神代父「京太郎君、急に呼び出してすまないね」

京太郎「いえ、丁度手隙の時間でしたから」

神代父「君にひとつ、聞きたいことがある」

京太郎「……はい」

神代父「何故小蒔や霞ちゃんに手を出さないのかね?」

京太郎「………はい?」

神代父「小蒔も霞ちゃんも若く、身体も心も清らかに育っていよう。君への思慕にも気付いておらぬとは言わせんよ?」

京太郎「……いえ、流石に身分違いも甚だしいかと。思慕と言えど、特に身近な男がお館様と俺、其々の家族ぐらいですから。狭い世界で長い付き合いをしている為の思慕かと」

神代父「……すると、君は小蒔や霞ちゃんたちが身も心も分からぬ男に嫁いで良いと?」

京太郎「……いえ…それは……」

神代父「……今晩より三日、小蒔は一人寂しく床に着くだろう。君が小蒔を憎からず思っているのなら、共に添うてやって欲しい。小蒔からにせよ、京太郎君からにせよ、私は万事を許そう」

京太郎「……姫様と、ですか…?」

神代父「小蒔が秘めし想いを私が語るのは憚られるが……それでも、娘の儚い願いぐらいは、叶えてやりたいのが父親というものだよ」

京太郎「……」

神代父「君に是非、義父様と呼ばれたいものだね」





午後九時。
小蒔の部屋の前で佇みつつ、京太郎は悩む。
小蒔の父からは、篤と愛でてやってほしいと乞われ。
霞の父からは、拠り所となってほしいと乞われて。
それでも、京太郎は悩む。
二人を一緒に、など許されるものなのか。
否、許されたとて自分があの二人に溺れてしまわぬか。
二人の父親は、京太郎の悩みを呵々大笑して許してくれたが。

(悩まずとも良いとも。君は有象無象とは違う。小蒔や霞ちゃんが全幅の信頼を寄せているのが全てだよ。……いいかね?)

(京太郎君は真面目だな。だが、あれで霞は色欲に弱いんだ。君の写真を見ながら独り言を呟く日々を終わらせてやって欲しいんだ)

「姫様はともかく、霞さんが俺を……」

どうしても、この襖を開ける勇気が湧かず。
京太郎が逡巡すること十分。

「あ……京太郎さん!」

「京太郎君じゃない…」

襖が開くと同時に、嬉しげな声が二つ。
あ、と息を吐くと、目の前には寝間着姿の美少女二人が並んでいて。

「─────」

普段の巫女装束とは違う、独特の色香。
それでも、特筆すべき胸の膨らみは隠せず。
京太郎が押し隠してきた獣欲が、肥大して─

「お父様よりお話は聞きました。今宵は京太郎さんが床を共にしてくださると!」

「よろしくね、京太郎君」

嬉々とした美少女二人に抗う術もなく、二人に手を引かれて京太郎は寝室に入り。


翌日、三人揃って休んだことを、残る仙女たちは聞かされて……大凡の事情を理解するのだった。

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最終更新:2020年04月06日 22:43