とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part01

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匿名ユーザー

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 御坂美琴の朝は早い。
時刻は午前五時三十分、まだ誰一人起きてはいないであろう女子寮で1人、身支度を整えていた。
半袖の白いブラウスにサマーセーター、灰色のプリッツスカート、名門常盤台中学の制服である。
肩まである茶色い髪に、愛用しているヘアピンを装着、鉄壁ガードの短パンを履き、よしっ、準備完了!
足音を立てないようにドアへと移動し、隣で眠るルームメイト(変態)を起こさぬようにそっと部屋を後にした。
こんな朝早くからどこへ何をしに行くのかというと、とある学生寮に住むとある幼馴染を起こしに行くためだ。







―――――――――――――――とある幼馴染の超電磁砲<レールガン>――――――――――――――――







 慣れた手つきで鍵を開け、未だ眠りの中にいる幼馴染の元へと向かう。
薄暗い部屋で寝息だけが聞こえる、よく眠っているようだ。無論、すぐには起こさない、時間はたっぷりとある。
 というのは美琴が早起きするのは、この寝顔を見るのが特権であり、日課であり、密かな楽しみだからである。
そうして、今日もじっくりと幼馴染の寝顔を見る。心なしか無防備なその寝顔はニヤついてるようにも見える。

(ニヤニヤしちゃって、どういう夢見てるのかしら?ほんっっっと鈍感で、フラグ体質で、ちょっとは私の気持ちに気
付いてくれてもいいと思うんだけど、バカ当麻!つついちゃえ、えいえい!)

 思わず頬をつつくと、うーんと少し顔をしかめ、つんつん攻撃を回避しようと、顔をそむけようとする仕草がたまらない。

(…………ちょっと可愛いかも♪)

 美琴はひとしきり寝顔を堪能すると、少々名残惜しいがエプロンを着け台所へと向かう。まさか寝顔を見る為だけに来た
のではない。半分はそうなのだが、もう半分は朝食とお弁当を作るためだ。冷蔵庫の中身を確認し、献立をささっと組み立
て調理に取り掛かった。

 トントントントンと子気味良い音がする。
しばらくすると美味しそうな匂いが漂い、とある幼馴染こと上条当麻の意識は急速に覚醒へと向かう。
目を開けると、ちょうど朝食を運ぶ美琴と目が合った。

「あっ、起きた?おはよっ!」
「お、おう…おはよう」

 目が合った事に気恥ずかしさを覚えたが、対する美琴の方は、特に気にすることもなく朝食の準備をしているので、何故だか
負けてしまったような気がしてならない当麻だったが、そんな気持ちを誤魔化そうと、リモコンを手に取りテレビの電源を入れる。
流れるニュースをBGMに気持ちを切り替え、顔を洗いに洗面台に向かう。ちらっと美琴の方を見ると、朝食の準備は終わったよう
でお弁当の盛り付けに入っている。毎朝の当たり前の光景なのだが、いい加減ひとり立ちしなければとも思う。
 美琴のいる女子寮はそれはもう規則が厳しいとのことであり、朝早くから抜け出してここに来ることがそもそもダメではないのだ
ろうかと言ってみたことがあるのだが、本人曰く刀夜さんと詩菜さんに面倒を任せられてる手前、アンタに何かあったら困るというこ
とで暖簾に腕押し、柳に風といった具合で全く聞き入れてもらえず慣性の法則のごとくずるずると続き今日に至る。

「はぁ…なんだかなぁ」
「どうしたの?」
「いや、なんでもありません」
「そ、ほらちゃっちゃと食べて、ご飯冷めちゃうでしょ」

 へいへーいと生返事をし、朝食に手を付ける。勿論、いただきますと食べる前に言うのは忘れない。
ちなみに今日の献立は、キャベツと卵を炒めたものと大根の味噌汁、晩御飯の残り物の肉じゃがである。

「ご飯おかわりいる?」
「おう、頼む」

 はい、と美琴からご飯をよそった茶碗が渡され、受け取るときにたまたま指先が触れ合う。
妙に意識してしまい、心拍数は一気に跳ね上がる。それを打ち消すかのように慌てて大根の味噌汁を飲み干し、気持ちを落ち着ける。
ほんのささいな接触なのだが、上条当麻にとって美琴という存在は幼馴染以上恋人未満であり、異性であり、気になる相手であり、と
にかく健全な男子高校生としては、その一挙一動に悶々としてしようがないのである。

(ぐぁぁぁあ、落ち着け落ち着くんだ落ち着くんですよ俺の心臓ーーーーー)

 そんな思春期特有の複雑な心境をしってかしらずか、美琴はテレビに目を向けていて、最近騒がれている爆弾魔事件をみて物騒な
世の中ね~とつぶやいているのだから、なんだか自分だけ振り回されているような気がしてならない。いや、確実に振り回されてるのだ
が、そう思いたくない葛藤というのか、プライドというのかそういうものが含まれてたりするのだ。

「ごちそうさまでした」
「はい、お粗末さまでした」

 食べ終わった食器を流し台へと運ぶ、作るのは美琴の役目で、洗い物は当麻がするという暗黙のルールがある。
しばらくゆったりとした時間が訪れ、時折カチャカチャと洗い物の音が聞こえてくる。特に面白いニュースもないので美琴はテレビの電源を
切り、ちらっと時計を見る、そろそろ寮に戻らないとまずい時間なのだがもう少しだけここにいたい。当麻と共有する時間が長くなればと思う。
 いつまでも幼馴染以上恋人未満で満足できるわけではない。むしろ想いは募る一方で、素直になれない自分に自己嫌悪することもしば
しば、けれど今の状態から一歩踏み出す勇気がないのも確かだ。付き合いが長いだけに、越えられない壁というものが出来てしまったとい
うか存在するわけで、その壁をぶち壊してくれるような幼馴染では無いから苦労するのである。

(ここで帰りたくないって言えば…って帰れって言われるのがオチよね、はぁ~リアクション一つ起こした
ところで、結果が目に見えてると言うのか、バカ当麻には伝わらないのよね、鈍感にも限度ってもんがあると思うわ)

 さらに言えばフラグ体質で、超がつく鈍感、本人は無自覚すぎるし、その度に相手をけん制し、手を伸ばす方の身にもなってほしいものだ。
無論、そんな乙女な心境をこれっぽちも知るはずもない当の本人は、お前そろそろ戻らないとまずいんじゃねーの?とそっけなく言うのだか
ら、ついつい電撃をお見舞いしてしまって、素直になれない気持ちは先延ばし、思っていることと言う事はまるっきり逆になる。

「ちょっ、何を怒ってらっしゃるので美琴さん?おわっ電化製品が死ぬから!ビリビリすとっぷぅう!」
「わかってるわよ、いつ戻ろうが私の勝手でしょ!それで何?早く帰れだなんて、気が利かないにもほどがあるわよー!」
「はぁ?早く帰らないとお前、朝食の時間決まってるんじゃ?それに寮監に見つかるとまずいだろ。
 えっ、違う?俺なにか地雷を踏んだ?踏みましたか?踏んだのですね?の三段活用って、ぎゃぁあああ!」

こうして今日も、幼馴染二人の日常は平和に?始まる。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「はい、これ当麻の分のお弁当ね」

 にこやかな表情でお弁当を渡すこの少女が、数分前に電撃を放っていたのとは同一人物と思えないほどの変わりようである。
非常に理不尽な話だが、電撃をお見舞いしたことですっきりしたらしい。先ほどの剣幕はどこへいったのやら、穏やかだ。
当たられた方は不幸だと思わず口に出そうになるが、口に出すとまた厄介な事になりそうなので口を噤む。口は災いの元なのだ。
 寮に慌てて帰って行く美琴を玄関先で見送ると、やれやれといった感じで学生服を手に取る。美琴が帰ってから、服を着替えるのも暗黙の
ルールの内の一つである。それもそのはず、上条当麻は一度失敗しているのだ。
 かつて一度だけ、美琴がいる前で着替えを始めてしまったことがある。別に全裸になるわけではないし、学ラン、Tシャツ、ズボンと着るだけの
作業。それがダメだったらしい、顔を真っ赤にして、アンタ、なっ何してるのよ!アタシがいるのにちょっとは恥じらいなさいよ!とぎゃぁぁっと騒が
れ、その時はまだ意識していたわけでも無く、幼少の頃に風呂にも一緒に入ったことがあるくらいのある意味、裸の付き合い?的なものがあった
わけで、当麻からしてみれば肉親や妹に近いそれだったのだが、ああこいつもお年頃なんだなぁ…と再発見。

 今思えば御坂美琴という幼馴染を、1人の女の子として見るようになった決定的な出来事だったかもしれない。
しばらく物思いに耽っていると、ピピッとメールの着信音、相手は勿論、美琴だ。内容は、セブンスミストで服を買うから付き合えとのこと。
断ると後が大変なので補習がなければ付き合うと返信し、そろそろ学校へ行きますかね~ってな具合で部屋を後にする。

二人の関係に微妙な変化が訪れるのは、空からふってきた少…もといベランダに干されていた少女と遭遇するところなのだが、それはまた別の機会に話すとしよう。


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