夏彩恋唄 選評

ブランド すたじお緑茶
ジャンル 嘘から始まる恋愛ADV
メディア DVD-ROM
原画 るちえ、ぐれーともす、広瀬まどか(SD原画)
シナリオ めちょむちょちょ、氷雨こうじ
発売日 2016/11/25
定価 9,504円(税込)

選評

【2016】 クソゲーオブザイヤーinエロゲー板 避難所 10本目
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/game/58331/1481291868/
773: 夏彩恋唄・選評 ◆PxiXndMqW. :2016/12/27(火) 12:59:50 ID:v6mSBA2w
言いたい事は色々あるのだが、まずは筆者の初回プレイ時の衝撃を可能な限りそのままお届けしたい


物語は学校の屋上から始まる。放課後に主人公を手紙を受けて呼び出されていた
「これは告白かドッキリか」と戸惑いながらも待っていれば、学校でも有名なエアビッチ(ヒロイン1)が現れる
ビッチは「手紙なんて出してなんなの?」と主人公へ訊ねるが――手紙は二通、それぞれ別の人物が出しており、

ビッチ←男子生徒モブ「好きです!付き合ってください!」
主人公←女子生徒モブ「主人公の親友君を紹介してください!

という内容だった。ここでOPムービーの挿入となる
+ ...
【選択肢・オープニングムービーを再生しますか?】
→再生しない
→再生する

初回プレイ時にも関わらずスキップも選択可能とは、老舗メーカーならではの心づくしが憎い。否が応にも期待が高まらずにはいられない
再生させてもクリックで飛ばせるため、あまり嬉しくない事も付記しておく
なおよく訓練されたkotyの諸兄らは「クリックスキップ可能なのになんでわざわざ選択肢作ってんの?」と疑問に思われるだろうが、
その答えは後々明らかになる

凹んだまま下校し、幼馴染みの女の子(ヒロインその2)の家がやってる喫茶店へ立ち寄り、愚痴を聞いて貰って帰宅する
家の前でばったり実妹(ヒロインその3)と出くわし、家の中へ。荷物を置く前に雑談をしているとチャイムが鳴り、女の子が訪ねてくる
彼女は主人公の家が決めた許嫁で一度はポシャった婚姻をももう一回したいらしい(ヒロインその4)

緑茶お馴染みの「プロローグ終ったら一ヶ月スキップ」は残念ながらなく、
「作中時間初日、放課後の数時間で全ヒロインが出そろう」と、時間が無いユーザーに優しい展開である

翌日の放課後、エアビッチ(ヒロインその1)らが偶然、主人公の幼馴染みの家の喫茶店へ訪れ主人公らと鉢合わせになる
ビッチのツレ(オッサン)が現れ、遠巻きにして何となく話を聞いていると、彼はビッチパパの気に入った部下で二人を引き合わせたと
主人公は許嫁の家が派遣してきた弁護士と相談中である
ヒロイン4と出会ったのは昨日を除けば子供の頃の話で、縁談を決めた曾祖父は数年前に他界しノーカンになってると思っていたから

で、話を破談にしたいビッチ、「私、彼と付き合っているんです!」と主人公を名指しで宣言
同じく許嫁の件も破談にしたい主人公も乗っかる事にする
他のヒロイン三人に詰め寄られ、どうするんだ――と、いう所で選択肢が入る

【選択肢・オープニングムービーを再生しますか?】
→再生しない
→再生する

おっとDucaさんのボーカルで爽やかな夏の到来を予感させる素敵なOPムービーがまた見られるぞ!
さっき『再生しない』を選んだユーザーが後悔しないよう二回もOPムービーを入れる
やはり老舗メーカーならではの細やかな心配りに頭が痛くなってきたバファリンのもう
ちなみに前選択肢でスキップしようが最後まで見ようが、どちらの場合でもこの選択肢が出る

喫茶店で自己紹介や主人公を貶すビッツレ(弁護士が間へ入って名刺を渡し態度が変わるが)
喫茶店を出てビッチと話を合わせ、「じゃお互いに都合が良いので現状維持」という事になる
家へ帰って妹や幼馴染みに冷やかされつつ、翌日。朝のホームルームで許嫁が転校してきた!
ここでも選択肢が入る

【選択肢・オープニングムービーを再生しますか?】
→再生しない
→再生する

老舗メーカーならでのは(以下略
てかさっきからコピペミスしてんじゃないから安心してほしい。俺は全く安心できないが
ちなみに1回目も2回目も3回目も流れるOPムービーは全く同一のものである

転校したての許嫁は「主人公の婚約者である」と宣言し、主人公の株価が暴落
またビッチの友人(父親がビッチの部下)から「本当に付き合っているのか調べてこい」と言われ、デートする事に
チンピラに絡まれるハプニングはあったものの楽しくデートをする。またこっそりつけてたヒロイン達+ビッチ友は、
「本当に付き合ってるのかな?」と疑惑が深まる結果となる

ここで選択肢が入る。ごめんね、またなんだ。何となくは分かってたと思うが

【選択肢・オープニングムービーを再生しますか?】
→再生しない
→再生する

4回目のOPが流れる。内容は変わらない。てか変わりようがねえよ

ムービーの後、デートはまだ終っておらず主人公の自宅へ来るビッチとヒロイン達
「お腹が空いた、お風呂入りたい」とビッチが言い出し、風呂では当然全裸を見られる
この後数日、暫く許嫁がお弁当作って持ってきたり、幼馴染みにぱふぱふして貰ったり、妹に懐かれたり、プチ修羅場を演じる
そんな共通ルートの最後、主人公はある女の子(立ち絵無し)に屋上へ呼び出される

彼女曰く、「私と付き合ってほしい、セフレだけでもいい、お金が欲しいんだったらあげる」

と、怪しさ以外に何もない提案をしてくる
しかし彼女がヒロイン達を貶すと、主人公はヒロイン達の良いところを上げてキレる
そして当然のように隠れて尾行して主人公に惚れ直すチョロイン達

ここでようやくオープニングムービー以外の選択肢が入る

【俺が本当に気になっているのは……。】
→エアビッチ
→幼馴染み
→許嫁
→思いつかない(実妹ルートへ)

と選んだヒロインの個別ルートとなる

なんかもうぶぶ漬けにようにお見舞いしてくるOPムービートラップ、これは個別ルートでも執拗に登場してきた

○オープニングムービー選択肢の出た回数
共通ルート 4回
ビッチ 3回
幼馴染み  5回
許嫁 2回
実妹 5回

共通ルートでは4回、なのでゲーム全体で合計19回も「OPムービーを見ますか?見ませんか?」の選択肢が現れる
てゆうか「オープニングじゃないのにオープニングムービーって何だ?」と、哲学的な命題に思えなくもない
なおそれ以外の選択肢はゲーム全編通じて”個別ルート決める時の一回だけ”である


うん、まあアレだ。10ヶ月前にすたじお緑茶の選評書いた者として言わせて貰いたい――Ducaさんに謝れ、と
尺稼ぎのためにムービー連発したんだろうが、歌ってる人のイメージ悪くなるだろ
韓流押しが鬱陶しかった10年ぐらい前だって、もうちょっと自制していたような気がする
一応念のために断っておきたいが、OPムービーは適切な演出として流れているのではない
例えばfengの某ゲーム(名前忘れた)やFC2の「朝の来ない~」みたいに

1.OPムービー流れる
2.本編
3.次章の予告(ヒロインのモノローグ)。1へ戻る

みたいに、その章の頭にOPムービーが流れる”というような話ではない”んだ

  • デート中→OPムービー→デートの続き
  • 「学校で持ち物検査だ!」→OPムービー→「いやー大変だったねー」

と、話の途中途中へアイキャッチ代わりにぶっ込んでくる。ちなみにアイキャッチは別にきちんとある
そしてエンディングも歌はなく、チープなBGMにエンドロールが流れるのみである

「本来は発生するはずだった選択肢とすり替わった?」とも思ったが、
共通ルートではともかく個別ルートでも頻発するため、どうやら関係はないらしい
トドメに修正パッチが発売後3週間時点で出ていないため、公式が意図して入れた演出だと確定している

なお前スレぐらいで「最大でOP19回再生される」と書かれた際、以下のような書き込みがあった

.>149: 名無しさん :2016/12/13(火) 17:42:49 ID:EY1C6YJc
.>緑茶は昔から話数毎にOP流れる仕様じゃん
.>今回は次回予告ないせいでわかりずらいが・・・

筆者はすたじお緑茶作品、全15中9本をプレイし、フルボーカル入りサントラ買いにコミケで並んだ体験がある
その程度のごくごく普通の一ユーザーに過ぎない

そんな筆者であるが”数話毎にOP流れる仕様のすたじお緑茶ゲーム”の存在は寡聞にして知らない。少なくとも9本にはなかった
”昔から”というのであれば「女神さま☆にお願いっ!!」や「巫女さん細腕繁盛記」の三部作、「片恋の月」の二部作では実装されていなかった
また直近の三本(2014年・2016年1月・2016年11月発売)にも搭載されておらず、章別の次回予告も見た記憶はない

加えて”章(話)の始めに再生される”との指摘については嘘ではない。嘘”では”ない
共通ルートは全4話、セーブ・ロードのタイトルでのみ確認できるが、話数らしきものが登録されている
+ ...
(参考画像)

しかし参考画像を見て頂ければ分かると思うが「実妹編6話」である。他の個別ルートも6話まである
だがムービーが再生されるのは多くて5回、少ないヒロインだとたった2回
しかも入れるタイミングが「荷物検査だー」→【ムービーを再生しますか?】→「荷物検査大変だったねー」と、訳の分からない区切り方をしている
よって前の発言をより正確に記すとすれば、

「章(話)の冒頭に”も”流れるが、個別ルートへ入ってからは完全に狂い出す」

だと補足しておきたい

○システム・演出
すたじお緑茶のシステムで「立ち絵分割小窓ウインドゥ」というものがある。正式名称は知らないがこれ↓だ
+ ...
(gifアニメ)


多人数が登場する場面で使用され、誰が喋っているか・どんな動きをしているのか、を表現するシステムだ
同社作品はヒロインだけではなく、立ち絵を持つモブが入り乱れる展開が多くその際よく使われる
2004年に同社が導入して以来、筆者が買ってきた緑茶ゲームには実装されてきた
しかし前作からはスタンド(バストアップ&メッセージウインドゥ)へ切り替ったものの、
動きがなくなったのだから、劣化したのか進化したのか判断を保留していた

本作・夏彩恋唄でもこのシステムはあった。しかし有効な使われ方はされなかった
ヒロイン四人以外に立ち絵があるのはビッ友(女)一人、前作まで辛うじてあった親友・悪友・クラスメイトはない
だがいない訳ではなく、物語にもそこそこ絡んでくるが立ち絵がないので独り言状態

特にあるヒロインルート終盤で主人公が人生の決断をするかどうかで悩む際、親友(立ち絵なし)に蕩々と諭されるシーンがある
内容は前作のロリ先輩の介護宣言にも勝る長尺で、まあ製作側としては力を入れたんだと思う
しかしその折角のシーンですら、誰もいない屋上の背景を写しつつ、親友の声だけが淡々と聞こえるだけで感動もへったくれもない
エロゲーを揶揄して「声がついた紙芝居」とも言われるが、その絵すらない始末

なお参考画像のゲームは同社より2004年に発売したもので当時としては画期的だった。干支が一回りしたのに演出が劣化している

○シテスム・ボイス
圧縮の関係もあり、また長台詞もあるため一概に多ければ良いとは言えない
しかし”ボイス数=ヒロイン&モブの会話量”なので、多ければ多いほど作中で多く会話が交わされる証明となる
てか中の人のボイス数=ギャラ、らしいので、多さに比例して制作費をかけているのは間違いないだろう
(人やメーカーによっては”声優の拘束時間=ギャラ”という場合もあるらしいが、どっちにしろ同じ)

ボイス数比較
巫女さん細腕繁盛記(2004年) 22,263
+ ...
南十字星恋歌(2014年) 42,287
+ ...
はにかみCLOVER(2016年) 24,244
+ ...
夏彩恋唄(本作) 14,815
+ ...

同社から発売された12年前の作品に余裕で負けている。ただここで疑問が残る
夏彩恋唄の総容量は3.4GB、ボイスファイルは2.4GB(全体の約7割)
対して巫女さん2.8GB、ボイスファイルは0.92GB(全体の約32%)、南十字星は3.79GB、ボイスファイルは1.43GB(37%)
はにかみは1.99GB、ボイスは0.94GB(50%)
夏彩恋唄のボイス数が少ないのにも関わらず、ファイル容量は過去最大で比率もやたらと高くなっていた

次にそれぞれのゲーム内の長台詞(最もサイズの大きいボイスファイル)を抜き出してみた

巫女さん 229KB・20秒
南十字 219KB・23秒
はにかみ 221KB・24秒
夏恋 975KB・35秒

前作と前々作は同じ秒数でほぼ同じ容量。なんか本作が不自然に大きい
次に本作のボイスの中から211KBぐらいのを無作為に抽出し、秒数を調べてみる。すると”6~7秒”だった
別のプレイヤーでビットレート確認したら80(前作・前々作)→239(本作)と大幅に音質を良くしていた

最後に1,000個ファイルを選びogg→mp3へと変換、1,000個選んだままプロパティを比較すると

巫女さん 49:57
+ ...
夏恋 51:01
+ ...

と、ほぼ同じ値になった。よって”同じ音質フォーマットだと同じ時間へ落ち着いた”ので、
結果的にボイス数が少ない本作は、比較した中でももっとも短いゲームと言えるだろう
あくまで邪推になるが「容量水増しのために収録ボイスの音質変えて誤魔化した?」との疑問が残る
二年前のゲームとは変わるかもしれないが、今年の一月に発売したゲームとフォーマットを大きく変えるだろうか?


782
○システム・コンフィグ
ボイスを高音質にしたがコンフィグ画面は変わらない。参考画像は前作→本作→前作……と、交互に写してある
(gifアニメ)
+ ...
前々作はフォーマットは同じなもののデザインは整えられており、ここまで露骨に手を抜いていない

○シナリオ・物語開始~共通ルート最後まで

主人公家族は西の方のとある旧家の分家、もしくは親戚
本家の一人娘と主人公は曾祖父によって強制的に許嫁とされ、主人公と妹は厳しい教育を受けていた
その内容は家族と離され全寮制の学校へ入れられた

が、数年前に許嫁の関係は破棄。主人公が高熱を出し、記憶の一部を無くしてしまったのが原因。家へ帰される
そのさらに後、曾祖父が他界し、主人公の妹も全寮制学校を離れ、主人公ら家族とともに暮らす事になる
上記のいざこざを止められなかった不信感、また子供だけを残して海外赴任しているため、両親と主人公は不仲である

だが今は幼馴染みや級友達に囲まれ、それなりに楽しい日々を送っていた
しかし突然許嫁を名乗る本家の一人娘が現れ、強引に婚姻関係を結ばされそうになる(向こうは本家の顧問弁護士同伴)

どう断るか悩む主人公だったが、たまたま店に来ていたエアビッチに「私の付き合っている彼氏です!」と宣言される
彼女もまた親から望まぬ婚姻関係を押しつけられ迷惑していたようだ
取り敢えず嘘に乗っかり、偽の彼氏彼女を演じる事になる

――と、いうのが本作のコンセプトである。未成年達が理不尽な大人からの押しつけに抵抗する
ルートによっても異なるのだが、顧問弁護士はいい感じに脅してくる

「主人公の両親(実家のグループ企業で働いてる)は失業しますよ」
「今住んでる物件は本家が持ち主なので出ていって貰わないと」
「あ、それだと兄妹仲良く学校にも通えなくなってしまいますねー」

恐らく世間バレすれば大スキャンダルになる内容だが、物語的には正しい悪役像と言えよう

さてそんな理不尽へ対し、主人公とヒロイン達はどんな方法で解決するのだろうか?否が応でも期待が(ry

○ビッチルート
  • 偽彼氏彼女しているうちに好きになっちゃった!セッ(ry
  • 彼氏を弁護士が脅していたからパパ(キャリア官僚)の名刺を投げたったwwwww
  • 脅してた事実を許嫁へ抗議したら知らなかったんだって!これからは止めさせてくれるって!

……で、終わりである。主人公なにもしとらんがな
ビッチへ強引に迫る上級生(手を掴んで強引に引っ張る)を殴ると男気を見せている。一応は


○幼馴染みルート
  • 姉ぐらいに考えてた幼馴染みがエロかったので手を出した。反省はしていない
  • 肉体関係をビッチに悟られて他のヒロインにバレた。偽彼氏彼女は解消されたが反省はしていない
  • セッ(ryしまくってたら妊娠検査薬が陽性になったって!!!!!!11その後、生理は来たが反省はしている

なんかもうコンセプトをぶち壊しにする展開である。三角関係になって葛藤はしない
妊娠かも?と言われてからの主人公の葛藤は中々ゲスく、また彼を諭す親友君の説教もネジが外れているとしか思えない
前作のロリ中二先輩なみにイカれた展開を見せ、詳しくは後述


○許嫁ルート
  • 主人公が記憶を無くした原因は「雨の日に許嫁へ防水パーカーを貸し、そのあと引いた風邪」だった
  • また曾祖父が主人公を許嫁に指名したのは、許嫁が主人公を気に入ってお願いしたため
  • ついでにまた許嫁が戻ってきたのは、”主人公が出世ルートから外れて苦しんでいる”と、思った”から

真相、「許嫁のワガママが主人公家族を分断して今日までシコリを残した」
このルートでは甲斐甲斐しく世話をされ、肉欲に溺れて陥落
終盤で顧問弁護士に「じゃ本家継いでくれるんですね?」との問いに「先の事言われても分かんないし?」で濁し、
将来どんな風になってもいいように勉強頑張ろうね!で、終る


○実妹ルート
  • 妹が懐いてくるよ!手を出しちゃった!
  • 許嫁の顧問弁護士が「言う事効かないと両親失業するし、家も出てって貰うよ」と脅される!たすけてー!?
  • 両親に報告したら頑張って要求を突っぱねてくれた!許嫁も脅迫してた事実を知ってゴメンナサイだって!

このルートでは「自称許嫁が来たのに両親へ一言も連絡してなかった」という驚愕の事実が明らかになる
てか妹に腰振ってる以外なんもしてねえな。なんだこれ

○名シーン・学校の屋上で親友に諭される主人公
+ ...
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※飲み物を口に含んだままお読みください♪

親友「話をまとめると、子供が出来たから責任を取りたいが、どう選択をしてもなかなか難しい問題を抱えると」
主人公「そうなんだ」
親友「一真(主人公)の話は分かった。それで僕の私見で少し語ってもいいかな?」
主人公「ああ、構わないぜ」
親友「親や親族の作ったレールに乗ること自体は決して悪いことではないと思うぞ」
主人公「え?」
親友「怒らないで聞いてくれ。一真には一真の苦労があったとは思う」
親友「が、もう一方の方向からも見てくれ。少なくとも一真の両親は、物質的な不具合はないようにしてくれているだろ?」
一真「そ、そうかもしれないが」
親友「怒らせたいんじゃない。もう少しだけ冷静になって聞いてくれ」
健司(親友)は俺を怒らせて喜ぶような人間じゃない。
もしかしたら、何かあるのかもしれない。
主人公「あ、ああ。分かった。続けてくれ」
親友「確かに僕から見ても、幼少時に両親が居ないというのは本当に辛いと思う。そこだけを見ると一真の両親の、親としての資質を少しばかり疑う」
親友「でも、少なくとも物質的な不足はなかったはずだ。実際にお金が足りなくなるとかそういうことはなかっただろ」
主人公「まあそうだな」
親友「海外で忙しく働いているのだから、それなりにお金に余裕があるんだろう」
そんなことは分かっている。
月並みかもしれないが、それでも親として近くにいて欲しかったと思う。
親友「小さい頃、そこまで辛い思いをしたから、生まれてくる子供に同じをさせたくない」
主人公「そうなんだ」
親友「それならだ。いっそのことその両親に生まれてくる子供のお金を出させてしまえば良いんだよ」
主人公「は? だ、だがそれじゃ……」
親友「無責任だって言いたいんだろ」
主人公「当然じゃないか」
親友「一真の両親はずっとお金のみで親としての監督責任を果たしていないのだから、息子が間違いを起こしても仕方がない」
親友「いいわけとしてはそれでも充分じゃないか」
主人公「いや、でもそれじゃ……」
親友「それじゃ責任がって言いたいんだろう。でもよく考えてくれ」
親友「責任を取るからと学校を辞めて働き出して無理をしても、それじゃ先細りの可能性が高い」
親友「安い賃金で無理をして、身体を壊そうものなら目も当てられないぞ」
主人公「……」
親友「何もずっと面倒を看てもらえと言っているわけでもないんだ。一真が進学して就職するまで、こっそり親の金で育ててしまえばいい」

主人公「え!? 内緒なのか?」
親友「そうだ。だがお前は子供のために必死で勉強していいところに進学して就職するんだ」
親友「それこそ日本を代表するような企業にでもな。そうすれば一真の言うところの神木(本家)の束縛も受けなくなるだろう?」
主人公「た、確かに、神木よりも大きな企業なら、何も言ってこなくなるとは思うけどさ。でもそれで光はどうなるんだ」
親友「そればかりは難しい……。生むとなれば誤魔化しようがないだろうし、多分彼女は退学になるだろう」
親友「もしかしたら手はあるかもしれないが」
主人公「それじゃだめじゃないか!」
親友「落ち着いてくれ。だからって格好付けて二人して退学してもだ」
親友「それでもその先、小鳥遊(ヒロイン)もその子供も不幸にも不自由にもするかもしれないんだぞ」
一真「それは分かってるよ」
親友「分かっているか?そんな風な半端な人間、技術も経験もないのがどれだけ稼げるって言うんだ」
主人公「うぐっ、はっきり言うなぁ……」
親友「いいか。格好悪かろうかダサかろうが、一番大事なのは、小鳥遊とその子供を幸せにすることなんだろう?」
親友「むしろ、にっちもさっちも行かなくなって、最終的に親か、その神木の家とやらに泣きついて、子供を奪われてお前みたいに育てられるかもしれないんだぞ」
主人公「そ、そうだけど……、でもそんな都合のいい様に進めてもいいのか」
親友「いいんだよ、それで。大体それくらい認めろって言う話だよ。散々子供を放置していたんだ」
親友「親として子供のツケは払うべきだ」
親友「こういうとき、いつも無計画だの無責任だのという連中が湧いてくるが、そんなことを言っているから、この国の少子化は止まることを知らないんだよ」
親友「国はそんな状態なのに、何故生まれてくる子供を祝福できないんだよ。そんなのおかしいだろ」
親友「だって一真の家はそれなりに裕福なのだから、一人ぐらい増えても問題ないんだし」
主人公「…………」
親友「だがその代わり、時間は就職するよりいっぱい出来るんだ。だから本当にいっぱいの愛情を与えて育ててあげるんだ」
親友「自分がして貰えなかったことは全部してあげろよ」
親友「小鳥遊に関しては子供の手がかからなくなったときに、再度進学の道を探すのだってありだな」
親友「確かに現役で進学できないのはちょっと辛いかもしれないが」
主人公「そ、そうか……」
親友「あ、あ!? い、いや済まない。つい熱くなってしまった」
親友「僕のような彼女も女性経験もない人間が何を言ってるんだって感じだったな。済まない」
親友「辛いのは一真なのに、何様のつもりだったな……」
主人公「いやそんなことない、健司って凄いんだな」
親友「僕がか? 何が凄いんだ?それなら一真の方が凄いだろう」
主人公「凄いって、俺はそんな考え全く浮かばなかった。少しずるい気がするけどさ」
親友「どこがずるいって言うんだ。これはこれで凄く大変だと思うぞ」
親友「これから相当勉強していいところに進学して、進学しても凄く頑張って勉強や研究をして、神木の家が文句を言えないほどの企業に入社して……」
親友「その間に子供と小鳥遊には沢山の愛情を注ぐんだ。いいか? どれ一つ手を抜いちゃいけないんだ」
親友「これが大変と言わずになんと言うんだ」
主人公「あぁ、確かに大変だ。でもこれが上手くいけば、神木の家の支配から逃れられるし、子供を引き離されないし、彩花(※実妹)とも離れなくていい」
主人公「お金だって、就職してから絶対に返してみせる」
親友「多分両親はそんなお金気にもしないと思うぞ」
主人公「いいや、それは俺のけじめだ」
主人公「健司、凄いいい案をありがとう」
親友「机上の空論かもしれないぞ」
主人公「でも、今までで一番いい案だ」
親友「そうか、役に立って何よりだ」
(以下略

俺がもし同じ立場で相談した相手からこの台詞が返ってきたら、「ああ俺こいつから嫌われとおな」と絶望するだろう
うん、まああれか。親友の言う通りに事を運ぶんだったら、以下のように幼馴染みのご両親へ挨拶しに行く訳か

「あなた達のお嬢さんを妊娠させました!責任は取ります!」
「お嬢さんは退学されられるでしょうが、俺は一流企業へ就職するために一流大学へ行かなくてはならないので辞めません!」
「俺の実家は西の方の旧家なので二流以下の企業へ就職できないからです!どうか理解してください!」
「その間の育児はお嬢さん主体ですが、俺は愛情を与えます!絶対です!」
「あ、俺は子供時代に親から放置され寂しい思いをしてきました!お金に一切不自由はしませんでしたが、とても辛かったです!」
「だから俺のツケは監督責任として俺の両親が払います!育児代と学費は俺の親が払わせますからご心配なく!」
「お嬢さんは子供に手がかからなくなった頃、改めて進学させますから大丈夫です!」
「その頃には俺はきっと日本を代表する一流企業に勤めているから、学費は問題にもなりません!」
「両親は費用を気にしないはずですが、一流企業に勤めている俺は絶対に返すつもりです!それが俺のけじめですから!」
「これが俺の責任の取り方です!どうか俺に責任を取らせてください!」

はっきり言う、ライター辞めろ。な?向いてないから、単純にライターに向いてないからさ
俺がヒロインの親だったらとりあえず動かなくなるまで主人公殴って、その後はDIY用品買ってくるか自首するかの二択で迷うだろう

というか仮に本家や両親が子供を取り上げたとしても、それは善意ある良識の範疇であって、
このバカの元で育てるよりかは遙かにマトモな育ち方をすると思う
選評書いてからあまりにもバカバカしくて、上げるの取りやめたライアーのアレ以来ぶりに頭痛い

ちなみにこの話のオチは、「ヒロインのご両親を呼びいざ説得しようと直前ギリギリで生理が来る」と、いうゴミのような畳み方をする
男気()のあるクレバー()な主人公はその場で「娘さんを下さい!」とプロポーズする!逆に良かったね!良くねえよ

……そしてこの後、主人公が実親から叱られるシーンはなかったため、
「安心して下さい!俺の両親がカネ出しますから!」は、事後承諾できると思ってたらしい
幼い頃に守ってくれなかった()と両親を恨んでいる割に、随分と信頼している主人公である

そして仮にだ。百歩譲って主人公とヒロインの両親の温情()で許され、「凄いいい案」を実行へ移したとしよう
しかし前述したように主人公家族の住む家は本家の持ち物であり、両親は本家系の企業で働いている
そのためトラブルになったら退去&退職勧告のコンボを喰らい、”親の金で進学・生活・養育費ウマー”プランは実行前に破綻する

○謎の構成
全体的に軽い、そして短い
筆者が選択肢マラソンの動画撮ろうと最初からフルスキップでプレイしたが、エンディングまで7分弱という結果になった
流石に思い直して公開は控えたが
緑茶のエンジンが軽快だというのもあるが、それ以前に内容が薄い
会話数が乏しく、ヒロイン以外は一人を除いて立ち絵なし、賑やかな学園生活を楽しむ時間的な余裕はない

というか前作「はにかみCLOVER」書いたのも筆者なのだが、その際にネタとして三点を挙げた

1.自治会で宝探しゲームてお前ら幾つよwwwwwwwwww
2.自治会で猫の里親探してちょっwwwwwwwww
3.皆でイベント絵無しのクリスマスパーティ楽しいねwwwwwww

しょーもないイベントだと10ヶ月前の筆者は考えたのだが、今にして振り返るとこれはまだマシだった
本作では、ない。イベントらしいイベントは徹底して何も起こらない
共通ルートでは上記の通り、個別ルートも特にこれといって何をするわけでもない
主人公が風邪を引いたり、落ち込んだヒロインを慰めたり、強引に迫る相手を殴ったりする。その程度だ

その反面なんだこれ?と思うような構成もチラホラある
  • エンディングCGは四人中三人がプールで水着
  • 四人全員ピロートークCG(事後にベッドで裸)がある
予定されてた水着回を削ってエンディングへ回した?ピロートークCG四人分いらなくね?なにやってんだ?と筆者は問いたい

学園イベントは皆無、エロの絡まない日常イベント最低限(デート無しのヒロインもいる)、モブに姿はなく、ED曲はなく、ルートを決める選択肢はたったの一つ
シナリオが面白ければ良かったのだが、前作に引き続き頭の中身が未実装の人物がチラホラ見える
かといって某ASAのようにバカとギャグとテンションで引っ張るでもなく、ヒロインの妊娠(未遂)という重いテーマを入れてくる

○まとめ
市場には需要というものがある。需要を充たす商品を作れば売れ、より多くの需要に応えるような商品を供給する
残念ながらいい商品だから必ず売れるという訳でもなく、スペックが優れているのに埋もれていくのもよくある話だ
ともあれ同業他社と差を出し、独自色を付けた製品こそが市場を席巻”しやすい”と言える

エロゲー業界も決して例外ではない。売れる製品を作るため、他社を出し抜くために多くの企業は日夜努力を重ねている
それを怠った、ブランドイメージにあぐらをかきユーザーの求める商品開発を怠った会社は消える
エロゲ業界でも一世を風靡したエルフは倒産し、古豪と呼ばれる他メーカーもパッとしない

しかしながら某アイドルユニットエロゲーはまだ、商業戦略としては理解できる
「痛々しい&客来ねえだろ&アイマスの何周遅れだよ」、というツッコミは入るもののメーカー側が危機感を覚え、
顧客獲得の新たな試みとして、他社がやらなかった販促としてはありだと思う。俺が中の人だったら殴ってから辞めるが

よってすたじお緑茶においても企業努力や変革が求められるのだが――その結果がこのザマかと激しく問いたい
思うところは色々あるだろうが、とりあえず下の比較を見て欲しい

商品名 夏彩恋唄 巫女さん細腕繁盛記
発売年 2016 2004
グランドルート なし あり
ヒロイン数 4 6
立ち絵ありモブ数 1 7(クリーチャー類も含めるともっと多い)
CG枚数(差分含まず) 67 93
シーン(エロ)回想 28 24
選択肢 1(全編)30+(共通ルートだけで)
ボイス総数 14,815 22,263
ボイス総時間数(推測) 12.6h 18.3h
BGM 14 20
ボーカル曲 1 3
OPムービー 1 2(曲は別・共にボーカル入り)
EDムービー なし 6(曲は同じでヒロイン別に製作)
OP再生回数 19 7
特典 OP曲CD 同人風アクションゲーム(クリア特典・描き下ろしCG)・サントラ

繰り返すが比較対象である巫女さん細腕繁盛記は同社が2004年にリリースした製品である
過去作で出来た長所を捨てた先に何があるのか?何故捨てたのか?
プロローグからエピローグまで至る所にムービートラップが仕掛けられているが、誰も止めなかったのか?

原画はまあ普通だし声優も……モブが棒読みなのを除けば悪くない
UIは過去作に劣り、シナリオは頭痛くなる展開やトンデモ世界観でお腹いっぱい
唯一誉められる点はエロシーンの多さ(一人7回)だが、それにしても背景SE音?(ループするエロボイス・チュパ音?)がないため、
抜きゲーからは一歩も二歩も劣る出来でしかない

このゲームを一言で表すならば「スタートラインに立ってない」事だろう
今年も様々なクソゲー選評が上げられ、中には「シナリオが寒い・生理的に受け付けない」類の評価が多々ある
それらであっても様々なイベントを作り、その中でキャラクターを動かそうとする努力の形跡は見られた。失敗してるけど
ユーザーへ感情移入を促し、キャラクターを好きにさせようとする楽しいやりとりの試みてはいた。失敗したんだが

だがこのゲームにはそれがない。必要最低限のイベントすら入れず、起きたイベントは即終了となる
ダイジェスト版読んでんのかと思うぐらい、手を抜くところはとことん抜きまくる。前作でも酷かったが
例えばあるイベントでは主人公の家で集まってテスト勉強をする。それは14クリックで終る。そんなんばっかだよ
その一方、力を入れたと思われるシーンは前述のような名状しがたいやりとりが交わされる
いやペース配分を間違えてんだよ。無駄な妊娠騒ぎ&トンデモ説得入れるんだったら、その尺使ってイベント起こせや

最後に言いたい
このゲームを10年ぐらい前へ持って行き、「すたじお緑茶の新作だ!」と言ったところで信じて貰えないだろう
筆者もその中の一人に混ざっているだろうが

以上選評終わり
最終更新:2017年01月14日 17:10