295 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/12/12(土) 03:00:17 ID:gGo2a/5L
最近、京ちゃんが私に冷たい。それに気づいたのは12月に入った初めの頃のこと。
「じゃあ、お先に失礼しまーす」
「えっ、京ちゃんもう帰っちゃうの?」
「ああ。この頃色々と忙しいんだよ。じゃあな」
「うん…そっか。また明日ね…」
いつもこんな感じだ。夕方の5時くらいになると、すぐに荷物をまとめて部活を早退けしてしまう。
「あの、部長…」
「ん、どうかしたの?咲」
「最近の京ちゃんってなんか帰るの早いですよね…?」
「うーん。そうねぇ」
「なにか事情でもあるんでしょうか?私、何も聞いてなくて…」
「さあね。私はただ、家の用事があるから早く帰らないといけない、としか聞かされてないわ」
「そうなんですか…」
「ええ。まぁ誰にだって忙しい時期ってあるじゃない。ねっ?」
「そうですよね…」
「あんまり深く気にすること無いわよ。さぁ、部活の続きを始めるわよ」
部長はこう言っていたけれど、私はやっぱり素直に納得できなかった。
だって、家の用事があるなんてこのとき初めて知ったんだもん。
どうして京ちゃんは私に教えてくれなかったんだろう。私は京ちゃんの彼女なのに…。
― ― ―
12月中旬になったある日のこと。
相変わらず京ちゃんは、部活を早退けばかりしている。そのせいで2人きりで一緒に帰ることもできない。
デートだって、先月の終わりにしたのが最後だ。今月になってからは一度もしていない。
そもそもデートどころか、最近では二人きりになる時間さえも全くと言って良いほど無くなってしまった。
私はケータイを持っていないから、メールや電話だってできない。だから、唯一学校で会うのが2人きりで話をする
チャンスだと言うのに、今はそれさえも無くなりかけている。すごくすごく寂しかった。
もしかしたら家庭内で何かいざこざでもあるのかな。私の不安は募るばかりだ。
「じゃあ、すみませんが今日もお先に失礼します…」
まただ。今日もまた、京ちゃんはみんなよりも先に部活を終えて帰ってしまった。
本当に何がそんなに忙しいんだろう?もしかして、私以外の人と会ったりしてるのかな…。
そう考えると胸がチクチク痛み出す。もうこんなのは嫌だよ。やっぱりちゃんと理由を聞かなくちゃ。
だって、私は京ちゃんの彼女だもん。
「あのっ…部長、今日は私もお先に失礼します!!」
挨拶もそこそこに、急いでかばんを手に取り私は京ちゃんを追いかけた。
296 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/12/12(土) 03:03:09 ID:gGo2a/5L
「京ちゃん待って!!」
「ああ、咲か…。どうかしたのか?」
「あのさ…どうして最近いつも帰るの早いのっ?」
「それは…用事とか色々とあって忙しいんだよ。前にも言ったろ?」
「………その用事ってなに?」
「ええ?ほら、家のこととか、親戚で集まったりとか……とにかく色々だよ」
私から目を逸らしてあたふたしながら答える京ちゃんの顔を見て、ますます怪しく感じる。
「ねえ、本当に家の用事なの…?そんなに毎日毎日忙しいものなのっ?」
「それは……」
はっきりしない態度に少し苛立つ。私に言えないようなことって一体なんなの?やっぱり…
「もしかして、私が知らない誰か他の人と会ったりしてるんじゃ…」
ついに言ってしまった。疑うのは良くないと思いつつも、聞かずにはいられなかった。
「なっ……!?そんなことする訳ないだろ!おまえ、俺のことを信じてないのかよ!?」
「ひゃっ…」
京ちゃんに怒鳴られてしまった。こんな顔を見るのは初めてだ。
びっくりしたのと同時に今まで募りに募り続けていたものが一気にあふれ出す。
「うぅっ…ひどいよ京ちゃん……うっ…信じてないわけないじゃん…でも何も教えてくれなかったら
私だって…私だって、不安にもなるよぉ……っ!!うっ……ひっく…ううっう…」
「ああ…悪い…。泣くなって……」
「きょうちゃんなんて…大っきらい!!」
頭を撫でようとした手をパシッと払いのけ、私は泣きながら走った。
ただひたすら走り続けた。その間も涙が溢れて止まらない。もうどうすれば良いのか分からないよ…。
以上
最終更新:2010年10月31日 08:09