最近暑いので。
―その日は、暑い日だった。
「ああ、須賀。いまから部室か?」
「ええ、ぶちょ…」
後ろからの声に振り返る。
そこにいたのは、白糸台女子麻雀部部長、弘瀬菫。
普段は自然に流されている長い黒髪は、後ろで一つにまとめられていた。
「…髪型、変えたんですか?」
「ああ、暑くてな」
あそこまで長い黒髪であれば、確かに熱がこもりそうではある。
だが、そういう実用的な目的であったとしても、普段とは違う姿から、目が離せない。
「…あまり、見るな」
馬鹿みたいに見つめていた俺に気付いたのか、少し恥ずかしそうだった。
「行くぞ、須賀」
「……はい」
並んで歩きながら、部長を一瞥する。
普段は見ることのできない白いうなじと、仄かに紅潮した頬との美しい対比に
―思わず、息を呑んだ。
最終更新:2015年06月22日 21:43