2013年度 総評案7

2013年総評案7 大賞:明日もこの部室(へや)で会いましょう

801 名前:総評案7 ◆6Hudehhe3c [sage] 投稿日:2014/02/14(金) 23:34:46.31 ID:iF7vznt00 [3/6]
ネタスレであることが、クソゲーオブザイヤーinエロゲー板(通称「KOTYe」)の本質。
2012年、ゲー無の極北『華麗に悩殺♪ くのいちがイク! ~桃色ハレンチ忍法帳~』と狂気のネタゲー『SEX戦争 ~愛あるエッチは禁止ですっ!~』による異種クソゲー決戦は、スレの在り方にまで議論が及ぶ大接戦の末に決着した。
終始話題を席巻したsofthouse-sealによる史上初の連覇は成るかに思われたが、新鋭スワンアイがそれを阻止したのである。
そして2013年。修羅の国における新陳代謝の激しさをひしひしとその身に感じつつ、住民たちは新たなクソゲー開拓に向けて第一歩を踏み出してゆく。

その一歩目で、いきなりスレは爆心地となった。
前年の大賞争いも終わらぬ1月のうちにスワンアイが動き、『リア充爆発しろ! ~変身能力手に入れたんだけど質問ある?~』(通称『ずっぷ』)を一番槍として送り込んできたのである。
本作の概は、コミュ症の主人公がヒロインの彼氏に変身して寝取っていくというものだ。
変身能力の入手経緯は非常に簡潔で、ネットで変身エステなるものを教わってから「そして…僕は変身能力を手に入れたのだった。」までの4行にほぼ集約。エロに直接関係ない部分は最初から前回のあらすじ並みに要約する、卓越した手腕が過剰に光る。
別人に成りすまして寝取る話ならそれが発覚する場面が山場だと考えるのが妥当だが、そんな常識はもちろん通用しない。
どのヒロインもいつの間にか事実を知り、なんとなく和解し、自分を騙した主人公にあっさり惚れてしまうのだ。寝取りの意味を理解できているとは到底思えない。
常軌を逸した展開は日常シーンにも存在する。
偽のハメ撮り写真に変身して脅迫すると女生徒同士のハメ撮り自慢に発展したり、失禁したヒロインを目撃した男子生徒達が揃ってオナニーを始め、それを見咎めた女教師が女生徒共々オカズに志願するに至っては、もはや理解しようとするのも馬鹿らしい。
念のため断っておくと、本作の舞台に特異な設定はない。にも関わらずこの惨状である。
挙句の果てに、エロシーンは尺が短くコピペだらけで構成されている最凶のワンパターン。
「ずっぷ!ずっぷ!ずっぷ!ずっぷ!ずっぷ!」とピストンを重ねて「ああ…もう出そう」で射精するのをベースに、喘ぎ声を混ぜて増量、少量の会話と地の文で形を整えたらエロシーン3分間メイキングの完了だ。
大差のないバリエーションを含めれば全エロシーンがほぼ変わらない、驚きの量産効率である。

毎回「ああ…もう出そう」とさりげなく射精タイミングを知らせたり、喘ぎ声を使いまわして声優の負担を軽減する細やかな心配りが忌々しい。
個別ルートはこうしたエロシーンをわんこそばの如く繰り返すだけであり、ボディブローの連発さながらに腹筋を崩壊へと導く。
この魔性のヘビーローテーションに洗脳されるスレ住民は後を絶たず、「ずっぷ」の旗のもとに集う門徒を増やした本作は、確固たる支持基盤を獲得するに至った。
かくして歴史は繰り返す。
昨年の『くのいち』がそうであったように、開幕早々に名乗りを上げた規格外の怪物が、そのまま門番となって人外魔境に君臨したのである。

早春を迎えるころ、ずっぷ教の専横許すまじと決起する者達が現れた。
余計なものを加えて台無しにする技術で繋がった、チームによる波状攻撃の開始である。

先陣を切った『星彩のレゾナンス』は特定ルートに限れば名作百合ゲーと評されたが、別ルートに入ると急に頭の悪い文章に変わる点や、ハメ技を使い続ければ必勝だが使わなければ必敗とバランスが大味過ぎるアクション要素が批判された。
次に発車した『淫獄痴漢列車』は、メーカー同士のコラボ作品でありながら根幹の設定が他社の丸パクリで、つまらないミニゲームやターゲットの中に女装した男が密かに紛れているなどの独自要素も誰得であった。
両作とも再プレイ時にはアクション部分をスキップできるため、一段と蛇足感が増す。

さらに、4月に入るとsofthouse-sealの『エルフと淫辱の森』(通称『エルフ』)が満を持してこの流れに乗じた。
sealといえば、まともなCGにゲーム性ならぬ芸無性を付加し、見事なまでにクソゲー化する手際で左に出るもののない強豪である。この状況を黙認するはずがなかったのだ。
本作は、前年の限りなく大賞に近い次点『くのいち』の流れをくむ作品で、移動以外のアクションは半減し敵の遠隔攻撃がほぼ無くなってさらに簡素になった。
攻撃システムは面倒な武器切り替え方式に改悪されたが、ボス戦は被弾後の無敵時間にゴリ押しすれば勝てるため、そもそも切り替える必要がないという虚しい親切設計。
画面手前に配置された木や草がせっかくのミニアニメを隠してしまったり、陵辱イベントが敗北時ではなくステージ開始前に強制発生するなど、どこか的外れな印象も否めない。
とはいえ、エロCGやミニアニメ含む回想モードなど最低限あるべきものは備わったため、最終的には「いつものseal」の一言で片付けられた。

ならば真のアクションを見せてやると出撃したのが、常連FULLTIMEの『UNDEROID -アンダロイド-』だ。
本作は3Dガンシューティングで、操作キャラの行動パターンは非常に豊富なのだが、それを活かす場が用意されていない。ジャンプはできても飛び越える物体がない、雑魚が猪武者ばかりで近寄らせずに各個撃破するしかないといった具合である。
ダメージを受けると服が脱げていく粋な演出も、自然回復を活用しなければ全裸になるまで体力が持たず死亡するため煩わしい。
CG方面は、今にも光線を吐きそうに怪しく光るヒロインの口元、髪・怪物の長い舌・チ○コモザイク・その他諸々がヒロインの胴体を貫通、足を挫くとバルーンアート並にねじれる股関節など細かいツッコミどころが満載。
ほかにも、説明不足に伏線放置・会話はテンポもセンスも悪いが読み飛ばし不可・テキストとCGの不整合・不自然さの際立つリピート映像など、気になり始めると止まらない。
本作はゲームとして破綻をきたしてはいないものの、個々のクソ要素はスライム級でも数を揃えればキングになり得ることを示した。
怪物や魔物と呼ぶには可愛げがありすぎたのも事実であるが。

梅雨入りを迎える頃、現実逃避の度が過ぎたのか想定外の変調をきたした者がいた。
堅実な作品で一定の評価を得ていたはずのEx-iTが、『逃避行GAME』(通称『逃避行』)を投入してまさかの進撃を開始したのだ。
前作に続いて二連続となるマスターアップ宣言後の延期は笑えない失態だが、それも中身に比べれば前座に過ぎない。
起動と同時にプレイヤーを出向かえるのは、「START」「LOAD」「END」の三種というファミコン並みの項目数を誇るタイトル画面。
本編に入ると、一部ボイスの非再生・背景の暗転・特定のヒロインルートに入れないなど多種多様なバグが乱舞する。
とりわけ飛び抜けた存在感を示したのが通称「イラッシャーマセーバグ」だ。これはモブの台詞がすべて「イラッシャイマセー」と女性の音声で再生されるバグで、数々の珍現象を巻き起こしたのである。
「イラッシャイマセー」の応酬だけで会話を交わすモブ達。
テキストは「ありがとうございました」なのに音声は「イラッシャイマセー」
いかつい殺し屋が何を言われても「イラッシャイマセー」で押し通している最中に、地の文で「互いに互いの言葉を押し付けているだけ。これは会話ではなかった。」と真理が示される。
などなど、デバッグ能力皆無の烙印と引き換えに笑いの死に花を咲かせる悲壮な自爆技に、住民達は喝采を惜しまなかった。
「イラッシャイマセー」は「ずっぷ」と並ぶ流行語として定着し、本作の代名詞ともなっただけでなく、マスコット的なAAまで誕生して長く愛されていくことになる。
だが、その死に花は散らずに腐るラフレシアだった。
致命的なバグはすぐに修正されたが問題はそれだけではなかったのだ。
ヒロインとの思い出を主人公が最後まで思い出さなかったり、主人公と実妹のキスシーンを目撃した妹の親友がそのままフェードアウトしたりと、シナリオには伏線の未回収が目立ち、当初の予定からシーンを削減したのではないかと邪推してしまう。

さらにメーカーの対応も不誠実を極めた。
延期理由は予約特典の不具合だったはずなのに、蓋を開けてみれば本編もバグまみれ。
特典内容は回想モードにヒロイン視点の追加だが、そもそも本編に回想モードが無いため機能しようがない。
その後もパッチ配布の告知と延期を何度も繰り返した末、ようやく改善されたときには発売から二ヶ月が経過していたのである。
一連の騒動はメーカーのリアル逃避行が疑われるまでに発展し、今後に大きな不安の影がよぎるのであった。

次いでKOTYeの舞台に躍り出たのがShelfから発売された『Qualiaffordance-クオリアフォーダンス-』(通称『クオリア』)だ。
最大のウリは全編アニメーション仕様なのだが、肝心のエロシーンはムービーとして収録されており、等速で前戯から見るか全部スキップして終了するかの二択なので非常に不便。
作画崩壊や低画質との相乗効果で、とても実用に足るものではない。
また本作は一見ありふれた学園萌えゲーだが、それは共通ルートの間だけであり、個別ルートでは想像を絶するヒロインたちの裏の顔が判明してしまう。
世話焼き幼なじみは友人の仇を探すため売春斡旋をしているスーパーハッカー。
小動物系ロリは金で暗殺を請け負う凄腕のスナイパー。
高飛車巨乳は悪徳宗教団体の傀儡教祖。
そして主人公は目前のピンチに応じて都合良く進化する「視る力」を駆使し、それ以外はただの学生ながら悪の組織相手に獅子奮迅の大活躍。
ルートに入るやいなやヒロインが自ら化けの皮を剥がし、中二妄想並みの超展開を見せつけられては悶絶必至である。
しかもどのルートでもヒロインの誰かが殺されるが、主人公には気づいてもらえずさらっと流されるモブ以下の扱いで、物語は全然盛り上がらず後味の悪さだけが残る。
ならばと唯一本人に隠し事のない義妹ルートに救いを求めても、待っているのは姉が正気を失っていることが発覚する鬱展開。
ほかにも荒唐無稽で説明不足な場面は後を絶たず、ツッコミ練習用教材としては極めて高い有用性が認められた。

本格的な夏を迎える頃、高らかに鳴り響く行進曲の調べとともに声なき雌ライオンが姿を現した。
MBS Truth -Cherish Pink-の『クラス全員マヂでゆり?!~私達のレズおっぱいは貴女のモノ・女子全員潮吹き計画~』(通称『マヂゆり』)である。
タイトルから察せられる通り本作はおバカなノリの百合抜きゲーで、全編にわたるヒロインの台詞=ボイスの密度の低さが最大の特徴だ。
会話文偏重に対する反骨精神の現れにしても限度があるし、よりによってエロシーンにまで持ち込んだのが失策だった。
顕著な部分では数十クリックの間ボイス無しで、間を繋ぐのは荒ぶる雌ライオンが心に潜むおバカ主人公のエロ独白。
百合ゲーなのに主人公にボイスが無い不満を「キモいから声無くても良いや」と霧散させる発想は斬新だが、
妙に壮大かつアップテンポで雰囲気をぶち壊すBGMと合わせてエロシーンの実用度を下げてしまったのである。
日常シーンでも傾向は変わらず、主人公が覗き・盗撮・服泥棒の隠密変態単独行を楽しむだけで会話のない場面が目立つ。
度々挿入される幕間劇「ちびキャラフリートーク」ではヒロインたちが堰を切ったように喋り出すが、やはり無音声である。
ボイスの少なさを工夫でどうにか補おうとした痕跡は見られるが、それが逆に喋らない印象を強くする皮肉な結果を招いてしまった。
余談ではあるが、誤クリックしやすい位置にある「NEXT」機能は、未読であっても次の選択肢まで強制スキップしゲーム終了以外に中断方法がない。
この百合ゲーにあるまじき漢仕様も批判の対象となった。

秋から冬にかけては、数々の有名ブランドが意表をついて大攻勢に転じた。
信頼と実績を金に変える現代の錬金術士達がばら撒いた大型地雷群は、哀れな爆死者の数を急激に増やしていくことになる。

Lassの『少女神域∽少女天獄』は、冗長な観光案内と設定説明の中にわずかな偽の伏線をばら撒き、それを砂金採りの如く拾い集めさせてから投げ捨てる鬼畜の所業を見せつけた。
構成はいわゆる金太郎飴であり、どのルートでもヒロインがすげ変わるだけで展開は代わり映えしない一本道。行き着く先も、ヒントすらろくに与えないまま終了する
ちゃぶ台返しフィナーレで統一されており、内容も悲劇的で救いがない。
「情報量を減らして主要人物は殺しておけば、あとは勝手に深読みしてくれる」とでも言わんばかりの杜撰な作風が支持されるはずもなく、
買取価格が一時100円にまで下落して本作の業の深さを端的に示す結果となった。

SAGA PLANETSの『カルマルカ*サークル』は、支離滅裂な設定・説明不足・ご都合主義の合わせ技でプレイヤーの精神を蝕む。
ストーリー展開の都合に合わせて設定が頻繁に付け外しされるのが主な原因で、そんなことをすればシナリオが不整合の嵐となるのは必然であろう。
七つの大罪をモチーフにした「カルマルカ」という超常現象にまつわる設定が物語の主軸であったはずが、ルートによっては忘れ去られた挙句に自然消滅してしまう。
その代わり分岐ごとに新設定を追加し、絵に描いたような超展開が繰り広げられるのだ。
例えば、追手から自分を逃がすために瀕死の重傷を負った主人公に対し、ヒロインが永遠の愛を誓いつつ置き去りにして去る展開は、プレイヤーにシュールな苦笑いを提供した。
またルートごとに至るところで設定が食い違っており、説明不足も重なってどれが真実なのかすら判別できない。
開かずの間は、あっさり開く。

条件付きで怪力を発揮するはずの主人公は、無条件で小石を粉砕。
父親に束縛されていたはずのヒロインは、父親から関心を持たれていない。
カルマルカに執着していたヒロインが言うには、「カルマルカなんてどうでもよくね?」
これらがほんの一例に過ぎないほど、矛盾は縦横無尽に散らばっているのである。
そして、整合性がとれているわずかな部分は純粋につまらない。
こうした散々な出来栄えは、選評者によって「笑いどころのないチャージマン研」と斬って捨てられている。
全6ルートに対してシナリオ担当を7人揃える人海戦術がもたらしたものは、複数ライターの弊害だけであり、
大罪を背負いし七人の罪人の称号は彼らにこそふさわしい。
悲惨なシナリオはプレイヤーの憤怒を呼び起こしたが、それに反して本作のテーマは「ハッピー&スマイル!」である。
あまりのギャップが逆に受けてこのフレーズもスレの常套句に加わり、AAも交えつつ怒れるプレイヤーをなだめる役割を担ってゆくのであった。

戯画の『バルドスカイゼロ』は、製作陣を一新した影響で、シナリオ・アクションともにシリーズものとして手探りの域を出ない試作品状態で発売されてしまった。
タイトルを継承していながら前作とは毛色が違いすぎるだけでなく、どこもかしこも劣化。
あまりにも遠回しで冗長な会話や、続投キャラへの心ない挑発がプレイヤーの神経を逆撫でする。
アクション部分も、醍醐味であったはずのコンボの概念が消滅するなど完全に別物である。
終いには謎を大量に残したまま終了して続編の制作を発表。事前告知が一切ないどころか、
単体で完結しているかのように匂わせておいて、実際は事実上の分割商法だったのだ。
これでは、未完成の習作で儲けるために、傑作の名を冠してシリーズファンを騙したと言われても仕方がない。
もっとも、これらの不満点の多くは「いくらなんでも変わりすぎ」という類のものであり、
先入観なく入ってきた新規ユーザーにはそれなりに受け入れらた部分もある。
前作への思い入れが強いほどハリウッド映画版ドラゴンボールと同種のコレジャナイ感が増大する本作は、
ファン殲滅用の指向性戯画マインとして猛威を振るったのである。

そしてALcot ハニカムの『赤さんと吸血鬼。』は、好きになる過程の薄っぺらさとダイジェスト並みのぶつ切り展開を兼ね備えたキングクリムゾンシミュレータであった。
次々と脈絡なく股を開いていくヒロイン達と、日常シーンの合間に突然おっぱじめる構成は「エロシーンによる頻繁な奇襲」と評されている。
「夜の寮で委員長と停電ハプニング中に、突然昼の学園屋上にワープしたと思ったら、仲良くなった覚えのないメイドが尻を突き出してくぱぁ」
という大転換を3クリックの間にやってのける「停電くぱぁ」はその筆頭であり、プレイヤーの頭上に特大のクエスチョンマークを点灯させた。

これらに前後して、お約束を無視するタイプの地雷発見報告もいくつか挙がった。
『モテすぎて修羅場なオレ』は、四股状態から一人を選ぶと残り全員が引き下がって修羅場にならないタイトル詐欺。
公式サイトでもクズ呼ばわりされている主人公は本当に真性のクズで、不快感だけをプレイヤーにもたらした。
『ノブレスオブルージュ』は女装+双子入れ替わりがテーマにもかかわらず、エロシーンで主人公をのっぺらぼうにして女装モノの強みを自ら殺し、
ヒロインに惚れた途端に後先考えず正体をばらして公認カップルになるなど入れ替わりモノの仁義もわきまえていない。
シチュエーションの不文律を理解せずに既存品の上っ面をなぞっているだけでは、クソゲーとの誹りを免れまい。

こうして、本格的な冬を迎えるころには粒揃いのクソゲー達が揃い踏みしたが、それでも住人たちはどこか物足りなさを感じていた。
原因は金城鉄壁の門番『ずっぷ』による絶対支配である。
その絶大なインパクトと確かな地力の前では、並のクソゲーだとどうしても小粒に見えてしまうのだ。
しかし、安々と奈落へのポールトゥウィンを許すほど修羅の国は甘くない。
一年を通して新鮮な怪物・魔物が湧いて出る暗黒領域においても、格別に瘴気の濃い時期はまだ残されているのだから。

そして、やはり年末の魔物はやって来たのである。

その魔物は、年末の瘴気にさらされて深化を遂げたEx-iTから送り出された。
またもやマスターアップ後に発売を延期し、これで三作品連続という前代未聞の不名誉記録達成と共に世に出たのが『雛といっしょ』(通称『雛遺書』)である。
前作『逃避行』の件も含め、発売前からいわくつきの本作には嫌な予感が渦巻いていたが、はたしてそれは現実となった。
パッケージからしてくたくたというありえない先制パンチに耐え、開封してみるとまず目に入るのがお詫び状。包装の異常はこれを急遽封入したのが原因であった。
そしてそこには、不具合によりプロローグ終了後すぐにゲームが進行不可能になってしまう旨が記載されていたのである。
前作は予約特典が機能せずフリスビーと揶揄されたが、同じことを今度は本編ディスクでやってのけた本作は「ゲー無」ですらない「 ー 」(横から見たフリスビー)の肩書を得た。
商品未満の完全な欠陥品と知りながらの発売強行に「新たな伝説の第一歩か!?」とスレは一時騒然。またしてもリアル逃避行GAMEの開始が懸念された。
その後のメーカー対応は「電気街祭りを優先」「原因がわからない」「ミラーサイトの担当者が不在」といった
小学生並みの言い訳とパッチの公開延期を毎日のように繰り返すお粗末さで、かえって火に油を注ぐ結果となる。
しかし、発売直後に本作を手にしているほどの勇気ある精鋭達は動じなかった。
パッチを解析して追加データの痕跡を発見し、未完成品である事実を不具合と偽って隠蔽した疑惑まで指摘してみせたのだ。
いかにも年末の怪しげな風情が感じられる本作は、血統書付きの年末の魔物であったと言えよう。
発売から一週間あまりを経て配布されたパッチによって本作は一応の完成品となり、明かされた中身はただ薄いだけでネタ性も無かったため、ようやく事態は沈静化した。
だが、失った信頼を取り戻すには至らなかったことは言うまでもない。
かくしてEx-iTは、「逃避行」から「遺書」へと繋げる不吉コンボによって一躍汚名を轟かせたのである。

どうにか魔物も沈静化され、気を緩めていた住民達を待ち受けていたのは予期せぬ展開であった。
年末の魔物を踏み台にして成り上がらんとばかりに、息を潜めて機をうかがっていたクソゲー達が一斉蜂起したのである。
全選評の実に半数近くが年末以降に集中する異常事態となり、その中にはかつての王や遅れてきた怪物の姿もあった。
年末ですら、ただの始まりに過ぎなかったのだ。
例年なら予備期間でしかない1月はまさかの主戦場となり、密集状態で喰らい合い押し退け合う大混戦のバトルロイヤルが開幕。
まるで『ずっぷ』に対抗できる真の強者を選定するための儀式であるかのように、日に日に激しさを増していくのであった。

大乱闘の中でひときわ異彩を放ったのが、Red Labelの『JK辱処女~純粋な心の持ち主ほど処女を好むという法則~』(通称『枝豆』)だ。
Red Labelはあのアーベルソフトウェア系列のブランドである。2011年の大賞獲得を最後に姿を消した悪名高き王は滅んでいなかったのだ。
本作を起動するとロゴ表示よりも早くヒロインの嬌声が響き、本編では主人公と出会う場面よりも前に二人のエロシーンが存在するなど、ところどころ時系列がおかしい。
主人公はJKに産ませた我が娘の処女までいずれ奪おうとするため、「純粋な変態」とでも解釈しない限りサブタイトルと完全に矛盾する有様だ。
CG差分は地の文との齟齬が頻発するほど異常に少なく、閲覧モードでそれらをすべて別枠表示して見かけのCG総数を水増しする手法は相変わらずであり、むしろ健在アピールに繋がった。
そして本作で最も注目を集めたのが、圧倒的なインパクトを誇る枝豆CGである。
女性器の隠喩としてエロシーンの真っ最中にでかでかと表示される形で初登場。
その後も腕の代わりに注射されたり主人公のイチモツの例えに使われたりと異次元の芸術的センスを誇る演出へと活躍の場を広げ、ついには本作そのものの象徴として認識されるに至った。
前述の通り少なさに定評のあるCG差分も5枚と枝豆にあるまじき好待遇で、製作者の思い入れの強さが伺える。
豆の力で周囲の鬼どもを蹴散らし存在感を見せつけた本作が、古豪の復活を告げる特大の豆鉄砲となるか否か。今はまだ、神のみぞ知るといったところか。

クソで血を洗う乱戦はまだ終わらない。
『マヂゆり』の姉妹作にあたる『聖ブリュンヒルデ学園少女騎士団と純白のパンティ』は、やはり音声の少なさをメイン武器に採用してエントリーに至り、
全社を挙げてコスト削減に取り組む姿勢に注目が集まっている。
『妹*シスター -My sister-』は、「主人公の部室」「いい肉な妹日」など、エキサイト翻訳未満の滑稽な日本語で脚光を浴びた。しかし義妹を実の妹と詐称して実妹好きを怒らせ、
ほかのヒロイン達はそもそも妹ですらないため妹ゲーとは言い難い。

続いて参戦したのはGLaceの『Timepiece Ensemble』だ。
ほぼ教室だけの狭すぎる舞台で単調な話が延々続く共通ルートは拷問を想起させ、個別に入れば超展開という典型的なシナリオ地雷である。
しかも、過去作から引っ張ってきたキャラをキーパーソンに据えておいて説明は省いているため、本作単体では理解できない部分が必ず残ってしまう。
同一の場面で下着の色が変化するだけでなく地の文とも食い違っているなど、テキストとCGの不整合まで目立ち、
納期に追われ突貫作業ででっち上げたと疑われても仕方のない完成度であった。

さらに、終盤には3Dゲーが狙いすましたかのようなトライアングルアタックで乱入してきた。

『プレミアムプレイ ~ダークネス~』は、全9パターンあるストーリーがほぼ同内容かつ一本道で、睡眠導入剤代わりに使えそうなほどだるい。
Hフリーモードは「アアッアッアッアッあっははおもしれーなー」「おほぉおおおぉイイノッモノスゴクタノシーワー」など、
繋ぎ・抑揚・内容のトリプル違和感ボイスが10秒足らずでループするマインドブラスト仕様であった。

『3D少女カスタムエボリューション』は2008年に発売された『3Dカスタム少女』の後継作だが、
前作の命綱であった有志による豊富な独自開発データは一切流用できない。
そのくせ、代わりに追加されたのは劣悪な操作性でゴーストタウンを彷徨う箱庭要素のみ。
ピストン毎にボイスがリピート再生されるせいで「気持ちいい」が「キモッキモッキモッキモッ」になるなどの笑いどころも修正された今となっては、実質的に前作の劣化版である。

『いたずら学園』は、リアルタイム痴漢シミュレーターを謳っていながら痴漢要素ゼロ。
モブがいてもお互いに無視を決め込み、電車・バスや教室など場所がどこだろうと隠す気のない堂々たる性行為を始めるのである。
同じ状況なのに会話内容がランダムすぎて支離滅裂、絶頂時にヒロインの頭が消えるバグ、寝ているヒロインによる睡姦ならぬ夢遊病ご奉仕、
乗り物から見える風景が上から見ると書割、など全体的に投げやりで、まともなのは制服カスタムだけであった。

こうした激しい闘争の真っ最中に、夏から眠り続けていた不発弾が発掘される。
ミルクプリンの『明日もこの部室(へや)で会いましょう』(通称『部室』)である。
公式サイトのブランド名ミスや少なすぎるサンプルCGから漂うやる気の無さから、ありきたりな駄作に違いないとスルーされっぱなしだったのだ。
しかし気まぐれに爆破処理が行われた結果、実はゾンビウイルスを内包した未知の細菌兵器だと発覚する。
第一報の着弾後まもなくパンデミックが発生し、情報不足も重なってスレが狂騒の坩堝と化していく中、緊急出動した対策班によって解明された全容は想像を絶していた。
タイトルバーにいきなりの誤植、クイックセーブ&ロードやバックログの一括表示さえ出来ない化石システム、スキップ開始のタイミング次第で延々とこだまするBGV程度はまだまだ序の口。
公式サイトで公開されている人物設定の大半は、本編に反映されていないエア設定か矛盾している嘘設定だと判明する。
主人公の名前からして間違っているあたりから、いい加減さは推して知るべしであろう。
システムはヒロイン選択式ADVだが、基本に徹して同じヒロインを選び続けると共通バッドエンドに直行する理不尽仕様だ。
原因は、見ただけで密かにフラグを折られる罠イベントである。
内容はヒロインがモブ男と一緒にいるのを目撃するだけで、発生しても以降の展開には何の変化も現れず、ごく普通に進行していく。
唯一の例外が、親睦を深めたはずのヒロインに最後の最後で手の平を返されて振られることなのだ。
これではバッドエンドになる理由に気付くのが困難で、打開するまで繰り返し見せられる結末が主人公の身投げであることも相まってプレイヤーを苦しめた。
シナリオはドラマ性皆無の共通ルートが大半を占めており、寒いパロディが空気を読まずにエロシーンまでも侵食している始末。

また、写真部存続のために部員達が写真展か学園祭での入賞を目指すところから始まっていながら、それらの本番の様子は最後まで全く描かれない。
起承転結を完全無視する0クリック学園祭という新境地を開拓した。
代わりに何が描かれているかというと、奥手なはずの主人公が序盤であっけなく女子部員達と打ち解け、
学園内でエロ妄想を声に出して垂れ流せるほどに成長し、果ては裸族のDNAを覚醒させて性の権化へと進化する物語である。
個別ルートに突入するなり部活動そっちのけで性交に耽り始め、あっという間に月日は流れてエンディング。
これが本作の基本パターンだ。ただし、サル化してすぐ後日談に飛ぶためエロは薄くCGも少ない。
主人公の成長はメインヒロインルートで特に著しい。
卒業後に二人して山奥の洋館での隠遁生活を始め、一切外出せず常に全裸で累計二年もSEX三昧の日々を送っているのだ。
この時点ですでにプレイヤーを置き去りにする瞬発力を発揮しているが、さらにここからあさっての方向へ離陸してしまう。
続くお気楽な会話の中で、引きこもっている間に街が細菌テロで壊滅していることが唐突に明かされるのである。
そして、それでもなぜか招待状が届いた学園祭に参加するべく街へ出ようとする場面で
「――果たして、無事に明日、部室で会えるかどうかは、誰にも分からない」
と、無理やりタイトルに繋げる圧倒的な力技によって本作は幕を下ろすのである。
この「裸族ニートからのバイオハザードエンド」には住民の誰もが己が目を疑い、茫然自失となった。
最後に主人公の名前を100文字以上に設定できるバグまで発見され、メッセージウィンドウいっぱいに独自の台詞やAAまでも表示可能なネタツールとしても開花する。
見事にオチまでついて、まさに至れり尽くせりの充実度であった。

以上、主だったエントリー作品の紹介を終えたところで2013年の結果発表に移ろう。
次点は、
『リア充爆発しろ! ~変身能力手に入れたんだけど質問ある?~』
そして大賞は、
『明日もこの部室(へや)で会いましょう』
とする。

今年のKOTYeは、個性とネタ性に富んだ骨太なクソゲーが跋扈する群雄割拠の様相を呈した。
選りすぐりの英傑たちに優劣を付けて大賞を選出するためには、やはりKOTYeの基本理念に頼らざるをえない。

まず「その年でいちばんクソだったエロゲーを決める祭典」であるからには、絶対的な品質の低さが大前提となる。
その点『ずっぷ』と『部室』は、エロゲーの中核であるシナリオとエロに単調・薄い・電波の三重苦を抱えており、バグやメーカー対応の悪さに頼らずとも、クソ要素の基盤は確固として揺るぎない。
さらにそれらが一周して笑いに繋がってるだけでなく、常套句の汎用性や名前バグの応用力の高さは、スレ住民によって活用されてさらなる笑いへと進化した。
もう一つの趣旨である「クソゲーを掴んでしまった怒りや悲しみを笑いへと昇華する」にも合致しているのだ。
ここまで見事にスレの本旨に沿っていることこそが、両作が大賞格である確かな実感を住人たちの胸に刻み得た最大の要因であろう。
類似点の多い両クソゲーは、一部で方向性を異にしている。
『ずっぷ』は薄さと単調さを中核に据えており、ループによる中毒性や電波出力は相当なものだが、比較的狭い範囲に収束してしまった印象は拭い切れない。
対して『部室』は、理不尽・物語の放棄・化石UI・設定詐欺まで備えた横の広がりに、それらが織り成すクソ要素の深い谷、ネタ性が突き出した高い山による縦の広がりをも併せ持つ。
この「クソゲーとしての雄大さ」が、両雄の勝敗を決定づけた。
クソさと笑いの大パノラマを内包している『部室』は、まさしくKOTYeを体現した存在である。
おまけに名も無き修羅の立場で歴代の王者達を圧倒し、修羅の国の底知れなさをも示してみせた。
その功績と栄誉に報いるには、大賞の授与をもってするしかあるまい。

3作品ほど選定するのが慣例となっている次点が1作品なのには理由がある。
他の追随を許さず本当の意味で大賞の座を争ったのは、『部室』と『ずっぷ』だけだと判断したからだ。
決してほかのクソゲー達が弱かったわけではない。
むしろ逆で、今年は12の月からクソゲーが名乗りを上げる全月制覇が達成されたほどの豊作であり、個々の実力は折り紙つきである。
『少女神域』『カルマルカサークル』『枝豆』あたりはクソ要素か話題性のどちらかだけなら大賞格にも匹敵するし、『クオリア』や『マヂゆり』はそれなりに両要素を兼ね備えていた。
それでも、総合力で『部室』『ずっぷ』の両作を上回っていたかとなれば、答えはノーであろう。
もはや相手が悪かったとしか言い様がない。
また、『バルドスカイゼロ』のファンに対する裏切り行為の数々や、『逃避行』『雛遺書』のバグ(に見せかけた未完成商法)とその後の対応に代表される企業倫理の低下は、確かに目に余る酷さであった。
しかし、どちらかと言えば「クソなゲーム」よりも「クソなメーカー」であり、スレの本旨とは齟齬があることも否めない。
よって次点は文字通り「大賞に次ぐ作品」であった『ずっぷ』のみに授与することで、一年を通して存在感を示し続けた優秀な門番の名誉を讃えるものとする。

今年は、シナリオが重大な欠点になっているクソゲーが主流であった。
エロゲーの大部分がADV、すなわち読み物であるからには必然ともいえるが、それにしてもあまりに多過ぎた。
ただ好みに合わなかっただけならクソゲーとは呼べないが、設定の破棄・放棄・後出しや前後矛盾といった物書きの基本的なタブーを破り放題では、読み物として失格扱いされても致し方あるまい。
初動売り抜け作戦で重要な見栄えを最優先して中身は軽視した結果だとすれば、手抜きや期待はずれにも程があると不満が噴出するのは無理からぬことだ。

そうでなくとも、クソゲーを批評するからには否定的な論調になるのは必然でありやむをえない。
しかし、だからこそ「笑いに昇華する」という理念を今一度大事にするべきであろう。
「ネタスレだから」を免罪符に気に入らないものを罵倒するだけでは、否定自体が目的となって公開処刑ごっこに堕しかねない。
無と負が蔓延る不毛の大地にさえも、笑いという正の要素を花開かせて「ネタスレだから」と胸を張る。これからも、KOTYeはそんな紳士たちの集う社交場であってもらいたい。

スワンアイの君臨、sealの衰退、アーベル復権の兆し、様々な新勢力の台頭、そして大賞をさらっていったダークホース。
今年もまた、入れ替わりが激しく先の見えない大荒れの一年となった。
歴戦のシットメーカー達はすでに次弾の発射に向けて動き始めており、激動の時代が続くことを予感させている。
図らずもクソゲーを掴んでしまうかもしれないし、怒りや憎しみに我を忘れるかもしれない。
そんなときに思い出してほしい言葉を、2013年KOTYeの結びとして贈ろう。

「――果たして、無事に来年、クソゲーに克てるかどうかは、誰にも分からない。
 それなら、この場所(スレ)で会いましょう。」

最終更新:2014年08月04日 02:57