とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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とある乙女のバレンタインデイ・キス




第01話


私は忘れていた。
記憶から抜け落ちていた。恋する乙女にとって最も重要なあの日を

これは、明らかなチョコレートメーカーの戦略に出遅れたうぶな、恥ずかしがりの少女の
決死の告白とそれに伴う大騒動を書き残したものである。

2月13日(月) 午前7時

(正直眠い・・)

私は、寮生の前であくびを噛み殺しながら、急いで朝食を食べる。

12月の熱波事件、クリスマスの最後の審判事件で壊滅的な大損害を
受けた学園都市。その傷跡は決して浅くはなかった。

幸い学びの園は、熱波事件の教訓で私と食蜂が防備を固め、クリスマスの最後の
審判事件での打撃を受けず、年明けに授業を再開することができた。

私は、上条当麻と命を懸けた果し合いの末、彼の説得に応じ、AAAを手放したが、空白
部門を除き、AAAの単なるAIM拡散力場の投射装置としての機能を利用した駆動鎧と
して建設工事に活用する装置へ改良し、9割以上破壊された学園都市の再建事業のお手伝いを行った。アレイスターの隠し遺産約100兆円を利用し、数万もの土木用駆動鎧を効率的に運用することで、急ピッチに再建工事は進み、10年かかると言われた再建工事は
2月10日(金)に無事完了した。

ローラの原型制御崩しによる暴露戦術により、アレイスターの過去の非人道的な実験のほぼすべてが明らかになり、魔術師、反科学原理主義者の特攻攻撃を受けた最後の審判事件。

その中で唯一生き残った学び舎の園。私は多少なりともそこへ避難した
200万人を守り抜くことに貢献できた・・とは思う。

だが・・上条当麻の最後の決戦に、彼一人を生かせたこと。あの子とともに、見守ることしかできなかったことが、釈然としないわだかまりを作ったことは事実。

もう周回遅れではなかったとは思う。原型制御を外され、この世の真の姿は分かって
いたとは思う。だが・・AAAの空白部分は理解できても、結局彼の心を私は理解できて
いたのだろうか?そんな空虚な気持ちを補うように必死に働いたのだろうか?

私は、多くの学び舎の園の学生とともに、まるで何かにとりつかれたように再建工事を
成し遂げた。・

だが・・なぜか・・いや・・意図的にか・・彼の事を・・忘れていた。

無力な自分に触れる事を恐れていたのだろうか?
それとも、彼の真の姿に向き合うことができなかったのか?
それは私にはわからない。だが、約40日本当に忘れていたのだ。

・・・・

食後、疲れの溜まった私は5分ほど食堂でうとうと眠っていた。

疲労というよりは、成し遂げた達成感による、安心感なのか心地のよい疲労感。
張りつめた糸がまるでぷっつり切れた、安ど感なのだろう。昨日は16時間以上
寝ていた。それでも・・まだ眠気は取れない。

意思の力で起きようとするが、体がそれを拒否している感じだ。
(はあ・・こんなことなら、生体電流を操作して無理やり疲労を取ればよかった・・)
私は、ここ2日の選択を悔やむ

私は生体電流を操作することで、強引に疲労を解消することはできる。
現に正月以降の復興工事では、ほぼ2時間程度の睡眠を40日続けていた。
それを強引に生体電流操作という力技で乗り切った。

でもすべてが終わった今それをする気にならなかった。私は自分の体力には過信というべきほどの自信があり学校では化け物級の体力と呼ばれるほどだから、普通に乗り切れると思っていた。だが体の隅々までたまった疲労は想像以上だった。

結局丸2日休んでも全く体調が回復しない。
(所詮は・・生身の女子中学生か・・ああ・・能力使えばよかった・・)
(本当・・今日は休みたいけど・・いっそ風邪ひいたことにして休むか・・?)
私は、ずる休みを思案し始める。


(だけどな・・今日は復興式典だったしな・・一応学生代表なんて大役を
しなきゃないし・・)

結局は、周囲の期待や要望に流される私は、ずる休みという選択を拒否し、のろのろと
朝の支度を始める。
(ああ・・面倒くせ・・・食蜂に押し付ければ・・な・・)
私は、式典で生徒代表を拒否し私に押し付けたあの女の顔を思い出し苦笑いを浮かべる。

確かに、学園都市復興事業で、事業計画、施工管理、駆動鎧の作成・制御・運営に貢献したことは自分でも達成感はあるし、誇りには思っている。

自分は多くの学生の先頭には立ってはいた。だけどそれは電子制御系の最高の
能力者として当然のことをしただけにすぎないのでは?なんて自分では思っている。

あの上条当麻は、右手ひとつで、プランを破壊されたことに逆上し、「すべて」を壊そう
とした独裁者を完全にぶち壊した。そんなことは彼一人にしかできない。

( はあ‥結局は蚊帳の外か・・)
負の感情に包まれそうになる。

最後の審判事件の流れ弾の襲来から学び舎の園へ避難した約200万人の
避難民を守ることくらいしかできない。それ以上の事は・・私にはできなかった。

だけど・・無力感にさいなまされる必要なんてない
そんなことは分かっている。私は一生懸命自分にできることはしたつもりだ。

誰にも後ろ指刺されることもない。市民を暴虐から守り抜き、そして灰燼に帰した学園都市
を再建した。これ以上、14歳の女の子に無慈悲な神は何を望むのか?

そんなとりとめもない非生産的な後悔の念を頭に抱いていた私は、縦ロールが似合う
知り合いの問いかけによって目を覚まされた。

「御坂さん、どうかされましたか?」
「え?ああ・・最後の審判事件を思い出していた」
「まだうなされますか・・?」
「ええ・・でも私は無我夢中だったけど、他の子のほうがつらいんじゃないの?」
縦ロールさんが首をかしげる
「でも御坂さんと食蜂さんのおかげでこうして生きています」
「は・・本当ね・今もこうして自分が生きていることが信じられないわ」

私は、誰にも知られることなく、一人でこの宇宙そのものを崩壊から救った上条当麻を
思い浮かべる。だが・・そのことを知っているのは、数人くらいしかいない。
「でも・・御坂さんはすごいですね・・本当、200万人を生物兵器や隕石の襲来から
守り抜き、再建工事の陣頭指揮をとられて・・」

上条当麻の功績は・・すべて伏せられており学園都市でも限られたものしか知らない。
(私なんてたいしたことはしてないけど、・・でもアレは知られない方がいいだろうな)
私は一般人の無責任な会話に適当に話を合わせる。

「まあ、でもみんなの協力のおかげよ・本当」
縦ロールさんは、にこやかに話しを続ける
「御坂さん、明日のバレンタインデーに女王が御坂さんの慰労会を開くのでぜひ出席していただけませんか?」

私は、すっかり仲良くなった食蜂の側近に、肯定の合図をする。
「え?ああそうね。じゃ・・あとで食蜂によろしくね」
目もすっかり覚めたが・・私はある単語を思い出す・・
「バレンタインデー?」
「え?御坂さんまさかお忘れでした?」
「ああ・・そうか・・」

私はすっかり忘れていた。あの男とともにチョコレート会社の策略で始まった
行事の事を・・
(くそ・・出遅れた・・なんの準備もしていない・・)
私は、慌てて部屋に戻ろうとする縦ロールさんを呼び止める
「悪い・・急用を思い出した・・慰労会はパスするわ・・」
縦ロールさんが悲しそうな顔をする。
「え?ですが・・主賓の御坂さんが来ていただかないと・・」

正直悩ましい・・少し前ならともかく、今は食蜂とは良好な関係を構築している。
あの木原唯一の乱以降、盟友のような関係になりつつある。そんな食蜂の顔に泥をぬる
事態は避けたいところだ。


(はあ・・なまじ立場とか、目立つとつらいものね・・公的な立場を持つという事は)

正直フットワークのよさを維持するために帰宅部や孤高を維持していたが、一人で対処
できない異常事態に対処するために、派閥のようなものを作り、食蜂と手を組みかなり濃密なネットワークを形成した自分には無視できないしがらみがある。
(はあ・・・めんどくさ・・)
(しょうがない・・狙いは見え透いているがあんな奴でも今は「親友」だ)

私は、折衷案を提示する。
「そうね・じゃ・・途中で抜けると伝えて」
縦ロールさんが明らかにほっとした顔をする。
「御坂さん本当ありがとうございます。では女王に伝えますので、
明日は宣しくお願いします」

( ああ・・中途半端にえらくなると大変だな・・)
学園都市を救ったヒロインなんて実体に合わない過大な肩書が独り歩きを始め、身動きが
とれなくなりつつある自分。公的な立場を今まで嫌ってきたがそれが自分を縛る。

(昔のように気楽になりたいなんて・・無理だろうな・・)

本当憂鬱な気分になる。自分が望みもしない、
学生のトップに祭り上げられ、食蜂とともに権威が失墜し、親御さんの信頼を失った学園都市の最後の希望としてコテコテに飾りつけられる。アレイスターの負の遺産が、その呪縛が私の進路をふさぐ。
(はあ・・たかが客寄せパンダならよかったけど・・正直救世主扱いはつらいわ・・)

だけど・・この崩壊した街がなければ、能力者は生きられない
だから・・私は彼との約束を守る・・「御坂美琴とその周りの世界は自分で守る」という
約束を

私は気を取り直し、背筋を伸ばし、顔を叩く。
「さあ・・御坂美琴・・自分の勤めを果たすのよ」

なんとか、学生たちの生存本能だけでかろうじて生き残っているこの街を支えるために
私は微力を尽くす。

・・・・・・・

親船統括理事長代行と学園都市の最高幹部が列席する中の復興式典はしめやかに
執り行われた、灰燼に帰した学園都市・・だがわずか40日で復興させた
ボランティア・・殊にその中心で尽力した私は最大限の賞賛を浴びた。

だが、本当に賞賛を浴びるべき存在の彼は賞賛を浴びることがない。
その現実に私の心は揺れ動く。

だが、公式には自殺したアレイスター・クロウリーが
実際には宇宙ごとこの世界を抹殺しようとした事実とそれを防ぐため右腕一つで特攻
した彼の功績は永久に表には出ない。

私は叫びたい・・本当に祝福されるべきは上条当麻だ・・
だが・・彼は・・その彼は・・

私は不意に思い出した。なぜ・・上条当麻を愛していた私が、莫大な感情で闇落ち
すらしかけた私が彼を忘れていたか・・

上条当麻は・・・昏睡状態になったことを・・その事実に耐えられず、私が彼を忘れた
事を・・

・・・・・・・・

私と命を懸けた果し合いの末、私を黙らせ完全に覚醒した上条当麻は
アレイスターとの最終決戦の後、身も心もボロボロになり、昏睡状態になった。

まるでHPを使い果たしたように。シスターインデックスの回復呪文も全く効力を示さず、蛙顔の医師の治療も徒労に追わり、すべてを終えた彼はすやすやと笑顔を浮かべ眠っている。

その光景をフラッシュバックのように思い出し、あのシスターが泣き崩れた
光景がまざまざと脳裏によみがえる。なぜか・・いやその光景に耐えられなかった
私は、地獄のような、隕石や異形の化け物どもが、学園都市を蹂躙するそんな
状態に耐えた、雷神になり、身をもって盾になったそんな私が、上条当麻の凄惨な
その姿に耐えられず、気絶したことを今思い出す。

(アイツはどうしているだろう?・・)


常盤台の仲間達と表彰を受けながら、私はアイツの顔を思い浮かべる。
傷つき、しかも賞賛されることもない、アイツ。
75億人類のすべての業をしょって神降ろしの術式を飲みつくした上条当麻
その真相を唯一見た私がなぜかその事実を失念していた。
なぜだろう?本当に40日前の自分が理解できない。

まあいい・・しでかしたことはしかたない。私は、ひな壇の学園都市のお偉方を
眺めながら、挽回計画を立て始めた。ほかの子達に勝つために・・

・・・・・・・・・・・・

式典がつつがなく終わり、常盤台の理事長や校長、教職員の賞賛を受けつつ
私は式場を去り、忘れてしまった上条当麻へ会う準備をする。

だが・・上条当麻は信じ難いことにまだ昏睡しながら昏睡中だった。

昔の、12月以前の私と違うことは手段を選ばなくなったことだ。
学園都市復興ボランティアの長のような地位に祭り上げられた私は、書庫や
軍事クラウドへのフルアクセス権を有している。そんな私にとって一学生の
所在を掴むことなどたやすい。書庫にアクセスし、上条当麻の居場所を掴む。

同時に病院のサーバーにアクセスし、電子カルテも読み込む。
(いまだに・・原因も不明?あのヘブンス・キャンセラーが?)
私は信じがたいアイツの惨状に吐き気を覚える。

正直昏睡状態なら彼に会ってもしょうがない。だが・・
( やっぱり顔を見たい・・)数少ない真相を知る、もっとも彼に
近い人間として・・

・・・・・・・・・・・・
私は、あらかじめ掴んでいたアイツの病室へ急ぎ足で進む。

アイツは病床へ横たえ相変わらずスヤスヤ眠っている。蛙顔の医師の話では、いろいろ覚醒措置を試すが、カルテに書かれている通り起きない。ということだ・・

まるで上条当麻の魂が現世への復帰を拒否しているかのようだ。
心電図、血圧、脈動にはなんら問題なく、意識だけが現世への復帰を拒んでいる
そんな感じだろうか?
(ふふ・・だらしない顔・・)
まるで安ど感に包まれた彼は本当にすこやかに、すやすや眠っている。
(不幸な彼を現実へたたきおこす権利は私にあるのだろうか?)

私は反問する。アイツは本当に起きて幸せになれるだろうか?
不幸しかしらない上条当麻、その苛烈な人生にアイツは、アイツの魂はもはや
耐えられなくなっているのではないか?

だとしたら・・そのままアイツが自分の意思で起きようとするのを待つのが正しい
選択じゃないか?そう思う。

私はアイツの見舞いに持ってきた日持ちのきくチョコ・クッキーを机の上におき、そろそろ
完全下校時間も近いので帰ろうとする。

だが・・思わぬ声を聴き足を止める
「御坂美琴ちゃんですか?」
「あれ・・月詠先生?今日は・・」
身長135cmの小さな博識の教師を私は見つめる。
「上条ちゃんは私の大事な生徒です、なので毎日通っています」

「そうですか・・」
「上条ちゃんは、御坂ちゃんを大変気に言っていました。アイツはずごい、アイツには
何度も助けられたと」
(へえ?アイツがねえ・・私の事をそんなに評価していたんだ・・意外だな・・)
思わぬアイツの高評価に私は顔にほっこり笑顔を浮かべる。
だが、その後の月詠先生が語った思わぬ事態が私を動揺させる。
「正直・・上条ちゃんは今微妙な状況です」
「へ?」
「上条ちゃんは今留年の危機です」

「へ?・・でも彼は最後の晩餐事件の被害者では・・」
「ええ他の真面目に通っていた子には何ら問題はありません」
「ですが、上条ちゃんはもともと熱波事件の前から留年の危機でした・・」
「私は、上条ちゃんを守るためにいろいろやっていました。ですが・・今のままでは
、もうかばいきれません」
私はおかしくなる。75億人を3度も救った彼がたかが出席不足だけで断罪される。


そのしょうもなさに、呆れる。正当に評価できない大人とはいったいなんだろう・・
「ですが・・上条当麻は多くの事件で人類を・・・」
言いかけて私は口噤む・・人類を抹殺しようとしたアレイスターの所業は触れる事さえタブー私はそのことを改めて思い出す。
月詠先生はさらに痛いところ突いてくる。
「御坂ちゃんは、学業成績はどうですか?」
「まあ・・悪くはないとは思いますが・・」

「奥ゆかしいですね・・御坂ちゃんは・・ものすごく良いの間違いではないですか?」
「御坂ちゃんは人助けと自分の立場をちゃんと両立させています。しかも文句のつけようがないレベルで」

「ですが・・」
「ええ・・、ですからここからは私のお願いです」

「御坂ちゃんに上条ちゃんを託したいのです・・」
月詠先生がロリ顔に真剣な表情を浮かべる。
「少し具体的な話をしましょう・・正直期末試験で80%以上の評点がないと
留年させるしかありません」
「まず・・上条ちゃんを叩き起こし、しかも後2週間で80%の評点を取らせる
そんなことが可能なのは学園都市で御坂美琴しかいない・・とそう思ったわけです」

「ですが・・」
「御坂ちゃんは上条ちゃん大好きですか?」
まるで私の恋心などお見通しなようにみかけ10歳のロリ教師は話を続ける。
「私は残念ながらクラスの担当にしかすぎません・・ですが・・御坂ちゃんはどうですか?」
月詠先生が深々とお辞儀をする
「今上条ちゃんを救えるのは御坂ちゃんしかいません」

「月詠先生顔を上げてください」
「私は上条当麻に何度も命を救われました。ですから先生に頼まれなくても、私は上条
当麻を助けるためになんでもします・・ですが・・・」
「正直、あのシスターがいては・・無理ではないですか?」

「御坂ちゃんはなかなかするどいですね」
「そういうと思っていました。上条ちゃんが危機状態を脱するまで私が預かります」
(もう受けるしかないだろうな・・アイツは私の命の恩人だ)
「分かりました、微力を尽くします」

私は月詠先生に深々とお辞儀をして退室する。
まずはアイツを叩き起こす、そんな決意を秘めながら

私は、冥土返しの医師から上条当麻の症状を聞き、すべきことを頭に描き始める。
恐らく生半可ことでは起きないだろう。

普通の医学的な方法では無理だ。
しかもインデックスさえ方法を思いつかないとなると・・

(食蜂でも使うか・・それでだめなら・・・)

私は、アイツを、アイツの留年回避のためになんでもすると誓う
そして、・・その手段は選ばないと・・
まるでこの世を捨てたアイツを、この世へ戻すために・・私は走り始める。

2話へ続く










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