「雅枝小母さん!まずいですって、こんなの…」
こうなることは、わかっていた。
「小母さんなんて言わんといて…雅枝って呼んでくれな、嫌や」
俺の視線はこの人を捉えていたから。
「俺はっ、娘さんの…絹恵さんの彼氏なんですよ!?」
けれど…俺は彼女を拒む。
「何言うとんねん…京太郎のココ、こない大きゅうしとるやないか」
しかし身体は言う事を聞いてくれない。
「それは…ただの生理で……」
それでも俺は必死で足掻く。
絹恵さんの事を、傷付けたくないから。
…俺の薄暗い想いを、受け入れたくはないから。
「―――嘘やな」
けれど雅枝さんは…雅枝は俺の言葉を否定する。
ホントの事を突きつける。
「アンタは絹恵を見てたんやない…その向こうにいる私を見とったんやから」
偽り続けてきた…受け入れずにいた俺のキモチを。
「ええんやで…私は、何もかも受け入れたるから」
彼女の想いが行き付く先を、俺は知らない。
「アンタはただ、私に身を委ねたらええ」
その想いは…俺へのものか、亡くなった夫へのものか。
俺には、何も分からない。
いつか、全てが明るみに出て。
「なんで、なんでや京太郎……」
いつか、憎まれるようになって。
「お母ちゃんも京太郎も、大っ嫌いや!」
いつか、全てを失うことになったとしても、
「愛しとるよ、京太郎」
俺はもう自分を…この人を…裏切らない。
最終更新:2013年11月06日 12:33