須賀君に無理矢理抱かれてから、数日。
話しかけないで、顔も見たくないと強弁したのは私でしたが、その言葉通り、須賀君は部活に顔を出さなくなりました。
元々雑用や買い出しをしてばかりで、対局も滅多にしないものでしたから、困ることはそこまで……と思っていました。
ですが、優希と咲さんは明確に元気を失いましたし、足りないものが出たり少し困ったときなど、須賀君に頼りきりだった反動が徐々に浮き彫りになってきて。
……私は、須賀君を呼び出しましたが。

『顔も声も見たくないって言われたからな』

一通のメールだけが私の携帯に返ってきて。
更にその日は、咲さんが半狂乱で部室に来たのも覚えています。

『京ちゃん、告白されるかもって、部活辞めるかも知れないって………!』

須賀君に穢されたところがズクンと鈍く疼いて、私は歯を食い締めました。
無理矢理私を抱いてから、今に至るまで顔の一つも合わせないまま、関係が途切れる?
あの時の記憶は未だに色褪せず、私の脳裏に刻まれ、身体に焼き付き、持て余し、夢にまで見るほど鮮烈だったのに。

その日は部活もマトモに出来ず、早々に解散しました。
そして私は、夕方と夜の狭間ぐらいの時間に、
須賀君の家に行ったのです。

インターフォン越しの問答。
部活に居場所を見出だせなくなったと自嘲する須賀君が、訴えてくれてもいい、学校を辞めてもいいと軽く言い出して。
耐え切れず、堪えきれず、私は須賀君に懇願しました。
あの日から忘れられない、どんなにひどいことをされてもいいから、須賀君のモノにしてください、と。
屈服の叫び。
完全に、自分一人では情愛に抗えないと刻まれた女の、惨めで無様な訴えでした。
静かに玄関が開き、呆れたような顔の須賀君が顔を出して、手招きされて。

頭を撫でられて、困らせないでほしいと窘められて、顔も見たくないんだろう?と言われ。
部活の為に和が犠牲になるって言うなら、それは間違いだと諭されて。
そうじゃないんです、と叫ぶ私。
須賀君に抱かれてから、今に至るまでの心境の変遷を全て伝えて。

『告白されたんですか?』
『もう、麻雀部には来ないんですか?』
『もう、私の事はどうでもいいんですか?』
『須賀君、須賀君、須賀君………!』

寂しかったし、悔しかったし、哀しかったし、ここで離れ離れになると、きっと私は須賀君無しで生きられない。
無理矢理でも良いから、滅茶苦茶にされていいから、酷く扱われてもいいから──

我儘を言う私を、須賀君は抱き締めてくれて、優しく髪を撫でられて、嘆息もつかれて。

『そこまで言われたら、止まれないだろ』
『きっと、和に酷いことをしちゃうぞ』
『前よりも、ずっと、もっと酷いことを』
『良いのか?』

『はい!』

私は須賀君に抱き着き返し、安堵しました。
須賀君の居場所になれる、須賀君の止まり木になれる。
きっと互いに依存し合うのでしょう。
それでも良いと、私は堕ちていくのです。



麻雀部が修羅場になりますが無罪です

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最終更新:2019年10月09日 10:02