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2021年総評案2 大賞:Cuteness is justice


【2021】 クソゲーオブザイヤーinエロゲー板 総評審議所
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/game/58649/1643644901/
59: 総評2 ◆vq7OBokoT2 :2022/02/20(日) 16:32:26 HOST:M106073135224.v4.enabler.ne.jp
2020年、エロゲ業界のみならずあらゆる界隈を巻き込んだ不況と混乱の中で催されたクソゲーオブザイヤーinエロゲー板(KOTYe)は前代未聞の毒に襲われた。
不快な主人公、地雷ヒロインにご都合主義展開とクソのストロングスタイルを備えながら、文章すべてにルビ乱用という細菌を混ぜ、
未知のパンデミックを引き起こした『LOVE・デスティネーション』がKOTYe2020を制したのである。
発足してから13年という月日が流れたKOTYeにおいて、未だに新しいクソ要素が発見される事態に歴戦の勇者も驚嘆する事となった。
こうして2020年の幕は閉じたが、2021年も旅を続けるスレ住人の胸には期待があった。
「今年はどんな魔物が現れるか、はたまた現れないのか」
KOTYe2021の冒険者達が乗り込むキャラベル船は、新たなる香辛料を求めて航海を続けるのである。

3月下旬、2021年のKOTYeはまさかの来訪者に慌ただしく動き始めた。
桜の開花がパンデミックで傷ついたこの国に春の到来を告げる頃、春告鳥としてウグイスカグラの『冥契のルペルカリア』がKOTYe開幕の知らせを伝えてきたのである。
上質なシナリオで固定ファンを掴んでいる同ブランドだが、届いた選評は実態とあまりに乖離した宣伝文句に踊らされた、哀れな子羊の叫びであった。
青春譚、恋愛譚、幻想奇譚の3つをコンセプトとした本作であるが、前2つは形骸化され、実際は虚構世界で展開される陰々滅々としたエピソードが続く。
各登場人物の長くて重苦しいモノローグも拍車をかけ、選評者をして「一個も明るい話が無い!」と言わしめた。
これを「ブランドの作風」と言えば聞こえはいいが、単に「ご新規さんお断り」とも取れる為、擁護派からも一定の支持を受けてしまう。
かくしてKOTYeに飛来した『冥契』であったが、このような予想外の良作ブランドが到来する例は本年の特徴である。
仮に『世間』で評価されていたとしても、『事実』として発生している購入者に対する裏切りまでは正当化出来ず、本年のバトルロワイヤルは振り子の原理を伴って少しずつ拡大していく事になった。

ウグイスカグラからのまさかの選評という衝撃的な幕開けに続く事になったのは、同月に発売されたCalciteの『女勇者と幻想カジノ~求む亜人巨乳美女ギャンブラー~』である。
何を隠そう、Calciteはかつて大賞作『SEX戦争』等を輩出した名門のスワンアイの流れを汲むブランドである。
定番ジャンルとして異世界物の抜きゲーを続けてきた同ブランドだが、ついに4作目でダウトとなった。
投げっぱなしのシナリオやご都合主義展開とクソゲーのお約束を抑えた本作あるが、最大の問題点は流用によるCG数の水増しである。
全60枚のCGの内、立ち絵や他のCGを加工して作られたと思わしきものの枚数は26~7枚と半数近くを占める。
この流用は同じ姿勢のCGに対して触手や背景の入れ替えや左右反転が主だった手口である。
異世界ギャンブルものとしての掘り下げも不十分で、登場するイカサマも「カードに傷を付ける」等の初歩的なものしかない。
挙句の果てにはゲーム内ミニゲームのブラックジャックでブラックジャック(役)が存在しないというチョンボまで発見される。
製作陣が如何に付け焼刃のギャンブル知識で本作を手掛けたかの証左と言えよう。
その他、立ち絵増殖バグやらエロシーンで突然シーン回想の挙動になる等、システム面の問題も合わさり、クソの役満となった。
安パイのはずの異世界物を掴んだと思ったら、ババ抜きのババだったといった事態にスレ住人には失笑が溢れることとなった。

久しぶりに落ち着いたGWとなった日本を尻目に、「失笑なら任せろ」と言わんばかりに登場したのが、4月末に発売したばかりのevollの『とっても明るい!お嬢様の満喫☆夢のどすけべ生活』である。
前年に、「風が吹けばストッキングが消える」でお馴染み『絶品バーガー』を送り込んだ新鋭が新たな方向性を携えて馳せ参じたのであった。
本作の問題点はコンセプトの崩壊による安定感の無さである。
タイトルに「とっても明るい!」とつけている本作であるが、シナリオは「バスジャックで誘拐したら、被レイプ願望のあるお嬢様に逆脅迫され仕方なく凌辱」という複雑怪奇なものである。
馬鹿ゲーを狙ったつもりなのかもしれないが、このコンセプトに対して食い合わせの悪い3要素がプレイヤーを襲う。
まずは主人公が凌辱に向いておらず、行為に入る前に挿入される鼻血や童貞モノローグ等の演出がプレイヤーをいらだたせる。
それに続くのは、シーンの終了後にヒロイン3人でHのダメ出しを含む品評会制度であり、「主人公に感情移入出来ないのにただ責められる」という新手の言葉攻めをしてくる。
最後にエロシーンの幕間を補うギャグが滑っており、「メイドが牛乳ととろろを入れ替えた」「言葉のダメージで9999のダメージが飛び出るのが見えた」等、バカゲーを馬鹿にするかのようなネタが襲い来る。
全体的に何をしたかったのかが伝わらず、珍走団の如きライターの迷走っぷりには甚だ迷惑である。
前作『絶品バーガー』を下回る料理を出された選評者をして「エロゲから離れた方がライターの為」と言わせしめ、スレ住人は大いに舌鼓を打つのであった。

6月に入ると前年にエントリー作を出したSAKURADOGから『家出ギャルを拾ったので育ててみた』が梅雨の湿気さながらの陰湿システムで突き出される事となった。
ゲームを一回閉じると起動しなくなり、再インストールを要求と初っ端からイラつかせる本作であるが、まだ掴みに過ぎない。
最大の問題は「マウス左クリック」以外の操作が出来ない事であり、息子をイカせる前に人差し指がイカれるという事態を引き起こす。
シナリオも設定を活かしきれない微妙さだが、CGはヒロインのキャラ変を差分とせず、41枚の内半分が被りという手抜きには、「お前は抜くんかい」と購入者が激怒しても仕方がない。
かくして「抜く為の利便性が低すぎて、エロゲに数えたくない」と選評者に断罪された本作は同ブランド2年連続のエントリーを飾ったのであった。

梅雨の湿気を吹き飛ばすべく、自らのアイデンティティーさえ吹き飛ばした勇者一行が続けてKOTYeを訪れた。
5月に発売されたpanacheの『ぱられるAKIBA学園』がタイトル回収とばかりに参上したのである。
度重なる延期を重ね、当初の予定より丸一年遅れで発売されたその姿は、もともと予定していたものではない事が容易にうかがい知れる内容であった。
本作はオタクの主人公が異世界転生し、勇者ヒロイン達一行とともに魔王を倒し、オタク文化を広めながら世界を復興するという意外と骨太なものである。
復興ものの都合上、安定した世界設定が求められるが、本作は世界観を安定させる前にヒロインのキャラが安定しない。
個別ルートまでに4人中3人が別人のように変貌し、そこまで楽しんでいたプレイヤーを落胆させてしまう。
委員長属性の勇者はネガティブモブに、吟遊詩人エルフは騒音お姉さんに、頭脳派魔導士は破壊行為中毒にともはやパラレルワールドの有様だが、変貌しない聖女も元からイカれている為、結果として全員属性地雷と化してしまう。
世界観についてもそもそも教育・文化そのものが無い為、オタク文化の布教以前にやる事が満載であり、本筋を想定して作られたとは思えない代物である。
貴族たちの腐敗した実情等、気分を害する設定は凝っていたりするが、最終的に復興活動もコスプレHの為の舞台装置と化す残念仕様である。
ここまで異世界転生ものとしては期待できないレベルの拙さであるが、エロについてもおぼつかない。
個別ルートなのに大半が3Pとアブノーマルなシチュが多い癖、巨乳ヒロインでもパイズリはゼロと「何をもってこの配分にしたのか」と小一時間問い詰めたい。
総じて異世界エロゲの悪手の見本市であるが、本年は『ぱら学』をはじめ「異世界」や「ファンタジー」という文言が多数見受けられる作品が多い。
「人気のジャンルのはずなのに鬼門」という流行の先駆けとして、『幻想カジノ』ともどもクソのコレクションに収められることとなった。

夏の終わりが近づく9月、「俺たちの百物語はこれからだ」と妖怪が襲い掛かってきた。
8月発売、ももいろPocketの『ぶっかけ陰陽師絵巻 ~Hなお祓いいたします~』の慟哭である。
同ブランドはスワンアイの正統後継者として2019年の『カスタムcute』、2020年の『俺は姫武将を孕ませたい!』に続き3年連続のエントリーとなった。
本作は陰陽師の主人公が巷に蔓延るHな呪いを精液で解除するという和風ファンタジー抜きゲーであるが、素材を活かすどころか、そもそも素材が間違っている。
妖怪が跋扈する古風な世界観に似つかわしくない現代風衣装のヒロインや同ブランドの前作「姫武将」から流用した粗い背景等、のっけから躓いて立ち上がる事は無い。
肝心のCGについても、親戚のCalcite『幻想カジノ』から「CGを流用して枚数を水増し」を伝授されており、フルプライスにもかかわらず実質1jksを下回るが、これで終わらないのが正統たる所以である。
環境依存のバグによりCGモードで流用を確認しにくいように白い靄を発生させる隠ぺい工作まで搭載している。
テキストもモノローグの水増しにより実用性を極限までそぎ落とされ、衣装やぶっかけの場所がCGと違う等の整合性を欠き、隙の無い陣容である。
一方で、本筋は主人公の妖怪呪い考察が大半を占め、ヒロインとイチャイチャも端折ったまま、ボスとの戦闘といった盛り上がりも立ち絵流用戦闘CGの前に無味乾燥の極致である。
ここまでの時点で壮絶な出来であるが、そこはやはりスワン系、システム周りにも救済は無い。
かつての同門ブランドの大賞作、みるきーぽこの『孕らぽこ』で見られたほどではないが、ノーヒントの三択を間違えるとルートが消えたり、途中で終わるという不親切仕様を搭載している。
これを攻略する為にセーブ&ロードで対応しようとすると、前作『姫武将』同様の5~6秒の暗転が首を絞めてくる有様である。
総じて妖怪変化の有様であるが、8月末発売の本作のDL版が10月末に某所の10本1万円セールに登場した。
わずか2か月で税込9,680円の本作が実質1,000円と9割近い値下げとなり、発売日に購入したユーザーには哀悼の意を表せざるを得ない。
一方で、あまりの不出来にあるハンターから「もともと1,000円で売る事を想定して作ったのでは?」と邪推されてしまう。
かくして、CG流用、やる気のないエロ描写、無味乾燥なシナリオ、不親切なルート周りに価格暴落と悪の陰険五行説を提唱したももいろPocketは
同ブランド3度目の正直にして同系ブランド3代目の大賞というクソ大河の完成に向け名乗りを上げたのである。

妖怪の跳梁跋扈にどんよりした雰囲気の中、10月になると大河ドラマの主役の座を取り返すべく、まさかの真打が登場した。
歴史もので評価の高いインレから『源平繚乱絵巻 -GIKEI-』が一ノ谷の戦いさながらの崖下りで奇襲を仕掛けて来たのである。
本作は現代の主人公が過去にタイムリープして、源義経として源平争乱の時代を戦い抜くというストーリーである。
プレイ時間30時間超、2回のループを挟んで実質一本道の本作は、歴史ものを期待した層を裏切る怒涛の最終盤が問題である。
度重なるタイムリープで過去の歴史改変の影響が現代に現れる設定を展開する一方、最終盤ではそんな設定かなぐり捨ててパラレルワールドと決めつけ、ボスの悪霊との少年漫画さながらのドッカンバトルに挑む。
そこに至るまでも無駄にテンポを損なう義妹ヒロインの歴史うんちく談議がちりばめられ、もはやライターの知識自慢にしかなっていない。
せめてエロに救いを求めても、魅力的な女体化武将達にエロシーンは存在せず、現代から一緒に来たヒロイン二人で計5回と無常観的な哀愁を感じさせる。
骨太な歴史絵巻たる中盤までさえ懐疑的にみられてしまう顛末に「神は細部に宿る」という言葉の重さを嚙み締めるのであった。

『GIKEI』の非業の最後を見届けたスレ住人が対峙したのは、かねてより夏の怪物……むしろラスボスとして危険視されていた大作であった。
8月発売Vanille Macaronの『Cuteness is justice』がタイトルに合わぬ禍々しい姿でこの混乱に畳みかけてきたのである。
同ブランドの処女作にして、ファンタジー世界を舞台にしたやりこみ育成SLGと銘打ち発売された本作であるが、『ママ2』同様に「見えている地雷」と評されたその実態を紐解こう。
本作のストーリーは亡国の皇女リンを調教師の主人公が拾い、Hを含めた調教育成を施して、亡国の再興を目指すという壮大なものであるはずだが、
「エンパイアエルフ王国」「ドワーフ王国」等、ひねりの無い設定上の名称を前に安っぽさを感じざるを得ない。
続いてSLGパート、本作は『下級生』等を参考とし調教ものに転向させた、昔ながらのコマンド式育成シミュレーションであるが、能力の増減に関するヒントが見当たらない。
ちょっとした能力の不足で即BADENDに直行する難易度に対し、マニュアル等にヒントは出ておらず、情報サイトのBugBug記事で語られるのみとなっている。
このような理不尽さに加えて、やりこみを困難にする古臭いシステムが足枷になってプレイヤーを苦しめる。
周回前提にもかかわらず、セーブデータが10個しか作れず、コマンドや演出の度に切れるスキップや読み込みロードの嵐とストレステストの如き賦役が待ち受けている。
こうしたストレス仕様を補うエロはというと、そもそもCGのクオリティが商業水準に到達していない。
同人レベルともされた塗りのレベルが「見えている地雷」とされた所以であるが、射精断面の白濁液に黄色い粒が混じるグロ画像が発見されるとスレを恐怖のどん底に陥れた。
一方のテキストは総じて「、」(読点)の位置がぐちゃぐちゃで読みづらく、形容詞の対象や主語が行方不明になる稚拙なものである。
何とか理解したとしても3クリックで射精するシーンや、弱気な主人公がシーンでは急にハイテンションになる等、失笑をかっさらう出来である。
実用性の面で期待は出来ない惨状であるが、例によって調教コマンドのエロシーンは省略が出来ず苦役の一部と化す。
絶え間ない地獄の果てに登場するラスボスは一枚絵のモブトカゲであり、三部作の一作目とはいえ、苦役の代価の盛り上がりの無さに辟易するだけである。
ノーヒントかつ不親切なシステム、商業向けとは思えないCG、我流点整を欠くテキストと、総じて税込8,580円の体裁をなしておらず、ラスボス然たる圧倒的な総合力はスレを論争に巻き込んだ。
「2,000円の同人としてなら許せる」「いや、むしろ同人に失礼」
程度の問題ではあるが、否否両論入り乱れた本作は本年のKOTYeのセンターとして、最後まで引き合いに出され続ける地位に君臨したのである。

ラスボス襲来に沸き立つスレであったが、そこに流行りの異世界エルフが魔弓ならぬ魔球を投じてきた。
North Boxの『エルフのお嫁さん ~ハーレム婚推奨~』がスクランブル登板してきたのである。
異世界転生ものに学園ものを合わせヒロインはエルフと、抜きゲーとしては置きに行った作品に見えるが、絵以外の褒め所が無い。
シナリオは食事とセックスを往復し、舞台装置である学園のせいで異世界設定が死ぬという共食いが発生している。
一方でエロシーンはお祭り風のBGMが自家発電を牽制し、タイトルの「ハーレム」要素も4回の3Pと4人フェラ一回ではただの見せ球に過ぎない。
終いには終盤の展開が各ルートで重複し、プレイ内容も代り映えしない為、購入者にデジャブを感じさせる始末。
こうして宣伝文句にある大半属性が死に絶え、多様な購入者のストライクゾーンを避ける魔球と化した本作に対し、スレ住人は見送り四球を選ぶのであった。

エルフによる魔球を見送り、塁に出た先に待ち受けていたのは天使と悪魔の凸凹バッテリーだった。
QUINCE SOFTの『ごほうしアクマとオシオキてんし』の降臨である。
1月の発売直後もプレイ中に挟まる読み込みロードの多さから話題となった本作であるが、秋深まる11月に未知の問題が発覚しKOTYeに召される事となった。
大筋としては更生の為に天使に連れてこられた悪魔2人が過疎化にあえぐ離島の旅館を手伝う事で盛り返していく町おこしものであるが、そんな宣伝文句も悪魔の戯言に過ぎない。
ダイジェスト進行であれよあれよという間に島は盛り上がり、ヒロインとの交流要素も省略気味である。
エロの導入もやっつけで、主人公は自身のケガや大事な確認事項を忘れて脈絡もなく行為にいそしむ。
そんな極小の描写力に対して、膨大なのはフレームレートである。
本作はまるでベンチマークテストをするかの如く、システムが許容する最大負荷をかけてフレームレートを暴走させる。
高スペックGPUではゲームの軽さで負荷が上がりきらず、致命的な故障報告こそ上がらなかったものの、密かに無駄な電力を消費するこの仕様は昨今叫ばれるSDGsの対局を行くものであり、
選評者をして新タイトル「こっそりグラボにオシオキべんち」としてクソの禁書目録に収められることとなった。

悪魔によるPCの強制労働を目の当たりにした衝撃も冷めやらぬ中、12月に入って現れたのは怠惰なバカ女だった。
11月末に発売されたばかりのCalciteの「ニート娘を更生させよ!性技があれば生きていける」が同ブランド2連勤を果たすこととなったのである。
本作のシナリオはニート更生員の主人公が社会不適合者のヒロイン達を更生させて就職を目指すというものだが、
税込7480円というミドルプライスでありながら、ゲーム容量が302MBしかない。
『ママ2』の悪夢を思い出すような数値だが、そのダイエット法はとにかくセリフをケチる事である。
売りとされたヒロインを更生する展開は1周+各ヒロイン個別1回で終了し、途中の交流描写をカット。
CG40枚、シーン数36と体裁だけはまともであるが、モノローグが水増しされたエロシーンではなかなか声が聞こえない。
『しゃべれよ!ちゃんと喘げよ!イクの早すぎるよ!』の三連打にはプレイヤーも抜く気がうせるだろう。
おまけにBugBug記事以外で告知していない風俗堕展開も強引展開の末のやっつけ仕事である。
システムとしても前作以上に完成度が低く、説明書通りに右クリックが動作しないバグやシーン回想の範囲設定ミス等も見受けられる。
挙句の果てには風俗堕ちの末、ヒロインが出演したAVの男優名がなぜか「Man」等、厚顔無恥な出来に「ニートに働かせる前に、お前が働け」と製作陣に物申したいところである。
一方で前作がスワン系の新奥義「CGを流用して水増し」を咎められた為、反省したのだろうか。
それに続く本作は、そのような卑怯な真似に頼らない正統派のクソゲーとしてKOTYe2021の社員名簿に名を連ねる事となった。

12月も末に差し掛かり除夜の鐘の足音が聞こえる頃、まさかのメーカーから年内最後の選評が投下された。
シルキーズプラスの「ふゆから、くるる。」が同系ブランドで初めてKOTYeの門を叩いたのである。
本作は同ブランドがすみっこソフトより引き継いだSFミステリ、四季シリーズの最終作であるが、最終盤の解決パートを除き問題が山積している。
推理モノなのに全体の1/3を占める冗長な導入パートではヒロインが話を聞かず、明後日の方向に脱線しまくる。
推理パートでは読者が推理する為に必要な情報が開示されないという「ノックスの十戒」を無視するような描写が追撃をかける。
止めとばかりにエロシーンでは、百合をPRしたにもかかわらずふたなりを混入させ、属性を持たない選評者を阿鼻叫喚たらしめた。
独特な作風でファンからは好評を得た本作だったが、本編の常識にとらわれない世界観をエロにまで持ち込む姿勢にスレ住人も感嘆するのであった。

2022年を迎え、例年通り1月の予備期間に突入した。めぼしい有力作をあらかた平らげたスレ住人たちは大賞談議に華を咲かせていたが、そこに早馬が届き、事態は風雲急を告げる事となる。
CIRCUSの『D.C.4 Plus Harmony ~ダ・カーポ4~ プラスハーモニー』の非道な行いが告発されたのである。
曲芸商法と言われる悪辣な作品展開を続けてきた同ブランドだが、その末端がついにKOTYeの捜査縄にかかったのであった。
本作は全年齢版『D.C.4』の18禁移植作であるが、問題となったのはひとえに「手抜き移植」であった事である。
18禁化の都合上、CVの変更を余儀なくされた本作であるが、本編シナリオの一言一句を一切変えずに解き放たれ、ファン層に刺さる毒矢と化した。
加えて、本編終了後の追加要素であるエロにも埋伏の毒が仕込まれている。
メイン・サブ合わせて8人のヒロインに各4枚のCGであるが、その大半を流用して2回使うという誰得仕様を搭載したのである。
こうした死の商人たるCIRCUSの売り方に辟易する者もいたが、同時に「曲芸にしては良くやっている」という謎の擁護まで飛び出し、スレはヒートアップする事となった。

そして最終日の1月31日。選評締め切りまであとわずかのところで、立て続けに3本の選評が襲来し、KOTYe史上まれにみる電撃戦が展開された。
その先鋒を務めるのはPrincess Sugarの『プリンセス☆シスターズ!~四姉妹は全員あなたの許嫁~』である。
外国のお姫様四姉妹とのイチャラブをお題目に据えた本作であったが、萌えゲーを期待させておいて、その実態は虚無シナリオの抜きゲーである事からKOTYeの舞踏会に連れ出された。
ヒロインは一人を除いて自ら股を開くお手軽仕様に加え、それに発情するだけの竿と化した主人公には「空気」以外の印象を持つことは無い。
イチャイチャ要素であるはずの日常シーンもひたすら虚無で、「記憶喪失がフライパンで治る」等の寒いネタが目立つ。
美麗CGにより抜きゲーとしては佳作に成り得るものの、シナリオが虚無すぎて未読スキップを推奨する本作は、文字通り最終日の動乱の姫始めとして役割を果たす事になった。

そんなビッチ姫の窮地を救うべく、怪しい勇者が颯爽と戦場に現れた。
6月発売のキャラメルBOXいちご味『下戸勇者~下戸は飲まねど酒池肉林!~』の推参である。
実は8月の時点で選評が届いていた本作であったが、「語る気が失せる」という選評者の言を持って、さらなる潜在力の高さが期待、もとい危惧されていた。
そこに通りすがりのハンターが決死行を仕掛け、最終日2本目の追加選評として、勇者よりも魔王というべき恐ろしい全貌を解き明かしたのである。
本作はドラゴンクエスト3を元ネタとする凌辱メインの異世界ハーレム抜きゲーであるが、本来パロディゲーは元ネタを知っているかどうかで評価が分かれるのが常である。
それに対し本作には、DQ3「アリアハン」の町をもじった「アリエヘン」を始めとする輝く息の如き寒いネタが本編、エロシーン問わず至る所にちりばめられている。
震災のトラウマ「ぽぽぽぽ~ん」をもじった呪文等、もはや元ネタのジャンルすら統一感が無く、DQを既知かどうか等些末な問題でしかない。
DQヒロインを馬鹿にしたやり取り等、むしろ元ネタがわかる事でプレイヤーに激しい炎の如き怒りを沸き立たせる無神経な茶番も見受けられる。
ネタ以外にもRPG風世界観の描写はやたらと凝っているが、抜きゲーにしてはクリアまで15時間弱と長すぎる為、ただただ読むのが辛い苦行と化してしまう。
主人公の気色悪い言動も拍車をかけ、いくら終盤でそれらの伏線を回収したところでコレジャナイ感を漂わせるだけである。
抜きゲーの本懐であるエロについては、CG70枚、シーン数33とフルプライスとしてまずまずだが、その多くがハリボテである。
各エピソード冒頭のチラ見せH、需要不明な主人公の女体化逆レイプ、和姦用とはいえオホ声を台無しにするゆったりBGM等、実用性を損なうシーンが入り乱れる。
凌辱で悪役然たる主人公も和姦シーン中にDQあるある、もとい過去の冒険譚を語りだし、抜き所をバシルーラしてしまう。
エロ描写が安定せず、凌辱と和姦を行ったり来たりするシーンもあり、CGが良くても使えないというお預けを食らわせてくる。
この時点で圧巻の攻撃力だが、本編を支えるシステム周りは鉄壁である。
既読・未読を切り替えられない上に声が重なりまくってひどいことなるスキップや、ボイスの音量設定がキャラ毎のみ等、使うに堪えない化石システムがしっかり守りを固める。
止めとばかりにシステム画面の確認ダイアログから背景をブラックアウト出来る立ち絵鑑賞用バグも確認され、ようやく解剖が完了となった。
寒いシナリオとおざなりなエロという二刀流で、地獄の帝王の如き本作はDQシリーズの魔王にならい、最後に進化の秘法によって真の姿を現したのである。

魔王の踏み荒らした大地を砂漠に変えるべく、最終日のトリを務めたのはDESSERT Softの『彼女(ヒロイン)は友達ですか?恋人ですか?それともトメフレですか?Second』である。
2019年エントリーのシリーズ前作が甘酸っぱいヒロインとのイチャイチャ同棲からの急転直下のハーレム性奴隷bot化で顰蹙を買ったのに対し、
本作は評価されていた日常イチャイチャ描写を大幅削減し、改悪したハーレムエロを増量した罪で再び御用となった。
イチャイチャが薄い分、性奴隷化してもショックは少ないとも取れるが、前作比およそ半減のプレイ時間で、売りの一つだったネタ要素すら削減されてしまっては擁護のしようもない。
特に本作で登場する「露骨にハーレム結成に向けて立ち回る妹」は前作の「策士妹」と悪い意味で対照的な存在であり、同ブランドを三年連続のKOTYeハーレムに導く原動力となった事を付け加えておく。

以上、数奇な運命によりKOTYeに導かれし全エントリー作品16本が出そろったところで、本年の大賞および次点を発表する。

次点は、
『ぶっかけ陰陽師絵巻~Hなお祓いいたします~』
『下戸勇者~酒は飲まねど酒池肉林!~』
そして大賞は、
『Cuteness is justice』
とする。

本年のクソゲーを俯瞰してみると前年の傾向の先鋭化が顕著であると見て取れる。
すなわち作品を手抜きに基づく「価格不相応」の品質と事前情報と実態の乖離による「裏切り」の二大要素であり、多くの作品を貶める事になった。
前者については、パンデミック不況によって業界全体として製作サイドが予算不足に陥っていた事は想像に難くない。
一方で後者については非常に解釈が難しく、「自分が理想を抱きすぎたのかもしれない」と選評を書く事をためらう者が続出する事となった。
『冥契』、『GIKEI』、『ふゆくる』、『DC4PH』等、世間からある程度評価されている作品も数多く選評が寄せられたが、
選評者達は口々に悩みを吐露し、その度にスレ住人がたしなめたのである。
「KOTYeはネタスレであり、選評はあくまで『個人の意見』である」と。
本年程KOTYeの原理原則が確認される事はかつて無かったかもしれない。
炎上騒動やクソゲーへの注目等、SNSを含んだ一人一人の行動が作品に影響を与えやすい世の中となり、ある意味で選評のハードルが上がってしまったが故の事態と言えよう。
しかしながら、これらいずれの作品もクソの誹りを免れない「裏切り」を抱えており、全体としては凡作以上とはいえ選評を書くに値した作品だったと言える。
例によって次点以上には、このようなためらいを伴って選評が届いた作品たちとは一線を画す魔物が据えられる事となった。

スワン系の後継者として、飽くなき手抜きで無価値に近づこうとする『ぶっかけ陰陽師』。
ヒントの無い理不尽難度、不便UIに低質なCGと価格不相応の極致たる『Cuteness』。
TPOをわきまえない寒いネタとDQあるあるに化石システムを添えて投げつけた『下戸勇者』
価格不相応、ユーザーへの裏切りとクソの二大要素を携えるいずれ劣らぬ強者揃いであるが、僅差で『Cuteness』が大賞たりえたのは
今の時代における「フルプライスの新作エロゲーを購入する意味」を否定したからである。
業界の勃興から四半世紀以上が経過し、旧作のDL版が積極的にセールで値下される近年において、無数に存在する名作達よりも新作を購入する意味とは何か。
多くはメーカーやクリエーターへの愛着だろうが、それ以外を挙げるならば「今迄に体験した事のない」新提案への期待である。
エロ・シナリオ・世界観・CG・ゲーム性等、新しいエロゲとしての楽しさを体験したいからこそ、あえて1万円近い資金を投じて新作を購入するのではないだろうか。
ましてや新ブランドともなれば過去の実績は全く勘案されず、唯一価値を見出せるはずの新提案を否定する事に『Cuteness』のクソさは際立っている。
BugBug記事にて「やりこみSLGの楽しさを伝えたい」と喧伝されているが、プレイして伝わるのはジャンル特有の難易度と作業感であり、
塗りが足らないCG、稚拙なシナリオも相まってむしろ同ジャンルに嫌悪感を抱くという悲劇を生みだしている。
評価されるべきは、同人ではなくあえて商業で発売した意気込みと「無理ゲー」としての歯ごたえだけであり、それ以外すべてを占める苦しみは多くのプレイヤーを脱落させる事になった。
復古的とはいえ珍しいコンセプトを売り出して、まざまざと購入者を裏切る顛末は、「見えている地雷」としてハードルを下げていたとはいえ許されるものではない。
レトロを模したものだったとしても、ユーザビリティまで古臭いままでは単に時代錯誤であり、熱意があっても実が伴わなければままならないプロとしての宿命を痛感させる。
次点となった『下戸勇者』はコンセプトの異世界抜きゲーとしては安定しない部分は多いが、気合の入った複数人描写等、一部シーンの実用性は担保されている。
需要に応えているかはともかく、不快なシナリオも我慢して読み続ければ、終盤には冒険ファンタジーとしての楽しみも見いだせる為、大賞にする程救いが無いとは言えない。
「新作を購入する意味」を価格暴落によって否定した『ぶっかけ陰陽師』であるが、前2作でも大罪を犯しており、もはや多くの購入者の期待は「怖いもの見たさ」と思われる。
加えて、かつてのスワン系大賞作『SEX戦争』『孕らぽこ』に比較すると小粒であり、手抜き中心のクソ要素では歴戦の猛者達の邪な期待に応えたとは言えないだろう。
『Cuteness』は単純なクオリティの低さも問題であるが、「やりこみSLG」というジャンルを自らの不出来によって否定するという救いの無さを併せ持つ。
エロゲ業界の裾野を広げるはずの新提案を、実態が完膚なきまでに破壊している悲劇性を鑑みて本作こそ大賞にふさわしい。
熱意だけではプロ失格という当たり前の厳しさを教えてくれた『Cuteness』に対し、クソを評する好事家の端くれとしてKOTYe2021の栄誉を贈りたい。

かくして、KOTYeの新たな覇者が誕生した。
未だ、「クソゲーとは何か」という深淵の底にたどり着いたとは言えないが、我々の冒険は終わらない。
KOTYeがいつまで続くかはわからないが、エロゲという光がある限り、クソエロゲという闇も存在し続けるはず。
それを追い求めて、いや追い求めていなくとも、遭遇したクソを語り、悲しみを分かち合い、笑い飛ばす。
クソゲーへの侮蔑は本質ではなく、斜陽と言われるエロゲ業界において、もしよき友として再び巡り合えたなら、過去の事は水に流して笑いあおう。
悠久の時を超えても、KOTYeはそんな場であり続けるという意思を次代へ受け継いでいきたい。
「来年はどんな魔物が現れるか、はたまた現れないのか」
好色家たちの冒険は続く。未だ見ぬ香辛料もとい「クソ」という人生のスパイスを追い求めて。

最後に、2021年にご逝去された、DQシリーズを始めとするゲーム音楽の大家、すぎやまこういち先生のありがたいお言葉を拝借し、
大賞作を手掛けたVanille Macaronに対し、次回作へのアドバイスを贈る事で、KOTYe2021の冒険譚を締めくくろう。
「エロゲのプロを目指すのならば、まずCGにしっかりと塗りをつけて欲しいと思います。アマチュアとプロとの間の厳然とした差はそこにあります。」
「ゲームにしても、エロゲにしても、PCソフトにしても、マニュアルを読んでも使えないものは、商品としてはダメなんだと、僕は思う。」
最終更新:2022年03月01日 21:58