京太郎を送り込んで対戦校の戦力を削る 名付けてトロイの木馬作戦

小蒔ちゃんが誕生日だとしってから書き始めた記念ss故に遅刻は大目に見ていただきたい…

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「鬼籍にいれよ」




「…それは」

「黄金の髪を持って生まれた男児は我ら一族への呪いそのもの。こやつを生かしておいては神代は必ずや滅びの道を辿ろうぞ」

「しかし…!」

「一族の掟は絶対。小蒔も先月にようやく最初の誕生日を迎えたばかり。あやつのためにも…よいな」


バタン!


「あなた…」

「仕方あるまい…掟は掟だ。」

「そんな…まだ名も貰わぬうちに命を奪われるなど、この子があまりにも…あまりにも不憫ではありませんか…!」

「しかし掟もだが年寄衆の意見を無視するわけにもいかぬ…」

「…小蒔にとっても唯一の姉弟になるというのに」

「あまり、己を責めるな」

「この子のために自らの体を犠牲にしたこと…後悔はしておりません。命があっただけで九面様に感謝しなければ」

「小蒔には六女仙が付く。お前のときと同じく、配下として、友として、必ずや支えとなってくれよう」

「ええ。でもこのままではこの子は一人で暗く寂しいところに…」

「…」

「手元で育てることが叶わぬならば、せめて命だけでも助けられませんか?」

「しかしそう言ってみたところで…」

「…須賀家に養子に出す。というのはいかがでしょう」

「分家の末席である須賀家に?たしかに男児に恵まれず、跡取りに窮していると聞いてはいるが…」

「この子が大きくなって事実を知るときがくれば、恐らく私たちを恨むでしょう。それでも生きていてくれさえいれば…!」

「…」

「お願いします!私とこの子を哀れと思うなら…!」

「…年寄衆の方は私が上手く胡麻化しておく」

「あなた…では!」

「明日、薄墨と共に子を須賀の家へ連れていく。取り急ぎの使いを送っておく。狩宿と石戸を呼んでくれ。
 それと、念のため…明日は滝美と十曽を付かせるから離れるでないぞ」

「ご恩情に感謝いたします。…もう一つだけ、我儘を申し上げても?」

「この無力な父に叶えられる願いであるらば」

「ええ。今晩だけはこの子最後まで共に。それと…生まれた翌日に親元を離れるこの子に、せめて名前を…」

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

…ま  …い様  …だい様


「神代様」

「はっ!?」

「お休みのところ申し訳ございません。ですがそこではお風邪を召されるかと」

「すみません。縁側も最近暖かくなってきましたので…つい」

「お疲れでございますか?神代の巫女ともなると、ご心労も相当のものでございましょう」

「いえ…ただ、夢を見ていた気がするのですがその内容が思い出せないんです。それに私なんて…六女仙の皆さんがいなければまだまだ半人前です」

「六女仙…薄墨様はご健勝でいらっしゃいますか?」

「はっちゃんですか?」

「初美様は勿論ですが、御母堂も」

「先日祭礼でお会いしましたが…どうしてですか?」

「理由は存じ上げませぬが…昔から何かと私を気にかけてくれておりますので」

「そうなんですか」

「また宜しくお伝えくださいませ。さ、粗餐ではありますがお食事のご用意をさせていただきましたので、こちらへ」

「ふぅ…ごちそうさまでした!」

「お口に合いましたでしょうか?何分にも、男の一人暮らしでございますれば」

「はい。すごく美味しかったです…でも」

「?何かお気に召しませんでしたでしょうか?」

「とんでもないです!ただ…不思議です。母の作ってくれた料理を思い出しました。味がよく似ていましたから…」

「失礼ながら…神代様のお母上様は…」

「はい、私が生まれて一年後くらいから体調を崩しがちで…昨年に帰らぬ人に」

「…左様でございましたか。末席ながら仮にも分家である我が家が参列もできませんでしたこと、お詫びいたします」

「先ほど、お一人暮らしだと仰っておられましたが」

「母は私が5つの頃に、父も昨年亡くなりました。取り急ぎ私が後を継ぎましたが…未だ何も手が付いておらず…」

「それにしても先程は驚きました。こんな田舎の神社に美しい女性が訪ねて来ること自体珍しいのに、
 それがよもやの神代様だと知った時の衝撃と言ったら…」

「急に押しかけてしまい申し訳ありません。こちらで少し用事があって出向いていたのですが、
 六女仙の皆さんとはぐれてしまって…。あてもなく彷徨っていたらここに行きついたんです」

「そうでしたか。食事の用意をしている間に、本家に電話を入れさせていただきました。ただ…」

「ただ?」

「電話口の向こうが慌ただしい雰囲気だったのは、神代様の行方が分からなくなっていた以上は当然でしょうが、
 本社の名前を告げましたら、当主様は酷く慌てておられるご様子でした」

「?」

「神代様のことをお伝えしたところ、さらに輪を掛けて狼狽されていたようでして…
 お話もそこそこに『迎えをやる』とだけ」

「まあ…なぜでしょう?」

「いずれにしても、もう間もなく本家からのお迎えが来られるかと」

「ありがとうございました。そういえばまだお名前も伺っておりませんでしたね。」

「私の?」

「はっちゃんのお母様に、お会いしたことをお伝えしなければなりませんからね」

「ありがとうございます。では改めまして、ここ須賀神社で神職を務めさせていただいております…」



「須賀京太郎と申します」


斯くて運命は動き出す  カン!

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2018年05月02日 20:57