とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part05

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終章 乙女の真実


絶望しかなかった―――
嫌われても大きくなれば、全て元に戻すことが出来ると思っていた。
『永遠に嫌われ続けないとずっと小さいままよ?』
その言葉は美琴の甘い考えを打ち砕いた。

今は誰とも会いたくない。
逃げ出すことしか出来なかった。
小さいままでも一人で生きていくことで少しは楽になれる、そう思った。

一方、上条の部屋では
「御坂がいなくなった?」
「ごめんとうま」
「電撃で気絶させられたのですね」
「この部屋はくまなく探したんだよ」

「答えろ鏡!御坂はどこに行ったんだ?」
『うるさいなー、そんなこと私が知ってるはずないでしょ、何も言わずに出て行ったんだから』
上条は真剣に鏡に問い詰めたが、どうやら鏡は本当に知らないらしい。

「くそ!」
『それより貴方、美琴のことどう思ってるの?』
「え?」
『恋人・・・・には見えないわね、じゃ友達?』
「・・・・・・・」
上条は答えられなかった。
『美琴が元に戻る方法を知りたいなら教えてあげようか?』
「知りたいに決まってるだろ!」
『誰か他の人を犠牲にすればいいのよ』

予想外の答えだった。
鏡が美琴に出した条件と違うのだが、上条はそのことを知らない。

「だったら俺が・・・・・」
『貴方はダメよ、その右手が邪魔をして私の魔力が届かないもの』
「くそっ!」
『まあ、ウソだけどね』
「何?」
『さっきの条件』
「騙したのか?」
『美琴のために自分が犠牲になるなんて、美琴が好きなんじゃない?』
「・・・・・・」

やはり上条は答えられなかった。
今まで上条に対して何も言わなかった鏡が、何のためにこんなウソをついたのか?
上条には分からなかった。

「上条さん!早くお姉様を捜しに行きませんと!」
白井はここで無駄な時間を過ごすよりも、すぐ捜しに行きたいらしい。
「とにかく今は、御坂を捜すほうが先だな・・・・・」
白井の言葉に上条とインデックスは頷くと、すぐに美琴を捜しに行った。

「手分けして捜そう!」

3人は見つからなくても1時間で合流しようと打ち合わせをして、それぞれバラバラに捜しに行った。



「白井!インデックス!御坂は見つかったか?」
「見つかりませんの」
「こっちにもいなかったんだよ」
1時間捜したが美琴は見つけることは出来なかった。
この広い学園都市で普通の人を探し出すのも至難の業だが、今の美琴は小さくなっていて更に見つけにくい。
こうなってしまったら手詰まり、捜しようが無かった。

「他に心当たりは無いのか?」
「あったらとっくに捜してますの!」
上条の安直な言葉に白井はムッとして答えた。
「そうだよな・・・・・」

(前にも御坂を捜して街中走り回ったことがあったよな・・・・)
上条は夏休みのあの時のことを思い出していた。
(もしかして!)
そう思うが先か動くのか先か、上条は走り出した。
「上条さん?」
「とうま?」
二人が呼び止めるが上条はかまわず走り続ける。
美琴がいるかもしれないあの場所に向かって。



美琴は夜の鉄橋に上にいた。
朝に上条の部屋を出てから1日歩き続けてようやくたどり着いたのだ。
その鉄橋は美琴にとって特別な場所だった。

かつて深い絶望の底からアイツが私を助けてくれた場所。
だけど、今の絶望はあの時とは違う絶望。
同じ自分の力ではどうしようも無い現実。
だが、今度ばかりはアイツの右手でもどうすることも出来なかった。

この大きさならこの鉄橋から飛び降りれば楽になれる。
絶対に助からない―――

でも、この命はアイツが救ってくれた命。
無駄にすることなんて出来ない・・・・・・

「何やってんだよ、お前」

ふいに声をかけられた、あの時と同じように・・・・
「私が何をやろうと私の勝手でしょ?小さくなっても能力はそのままだし」

言葉は強がっているが、振り向いた美琴の顔は絶望に満たされていた。
上条は過去にその顔を見たことがある。
二度と見たく無いと思っていた表情―――

何があっても守りたいと思った笑顔はそこには無かった。

「やめろよ・・・・」
上条はあの時と同じことを言った。
「やめるって何を?」

「なんとなくわかったんだよ・・・・・・、お前が何をしようとしているのかが・・・・・・」

「もうほっといてよ・・・・・、どうしようと私の勝手でしょ?」
「ほっとけねえよ!」

私は迷惑ばかりかけている。
コイツはそんな私のことを心配してくれている。
私は守られてばかりいる。

『学園都市の第3位』『超電磁砲』『御坂美琴』
こんな名前だけじゃ何も出来ない、私は弱い
「情けない・・・・」
そう漏らしてしまった・・・・



上条の後ろから二つの影が見えた。

「とうまー!短髪!!」
「お姉様ご無事でしたのね!!」
上条の前にいる美琴の姿を見て、インデックスと白井は安堵の笑みを浮かべた。

(どうして・・・・私をせめないの?)
美琴は白井とインデックスの顔を見れなかった。
(私の行動はみんなに迷惑をかけただけなのに・・・・)
美琴の胸に激しく突き上がってくる思いがあった。
このままじゃいけない。
このままで―――いいはずがない!

私が私であるために―――
違う! 私のことなんてどうでもいい!
みんなにこれ以上迷惑をかけないために。

(ごめんなさい、一生軽蔑してもかまわない―――)

「アンタは何も出来ない!何もしてくれない!!私がどれだけ辛くても何もしてくれないじゃない!
 もう嫌なのよ、嫌いなの、アンタはいつも口だけで・・・・・
 何が『御坂美琴とその周りの世界を守る』よ!ぜんぜん守ってくれてないじゃない!」

それは悲痛の叫びだった、そう叫ぶ美琴も胸に悲しみの感じが満ちているのがわかる。

「短髪ひどいんだよ!!」
「お姉様それは言いすぎですの!」
白井でさえ、美琴の言葉に怒りをあらわにした。

「ごめんな御坂、何も出来なくて・・・・」
上条は動けなかった、ただ今まで自分の心の中にある何かが崩れていくのが分かった。
上条の頬に涙が流れている。

(違う、アンタは悪くない!)
だけど、それじゃダメなんだ。
小さいままじゃ嫌なんだ。
このままじゃいけないんだ。
泣いてはいけない、そう決めていたのに美琴の瞳からはボロボロと涙があふれ出ている。

「アンタのことなんて大嫌いよ!二度と私に近づかないで!! これ以上私を不幸にしないでよ・・・・」

最初は悲鳴のように上げていた叫びは、だんだんと小さくなり最後は涙交じりの小さな声となっていた。

だが、上条の心をえぐるには十分な言葉だった。
「不幸」生まれ持った不幸体質の上条は他人に不幸が起きないようにするために生きてきた。
不幸のことを言われたら上条はどうすることもできない。
それでも―――

「俺もお前のことなんか大嫌いだ・・・・・・」

それは一番聞きたくて、そして一番聞きたくなかった言葉だった。

「でも、心配なんだ! ・・・・・・お前のことが大切なんだよ!!」

美琴は上条の言う『嫌い』が上条の本心では無いことを悟った。
結局上条に心底嫌われることは出来ない、一生小さいままだ。

美琴は全てをあきらめた・・・・・・。



その時、インデックスの手に持っていた鏡が月の光を反射した。
『美琴・・・・・』
かすかに届いたその声に美琴は顔を上げた。
『どうやらここまでのようね』
「・・・・・・・え?」
『貴方が羨ましいわ』
さらに鏡は続けて言う
『私ね、3つウソをついていたの』
「どういうこと?」
美琴は涙をぬぐい鏡に問い返した。

『ひとつは美琴についたウソ、戻るための条件、あれウソなの』
「じゃあ・・・・・」

美琴の言葉に鏡は答えること無く続けて話していく。

『ひとつは当麻についたウソ、その右手で触れば私は壊れてしまい一生元に戻れないってこと』

『最後のひとつは、・・・・・・これは内緒にしとくわ』

誰も言葉を発しなかった、ただ鏡の言葉を聞いていた。

『生きていたころに私は大切に思っていた人から裏切られた。私は彼を信じて全てを打ち明けたのに、彼は私を信じてくれなかった。どんなことがあっても最後まで想ってくれる、そんな男がこの世界にいるなんてね』
鏡の声には今までのような冷たさは無かった。

『今度生まれてくるときは、本当に私のことを想ってくれる人とめぐり逢えて、幸せな人生を送りたいものね』

鏡は一息つくと、上条に向かって言った。
『当麻、貴方の右手で私に触れたら私の魔力は消えて全て元通りよ』

「でもそんなことしたらお前は・・・・・・」
『言ったでしょ? 生まれ変わりたいって、貴方の力で私も救ってみせてよ』

「・・・・・ああ、分かった」
上条は右手で鏡に触れる。
『ありがとう、当麻』

幻想殺しが発動し、音も無く鏡は崩れ落ちてゆく。

『―――幸せにね、美琴』

風が吹き鏡の粉は川に吸い込まれるように消えていった・・・・・
同時に美琴の体が淡い光を放つ

そして―――
美琴の体は元に戻っていた。
「御坂!」
「・・・・・」
美琴は言葉が出なかった、だが言葉を交わさずとも瞳を見れば互いの気持ちは通じ合えた。そんな気がした・・・・

美琴は気づいたような気がした。
鏡が出した元に戻る条件、『一番好きな人に嫌われること』その真意を―――

「短髪よかったんだよ」
「お姉様ー、よかったですの」
白井は美琴に抱きついた。
「ごめんね黒子、心配かけて・・・・」
「うぅぅうう久しぶりのお姉様の香りぃいい・・・・・・、たまりませんの!」
「ちょっと黒子!やめなさいってば」
抱きついてきた白井にビリビリと電撃を放った。
「ああ゛ぁああぁ゛ぁ久しぶりのお姉様の電撃、激しすぎますあばばばばば」
調子に乗った白井は電撃により気絶させられた。

いつもと変わらない、そんな白井の思いやりが美琴は嬉しかった。



「それにしても、どうしてあの鏡は短髪を小さくしたのかな?」
「さあな、そんなことはどうでもいいじゃないか。こうして御坂は元に戻ったんだし」

そして上条はインデックスと共に歩き出した。
それに気づいた美琴は、ちょっと待ってと上条を呼び止める。

「どこに行くのよ・・・・」
「帰るんだけど、夕飯もまだだしな」
補習から帰ってきた上条は美琴がいなくなったと聞き、何も食べずにずっと捜していたのだ。

「なんでアンタは怒ってないのよ・・・・・・、あれだけひどいこと言ったのに」
「本心じゃなかったんだろ? だったらいいじゃねーか」
「だけど・・・・・、だけど・・・・・・」
上条への申し訳の無い思いと、そして上条の優しさに触れて美琴は泣いた。
嬉しさと悲しさが混ざりあったものが胸に突き上げてくる。
そんな美琴の姿を見て、上条は美琴のことを抱きしめた。

「短髪、今日は特別なんだよ」
インデックスはそう呟いて、上条と美琴のやり取りを黙ってみている。

「もう良いじゃねーか、前にも言ったけどお前には笑っていて欲しいんだよ。そのためだったら俺は何だってしてやる」
「なんで・・・・そんなに優しいのよ」
誰にも聞き取れないほどの小さな声で美琴は聞いた。

「ん?何か言ったか?」
「・・・・・・・・なんでもないわ」

そのとき、美琴のお腹がグゥーと鳴った。
昨日から何も食べていないのである。
そして美琴は顔を真っ赤にして上条から離れた。

「御坂?」

「その・・・・・、夕飯まだなんでしょ? これからみんなで食べに行かない?」
「上条さんには外食できるほどサイフに余裕ないのですが」
「それくらい私が奢って上げるわよ」
「さすがに悪いって」
「みんなに迷惑かけてひどいこと言ったし、お詫びくらいさせてよ」
また美琴は今にも泣き出しそうな顔で上条を見つめた。

(この申し出を断るのは、また御坂を傷つけることになるか・・・・)
「じゃあ、お言葉に甘えるとするか」

こうして気絶している白井を起こして、4人は食事をするためにファミレスへと向かった。







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