その日部室に、机に突っ伏して嘆いている金髪少年がいた。
京太郎「……えない、なんで一つももらえないんだ……」
号泣でもしそうなそのゾンビのような姿に、智葉はため息を一つ。
智葉「お前がもらえないのは当然だろう」
京太郎「なんで、ですか。俺、本当は嫌われて?」
智葉「馬鹿、男がバレンタインにチョコを貰うのはアジア一部にのみある習慣だ。国際的には男が女に贈る側になる」
『その辺りを考慮しないと』と続けながら智葉は準備室のドアを開け放つ。
智葉「こうなる」
部室に繋がる一室には、他レギュラー陣が全員突っ伏していた。
メグ「なぜでスカ、ナゼ……」
ネリー「なんで? なんで? なんで?」
明華「あはは、プチプチ潰すのタノシイです」
「どうやってプロポーズを……やはりホテルの一室を借りて」
京太郎「」
その惨状を目の当たりにした男の反応は、絶句。
智葉「つまり、以外にとってはもらえないことでショックを受ける。
なお、香港ではチョコだけでなくもっと積極的に女が動くものらしいな」
ポンポンと京太郎の肩を叩き、何かを見守るような生ぬるい笑顔で智葉は締める。
智葉「まあ頑張れ、男の子。ああ、私のチョコは雀卓に置いておいた」
この場にいる誰よりも漢らしく、智葉は片手を上げて部室を後にした。その姿は様になり、他の女子生徒が次々と智葉に群がっていく。
色んな意味で衝撃を目にし、少年は先刻とは全く違う意味で頭を抱える。
京太郎「俺はどうするのが正解なんだ? 教えてくれ、誰か……」
こうして臨海の2月14日は錯綜としたまま動くのであった
カン
最終更新:2018年05月02日 20:43