咲「えい、えいっ、むー、どうして捕まらないのぉ」
一生懸命スマホの画面に向かって文句を言いながらフリックする少女の名は宮永咲。
自称文学少女にして携帯の使い方も分からないポンコツ少女である。
和「あの、咲さん。寝てる須賀くんにいくらボールぶつけても意味ないですよ、これそういうゲームじゃないので」
咲「え、違うの!?」
まるで驚天動地のごとく慌てる彼女に生暖かいまなざしを向けると、それに乗っかる人間がこの場にはいた。
久「あら、咲は須賀くんを捕まえたかったの?」
咲「ち、違うよ!?」
ニマニマと楽しそうに後輩をからかう言葉への返答は著しく説得力に欠けている。
久「そう、違うんだ? じゃあ私が捕まえちゃおうかしら」
和「部長、何を言ってるんです。須賀くんを捕まえるなんてできるわけ」
久「それができちゃうのよね。これは龍門渕さんの所が出した最新アプリ、咲モンGOを使えばね」
和「なんなんですかその訴えれば確実に勝てそうなパクリネームは」
久「確かに名前は胡散臭いのは認めるわ。ところがこれ、すごい技術力を無駄に結集していてね。
このアプリを人物に向けると自動的に認識、デフォルメ化してくれるのよ。あとはそのキャラに向かってボールを投げると捕まえられるわ」
咲「か、可愛い。部長、これ欲しいですっ、京ちゃん捕まえたいですっ」
つい先ほど否定しておいてあっさり掌を返すポンコツ娘。
久「じゃあダウンロードしてあげるわ。――ん、これでいいわよ」
咲「わーい。えい、えい。やった、これでずっと京ちゃんと一緒だぁ」
心なしか幼児退行した彼女の影に隠れ、無言でダウンロード作業とボール投げをこなすデジタル少女の挙動はあまりに早く、誰にも見とがめられることはなかったという。
カン
最終更新:2019年03月11日 01:20