……でもさ」
美琴から笑みは消え、俯き暗い表情をする

「気付いたんだ…私がアイツのそばにいる時って素直になれない、すぐに電撃を飛ばしちゃう嫌な奴だって」
頬を伝う一筋の雫
「そんな奴が隣にいても迷惑なだけよね…事故に遭う前までだってアイツは苦笑いしかしてなかったわけだし」
頬を伝う雫は一つ、また一つと増えていく
「ぐすっ…だからね、せめて想いだけでもって思ってたら事故よ、事故…もう神様からも見放されてるわよね」
その雫は音もなく地面に落ち公園の土に染みをつくっていく
「でも…ぐず……一緒に買い物できて楽しかったな……今は私だけを見てくれるって思えたから…」
泣きながらも美琴は最後に笑顔を繕う
「御坂さん……」
佐天はブランコから降り美琴の前に立つ、そしてハンカチで涙を拭いて美琴を抱き寄せる

「えっと、御坂さん…もう一度、もう一度だけ上条さんにその想いを伝えませんか?」
泣いている子供をあやす様な優しい声を肩越しにかける
「だって上条さんすごく嬉しそうでしたよ? 御坂さんを恋人だって言ってた時…だから、大丈夫ですよ……ね?」
佐天はそう言って美琴から身を離す
「あとは御坂さん次第です、今聞いた事は初春にも、白井さんにも、上条さんにだって言いません…私達の秘密です」
そして佐天はそう言って笑ってくれた
「……わかったわ、佐天さん…私、この気持ちをアイツに聞いてもらうことにする」
「それでこそ御坂さん、カッコいいですよ?」
曇り空の下、天気とは対照的に公園で笑いあう二人の少女

「それじゃ、佐天さん…ありがとうね、なんか勇気がわいてきたわ」
「いえいえ…それじゃ御坂さん、頑張ってくださいね」
笑いあってから少しして二人は公園を後にして別れた

少女はある少年を探すべく街を駆けていく

□ □ □

「……………いてぇ」
最低だ……俺は…最低な上に無様だ…
しばらく上条は黙って空を見上げる、今にも降り出しそうな空はまるで今の自分の心を表しているようだ
「あー…くそ、体中が痛くて動けそうにもねえか…まあ、いいか」
橋から立ち去った後に上条がふらついていたのは繁華街
俯いて周りを見ていなかったのがいけなかったのかスキルアウトの連中にぶつかり裏路地に連れて行かれた
いつもなら自慢の走力で逃げ切るのだが今日は気分で戦い、そして負けた……それが今のこの様だ…

「何やってんだろうな俺……自分を偽って、こんな誰も幸せになれないようなことして」
現在、裏路地の狭い空を見上げ…適当に捨てられたボロいダンボールと埃にまみれている上条
「自暴自棄になるのもいい加減止めねえとな…それこそほんとに人に迷惑かけちまうか……」
そう呟いて上条は立ち上がる、痛みが少し和らいだだけだが何とか歩けそうだ
「よっと…痛っ、今日は無理したな……くそ…」
先程の自分の行いを悔いる上条

「………あーあ、とうとう降ってきやがったか」
裏路地から出ると一つ、また一つと雨粒が落ちてきて土砂降りになる
「まあ…たまに濡れて帰ってもそれはそれで気持ちいいかもな」
そんな風に言って上条は痛む身体を引きずって自分のマンションを目指す

いつもとは違う帰り道
土砂降りの中、ぎこちない動きで歩いていた上条
「ちょっと! アンタこの土砂降りの中何やってんのよ」
そう言って上条に近づいてくるのは赤い傘を差した美琴
上条は何故か逃げようとする…がベシャッ、という音とともに水溜りに倒れこむ
「………大丈夫?」
心配し、顔を覗き込むようにしてくる美琴
上条は水溜りに座り込んだまま俯いている

「そのままだと風邪引くわよ?」
美琴はそう言って手を差し伸べる
上条は何か迷っている様子だったがその手を取り立ち上がる
「まあ、入っていきなさいよ……」
美琴はそう言って上条を傘に入れる
「……ああ、悪いな」
上条は元気なく答え、傘を美琴から引き受ける
「俺が持たないとお前が辛いだろ」
そう言って上条は傘を差す
「…ありがと」

それから雨の中をしばらく歩き
「ねえ…覚えてる?」
美琴がそう言った、そこは偶然にも事故に遭った場所
「事故に遭った所だろ…」
上条は素っ気無く答える
「そうじゃなくて…ほら約束したでしょ」
と、美琴は上条を見ないで言う、上条は気付かないが少し美琴の頬は赤くなっている
「…話を聞く…だったか?」
「そうよ、それよ」
ポツリポツリとした一言だが嬉しそうに反応する美琴
しかし、一方で上条の態度は変わらない
「聞いて…くれる?」
反応の薄い上条に不安であったが、上目遣いで聞く美琴
「………………」
目を合わせないで考え込む上条
「なあ、御坂…俺ん家に来てくれないか? 俺も御坂に伝えなきゃいけないことがある」
そして上条は腹を括ったかの様に真剣に言う
「わかったわよ…ならアンタん家に行きましょ」
二人は上条の部屋に向かう

□ □ □

部屋には無事に着いた…が、ここで一つある問題に遭遇する
それは…先程上条がボコボコにされた打撲や擦り傷が明るい部屋に来ると目立ってしまったのだ
「ちょっと! 怪我してるじゃない…そういう事は早く言いなさいよね」
と、部屋に着くまでずっと続いていた沈黙を破る怒声が上条の部屋に響く
「わかった…だがちょっと待て、少し落ち着いてくれ」
上条としては腹を括ったばかりでまだ落ち着いていないのだ、だから少し落ち着く時間が欲しかった
「……………」
落ち着いてくれ…上条はそう言ったのだが美琴は少し怒った様な目で黙って睨んでくる
「まず、お前も少し濡れてるんだからこれ使え…俺は着替えるから少し脱衣所に行く……
 もし濡れてるんだったらこれでも着てくれ、男物だからぶかぶかかもしれないけど…無いよかマシだろ?」
上条はそう言ってクローゼットからタオルと男物のシャツとジャージのズボンを取り、美琴に渡す
「それじゃ、まずな」バタンッ
上条はそう言って脱衣所に消えて行った

「やっぱり…元気ないし、余所余所しいし…無理してる」
それがまず病院で別れて以来、数日後の上条の第一印象
「でも、部屋に着いてから……ううん、家に誘ってくれた時からいつものアイツらしい感じがする…かな?」
美琴はそんな風に思い、渡されたタオルで濡れているところを拭いていく
「あー…ちょっと大きいわね、でも…アイツの匂いがする」
と、サイズを確認するが匂いを嗅いで少し緊張し始める美琴
そ、そそそういえばアイツの部屋に来ちゃってるのよね…えーっとこういう時って……
すでに本来の目的を忘れて部屋の中をうろうろする美琴

それから数分後
ガチャ「着替え終わりまし……なにやってんだ?」
上条はベッドの下に手を入れて何かを探っている美琴を見てそう言う
「あー…友達がね、友人宅に行ったらまずガサ入れでしょ…って」
美琴は固まる、理由は上条が上に何も纏ってないから…
そんな美琴を傍目に上条はハァ…と溜息をつくと
「御坂…ちょっと手当て手伝ってくれないか? 背中の方が痛いけど見えないからさ」
と背中の方の傷を診てくれないかと言い上条はドカッと座る
「え、あ…うん、わかった」
上半身裸で出てきた上条にまだ若干戸惑っていた美琴だが返事をしてすぐに上条の背後に周る
「うーん、傷は無いわよ」
と少し背中に触れながら言う美琴、もちろん心臓はバクバクと音を立て緊張していることがバレるのでは? と思う
「そ、それじゃ、ちょっと絆創膏とかシップとか借りるわね」
美琴はそう誤魔化すように言い、上条の腫れている所や擦り傷の所に消毒液をつけたりしながら貼っていく

「ほら、これで終わりよ」
最後にぺしっと絆創膏を貼り手当てが終ったことを告げる
「あ、ああ、なら…上、着るな」
そう言って上条はTシャツを上に着る
実は上条も平静を装ってはいるが背中を触られたりで内心ドッキドキであった
「ふぅ…で、だ……ここは俺から話した方がいいか?」
テーブルを挟み上条は美琴に言う
「ううん、私から言わせて……言っておくけど真剣な話だからね?」
ほんのりと頬を赤く染めて言う美琴に上条は可愛いな…と思うが、ここは真剣な顔をする
「わかった」

その言葉から数分、美琴はあーでもない、こーでもないと悩んでいる様子であったが覚悟を決めて言う
「私、御坂美琴はアンタ…上条当麻のことが好きです……もし宜しければ、私の恋人になってください!」
美琴はそう言って頭を下げる
「……………」
長い沈黙が流れる、時間の感覚が麻痺したような…そんな感覚に捕らわれる二人
どれくらい時間が経ったであろうか、三十分? 一時間? それとも数分も経ってもいないかもしれない
そんな沈黙の中、上条が言った一言は
「こちらこそ…お願いします」
そう言って頭を下げる上条

「「ぷっ…くくっ……はははは」」
二人は顔を上げ声を出して笑った、それは緊張がいきなり切れた為かもしれなかったが
二人は時間が経つのも忘れて楽しく笑っていた

落ち着いて、そういえばと美琴が上条に聞く
「そういえば、アンタも何か言いたいことがあったんじゃないの?」
「あー…それはですね…」
と、なんとも歯切れの悪い上条だが
「彼女になったんだし隠し事はやめてよね?」
上条の横に座り、腕を絡めてくる美琴
「うっ…美琴さん、当たってます……」
柔らかな感触に上条の心臓はバクバクと異常な音を立てる
「言わないならこのままよ?」
美琴はそんな風に言うが
「言いますから離してください…」
「わかったわよ…」
と結局残念そうに離れる

「さっきの言葉、俺もそのまま同じことを言おうとしてたんだよ……一応、俺からも告白するぞ?」
確認をする上条に美琴は小さく頷く
「俺は御坂、御坂美琴のことが好きです…もしこんな俺でいいなら、俺の恋人になってください…」
「………はい、当麻大好き」ムギュッ
腕を絡めるのをやめていた美琴は今度は思いっきり上条に抱きつく
「みみみ…美琴さん?! あの…い、いろんな感触で上条さんの理性がふ、ふふ吹き飛びそうなのですが…」
「大丈夫よ、今なら…と、当麻に何されたって…」
頬を染めてそんな事言っちゃダメー!!!!!!! と言葉にならない叫びを上げる上条
上条は理性を保つ為にどこぞのレベル4の顔ドラム並みに頭を壁に打ちつける事になった

結果として、上条は気絶していた
「うぅ…あれ? みこ…と?」
目を覚ました上条が真先に見たものは美琴の悲しそうな顔。
「ねえ…当麻、私ってそんなに女の子として魅力がない?」
以前聞いたような事を言う美琴、ついでに言うと若干泣きそうだ
「あー…えっとだな、そういうことじゃないんだ……ただ、今はまだそんな事をするのは早いと…言いた…い」
そんな泣きそうな美琴を見て言っているのだが、どうしても雲行きが怪しくなるばかりだ
もしかして、今俺って地雷原のど真ん中? とでも言いたい上条だが、今は突っ切るしかないと思った刹那
「わかってるわよ、でもね……えいっ」チュ
と、不意打ちで美琴からのキス
「……………頬か」
「何残念そうに言ってんのよっ」
顔を真っ赤にして言い合う二人、それにはもう楽しそうを超えて幸せオーラが見えるほどである
二人は互いの事を名前で呼んでいることに気付くのはもう少し後になってからであった

そんな幸せの中、上条は少し思う事があった
それは、あの時……記憶喪失の時の美琴にちゃんと恋人らしいことが出来たのだろうか…と
しかし、考えても答えは出るはずもなく、それなら今出来ることをやろう…そう誓うのであった

□ □ □

恋人になってからしばらく経ったある休日
上条と美琴は再び上条のとある高校に来ていた
「まったく、なんで当麻はそんな日に休んだのかしら?」
「しかたねーだろ、美琴さんと別れろー、っていう暴徒に一日中追いかけられてたんだからよ…」
初耳だったのか美琴は
「ちょっと、ちょっと、ちょっとっ! そういう事があったんなら早く言いなさいよね」
と、大変ご立腹な様子になる

「まあ、そんな事言われても絶対手放すもんかっ、つって逃げ切ってやったがな」
ハッハッハ、そう笑う上条を見て怒っていた美琴は一転、頬を染めて嬉しそうにする
「もう…そんな恥ずかしいことよく言えるわね」
「ん? うーん、そう言えば今頃になって恥ずかしくなってきたような……」
上条も顔が赤くなってくる
「あ、そ、それじゃ俺は小萌先生んとこに行ってくるから美琴は食堂の方で待っててくれ」
話していると下駄箱の所に着いたので上条はそう言う
「うん、当麻…なるべく早くね」
「ああ、それじゃ…終ったらデート再開な」
上条はニカッと笑顔を向け、職員室があるであろう場所に走って行ってしまった
「…そういえば、食堂の場所聞くの忘れてたわ……」
上条が去った後に少し途方にくれる美琴がいた

「上条ちゃんも元気になりましたし、これで安心して補習が組めるのですよ」
「あの、小萌先生…さらっと嫌な事言わないでください……」
「でもでも、上条ちゃんは開発の単位が足りないのですよ~」
そんなやり取りをしながらだが上条は職員室でテストを受けている
「まあ、このテストはそんな重要じゃないんですけど…上条ちゃんはこういうので点数を稼がないと大変ですからね」
まあ、わかってましたよ…勉強しても能力の単位はこういう方法でしか貰えないのは…と上条は心の中で呟く

それから何枚か似たような(あくまで上条的にはだが)テストを受けて上条は開放された
ふと何の気なしに携帯を開くとそこには美琴からのメールが、その件数20件
「……怒ってらっしゃる?」
第一の感想がそれだ、上条は恐る恐る一件目を開封する

食堂ってどこなのよ…

「あー、そういえば今の美琴って知らないんだったな…」
と案外普通のメールに上条は安堵するが
「って、校内迷ってるんじゃないだろうな…」
上条はそう呟いて次のメール、次のメールと読んでいくと色々と文句がつづられているのだが19件目で

なんとか見つけたわよ…食堂……

ごくろうさまです…そして最後のメールは19件目から結構時間が経っていて

あとどれくらい?

との一言、送信された時間はテスト終了の三十分前
「………急ごう、今ならまだ大丈夫なはずだ」
そう結論付け、上条は走りだす

職員室を出て食堂までの直線上に入った上条はより力を込めて走る、そこには速く美琴に会うという目的しかない…
あと少しで食堂に突撃、という時に入り口から美琴が出てきた
ドンッ 「きゃ」「うおっ」 二人は衝突し
ふに…チュ…上条の右手は美琴の胸へ、そして二人の唇は重なる

…………しばしの沈黙
身を離す二人、両者は顔を赤くしうつむいている
「わ、悪いっ美琴!」
上条はこの重い空気をブチ破る為に謝り土下座に移行する

「って、あれ? そういえばこんな事が前にもあった様な……」
上条はそういえばと顔を上げる
「ねえ…当麻、公園デートの続き…行こっか?」
そこには頬を染め、手を差し出す美琴
「え…みこ…と? もしかしてお前、記憶が……」
そんな美琴の言った言葉に上条は信じられないとでも言う様な顔をする
「ねえ、どうする?」
微笑み上条の手を取る美琴、上条はその手を優しく握り返し立ち上がる
「そんなもん、決まってんだろ?」

学校を後にする二人には晴れやかな笑顔


デート中のちょっとしたおまけ

「なあ、美琴…一つだけ確認していいか?」
記憶喪失分の記憶も思い出した美琴とのデートの最中上条がふと聞いてきた
「なに?」
上条の右腕に抱きつく美琴は、じっと上条を見つめて次に言われる言葉を待つ
「今、いや……記憶喪失の時もだけどさ、俺と恋人で本当に幸せか?」
そんな事を聞いて美琴は少し考える素振りを見せ

「ふふっ♪ どっちだと思う?」
悪戯っぽく笑って誤魔化した
「どっちだよ、教えてくれよ」
「さあね~、どっちでしょうね~」
そんなやり取り、それに聞き耳を立てていた者達にハッキリ言うのは野暮というものであろう

美琴は上条にくっつきながら心の中で伝える
私は記憶喪失の時も……今も、恋人になってからずっと幸せだよ
当麻のこと大好きなんだから……ねえ当麻、当麻も幸せだよね?


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